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2013年12月11日水曜日

プロバイダー責任制限法

 プロバイダー責任制限法は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」といいます。)の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものです。

 インターネットや携帯電話の掲示板などで誹謗中傷を受けたり、個人情報を掲載されて、個人の権利が侵害されるなどの事案が発生した場合、プロバイダ事業者や掲示板管理者などに対して、これを削除するよう要請しますが、事業者側がこれらを削除したことについて、権利者からの損害賠償の責任を免れるというものです。

 また、権利を侵害する情報を発信した者の、情報の開示請求ができることも規定しています。

 削除要求の方法は、権利を侵害された個人かその代理人(弁護士等)が、書面であれば実印を押印して印鑑証明をつけて、電子メールであれば電子署名をつけて、行うことになります。代理人が行う場合には、委任状の添付が求められます。

 削除要求の様式等については、 (社)テレコムサービス協会(http://www.telesa.or.jp)のホームページに、ガイドラインが示されています。

 プロバイダ責任制限法については、 総務省電気通信消費者相談センター (http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/madoguchi/tushin_madoguchi.html)へ、発信者情報の開示請求については、各プロバイダ事業者へ直接確認してください。

 総務省令によれば、開示請求できる発信者の情報は、
1 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
2 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
3 発信者の電子メールアドレス
4 侵害情報に係るIPアドレス
5 前号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
とされています。

参考

プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト

プロバイダ責任制限法について(警視庁)

2013年12月10日火曜日

知財の基礎 弁理士法

弁理士が単独で業として行うことができる業務
  • 商標登録出願に関する特許庁における手続の代理
  • 意匠権についてのライセンス契約の締結の代理


×  実用新案権に関する侵害訴訟の提起の代理

弁理士が他人の求めに応じ報酬を得て行う独占代理業務
  • 特許庁における出願手続の代理
※ 特許料の納付手続についての代理やライセンス契約における契約締結の媒介は弁理士の独占代理業務ではない。

弁理士の職務
  • 弁理士が所属する法人である特許業務法人は,その法人名義で特許出願の代理をすることができる。

2013年12月9日月曜日

知財の基礎 種苗法

品種登録を受けるための要件
  • 区別性
  • 均一性
  • 安定性
  • 未譲渡性
  • 名称の適切性
※ 新規性は不要
  • 試験目的の利用であれば,育成者権者の許可がなくても登録品種を利用できます。
  • 育成者権の存続期間は,品種登録の日から起算し,存続期間の延長をすることはできません。
  • 登録品種の育成方法についての特許権を有する者であれば,当該特許に係る方法により登録品種の種苗を生産することができます。
<事例>
X社は,病害に強いとうもろこしの新品種Aの育成に成功したことから,品種登録を受けることを検討している。
  • 品種Aについて品種登録を受けるためには,出願時に外国で公知の他のとうもろこしの品種と,明確に区別できることが必要です。
<事例>
薔薇の品種Aの育成者甲は,品種Aについて種苗法に基づく品種登録出願をしようと考えている。
  • 甲が2年前から品種Aを日本国内で継続的に販売している場合,品種登録を受けることはできません。
  • 品種Aが公然知られた他の品種Bと特性の全部又は一部によって明確に区別することができない場合,品種登録を受けることはできません。
意匠制度品種登録制度
  • 品種登録の要件として,創作非容易性は必要とされていない点で相違する。
  • 意匠権及び育成者権の存続期間は,登録日から起算する点で共通する。


 育成者権の侵害
  • 登録品種の種苗を育成者権者に無断で業として生産する行為は,育成者権の侵害となる。
  • 育成者権者から適法に譲り受けた登録品種の種苗を第三者に譲渡する行為は,育成者権の侵害とならない。

2013年12月8日日曜日

知財の基礎 独占禁止法

特許権のライセンス契約

○  ライセンスに係る製品の販売地域販売期間をライセンサーが制限すること
○  ライセンスに関連する特許をライセンシーが取得した場合に,ライセンサーが非独占的なライセンスを義務付けること
× ライセンスに係る製品の販売価格をライセンサーが制限すること
  • いわゆるパテントプールは効率的なスキームとして有用である半面,独占禁止法上の問題とならないように注意する必要がある。
  • 不当な取引制限を行っている事業者に対し当該行為を差し止める排除措置命令を行う行政機関は、公正取引委員会である。
<事例>
電機メーカーX社は,Y社に対して風力発電装置に関する特許権Aのライセンスを考えている。Y社が特許権Aに係る特許発明を改良し,特許権Bを取得した場合,特許権Bについて当社が独占的ライセンスを受けることはできるのか。
  • Y社からX社に特許権Bを譲渡させることが,市場におけるライセンサーの地位を強化するとして独占禁止法上問題となる以上、当社に独占的ライセンスをさせることも同様の理由で問題となる。

2013年12月7日土曜日

知財の基礎 不正競争防止法


営業秘密
  • 営業秘密として不正競争防止法で保護されるものが,他の知的財産法で保護されることもある。
  • 営業秘密とは, 秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報 であって, 公然と知られていない ものをいう。

商品形態
  • 他人の商品の形態と同一であっても,その形態が,その商品の機能を確保するために不可欠なものであれば,不正競争防止法第2条第1項第3号(商品形態模倣行為)にいう「商品の形態」には該当しない。


  • 他人の周知な商品等表示を使用する行為は、他人の商品等と混同を生じさせる場合にのみ不正競争行為に該当する。
著名表示冒用行為
  • 著名とは,周知よりもさらによく知られた状態であり,全国的に知られていることが想定される。
  • 他人の著名な商品等表示と同一のものだけでなく,類似するものを使用した場合にも著名表示冒用行為に該当することがある。

2013年12月6日金曜日

知財の基礎 条約

知的財産に関する条約
  • パリ条約
  • 特許協力条約(PCT)
  • ヘーグ協定
  • マドリット協定議定書
  • ブタペスト条約
  • ベルヌ条約


パリ条約

パリ条約による優先権
  • パリ条約による優先権を主張して,外国に特許出願をすることができる期間は,最先の特許出願の日から12カ月である。
  • 同盟国の国民は,優先権の主張の基礎となる第一国の特許出願を,自国の特許庁ではなく,他の同盟国の特許庁へ出願することができる。
     
<事例>
化学品メーカーX社は,発明Aについて平成24年2月に特許出願Pを行ったが,発明Aに係る製品が輸出される可能性が出てきたことから,特許出願Pに基づいて,パリ条約による優先権の主張を伴う国際出願Qを平成24年12月に行った。
各指定国への国内移行手続が行える期限:  平成26年8月



特許協力条約(PCT)に基づく国際出願
  • 日本国の特許庁に対して,英語により出願書類を作成し,国際出願することができる。
  • 出願人は,原則として優先日から30カ月を経過する時までに各指定官庁に対し,所定の翻
    訳文を提出しなければならない。
  • 国際調査機関の書面による見解は,国際調査報告同時に作成される。
  • 国際調査報告は,出願人及び国際事務局に送付される。
  • 国際出願には,少なくとも,明細書及び請求の範囲と外見上認められる部分が含まれていなければならない。
  • 国際出願することによって,多数国に効力を及ぼす一の特許権を得ることができない。 国際出願をした後,指定国において権利化を望む場合には,所定の期間内に指定国ごとに国内移行手続を行う必要がある。
  • 国際出願をした後,国際予備審査を望む場合には,国際予備審査機関に対して国際予備審査請求を行う必要がある。
  • 国際出願について国際調査報告を受領した場合でも,請求の範囲について補正をすることができる。
  • 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願に関して,国際出願日として認められる日は、受理官庁が,国際出願を受理した日
  • 指定国を米国とした特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を先の出願として,わが国にパリ条約による優先権主張を伴う特許出願をすることができます。
  • 日本の特許庁を受理官庁として特許協力条約(PCT)に基づく国際出願をする場合,指定国に日本を含めることはできます。
  •  国際出願した後,原則として優先日から1年6カ月後に国際公開が行われますが,国際事
    務局に請求することにより国際公開の時期を早めることもできます。

知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)
  • TRIPS協定では,内国民待遇の原則が採用されている。
  • TRIPS協定では,知的所有権に関する紛争解決について規定している。


国際出願における国際調査
  • 国際調査は,明細書及び図面に妥当な考慮を払った上で,請求の範囲に基づいて行われる。
  • 各国際出願は,国際調査の対象とされる。

<事例>

精密機器メーカーであるX社は,プリンタに関する発明について平成24年3月に日本において特許出願Pを行い,その 発明に係るプリンタを現在製造販売している。ところが,中国において平成25年1月ごろから早くもそのプリンタの模造品が出回っている事実を,X社は入手 した。
  • 特許出願Pに基づいてパリ条約による優先権を主張して,できるだけ早く中国に特許出願すべきである。このように直接中国に出願することにより,できるだけ早期に権利化すべきと考えられるからである。

マドリッド協定の議定書に基づく特例

2013年12月5日木曜日

知財の基礎 著作権法

著作権法に規定する目的
 著作権法は,「著作物並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し 著作者 の権利及びこれに隣接する権利を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ, 著作者 等の権利の保護を図り,もつて 文化の発展 に寄与すること」を目的としている。

「著作物」
  • 著作物とは,「 思想又は感情創作的に表現したものであって, 文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」であると,著作権法には定義されている。
  • アイデアは,著作物として保護されない。
  • 著作物は,創作性がなければならないため,表現に選択の幅があるほど著作物となる可能性が高い。
著作権の譲渡
  • 契約によって著作権を譲り受けた場合,著作権の譲渡の登録を文化庁に行わないと,第三者に著作権の譲渡があったときに対抗できない。
譲渡契約の対象となる権利
意匠登録を受ける権利
× 同一性保持権
公衆送信権


著作者人格権
  • 同一性保持権は,著作者の意に反して,その著作物とその題号について,変更や切除などを行うことを禁止できる権利である。
  • 著作者人格権は,一身に専属するため,譲渡することはできない。
  • 著作者人格権を侵害する行為でなくても,著作物の使用が著作者の名誉や声望を害する場合には,著作者人格権の侵害とみなされる場合がある。
  •  

データベースの著作物と認められるための要件
  • データベースの体系的構成によって創作性が認められるものであること
  • データベースの情報の選択によって創作性が認められるものであること
※ データベースの情報が電子計算機によって機械的に検索可能であることは要求されない。

著作者
  • 著作物を創作した者は,その著作物の著作者となる。
  • 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物
    の著作者は,その作成の時に別段の定めがない限り,その法人等となる。
  • 映画の著作物の著作者には,その映画の著作物において複製された小説の著作者が含まれない。


映画の著作者になり得る者
  • 映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与したプロデューサー
  • 映画の著作物の製作に参加することを約束した映画監督 

※ 映画の著作物の脚本を執筆した脚本家はなれない。

 著作権の侵害
  • 他人の著作物の全体ではなく,一部だけをそのまま利用して作品を創作した場合であっても,その一部に創作性があれば,著作権の侵害となる。
  • 他人の著作物と本質的特徴を同じくする作品を,たまたま創作してしまった場合であっても,その他人の著作物の存在を知らなかったならば,著作権の侵害とならない。
著作権が侵害された場合に権利者がとることができる対応
  • 名誉回復措置請求
  • 不当利得返還請求


著作物を引用するための要件
  • 引用される著作物が公表されていること
※ 「引用される著作物の著作権者に通知すること」や「引用される著作物が営利目的のものでないこと」は不要
※ 他人の著作物を引用して利用する場合,その著作権者の承諾を得る必要はない。


二次的著作物
  • 原著作物の翻訳,映画化,編曲など,原著作物に新たな創作性を加えることにより創作された著作物は,二次的著作物となる。
  • 原著作物の権利者から許諾を得て創作された二次的著作物を利用する場合,その二次的著作物の権利者から許諾を受けれても原著作物の権利者からの許諾は必要である。
  • 著作権者に無断で二次的著作物を創作したら,著作権の侵害となる。

複製権
  • 著作権者は,著作物の複製物を譲渡により公衆に提供する権利を有している。 
  • 二次的著作物の著作権者は原著作者の許諾なく二次的著作物の複製をすることができない。
 <事例>
出版社X社は,漫画家丙が描いた漫画Bの出版を企画しています。漫画Bについて出版権の設定を受けたいのですが,丙は漫画Bの翻案権を丁に譲渡しています。この場合,X社は誰から出版権の設定を受けることができるのでしょうか。
  • 出版権は,複製権を有する者でなければ設定することができません。丙が複製権を有しているので,丙から出版権の設定を受けることができます。

著作権の存続期間
  • 法人名義の著作物には,その著作物の公表後,50年経過すると権利が消滅する著作物と70年経過すると権利が消滅する著作物とがある。
  • 映画の著作物の著作権の存続期間は,創作後70年以内に公表されないときは,創作後70年を経過したときに満了する。
 著作隣接権
  • レコード製作者の著作隣接権は,レコードに収録されている音を最初に録音して固定した者に発生する。
  • 放送事業者及び有線放送事業者の著作隣接権の存続期間は,その放送又は有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過したときに満了する。
実演家が有する権利

× 公表権
○ 譲渡権
○ 送信可能化権
○ 録音権及び録画権
○ 貸与権
  • 実演家は,期間経過商業用レコードを除いて,実演が録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する貸与権を有する。
  • 実演家がパブリックドメインとなった楽曲を演奏した場合でも,その実演に著作隣接権は発生する。

著作権法における登録制度
  • 著作物の第一発行年月日を登録しておくことにより,その日にその著作物の最初の発行(公
    表)があったものと推定される。
  • 無名又は変名で公表した著作物について,著作者の実名を登録しておくことにより,その者が著作物の著作者であると推定される。


著作隣接権の存続期間
  • 放送事業者が有する著作隣接権は,その放送が行われた日の属する年の翌年から50年後に消滅する。
<事例>
甲と乙は,2000年5月1日に楽曲を共同で創作し,2000年8月31日に当該楽曲を発表した。その後,甲は2008年12月5日に亡くなり,乙は2012年2月15日に亡くなった。
当該楽曲の著作権の存続期間が満了する時: 2062年12月31日

<事例>
自分のお気に入りの小説家が書いた10作品が収録された短編小説集について,いずれの場合にも,この本の著作権者等の許諾は得ていないものとする。
  • 自宅のプリンタについていたスキャナー機能を使ってすべてのページについてデジタルデータにして,タブレット型パソコンに入れていつでも読めるように持ち歩くことは、著作権が制限され,著作権を侵害する可能性が低いため、許される。
  • 子供の誕生日会で,子供の友人も10人ほど遊びに来るので,そのときに私がこの小説を朗読するには、著作権が制限され,著作権を侵害する可能性が低いため、許される。
  • これらの10作品のうちの1作品について、わずか8ページほどで完結する話としても、自分のホームページに全文を掲載して紹介することは、許されない。 著作権を侵害する可能性が高い。

<事例>
画家甲は,東北地方の冬の海の風景を描いた絵画Aを完成させ,「冬の海」という作品名をつけた。絵画Aを見た乙は絵画Aをたいへん気に入ったため,甲から購入した。
  • 問題(トラブル)が発生する可能性が低いもの
    • 乙が甲から絵画Aを購入した価格よりも高い価格で,乙が丙に絵画Aを売ること 
  • 問題(トラブル)が発生する可能性が高いもの
    • より印象的な作品名にするために,乙が作品名「冬の海」を,作品名「ある冬の日」に変えること
    • 絵画Aを購入したことを知らせるために,乙が絵画Aを写真に撮り,その画像を自分のブログに掲載すること


<事例>
バンドXのメンバーである甲と乙は,共同で作詞と作曲を行い,曲Aを創作した。
  • 甲が有する著作権の持分を丙に譲渡しようとする場合,甲は乙の許諾を得なければ丙に譲渡することができない。 
  • バンドXのファンである丁が無断で丁のブログで曲Aを流している場合,甲は単独で丁に差止請求をすることができる。
  • 乙が死亡し,乙には相続人がいない場合,乙が有する著作者人格権は,自動的に甲に移転されない。
<事例>甲は,自らが開設しているブログを開くと音楽や音が流れるようにしたいと考えた。そこで,自分が所有している音源の中から適当なものを選び,データをサーバーにアップしようとしている。

 甲が自作した曲を演奏し,それを甲が録音したもの
× プロの演奏家が演奏した有名なベートーベンの音楽を甲が録音したもの
× 色々な動物の鳴き声を収録した市販のCDを友人から借りて甲が複製したもの


<事例>
パ ソコンメーカーであるX社は,新製品の販売開始にあたり,テクノロジーと日本の伝統文化の融合をイメージしていた。そこで,X社の法務部の部員甲は,ウェ ブサイトの新製品の紹介ページや製品カタログの表紙には,古い寺院の外観や古い彫刻をカメラマン乙に依頼して撮影してもらった写真Aを採用したいと考え た。
  • 寺院の写真がいまだ撮影されていなかった場合,撮影前に寺院に立ち入り許可をとるべきである。
  • カメラマン乙が写真Aの利用について承諾しているとしても,契約書などの文書を交わし,権利義務について明らかにしておくことが望ましい。
<事例>
自社のヒット商品が紹介された新聞の記事について。いずれの場合についても,この新聞の著作権者等の許諾は得ていないものとする。

  • 自社の商品が新聞に取り上げられたことを宣伝したいと思うかもしれません。この場合、自社の商品に関する記事だからといって,この記事の画像データを自社のホームページに掲載してしまうと、著作権の侵害となります
  • 商品の性能を高めるため,この商品を改良することを計画しています。研究開発を目的として、この記事を,研究開発部門のメンバーに参考資料として配付するため,コピーしてしまうと、著作権の侵害となるため、問題です。
  • 家族と一緒にこの記事を見るためにコピーしても  「私的使用」にあたり,著作権の侵害となりません


2013年12月4日水曜日

知財の基礎 商標法

商標法の保護対象と登録要件

商標法の目的
  • 商標法の目的は,商品やサービスの名称の登録を通じて,商品やサービスに蓄積された業務上の信用 を保護することにあります。ここで,商標とは,文字,図形,記号もしくは立体的形状もしくはこれらの結合又はこれらと色彩 の結合であって,業として商品を生産等をする者が,その商品について使用をするもの,もしくは 業として役務を提供等をする者が,その役務について使用をするものです。

<事例>
化粧品などのブランドメーカーX社は,商標Aを通じて,業務上の信用が化体し,世界的な知名度の確立に成功した。X社の同業他社は,X社の業務上の信用を利用して,利益を得ようと商標Aに類似する商標や混同する商標について商標登録出願する場合がある。かかる場合には,他人の周知の商標 と同一又は類似の商標をその商品等と同一又は類似の商品等について使用をする商標に該当することを理由として,商標登録出願が拒絶される。ここで,この 周知の商標かどうかについては,商標の審査基準によれば, 広告宣伝の回数,商標が使用されている期間や地域等に基づいて判断されるとされている。

商標法の保護対象

○ 記号と立体的形状の結合した商標
○ 文字と複数の図形の結合からなるもの
○ 記号のみからなるもの
× 色彩のみからなるもの
× 文字と音の結合した商標
× 図形と匂いの結合した商標
× ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

商標権の登録等

商標登録出願について, 登録査定の謄本が送達された後に,所定期間内に登録料を納付することにより設定登録され,商標権が発生します。また,登録料は, 5年分毎に分割して納付することもできます。さらに,他の知的財産権と異なり,商標権者は申請により存続期間を更新することができ,その更新手続をすることにより,半永久的に権利を存続させることも可能です。また,更新の申請のときに,登録商標を使用していることが要件とされません


<事例>
近々,「XYZ株式会社」という社名の法人を設立する予定の甲は,商標登録出願をすべきか否かを検討している。
  • XYZ株式会社の商品カタログの表紙において,「XYZ」の文字を大きく表示する予定であり,同社は商号登記を行っているが,商標登録出願をする必要性がある。
  • XYZ株式会社は,商品「被服」について「ABC」のブランド名を使用する予定であり,その店舗販売等に際しては,そのブランド名「ABC」が印刷された「包装用袋」が使用されるが,「包装用袋」を指定商品として,商標「ABC」について商標登録を受ける必要はない。
  •  XYZ株式会社が販売する予定の商品パッケージには独特の形状のものを使用する予定であるが,そのパッケージの形状のみからなる商標についても,商標登録を受けることはできる。

<事例>X社の知的財産部の部員甲は,新商品に使用する商標Aについての先行商標調査を行ったところ、X社と競合するY社が,商標Aと類似する登録商標Bを所有していることが判明した。
  • 登録商標Bに係る指定商品とX社が販売する商品とは商品区分が異なっているが,商標Aを選択する上では詳細に当該指定商品との類否関係を検討する必要がある
<事例>
 食品メーカーX社の知的財産部の部員甲が,新商品に表示する商標についての商標登録出願を検討している。
  • 外国の有名な化粧品メーカーY社で販売されている化粧品の著名なブランドMの語感が新商品のイメージと合い,また,Y社はブランドMについて日本に商標登録出願をしていないが,ブランドMについて新商品を指定商品とする商標登録出願をしても登録を受けることはできない。


商標登録を受けるための手続

商標登録出願
  • 他人の著名な芸名を含む商標は,その他人の承諾を得ている場合には,商標登録を受けることができる。 
  • 役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標は,商標登録を受けることができない。
  • 新商品の販売時期が未定であっても,販売することが確実な場合には商標登録出願をすべきである。


商標登録出願の審査又は手続
  • 商標登録出願に係る商標は,商標登録されるまでに公開されることがある。
  • 商標登録出願については,出願審査請求しなくても実体審査が行われる。
    文字と図形から構成される商標について商標登録出願をしたときは,その出願に係る商標を文字部分と図形部分とに分割して,新たな商標登録出願とすることができない
  • 審査官は,政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは,商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。

商標権の管理と活用

商標権の発生及び効力
  • 商標を使用する意思がなければ,商標登録を受けることはできない。
使用権
  • 専用使用権の設定は,登録しなければ効力は発生しない。

商標権の管理
  • 商標権の効力は,指定商品普通名称普通に用いられる方法で表示する商標に及ばない。
  • 登録商標は不正使用されていても,その事実をもって当然に商標権が失効することはない。
<事例>
家電メーカーX社は,登録商標Aについて指定商品Bとする商標権を有している。
  • 登録商標Aが指定商品Bの普通名称となった場合には,他人が登録商標Aを使用することを禁止できなくなる場合がある。

商標権の使用許諾契約
  • 口頭による登録商標の使用を認める旨の約束は,書面による契約書が作成されていなくとも,有効である。
  • 商標権使用許諾契約書の契約当事者の欄に,実印ではなく認印が押印されていても有効でる。

<事例>
米国の菓子メーカーX社は,日本に法人を設立し,自社商品であるドロップキャンディに「プチ☆ポム」という名称を付して日本での販売を開始した。一方,老舗の日本の菓子メーカーY社は,指定商品を洋菓子として,登録商標「プチ☆ポム」の商標権を有している。
  • Y社が日本国内で3年間継続して登録商標「プチ☆ポム」を使用していない場合,X社は当該商標登録の取消を求めることができる可能性がある。
  • X 社は日本のY社の登録商標と偶然同じ標章を使用していたのであるから,何らY社のビジネスを阻害する意図はなかった。このような場合であっても、Y社 が,X社がドロップキャンディ「プチ☆ポム」を日本で販売することを認めなければならない理由はなく,X社から申出があっても,ライセンス交渉等に応じる 必要はない。
  • X社とY社との交渉の結果,Y社はX社に,登録商標「プチ☆ポム」に係る商標権の全範囲について,専用使用権を設定した。専用使用権が設定登録された後であれば,Y社は商標権者であるとしても,自由に登録商標を使用することができない。


商標権の侵害と救済

<事例>
文房具メーカーX社は,マークMに係る商標Aについて指定商品Bとする商標権を取得した。当該商標権について権原を有しないY社の使用については・・・
  • Y社は,商標Aを,指定商品Bと類似する商品Cについて使用するとX社の商標権の侵害となる。
  • Y社は,商標Aを,指定商品Bと類似する役務Eについて使用するとX社の商標権の侵害となる。


商標法に規定されている制度
  • 出願公開制度
  • 存続期間の更新登録制度
※ 出願審査請求制度は規定されていない。


商標法に規定されている審判
  • 同一の商標登録に対して,商標登録無効審判と,不正使用取消審判とを請求することができる。
  • 拒絶査定を受けた商標登録出願人は,拒絶査定の謄本の送達日から3カ月以内であれば,拒絶査定に対する審判を請求することができる。  
  • 不使用取消審判は,利害関係人でなくても請求することができる。
  • 商標権者は,商標権を侵害する者に対する信用回復措置の請求をすることができる。 



2013年12月3日火曜日

知財の基礎 意匠法

意匠法の保護対象と登録要件

意匠登録を受けることができる可能性のある意匠
× 意匠登録出願の出願日の1カ月前に外国で公知となった他人の意匠に類似する意匠
× 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
意匠登録出願の出願日の3カ月前に自ら日本国内で頒布した刊行物に記載した意匠

○ さい銭箱
× 洗剤液
× マンション
○ ロボット・・・自動車の生産ライン用のロボットのみならず,踊る動きをするだけの玩具用のロボットについても,工業上利用できる物品として,意匠登録の対象となります。

○ 物品の機能を確保する形状を有する意匠
× 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
× 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠

意匠登録を受けるための手続
  • 意匠登録出願は物品に係る創作についてなされたものであることから,技術的思想の創作を保護対象とする特許出願へ出願変更することが認められている。 
  • 密意匠としての請求をしていない意匠登録出願であっても,意匠登録前に特許庁から公開されることはない。
  • 意匠権の設定が登録されると,その登録内容を記載した意匠公報が発行される。
特殊な意匠登録出願
  • 部分意匠
  • 動的意匠
  • 組物の意匠
  • 秘密意匠
    • 意匠は登録後に意匠公報に掲載されて第三者に公表されます。ですから、登録よりも販売時期が遅れる場合などには、意匠が模倣されて,出願人が不利益をこうむるおそれがあります。 そこで意匠法は秘密意匠制度を設け、意匠登録から3年以内に限り、登録意匠を秘密にすることを認めています。

<事例>
電機メーカーX社は,携帯音楽プレーヤーについて意匠登録出願の準備をしているが,開発の遅れにより製品の発売が大幅に遅れそうなことがわかった。斬新なデザインであり,意匠登録出願後に,意匠登録され公開されることにより他社にデザインが知られるのを防ぎたい
この場合の適切な対応は、
  • 設定登録料の納付時に,秘密期間を1年とする秘密意匠の請求をする。
  • 意匠登録出願と同時に秘密期間を3年とする秘密意匠の請求をする。
※ 意匠登録出願について,登録査定の謄本の送達後に,設定登録料の納付期間を1年とする納付延長の請求をしても意味がない。

意匠権の管理と活用

意匠権の発生

存続期間
  • 意匠権の存続期間は,登録日から20年であって,その存続期間の延長を請求することができない
意匠権の活用

意匠権者の意思に基づくライセンス
  • 専用実施権の設定や通常実施権の許諾


<事例>
文房具メーカーX社は,ボールペンについて意匠権を有している。ライバルメーカーY社は,X社の登録意匠と類似する形態をシャープペンシルの形態に転用することを検討している。
  •  X社の登録意匠と類似する形態を,X社の登録意匠に係る物品と類似するシャープペンシルの形態に転用すると,X社の意匠権を侵害する可能性が高いので,Y社はX社から通常実施権の許諾を受けるべきである。

意匠権者の意思に基づかない通常実施権

意匠権の譲渡

意匠権の侵害と救済

意匠権者側

確認→警告→差止・損害賠償

<事例>
X社は携帯電話Aについて意匠権を有している。知的財産部の部員甲は,携帯電話Aと同一のデザインのおもちゃの携帯電話BをY社が販売していると,営業部の部員乙より連絡を受けた。なお,「携帯電話」と「おもちゃの携帯電話」は非類似物品とする。
  • 意匠権の効力範囲は、登録意匠に係る物品と同一又は類似の範囲で,かつ,その形態と同一又は類似の範囲をいいます。
  • 携帯電話Aは意匠登録されてるので、意匠権に基づいて、意匠権の効力範囲における第三者の業としての実施に対して,差止請求損害賠償請求ができます。
実施者側

意匠原簿で確認→意匠登録に無効理由がないか確認→意匠登録無効審判の請求 or 実施の中止

<事例>
食品メーカーX社は,新しいチョコレートを開発したところ,その外部の形状は,Y社が販売する万年筆と似た形状であった。Y社の意匠権を調べたところ物品を万年筆としたものだった。なお,「チョコレート」と「万年筆」は非類似物品である。
  • チョコレートとは,物品が非類似であり,Y社の意匠権の効力は及びません。

2013年12月2日月曜日

知財の基礎 実用新案法

実用新案法の概要

  • 特許法で定義された発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であるのに対して、実用新案法で定義された考案は「自然法則を利用した技術的思想の創作」とされ、発明と考案では創作の程度に違いがあります。
  •  特許制度は権利の安定性重視の観点から審査主義を採用しているのに対して、実用新案制度では、早期登録の観点から無審査主義を採用しています。
  • 実用新案登録出願は,新規性進歩性などの登録要件について実体審査がされないので早期に実用新案権が設定登録される。また,その存続期間は,出願日から10年をもって終了する。

<事例>
ゴルフクラブメーカーX社は,新規なゴルフクラブAを開発して実用新案登録出願をした。ゴルフクラブAは,グリップの形状に特徴があり,これまでにない新しいデザインなので意匠権として保護すべきではないかとの意見があり,X社の知的財産部で検討を行うことになった。
  • グリップの形状に特徴があるので,ゴルフクラブ全体の形状の他にグリップの部分について部分意匠として意匠登録出願をした方がよいでしょう。
  • 物品のデザインについては,不正競争防止法により保護を受けることができることがあります。不正競争防止法により保護を受けるためには,意匠登録出願をしていることは要件となりません。

実用新案権を行使するために必要な書類
  • 特許庁の審査官が作成した実用新案技術評価書


2013年12月1日日曜日

知財の基礎 特許法

特許法の目的と保護要件

特許を受けることができる発明
 ○ コンピュータゲーム用のプログラム
 ○ 病院でのみ用いられる人間の癌の診断装置
 × 急カーブを安全に曲がるための自転車の運転方法


特許要件


産業上利用することができる発明
  • 特許を受けることができる発明は,産業上利用できる発明である必要がある。
  • 工業的に生産することができない物でも,産業上利用することができる発明には該当する。
  • ここでいう産業には,物を生産する製造業や建設業等といった工業だけでなく,飲食業や金融業等のいわゆるサービス業も含まれる。
  • 人間を手術する際に使用する手術用器具は,産業上利用することができる発明に該当する。

 新規性

 新規性を喪失した発明
  • 特許出願前に外国においてのみ公然知られた発明は,新規性を喪失した発明である。
  • 特許出願前に電気通信回線を通じて利用可能となった発明であっても,新規性を喪失した発明とならないことがある。
発明の新規性喪失の例外規定
  • 公知となった発明であっても,その発明が公知となった日から6カ月以内に特許出願した場合には,設定登録される場合がある。
  • 特許出願人がした特許出願に係る公開公報に掲載された発明について,新規性喪失の例外規定の適用を受けることができない。
  •  特許出願前に中国国内において,中国人が中国語によって中国人のみを対象とした公開セミナーにおいて発表した発明は,わが国における特許出願前にわが国国内において公知となっていない場合であっても,新規性がなく特許を受けることはできません。
<事例>
  • 甲は独自に創作した発明Aについて,平成24年10月10日午後3時に特許出願Pをした。 
  • 乙は独自に創作した発明Aと同じ発明について平成24年10月10日午前11時に学会で発表を行った。
    • 乙の行為により特許出願Pが拒絶される。特許出願Pの出願時点が,乙の行為よりも時間的に遅く,特許出願Pは新規性を喪失するため。
  • 丙は,独自に創作した発明Aと同じ発明について平成24年10月1日に中国において中国語で新聞紙面上に発表していた。
    • 丙の行為により特許出願Pが拒絶される。 丙の行為により特許出願Pは新規性を喪失するため。
  • 丁は独自に創作した発明Aと同じ発明について平成24年4月20日に特許出願Qを行い,早期審査を経て登録され,平成24年10月22日に特許掲載公報が発行された。
    • 丁の行為により特許出願Pが拒絶される。 特許出願Pに対して,特許出願Qは先願の地位を有するため
先願主義
  • 同じ発明について,異なった日に二以上の特許出願があった場合は,最初に特許出願をした者だけに特許権が認められる。
  • 全く同じ発明について異なった日に特許出願がされた場合には,特許庁長官から出願人に対して協議をするように命令が出され,協議の結果定められた出願人が特許を受けることができます。ただし,協議が成立しなかった場合は,特許は最初に出願をした者に認められることになります。

特許出願の手続

特許出願の必要書類

1. 願書  出願人・発明者に関する住所・氏名を記載する書面です。
2. 明細書  発明の内容を詳細に説明するための書面です。
3. 特許請求の範囲  特許を受けたい発明の内容を簡潔かつ明確に記載する書面です。 請求項に区分して記載します。 特許請求の範囲に記載された発明の内容が、権利の範囲を定めることになります。 もっとも重要な書面です。
4. 要約書  発明の概要を記載する書面です。

※ 図面は必ずしも願書に添付しなくてもよい。


特許発明の技術的範囲
  • 特許発明の技術的範囲は,願書に添付した 特許請求の範囲 の記載に基づいて定めなければならない。

特許出願の出願審査請求
 出願から3年以内に審査請求をしなければ、審査されません。 審査されなければ特許になることはありません。 審査請求は、出願直後(公開前でも可)に行うことも可能です。また、早期に審査結果を得たい場合は、「早期審査請求」を行うことで、2、3ヶ月で審査結果を得ることも可能です。 早期審査請求を行うか、通常通りの審査請求にするかは、戦略的にとらえて選択する必要があります。
  • 出願審査請求した後に,出願審査請求を取り下げることはできない。
  • 特許出願に係る公開公報により,特許出願の事実を知った第三者は,出願審査請求することができる。

<事例>
甲は,特許出願Aについて,請求項の数を3とする特許出願をすることとし,特許出願時にあわせて出願審査請求をすることとした。この場合,出願時に支払うべき費用は,145,000(円)になる。
参考
特許出願料 15,000円
出願審査請求料 1件につき118,000円に1請求項につき4,000円を加えた額

特許権の設定登録前における特許出願に関する手続
  • 拒絶査定不服審判の請求
  • 拒絶査定不服審判の請求と同時に行うことができる手続として,訂正の請求がある。

拒絶理由通知

<事例>
電機メーカーX社の開発エンジニアである甲がしたテレビに関する発明Aについて,X社が特許出願Pを行い出願審査請求したところ,審査官から拒絶理由が通知された。

  • 甲がとり得る措置として,最も適切と考えられるものは、審査官の見解に対する反論を記載した意見書や,その意見の内容を立証するための実験証明書を提出することである。
  • 意見書は必ず提出しなければならないというわけではない。
  • 補正により新規事項を追加することは一切禁止されている。

その後,さらに拒絶査定の謄本が送達されてきた。
  • 拒絶査定は,審査の最終処分であるが,それに対して不服がある場合は,特許庁に対して拒絶査定不服審判を請求し,一定の範囲内で補正することもできる。
拒絶査定不服審判
1.拒絶査定不服審判を請求するにあたって検討すべきこと
 (1)審判請求の要否の検討について   
 (2)補正の検討について
 (3)分割出願の検討について
2.審判請求した場合の手続き   
(1)審判請求時に明細書等を補正した場合
(2)審判請求時に明細書等を補正しない場合

審決取消訴訟

特許権の管理と活用
  • 特許権は,設定の登録により発生する。

特許権等に対するライセンス契約 
  • 特許権者は,専用実施権を設定したときには,特許発明を実施できない。
<事例>
医薬品メーカーX社は,自社の特許製品と類似する胃薬Aが同業他社Y社から販売されているとの情報を得た。そのため,X社はY社に対して,特許権を侵害している旨を知らせる警告書を送付した。警告書を送付する目的はどれか。
  • 侵害訴訟を提起する可能性を示唆する目的
  • ライセンス契約の交渉をする目的

特許権の侵害と救済

<事例>
 電機メーカーX社の知的財産部の部員甲は,開発者乙とともに新たに販売を開始しようとしている製品Aが特許侵害をしていないかを調査していた。その結果,今回の調査で新たに発見した電機メーカーY社の特許権Pを侵害している可能性が高いことを発見した。
  • 特許権Pの出願日において,すでにX社では製品Aの生産の準備をしていたことを客観的に証明できるのであれば,製品Aの販売を開始しても問題はなさそうです

特許権を侵害するとの警告を受けた場合
  • 特許権がすでに存続期間の満了により消滅している場合でも,特許権の消滅前の実施行為に対して損害賠償請求を受ける場合がある。
  • 特許に無効理由がなく,特許掲載公報に記載されている特許権者が警告者と同一であっても,この警告者の権利行使が認められない場合がある。
<事例>
ソフトウエア開発メーカーX社に対して,同業他社のY社から,X社がインターネットを通じて販売しているコンピュータプログラムAがY社の特許権Pを侵害しているとして,コンピュータプログラムAの販売の中止を求める警告書が届いた。
  • X社が販売しているコンピュータプログラムAは,X社が独自に技術開発し,Y社による特許出願より前に,実施の準備をしていたので,X社は先使用による通常実施権を有する旨を回答する。
<事例>
X社が,Y社が製品Aを製造販売する行為が,自社の特許権を侵害していると考えている場合の、X社がとり得る措置
  • X社はY社に対して,実施料相当額を超える損害賠償請求ができる。
  • X社が差止請求訴訟を提起する場合には,事前にY社に対しX社が警告書を送る必用はない。
  • X社はY社に対して,Y社が製品Aの製造販売により得た利益額を超える不当利得返還請求をすることはできない。



 <事例>

通信機器メーカーの技術者甲は,自らの発明について特許出願(請求項の数は3)したところ,出願内容について補正することなく特許査定の謄本が送達された。特許権を発生させるために納付する必要がある特許料は8700円になる。

特許料(特許法第107条第1項)
各年の区分 金額
第一年から第三年まで 毎年二千三百円に一請求項につき二百円を加えた額
第四年から第六年まで 毎年七千百円に一請求項につき五百円を加えた額
第七年から第九年まで 毎年二万千四百円に一請求項につき千七百円を加えた額
第十年から第二十五年まで 毎年六万千六百円に一請求項につき四千八百円を加えた額


特許法に規定する手続の期間
  • 国内優先権の主張を伴う特許出願は,先の出願日から1年6カ月経過後に出願公開される。

<事例>
バイオベンチャー企業のX社は,平成21年2月にバイオ技術に関連する発明について特許出願Aをし,その出願は平成22年8月に出願公開がされたところ,出願公開公報を見たY社からライセンスの申入があった。そこで,X社は特許出願Aについて,平成23年1月に出願審査請求を行い,平成24年11月に特許査定がなされ,平成25年1月に設定登録がされた。
→ 特許出願Aに係る特許権の存続期間の終期は,平成41年2月

2013年11月30日土曜日

知財の基礎 全般

発明,考案の保護
  • 発明の技術情報営業秘密として管理することにより,その発明について不正競争防止法による保護を受けることができる。
  • 方法の考案について,実用新案法による保護を受けることができない
  • 天然物から人為的に抽出した成分について,特許法による保護を受けることができる。

2013年11月26日火曜日

特許権侵害訴訟

特許権侵害訴訟は原告側も被告側も通常業務以外にかなりのエネルギーが必要になります。 近年では、中小企業においても訴訟事件が増えてきました。

侵害を発見した場合は、確認、警告、差止・損害賠償という流れで対応します。侵害であると警告された場合は、「特許原簿で確認」→「特許で無効理由があるかを確認」→「特許無効審判の請求」又は「実施の中止」という流れで対応します。

ここでは,特許紛争を起こす側が留意すべき点について, 検討してます。

  • 警告状を出すべきか
  • 特許侵害といえるか?
    •  特許権の存在の確認
    •  クレームの確認
    •  対象製品・対象行為の特定
    •  クレームを侵害しているか
  • 勝てる見込み
    •  文言該当性
    •  立証可能性
    •  有効性
      • 特許発明が新規性・進歩性を有しない場合等には,特許無効審判が請求されると,特許が無効にされます(特123条)。
  • 訴訟の負担
    • 侵害者特許による反撃可能性
    • 費用
    • 時間
    • 不安定な法的状態
    • 評判の低下
  • 訴訟でできること
    • 特許が侵害されている場合,差止請求(特100条)と損害賠償請求(民709条)が主な手段となります。
  • 仮処分とは? 
    •  仮処分は,簡易・迅速な手続で,差止めを実現して相手方の競業行為を実質的に規制することができる手続ですので,訴訟戦略上重要です。
    •  仮処分の要件は,①被保全権利の存在、②保全の必要性 です。①については,本案の「1特許権が侵害されていること又は侵害されるおそれがあること」と同じです。 ②については,債権者(ここでは,特許権者)に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため差止めを必要とすると認められるかということです(民事保全法23条2項)。 具体的には,仮処分命令が発令されないことによる債権者の不利益と,仮処分命令が発令されることによる債務者(ここでは,侵害者)の不利益とが比較衡量して判断されます。 損害の立証が困難である場合(ex.債権者が値下げを余儀なくされる場合),債権者の実施品が主力製品である場合,債務者が債権者の損害を賠償するに十分な資力を有しない場合等の事情は,保全の必要性があると判断される方向に働きます。 
    • 差止めの仮処分のメリットは,簡易・迅速な手続で,本案とほとんど同じ内容の給付を実現することができることです。 そのため,「満足的仮処分(断行の仮処分)」とも呼ばれます。 
    • 仮処分のデメリットは,ほとんどのケースで,担保として保証金が必要となることです。 また,別途本案訴訟を提起するのが原則であり,提起しない場合には仮処分命令が取り消されるときもあります(民事保全法37条3項)。 
    • さらに,無効の蓋然性がある,均等論の主張を含む等,複雑な論点が予想される場合には,仮処分の迅速性の要請に適さないとして,取下げが勧告されることも少なくありません。 
    • 仮処分は,市場に極めて速いスピードで侵害品が氾濫し始めた場合に起こすのが伝統的な考え方ですが,最近では,差止めという強力な効果を早期に得ることができる方法であるため,仮処分提起により相手方を萎縮させて,早期の和解により実施料を獲得する手段としても用いることがあります。
  • 訴訟を避けて解決したい場合
    •  訴訟は,費用が高く時間がかかりがちであるというデメリットがあります。 また,訴訟は,公開の手続ですから(憲82条),紛争の当事者であることを公にしたくない場合(業界大手同士の紛争(業界に混乱を巻き起こす),公益的な主体(大学,金融機関等)の紛争)にも選択しづらい手段です。 このような場合,安価,迅速で非公開の手続として,調停や特許庁の判定があります。
  • 輸入品の場合
    •  侵害品が外国製品であり,個人輸入や小さな輸入代理店により,少しずつ,無数の輸入がなされるような場合には,一度日本国内に輸入されてしまうと,個々に侵害を問うことが事実上不可能になってしまいます。  このような場合には,関税定率法による輸入差止申立て(いわゆる「水際取締り」,「水際措置」)により,侵害品の輸入を差し止めることができます。 水際取締りがうまくできれば,国内での侵害排除措置を行う必要がなくなるので,有効な手段と言えます。  具体的には,特許権者は,自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に,税関長に対し,当該貨物の輸入を差止め,認定手続を執るべきことを申し立てることができます(関税法69条の13)。









2013年11月25日月曜日

特許権の要点2

特許権の活用

知的財産の活用として,ライセンスがあります。 技術の複雑化・高度化,特許の錯綜により,現在の特許ライセンスは,単純な契約では収まりきらないことも多くなりました。 ライセンス収入の極大化,収益の極大化を目指して,複雑なスキームを組むことも珍しくありません。 また,訴訟やライセンス以外にも,知的財産の活用の方法がいくつも考えられます。

ライセンス契約とは、自社の持つ特許や実用新案,意匠,商標,著作権等の知的財産を他社に使用させる契約のことです。 自社の知的財産をライセンスする側は「ライセンサー」と呼ばれ、ライセンスを受ける側は「ライセンシー」と呼ばれます。 このライセンサーとライセンシー間で、「ライセンスの対象」「利用の態様」「独占か非独占化」「期間」「金額」などの条件を定めなければなりません。

独占か非独占か
改良発明の取り扱い

ライセンス収入を得ることは「利益率の向上」「競合他社への競争力の維持」「開発リスクのヘッジ」など企業にとって大きなメリットとなります。












2013年11月24日日曜日

特許法の要点1

  • 特許法の目的: 発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること(1条)
  • 「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいいます(2条1項)。
    • 金融保険制度・課税方法などの人為的な取り決めや計算方法・暗号など自然法則の利用がないものは保護の対象とはなりません。
    • 発見そのもの(例えば、ニュートンの万有引力の法則の発見)は保護の対象とはなりません。
    • 創作は、高度のものである必要があり、技術水準の低い創作は保護されません。
  • 特許要件
    • 産業上利用できる、新規性、新規性喪失の例外、進歩性、先顧主義
  • 特許出願の手続
    • 願書
    • 明細書
    • 特許請求の範囲
    • 図面
    • 要約書
    • 当業者
    • 国内優先権
  • 国内優先権を主張するには、先の出願から1年以内に後の出願をしなければならない。 
    (1)出願
    出願するには、法令で規定された所定の書類を特許庁に提出する必要があります。 なお、我が国では、同じ発明であっても先に出願された発明のみが特許となる先願主義を採用していますので、発明をしたら早急に出願すべきでしょう。また、特許出願以前に発明を公表することはできるだけ避けることが賢明です。
    (2)方式審査
    特許庁に提出された出願書類は、所定の書式通りであるかどうかのチェックを受けます。 書類が整っていない、必要項目が記載されていない等の場合は、補正命令が発せられます。
    (3)出願公開
     出願された日から1年6月経過すると、発明の内容が公開公報によって公開されます。
    (4)審査請求
     特許出願されたものは、全てが審査されるわけではなく、出願人又は第三者が審査請求料を払って出願審査の請求があったものだけが審査されます。 審査請求は、出願から3年以内(注)であれば、いつでも誰でもすることができます。
    (5)みなし取り下げ(審査請求期間内に審査請求なし)
     出願から3年以内に審査請求のない出願は、取り下げられたものとみなされます。以後権利化することはできませんのでご注意下さい。
    (6)実体審査
     審査は、特許庁の審査官によって行われます。 審査官は、出願された発明が特許されるべきものか否かを判断します。 審査においては、まず、法律で規定された要件を満たしているか否か、すなわち、拒絶理由がないかどうかを調べます。
     主な要件としては以下のものがあります。
     1 自然法則を利用した技術思想か
     2 産業上利用できるか
     3 出願前にその技術思想はなかったか
     4 いわゆる当業者(その技術分野のことを理解している人)が容易に発明をすることができたものでないか
     5 他人よりも早く出願したか
     6 公序良俗に違反していないか
     7 明細書の記載は規程どおりか
     (7)拒絶理由通知
     審査官が拒絶の理由を発見した場合は、それを出願人に知らせるために拒絶理由通知書を送付します。
     (8)意見書補正書
     出願人は、拒絶理由通知書により示された従来技術とはこのような点で相違するという反論を意見書として提出したり、特許請求の範囲や明細書等を補正することにより拒絶理由が解消される場合には、その旨の補正書を提出する機会が与えられます。
    (9)特許査定
     審査の結果、審査官が拒絶理由を発見しなかった場合は、特許すべき旨の査定を行います。 また、意見書や補正書によって拒絶理由が解消した場合にも特許査定となります。
     (10)拒絶査定
     意見書や補正書をみても拒絶理由が解消されておらず、やはり特許できないと審査官が判断したときは、拒絶をすべき旨の査定を行います。
     (11)拒絶査定不服審判請求
     拒絶査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することができます。
    (12)審理
     拒絶査定不服審判の審理は、三人または五人の審判官の合議体によって行われます。 審判官の合議体による決定を審決といいます。 審理の結果、拒絶理由が解消したと判断される場合には特許審決を行い、拒絶理由が解消せず特許できないと判断される場合には、拒絶審決を行います。
     (13)設定登録(特許料納付)
     特許査定がされた出願については、出願人が特許料を納めれば、特許原簿に登録され特許権が発生します。 ここではじめて、特許第何号という番号がつくことになります。 特許権の設定登録後、特許証書が出願人に送られます。
    (14)特許公報発行
     設定登録され発生した特許権は、その内容が特許公報に掲載されます。
    (15)無効審判請求
     特許権が設定登録された後でも無効理由がある場合、何人も無効審判を請求することができます。
    (16)審理
     無効審判請求の審理は、三人または五人の審判官の合議体によって行われます。 審理の結果、特許に無効理由がないと判断された場合は、特許の維持の審決が行われます。 一方、特許に無効理由があると判断された場合は、特許無効の審決が行われます。
    (17)知的財産高等裁判所
     拒絶査定不服審判の拒絶審決に対して不服がある出願人、特許無効審判の審決に対して不服がある当事者は、知的財産高等裁判所に出訴することができます。

    2013年11月23日土曜日

    著作権⑥

    1.  権利侵害
      1. 侵害とみなす行為
        1.  輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
        2. 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、 頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為
      2. 著作権が「侵害」された場合の対抗措置
        1.  「民事」の対抗措置 
          1. あっせん
          2. 差止請求  著作権の侵害を受けた者は、侵害をした者に対して、「侵害行為の停止」を求めることができます。また、侵害のおそれがある場合には、「予防措置」を求め ることができます(第112条、第116条)。 
          3. 名誉回復等の措置の請求  著作者又は実演家は、侵害者に対して、著作者等としての「名誉・声望を回復するための措置」を請求することができます(第115条、第116条)。  例えば、小説を無断で改ざんして出版されたような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置がこれに当たります。 
          4. 損害賠償請求  故意又は過失により他人の権利を侵害した者に対して、侵害を被った者は、侵害による損害の賠償を請求することができます(民法第709条)。侵害を被っ た者は損害の額を立証しなければなりませんが、それを軽減するために、侵害による損害額の「推定」ができる規定が設けられています(第114条)。 
          5. 不当利得返還請求  他人の権利を侵害することにより、利益を受けた者に対して、侵害を被った者は、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には、その利益が残っている範囲で の額を、知っていた場合には、利益に利息を付した額を、それぞれ請求することができます(民法第703条、第704条)。  例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その出版物の売上分などの返還を請求できます。 
        2. 刑事の対抗措置
          1.  著作権の侵害は「犯罪行為」であり、権利者が「告訴」を行うことを前提として,「3年以下の懲役」又は「300万円以下の罰金」という罰則規定が設けられています(第119条第1号)。
    2. 条約
      1. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
      2. TRIPs協定
      3. 著作権に関する世界知的所有権機関条約
      4.  
         

    2013年11月22日金曜日

    著作権⑤ 出版権と著作隣接権

    1. 出版権
      1. 複製権者は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。 
        1. 出版権は、複製権者の承諾を得た場合に限り、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。
        2. 出版権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更若しくは消滅(混同又は複製権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
      2. 出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。  
    2. 著作隣接権
      1. 実演家
        1. 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)。 
        2. 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者。 
        3. 実演家の権利
          1. 氏名表示権
          2. 同一性保持権
          3. 録音権及び録画権
          4. 放送権及び有線放送権
          5. 送信可能化権
          6. 有線放送に対する報酬請求権
          7. 二次使用料を受ける権利
          8. 譲渡権
          9. 貸与権等    
      2. レコード製作者
        1. レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)
        2. レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者
        3. レコード製作者の権利
          1. 複製権
          2. 送信可能化権
          3. 二次使用料を受ける権利
          4. 譲渡権
          5. 貸与権等    
      3. 放送事業者
        1. 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信
        2. 放送事業者 放送を業として行う者
        3. 放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 再放送権及び有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. テレビジョン放送の伝達権  
      4. 有線放送事業者
        1. 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信
        2. 有線放送事業者 有線放送を業として行う者
        3. 有線放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 放送権及び再有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. 有線テレビジョン放送の伝達権  

    2013年11月21日木曜日

    著作権④ 著作権

    1.  著作権に含まれる権利の種類
      1.  複製権 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。 
        1. 楽譜やメロディーを暗譜(暗記)しても、楽曲の複製とはならない。
        2. レシピ自体をコピーすれば「複製」となるが、レシピどおりに料理を作っても、レシピの複製とはならない。なお、レシピに記載された「作り方(方法)」や「料理(文化的所産ではない。)は、著作物ではない。
      2. 上演権及び演奏権 
        1. 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。 
        2. レストランなど営利目的の場所での公衆(不特定多数又は特定多数)へ向けての楽曲の演奏は、その楽曲について「演奏権」の問題となり、「録音物」による再生も同様である。
      3. 上映権 
        1. 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
        2. 映画に限らず、あらゆる著作物について、それらのプロジェクター等を用いた映写は、「上映権」の問題となる。なお、放送・有線放送・インターネット等を用いた公に向けた「送信」が「公衆送信権」である。
      4. 公衆送信権 
        1. 著作者は、その著作物について、公衆送信自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。 
        2. たとえホームページにアクセスする者やダウンロードする者がいなくても、ホームページにアップした時点で公衆送信権の侵害となる。
      5. 公衆伝達権 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。 
      6. 口述権  
        1. 著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。 
      7. 展示権  
        1. 著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。 
      8. 頒布権  
        1. 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。 
        2. 頒布権は映画の著作物の複製物についてのみ認められる権利。映画以外の著作物については、譲渡権、貸与権に相当する。
      9. 譲渡権  
        1. 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつて は、当該映画の著作物の複製物を除く。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。 
      10. 貸与権  
        1. 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除 く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
      11. 翻訳権、翻案権等  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
      12. 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を 専有する。 
    2.  映画の著作物の著作権の帰属 
      1. 映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する
        1. 映画製作者=映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
    3. 私的使用のための複製  
      1. 著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用す ること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、その使用する者が複製することができる。 
        1. 町のダビング業者の所に設置されているセルフサービスの録音機器を使って、音楽CDを無断で複製することは、それが個人的に使う目的の複製であっても、著作権者及び著作隣接権者の了解が必要です。
      2. 翻訳、編曲、変形又は翻案 
      3. 作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示することはできない。
    4. 付随対象著作物の利用
    5. 検討の過程における利用
    6. 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用
    7.  図書館等における複製等
      1. 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(「図書館等」)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
        1. 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合 
        2. 図書館資料の保存のため必要がある場合 
        3. 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合
        4. 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるた めに当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用 いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の 用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒 体に記録することができる。
    8. 引用  
      1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報 資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する 旨の表示がある場合は、この限りでない。  
    9.  教科用図書等への掲載
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ず る学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下同 じ。)に掲載することができる。
      2. 前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    10. 教科用拡大図書等の作成のための複製等  
      1. 教科用図書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生徒の学習 の用に供するため、当該教科用図書に用いられている文字、図形等の拡大その他の当該児童又は生徒が当該著作物を使用するために必要な方式により複製するこ とができる。 
      2. 前項の規定により複製する教科用の図書その他の複製物(点字により複製するものを除き、当該教科用図書に掲載された著作物の全部又は相当部分を複 製するものに限る。以下この項において「教科用拡大図書等」という。)を作成しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知する とともに、営利を目的として当該教科用拡大図書等を頒布する場合にあつては、前条第二項に規定する補償金の額に準じて文化庁長官が毎年定める額の補償金を 当該著作物の著作権者に支払わなければならない。 
    11. 学校教育番組の放送等
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組 又は有線放送番組において放送し、若しくは有線放送し、又は当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として 自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、 及び当該放送番組用又は有線放送番組用の教材に掲載することができる。 
      2. 前項の規定により著作物を利用する者は、その旨を著作者に通知するとともに、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。  
    12.  学校その他の教育機関における複製等
      1. 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使 用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに その複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 
      2. 公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物 を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該 授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができ る。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。  
    13. 試験問題としての複製等  
      1. 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題と して複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとな る場合は、この限りでない。
      2. 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    14. 視覚障害者等のための複製等
      1. 公表された著作物は、点字により複製することができる。
      2. 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。 
    15. 聴覚障害者等のための複製等
      1. 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者 で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識 される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物 と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつて は当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、 当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式 による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
    16. 営利を目的としない上演等
    17. 時事問題に関する論説の転載等
      1. 新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを 除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域におい て受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力すること によるものを含む。)を行うことができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
    18.  政治上の演説等の利用
      1.  公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
      2.  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正 当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地 域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力 することによるものを含む。)を行うことができる。
      3. 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。
    19.  時事の事件の報道のための利用
      1.  写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。 
    20. 裁判手続等における複製
      1. 著作物は、必要と認められる場合には、その必要と認められる限度に おいて、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、 この限りでない。
        1. 裁判手続
        2. 立法又は行政の目的
        3. 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
        4. 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
    21.  行政機関情報公開法 等による開示のための利用
    22.  公文書管理法 等による保存等のための利用
    23.  国立国会図書館法 によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製
    24. 放送事業者等による一時的固定
    25. 美術の著作物等の原作品の所有者による展示
      1.  美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。
    26.  公開の美術の著作物等の利用
    27.  美術の著作物等の展示に伴う複製
      1. 美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第二十五条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。  
    28.  美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等
    29.  プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等
      1.  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。
    30. 保守、修理等のための一時的複製
    31.  送信の障害の防止等のための複製
    32. 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等
    33. 情報解析のための複製等
    34. 電子計算機における著作物の利用に伴う複製
    35. 情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用
    36. 複製物の目的外使用等
    37. 著作者人格権との関係: 著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。 
    38. 保護期間
      1. 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。   
      2. 著作権は、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。)五十年を経過するまでの間、存続する。
        1. 著作者が死亡した日の属する年の翌年から起算する。 
      3. 無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間の満了前にその著作者の死後五十年を経過 していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後五十年を経過したと認められる時において、消滅したものとする。  
      4. 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその創作後五十年以内に公表されなかつたときは、その創作後五十年)を経過するまでの間、存続する。 
      5. 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)を経過するまでの間、存続する。
      6. 継続的刊行物等の公表の時
      7. ベルヌ条約等の条約の加盟国で、その本国において定められる著作権の存続期間が第五十一条から第五十四 条までに定める著作権の存続期間より短いものについては、その本国において定められる著作権の存続期間による。  
        1.  
    39.  著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。 
      1. 保護期間が満了したとき。
      2. 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法 (明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条 (残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。 
      3. 著作権者である法人が解散した場合において、その著作権が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第二百三十九条第三項 (残余財産の国庫への帰属)その他これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
    40. 著作権の譲渡
      1. 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。 
        1. 複製権のみを譲渡することもできる。
      2. 著作権を譲渡する契約において、二次的著作物を創作するための翻訳・翻案権等(第二十七条)又は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(第二十八条)が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
      3. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限 
          1. 相続その他の一般承継による著作権の移転は、登録がなくとも第三者に対抗することができる。
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限 
    41. 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。  
    42. 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。 
      1. 利用許諾を与えても著作権者の地位には影響しないため、著作権者は、他人に利用を許諾した後であっても、その著作権を他人に譲渡することができる。
      2. 著作権譲渡と異なり、著作物の利用許諾は、独占的利用許諾の特約がある場合を除き、同時に複数の者に与えることができる。
    43. 著作権は、これを目的として質権を設定した場合においても、設定行為に別段の定めがない限り、著作権者が行使するものとする。 
    44. 登録
      1. 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。 
      2. 著作権者又は無名若しくは変名の著作物の発行者は、その著作物について第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録を受けることができる。 
      3. プログラムの著作物の著作者は、その著作物について創作年月日の登録を受けることができる。ただし、その著作物の創作後六月を経過した場合は、この限りでない。
      4. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限   

    2013年11月20日水曜日

    著作権③ 著作者人格権

    1. 著作者人格権は、著作者の人格的・精神的利益が保護されるという権利であって財産権ではない。
    2. 公表権: 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。  
      1. 著作者は、公表するか否か、いつ、どのような方法で公表するかについても、決定権を有する。
      2. 著作者は、その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合には、当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示することについて同意したものと推定される。したがって、著作者は、特約により著作権の譲受人による公表を不可とすることもできる。 
    3. 氏名表示権
      1. 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。
      2. 原著作物の著作者の氏名表示権は、二次的著作物についても及ぶ。 
      3. 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。  
        1. 例えば、伴奏者の人数、CDジャケットのデザイン上の制約、歌謡曲等の音楽のジャンルの関係上伴奏者の名前が省略されていることがありますが、レコード業界の長い間の慣行に照らして公正な慣行といえるのであれば、実演家の表示を省略されてもやむを得ないことになります。 
    4. 同一性保持権
      1. 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない。 
    5. 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。  
    6. 著作者人格権の一身専属性
      1. 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。 相続の対象ともならない。
      2. 出版社といえども、その目的を問わず、著作物に改変を加えることはできない。

    2013年11月19日火曜日

    著作権②

    1. 著作権の目的とならない著作物(法13条)
      1. 憲法その他の法令
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの 
      3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
      4. 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
    2. 著作者=「著作物を創作する者」(法2条1項2号)
      1. 監修者など実際に執筆や創作に関与していない者は著作者ではない。
    3. 著作者は、著作物を創作した時に自動的に「著作者」となり、その地位や権利を取得するのに登録その他特別な方式を必要としない。無方式主義。
    4. 著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代 えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。  
      1. 「推定」は反証できる。「みなす」は反証できない。
    5. 職務上作成する著作物の著作者: 法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除 く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等と する。
      1. ©マーク は通常の著作者表示の方法とはいえず、法人の場合には、正式な名称か周知の変名(有名な略称)を表示しなければ、著作者としての推定を受けられない。 
      2. 先生と生徒の間には職務著作の規定は適用されず、実際に論文を書いた生徒が著作者である。
      3. 従業員が起案して創作した著作物であっても、 法人その他使用者の発意に基づく著作物であるから職務著作となる。
      4. 独立して業務を行なう会社に委託した場合、当該受託会社の従業員の創作した著作物の著作者は受託会社(受託会社の職務著作)である。
    6. 映画の著作物の著作者: 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美 術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、職務著作の規定の適用がある場合は、この限りでない。  
      1.  小説家や俳優は、映画の著作物の著作者とはならない。

    2013年11月18日月曜日

    著作権①

    1. 著作権とは、「著作物を創作した著作者に独占的に認められる、著作物の利用に関する財産権」である。
      1. 個人の財産権は、憲法29条により保障される。
    2. 著作物の所有権が買主に移転しても、当然には(別途著作権移転の特約がない限り)、著作権は移転しない。
      1. 著作権は、知的財産権に属するが、主として産業上利用される権利ではないため、産業財産権ではない。
      2. 著作権は民法の特別法であるから、著作権に関する契約場面など著作権法に特に規定がない場合には、民法が適用される。
    3. 著作権法1条(目的)「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
      1. 著作権法では、侵害者に対する刑罰(懲役刑や罰金刑)についても規定している。
    4. 著作権も財産権であるから、その譲渡(売買や贈与)のほか、相続によって移転する。
    5. 著作権法においても契約は当事者間の合意のみによって成立するのであり(著作権法では、著作権の譲渡や利用許諾の方法を特に規定していないため)、著作権の譲渡契約や著作物の利用許諾契約も、当事者間の合意のみによって、合意が成立した時に、契約書など必要とせずに成立する(法61条、63条)。 
      1. 所有権と著作権は別個の権利であるから、所有者が所有物(動産)を質入れするのに、著作権者の承諾は必要ない。
    6. 著作権には「登記」という制度はないものの、「登録」の制度があり、著作権譲渡による著作権の移転は、「著作権移転の登録」をしなければ、第三者に対抗することができない(法77条)。
    7. 不当利得については著作権についても同様であり、例えば、利用許諾を与えていないのに著作物を利用して利益を受けた受益者に対し、著作権者は、不当利得の返還を請求することができる。
    8. 不法行為責任については著作権法においても同様であり、著作権等の侵害を理由として著作権者等が「損害賠償」や「名誉回復のための措置」を請求するには、侵害者側の「故意又は過失」を必要とする(著作権法115条、117条)。
    9. 著作物の要件
      1. 思想又は感情の表現であること
        1. 動物や機械による絵や写真は、人の思想や感情が創作的に表現されたものではなく、著作物ではない。
      2. 創作的なものであること
      3. 表現したものであること
      4. 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
    10. アンケートの集計結果や事務的な文書、論評を伴わない事実のみを伝えるニュースや記事等は、情報の有用性や作成労力に関わらず、著作物ではない(法10条2項)。
    11. 著作物の例示
      1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
      2. 音楽の著作物
        1. 楽譜上に音符等によって書かれていることは要件とされていない。「音」のみで表現された即興演奏や即興歌唱、打楽器のリズムも音楽の著作物に含まれる。
      3. 舞踊又は無言劇の著作物
      4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
        1. 幼稚園児の描いた絵であっても、人の手による創作的な表現物であるから美術の著作物である。 
      5. 建築の著作物
        1. 著作物となり得る建築物は、全ての建築物ではなく、宮殿や寺院など美的要素を含む芸術的価値のある建築物(歴史的価値は問わない。)である。
      6. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
      7. 映画の著作物
        1. 人が関与していない防犯カメラの映像は、その内容に関わらず映画の著作物ではない。 
        2. 父親が撮影したホームムービーの映像は、通常、被写体やアングルの選定に創作性が認められ、かつ、ディスク等に固定されており、映画の著作物である。
      8. 写真の著作物
      9. プログラムの著作物
        1. 文字や文法が著作物とはされないのと同様に、プログラムを作成するために用いられるプログラム言語、規約(プロトコル)、解法(アルゴリズム)には、独立した著作物としての保護が及ばない(法10条3項)。
    12. 二次的著作物とは、基となる他の著作物A(「原著作物」)に「創作的な変更等」を加えて、新たにBとして創作された著作物のことであり、著作権法においては、二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作された著作物をいうと定義されている(法2条1項11号)。 
      1. ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件 最判昭和53年9月7日
      2. 小説のイメージのみを利用し、表現部分を利用していない楽曲は、小説の二次的著作物とはならない。
    13. 編集著作物とは、著作権法においては、編集物(データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものと定義されている(法12条1項)。
      1.  選択したなら配列に工夫がなくても編集著作物。
    14. データベースとは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成 したもの」である(法2条1項10の3)。 「データベースの著作物」とは、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」である(法12条の2第1項)。
    15. 共同著作物=「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(法2条1項12号)
    16. 保護を受ける著作物(法6条)  
      1. 日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物 
      2. 最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたものを含む。) 
        1. 外国人の著作物であって、最初に日本国内で発行されたものでなくとも、最初の発行日から30日以内に日本国内で発行され又は同じ条約加盟国の国民の著作物であれば、日本の著作権法の保護対象となる。
      3. 前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

    2013年11月17日日曜日

    著作権の要点

    1. 著作権とは、「著作物を創作した著作者に独占的に認められる、著作物の利用に関する財産権」である。
      1. 個人の財産権は、憲法29条により保障される。
    2. 著作物の所有権が買主に移転しても、当然には(別途著作権移転の特約がない限り)、著作権は移転しない。
      1. 著作権は、知的財産権に属するが、主として産業上利用される権利ではないため、産業財産権ではない。
      2. 著作権は民法の特別法であるから、著作権に関する契約場面など著作権法に特に規定がない場合には、民法が適用される。
    3. 著作権法1条(目的)「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
      1. 著作権法では、侵害者に対する刑罰(懲役刑や罰金刑)についても規定している。
    4. 著作権も財産権であるから、その譲渡(売買や贈与)のほか、相続によって移転する。
    5. 著作権法においても契約は当事者間の合意のみによって成立するのであり(著作権法では、著作権の譲渡や利用許諾の方法を特に規定していないため)、著作権の譲渡契約や著作物の利用許諾契約も、当事者間の合意のみによって、合意が成立した時に、契約書など必要とせずに成立する(法61条、63条)。 
      1. 所有権と著作権は別個の権利であるから、所有者が所有物(動産)を質入れするのに、著作権者の承諾は必要ない。
    6. 著作権には「登記」という制度はないものの、「登録」の制度があり、著作権譲渡による著作権の移転は、「著作権移転の登録」をしなければ、第三者に対抗することができない(法77条)。
    7. 不当利得については著作権についても同様であり、例えば、利用許諾を与えていないのに著作物を利用して利益を受けた受益者に対し、著作権者は、不当利得の返還を請求することができる。
    8. 不法行為責任については著作権法においても同様であり、著作権等の侵害を理由として著作権者等が「損害賠償」や「名誉回復のための措置」を請求するには、侵害者側の「故意又は過失」を必要とする(著作権法115条、117条)。
    9. 著作物の要件
      1. 思想又は感情の表現であること
      2. 創作的なものであること
      3. 表現したものであること
      4. 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
    10. アンケートの集計結果や事務的な文書、論評を伴わない事実のみを伝えるニュースや記事等は、情報の有用性や作成労力に関わらず、著作物ではない(法10条2項)。
    11. 著作物の例示
      1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
      2. 音楽の著作物
        1. 楽譜上に音符等によって書かれていることは要件とされていない。「音」のみで表現された即興演奏や即興歌唱、打楽器のリズムも音楽の著作物に含まれる。
      3. 舞踊又は無言劇の著作物
      4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
      5. 建築の著作物
        1. 著作物となり得る建築物は、全ての建築物ではなく、宮殿や寺院など美的要素を含む芸術的価値のある建築物(歴史的価値は問わない。)である。
      6. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
      7. 映画の著作物
      8. 写真の著作物
      9. プログラムの著作物
        1. 文字や文法が著作物とはされないのと同様に、プログラムを作成するために用いられるプログラム言語、規約(プロトコル)、解法(アルゴリズム)には、独立した著作物としての保護が及ばない(法10条3項)。
    12. 二次的著作物とは、基となる他の著作物A(「原著作物」)に「創作的な変更等」を加えて、新たにBとして創作された著作物のことであり、著作権法においては、二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作された著作物をいうと定義されている(法2条1項11号)。
    13. 編集著作物とは、著作権法においては、編集物(データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものと定義されている(法12条1項)。
    14. データベースとは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」である(法2条1項10の3)。 「データベースの著作物」とは、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」である(法12条の2第1項)。
    15. 共同著作物=「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(法2条1項12号)
    16. 保護を受ける著作物(法6条)  
      1. 日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物 
      2. 最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたものを含む。) 
      3. 前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物
    17. 著作権の目的とならない著作物(法13条)
      1. 憲法その他の法令
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの 
      3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
      4. 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
    18. 著作者=「著作物を創作する者」(法2条1項2号)
    19. 著作者は、著作物を創作した時に自動的に「著作者」となり、その地位や権利を取得するのに登録その他特別な方式を必要としない。
    20. 著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代 えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。  
    21. 職務上作成する著作物の著作者: 法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除 く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等と する。 
    22. 映画の著作物の著作者: 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美 術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、職務著作の規定の適用がある場合は、この限りでない。  
    23. 公表権: 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。 
    24. 氏名表示権
      1. 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。
      2. その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
    25. 同一性保持権
      1. 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない。 
    26. 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。  
    27. 著作者人格権の一身専属性
      1. 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
    28.  著作権に含まれる権利の種類
      1.  (複製権) 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。 
      2. 上演権及び演奏権)著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。 
      3. 上映権) 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
      4. 公衆送信権 著作者は、その著作物について、公衆送信自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。 
      5. 公衆伝達権 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。 
      6. 口述権  著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。 
      7. 展示権  著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。 
      8. 頒布権  著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。 
      9. 譲渡権  
        1. 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつて は、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。 
      10. 貸与権  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除 く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
      11. 翻訳権、翻案権等  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
      12. 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を 専有する。 
    29.  映画の著作物の著作権の帰属 
      1. 映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する
        1. 映画製作者=映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
    30. 私的使用のための複製  
      1. 著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用す ること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、その使用する者が複製することができる。 
      2. 翻訳、編曲、変形又は翻案 
      3. 作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示することはできない。
    31. 付随対象著作物の利用
    32. 検討の過程における利用
    33. 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用
    34.  図書館等における複製等
      1. 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第三項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
        1. 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合 
        2. 図書館資料の保存のため必要がある場合 
        3. 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合
        4. 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるために当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。
    35. 引用  
      1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。  
    36.  教科用図書等への掲載
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下同じ。)に掲載することができる。
      2. 前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    37. 教科用拡大図書等の作成のための複製等  
      1. 教科用図書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生徒の学習の用に供するため、当該教科用図書に用いられている文字、図形等の拡大その他の当該児童又は生徒が当該著作物を使用するために必要な方式により複製することができる。 
      2. 前項の規定により複製する教科用の図書その他の複製物(点字により複製するものを除き、当該教科用図書に掲載された著作物の全部又は相当部分を複製するものに限る。以下この項において「教科用拡大図書等」という。)を作成しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知するとともに、営利を目的として当該教科用拡大図書等を頒布する場合にあつては、前条第二項に規定する補償金の額に準じて文化庁長官が毎年定める額の補償金を当該著作物の著作権者に支払わなければならない。 
    38. 学校教育番組の放送等
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組又は有線放送番組において放送し、若しくは有線放送し、又は当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、及び当該放送番組用又は有線放送番組用の教材に掲載することができる。 
      2. 前項の規定により著作物を利用する者は、その旨を著作者に通知するとともに、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。  
    39.  学校その他の教育機関における複製等
      1. 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 
      2. 公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。  
    40. 試験問題としての複製等  
      1. 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
      2. 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    41. 視覚障害者等のための複製等
      1. 公表された著作物は、点字により複製することができる。
      2. 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。 
    42. 聴覚障害者等のための複製等
      1. 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
    43. 営利を目的としない上演等
    44. 時事問題に関する論説の転載等
      1. 新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
    45.  政治上の演説等の利用
      1.  公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
      2.  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正 当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地 域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力 することによるものを含む。)を行うことができる。
      3. 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。
    46.  時事の事件の報道のための利用
      1.  写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。 
    47. 裁判手続等における複製
      1. 著作物は、必要と認められる場合には、その必要と認められる限度に おいて、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、 この限りでない。
        1. 裁判手続
        2. 立法又は行政の目的
        3. 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
        4. 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
    48.  行政機関情報公開法 等による開示のための利用
    49.  公文書管理法 等による保存等のための利用
    50.  国立国会図書館法 によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製
    51. 放送事業者等による一時的固定
    52. 美術の著作物等の原作品の所有者による展示
      1.  美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。
    53.  公開の美術の著作物等の利用
    54.  美術の著作物等の展示に伴う複製
      1. 美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第二十五条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。  
    55.  美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等
    56.  プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等
      1.  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。
    57. 保守、修理等のための一時的複製
    58.  送信の障害の防止等のための複製
    59. 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等
    60. 情報解析のための複製等
    61. 電子計算機における著作物の利用に伴う複製
    62. 情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用
    63. 複製物の目的外使用等
    64. 著作者人格権との関係: 著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。 
    65. 保護期間
      1. 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。   
      2. 著作権は、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。)五十年を経過するまでの間、存続する。
        1. 著作者が死亡した日の属する年の翌年から起算する。 
      3. 無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間の満了前にその著作者の死後五十年を経過 していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後五十年を経過したと認められる時において、消滅したものとする。  
      4. 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその創作後五十年以内に公表されなかつたときは、その創作後五十年)を経過するまでの間、存続する。 
      5. 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)を経過するまでの間、存続する。
      6. 継続的刊行物等の公表の時
      7. ベルヌ条約等の条約の加盟国で、その本国において定められる著作権の存続期間が第五十一条から第五十四 条までに定める著作権の存続期間より短いものについては、その本国において定められる著作権の存続期間による。  
        1.  
    66.  著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。 
      1. 保護期間が満了したとき。
      2. 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法 (明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条 (残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。 
      3. 著作権者である法人が解散した場合において、その著作権が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第二百三十九条第三項 (残余財産の国庫への帰属)その他これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
    67. 著作権の譲渡
      1. 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。 
      2. 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
      3. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限 
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限 
    68. 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。  
    69. 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
    70. 著作権は、これを目的として質権を設定した場合においても、設定行為に別段の定めがない限り、著作権者が行使するものとする。 
    71. 登録
      1. 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。 
      2. 著作権者又は無名若しくは変名の著作物の発行者は、その著作物について第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録を受けることができる。 
      3. プログラムの著作物の著作者は、その著作物について創作年月日の登録を受けることができる。ただし、その著作物の創作後六月を経過した場合は、この限りでない。
      4. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限   
    72. 出版権
      1. 複製権者は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。 
        1.  出版権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更若しくは消滅(混同又は複製権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
      2. 出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。  
    73. (著作隣接権)
      1. 実演家
        1. 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)。 
        2. 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者。 
        3. 実演家の権利
          1. 氏名表示権
          2. 同一性保持権
          3. 録音権及び録画権
          4. 放送権及び有線放送権
          5. 送信可能化権
          6. 有線放送に対する報酬請求権
          7. 二次使用料を受ける権利
          8. 譲渡権
          9. 貸与権等    
      2. レコード製作者
        1. レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)
        2. レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者
        3. レコード製作者の権利
          1. 複製権
          2. 送信可能化権
          3. 二次使用料を受ける権利
          4. 譲渡権
          5. 貸与権等    
      3. 放送事業者
        1. 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信
        2. 放送事業者 放送を業として行う者
        3. 放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 再放送権及び有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. テレビジョン放送の伝達権  
      4. 有線放送事業者
        1. 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信
        2. 有線放送事業者 有線放送を業として行う者
        3. 有線放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 放送権及び再有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. 有線テレビジョン放送の伝達権  
    74.  権利侵害
      1. 侵害とみなす行為
        1.  輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
        2. 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為
      2. 著作権が「侵害」された場合の対抗措置
        1.  「民事」の対抗措置 
          1. あっせん
          2. 差止請求  著作権の侵害を受けた者は、侵害をした者に対して、「侵害行為の停止」を求めることができます。また、侵害のおそれがある場合には、「予防措置」を求め ることができます(第112条、第116条)。 
          3. 名誉回復等の措置の請求  著作者又は実演家は、侵害者に対して、著作者等としての「名誉・声望を回復するための措置」を請求することができます(第115条、第116条)。  例えば、小説を無断で改ざんして出版されたような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置がこれに当たります。 
          4. 損害賠償請求  故意又は過失により他人の権利を侵害した者に対して、侵害を被った者は、侵害による損害の賠償を請求することができます(民法第709条)。侵害を被っ た者は損害の額を立証しなければなりませんが、それを軽減するために、侵害による損害額の「推定」ができる規定が設けられています(第114条)。 
          5. 不当利得返還請求  他人の権利を侵害することにより、利益を受けた者に対して、侵害を被った者は、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には、その利益が残っている範囲で の額を、知っていた場合には、利益に利息を付した額を、それぞれ請求することができます(民法第703条、第704条)。  例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その出版物の売上分などの返還を請求できます。 
        2. 刑事の対抗措置
          1.  著作権の侵害は「犯罪行為」であり、権利者が「告訴」を行うことを前提として,「3年以下の懲役」又は「300万円以下の罰金」という罰則規定が設けられています(第119条第1号)。
    75. 条約
      1. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
      2. TRIPs協定
      3. 著作権に関する世界知的所有権機関条約
      4.  
         

    2013年11月16日土曜日

    「Google Books」を巡る著作権侵害訴訟

    今回は、インターネット検索最大手の米Googleの書籍全文検索サービス「Google Books」を巡る著作権侵害訴訟について書いてみたいと思います。

    Google Booksは、公共図書館や大学図書館の蔵書をデジタル化し、インターネットで検索・閲覧可能にしたサービスです。

    <時系列>

    2005年、図書館の蔵書を電子化し、ネットを通じて検索・閲覧できるようにする事業を開始。米国作家協会Authors Guildや米出版社協会(AAP)は、Google Books(当時の名称は「Google Book Search」)が著作権侵害に当たるとして、Googleを提訴。

    2008年10月、Googleが一定の金額を払うことなどで和解に合意した。

    2011年、地裁が和解の承認を拒否し、訴訟は振り出しに戻った。  

    2012年10月、 Googleと米出版社協会(AAP)は、書籍の電子化を巡る訴訟で和解した。AAPと米作家協会がこの事業を著作権侵害だと訴えていたが、まずAAPとの訴訟が解決した。  グーグルはAAPを通じて訴えを起こした米出版大手マグロウヒルなど5社と和解した。この和解で出版社側はグーグルが電子化した書籍を一般公開するか、削除するかを選べるようになった。デジタル化した書籍を自社利用のために受け取ることも可能となった。

    2013年9月、審問が開かれた。審問でGoogleは、著作権物が評論、ニュースレポート、授業、研究などに引用される場合フェアユースが認められているのと同様に、Google Booksがスキャンした書籍の一部のみを閲覧可能にしていることも、フェアユースの範囲にあると主張していた。  

    2013年11月14日、ニューヨーク州南地区連邦地方裁判所は「Google Booksはフェアユースの範囲」とするGoogleの主張を認める判断を下しました。


    <今回の判決内容>

    米Bloombergが公開した裁判所の資料によると、Denny Chin判事は今回、「Google Booksは公衆に多大な恩恵をもたらしている」と判断。

    「学生、教師、司書などさまざまな人々がより効率的に書籍を見つけ出すための貴重なツールになっている。書籍の入手が困難な人に対して書籍をより手軽に利用できるようにし、著者や出版社にとっての新たな読者と収入源を生み出している。実際、社会すべてが恩恵を受けている」と述べました。  
    また同判事は、Google Booksでは全文が検索対象になっているものの、検索の結果閲覧できるのは書籍の一部に限られ、すべての内容を読めるようにはなっていないことも指摘しました。  

    Authors Guildは今回の判決を受けて、「われわれは裁判所の判断には反対意見であり、たいへん失望している」との声明を発表。「Googleは世界中の価値ある著作権付き文学のほぼすべてのデジタル版を未承認で作成し、それを表示することで利益を得ている。われわれの見解では、こうした大量のデジタル化と利己的な利用はフェアユースの保護の範疇を越えている」とし、上訴する意向を示しました。  

    一方Googleは、「長い道のりだった。われわれは今日の判決を心から喜んでいる」とのコメントを発表しています。

    <判決の意義・影響>

     仮に判決が確定した場合でも、データが作家らの許可なく売られるわけではないので、現在流通している日本の出版社の電子書籍への影響は限定的とみられています。

      米国には、著作物の利用が「フェアユース(公正利用)」であれば著作権者の了解を得なくてもよいという規定があります。グーグルのプロジェクトは商業目的ですが、検索を重ねても全文は表示できないようにするなど、電子書籍ビジネスに悪影響が出ないよう工夫している点が評価されたようです。

      訴訟が起きた2005年当時に比べると、現在は電子書籍市場が拡大し、消費者がネット経由で本を買う頻度も増えました。市場環境が変わるなか、「ネット検索で探しやすくなれば書籍が売れて著作者にもプラスだ」と判断した今回の判決は、著作権保護の考え方に一石を投じる可能性もあります。

    2013年11月14日木曜日

    日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料に関する契約方法を巡る訴訟

     今回は、日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料に関する契約方法を巡る訴訟について書きたいと思います。 テレビやラジオで放送される音楽の著作権使用料を巡り、独占禁止法違反(私的独占)で排除措置命令を受けた日本音楽著作権協会(JASRAC)の審判・訴訟です。

        放送局は放送事業収入の1.5%を払えば、JASRACの管理する楽曲を自由に使える「包括的利用許諾契約」を締結することができます。 公取委は2009年にいったんは独禁法違反を認めてJASRACに排除措置命令を出したが、JASRACの不服申し立てを受けて2012年には一転して命令を取り消す審決をしました。  

     東京高裁判決(飯村敏明裁判長)は、JASRACがテレビ局やラジオ局と結ぶ包括契約が「他の事業者を排除する効果がある」と認定し、独占禁止法に違反しないとした昨年の公正取引委員会の審決を取り消しました。


    <争点>  

    テレビ番組などで使われる楽曲の著作権管理事業を巡り、日本音楽著作権協会(JASRAC)の契約方法が同業他社の新規参入を妨げているか。


      問題となったのは、JASRACがテレビ局やラジオ局と結んでいる包括契約。JASRACに放送事業収入の1.5%を支払えば、290万曲近い管理楽曲を自由に使えるので、局側にとっては割安で便利な方法です。

     一方、新規参入したイーライセンス(東京・渋谷)の契約は、管理する約5300曲の利用に応じて個別に使用料を受ける形です。同社の楽曲を使うと余分な支払いが生じるため、結果的にJASRACの楽曲しか使われない状態になっている、と訴えました。

      他の管理業者には著作権料を別途払う必要があり、経費節約のため一部の放送局が意図的にJASRAC以外の利用を控えていたということです。  


    <背景>

     包括契約はもともとJASRACが音楽著作権をすべて管理していたことから生まれました。どんぶり勘定のほうが放送局にも管理団体にも都合がよかったからです。

      ところが演歌からポップスなどへと嗜好が移る中、著作権料の分配方法に疑問の声が上がるようになりました。12年前の法改正で管理業務への新規参入が認められたのはそのためだったのですが、包括制度によりJASRACの独占状態は変わらなかったのです。

     2001年の著作権等管理事業法施行で楽曲の著作権管理への新規参入が可能になった後も、JASRACは圧倒的なシェアを持ち続けています。


    <今回の提訴>
     
       2009年2月、 公取委は、テレビ局などの放送局が事業収入の1.5%を払えば楽曲を自由に使えるという包括契約は新規参入を阻んでいるとして、独占禁止法違反(私的独占)でJASRACに排除措置命令を出しました。
      
     公取委は、放送局が他の管理事業者の楽曲を使うと、新たな費用負担が生じることになるため、新規業者の参入の妨げになっていると判断。楽曲の使用に応じ た仕組みにするよう求める排除措置命令を出しました。

     一方、JASRACは命令を不服として、審判請求しました。

     2012年、公正取引委員会は、「違反があったとする証拠はない」として、命令を取り消す審決を出しました(2012年6月12日付審決)。審判で公取委が覆すのは、1994年のエレベーター保守点検を巡る価格カルテル以来でした。

       審決は、新規事業者の管理する楽曲を回避したのは放送局1社だけで、JASRACの管理する楽曲と比べても、遜色なく放送局に使われていたと指摘。その上で「他の事業者の活動を排除する効果があるとは断定できない」と結論付けました。


     2012年7月10日、音楽著作権管理のイーライセンス(東京・渋谷)は、日本音楽著作権協会(JASRAC)が放送局と結ぶ楽曲利用料の包括契約について、公正取引委員会が出した審決の取り消しを求める訴訟を東京高裁に起こしました。

       訴状によると、イーライセンスは、公取委の審決には事実認定に明らかな誤りがあると主張。イーライセンスが管理する楽曲の利用自粛を促す放送局内の文書があるにもかかわらず「(放送局側は)利用を回避していない」とした解釈も誤りだなどとしています。

    <高裁判決の分析>

      高裁判決は独禁法違反の有無について確定的な判断をしていませんが、JASRACのビジネスモデルに疑問を投げかけ、審理を事実上、公取委に差し戻しました。

     判決は、「経費削減の観点から、放送局側が追加負担の要らないJASRACの楽曲を選択するのは自然だ」と指摘しています。一部の放送局でイーライセンスの利用を控えるよう社内通知文書が出ていたことにも触れ、「包括契約は新規参入を著しく困難にした」と結論づけました。

     ただ、独禁法違反が実際にあったとまでは認定せず、「独禁法違反の要件に当たるかどうかを判断すべきだ」と公取委に審判のやり直しを求めるにとどめました。

     
    13日、公正取引委員会と第三者として訴訟に参加したJASRACは独占禁止法に違反しないとする公取委の審決を取り消した東京高裁判決を不服として上告しました。引き続き最高裁で公取委の審決の是非が争われ、高裁判決がこのまま確定した場合でも公取委が改めて審判を行うことになるでしょう。問題が決着するまでにはなお一定の時間がかかりそうですね。

    2013年11月7日木曜日

    印鑑

    実印と認印

    近ごろでは印鑑の代わりに署名で済ませられる場面が増えてきました。本人が申請して役所で住民票をとるときや、一部の外資系金融機関で口座を開設する場合などでは、署名が印鑑の代わりの役割を果たしています。

    そもそも、印鑑は申請や契約などに必要ないものなのでしょうか。

    印鑑や署名どころか、契約書自体がなくても、たとえば口約束だけでも契約は成立しえます。

    では、契約書や印鑑の役割とは何でしょうか。

    それは、成立した契約が確かに存在したことを、客観的な証拠として残すことにあります。 特に印鑑は、後に争いとなり、裁判になった際の立証場面で、大きな役割を持つ可能性があります。それは、民事訴訟法228条4項に「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」との規定があるからです。

    法律用語で「推定」とは、裁判で立証が済んだものとして扱われることを意味します。相手方が反証をしない限り、「推定」が維持され、契約書を証拠として示した側の勝訴となります。

    ここで注意が必要なのが、「署名又は押印」が推定の条件になっているということです。法律上、契約の存在を示す証拠として、署名と押印は同じだということになります。両者で違いが出てくるのは、署名や押印が偽造されたことなどが疑われる場合、つまりもう一つの条件である「本人又はその代理人の」署名や押印であるかどうかが争われる場合です。

    署名の場合には、筆跡鑑定が行われます。筆跡鑑定を行うには資格などは必要なく、誰でもできるものではありますが、裁判では、科学捜査研究所の出身者が行った鑑定結果が比較的信頼されています。具体的には、署名を一文字ずつ、たとえば、『最初の文字は明らかに違う、次の文字のここは類似していてここの部分は違うがどちらかというと類似している、その次の文字は明らかに同じ』というように鑑定し、それらの判断の組み合わせで、全体としてはどうかという結論を出します。もっとも、裁判官の判断を拘束する力は弱いようです。


    このように手間とコストをかけても確定した判断が難しい署名に比べて、押印には「印鑑証明」というシステムがあります。署名の横に実印を押し、役所が発行した印鑑証明書を添えれば、当事者の意思で押印されたものと事実上推定されます。もちろん、この強力な効力により、逆に悪用される危険性もあります。

    法人の実印であれば、厳重に保管し、押印の記録を残すのは必須です。押印の場に必ず2人以上の関係者を立ち会わせるようにするなどの慎重さも求められます。

    一方、個人のいわゆる認印や三文判、法人の角印など、印鑑登録をしていない印鑑には「推定」の法的効力がありません。頻繁に使われ、印影も比較的シンプルであるため、どこかに押したものをスキャンして偽造される危険性も高いです。個人の印鑑は大量生産されている場合も多く、お金を出せば同じものを買えることすらあります。

    したがって、争いとなった場合、印鑑登録されていない印鑑は実印よりも効果が大きく劣るのです。

    署名とセットで使われることが多い個人の認印とは違い、法人の角印の場合、会社名や住所などは印刷やゴム印であることも多いです。

    では、偽造などのトラブルを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

    署名や会社名の上に認印や角印を重ねて押せば、黒と赤のインクの跡が交わり、他者による偽造が難しくなるります。なんとなく、あるいはスペースがないからという理由で、文字に重ねて押印していた人も多いでしょう。しかしこの習慣には、押印の偽造を防いでトラブルを予防する意味合いがあるのです。



    2013年11月6日水曜日

    NISA(ニーサ)

    いよいよ来年1月からNISA(少額投資非課税制度)(ニーサ)が始まります。

    NISAの5つのポイント
    [1]投資信託・上場株式等の譲渡益・配当金等が非課税
    [2]年間100万円の非課税枠
    [3]最大500万円の投資額に対して最長5年間非課税
    [4]対象は日本に住む20歳以上の方
    [5]開設できるNISA口座は1人1口座

    NISAに関するよくある質問

    Q1:現在、特定口座で定期積立をしていますが、NISA口座を開いた場合はどう なりますか?

    A1:現在、特定口座または一般口座で定期積立を利用する人は、NISA口座開設後、年間累計買付額が100万円になるまでは自動的にNISA口 座での買付になります。(選択することはできません)

    Q2:NISA口座内と他の口座の損益通算はできますか?

    A2:NISA口座の売買損益は、他の口座(特定/一般口座)との売買損益の通算はできません。

    2013年11月5日火曜日

    メールアドレスの誤送信

    パソコンの初心者の方がよく陥るやってはいけないことがあります。 それは、全員のメールアドレスを「宛先欄」(=To:)には入れて送信することです。  これは絶対にやってはいけません。 何故なら、全員に全員のアドレスが伝わってしまいます。

    メールアドレスの誤送信の法的問題点

    特定の個人を識別できるメールアドレスは、「個人情報」に該当します。

     「個人情報」とは、特定の個人を識別できる情報です。一見識別できないメールアドレスでも、他の情報と容易に照合することができ、特定の個人を識別できる場合は、個人情報に当たります。しかし、記号の羅列のようなメールアドレスであれば、検索しても通常は個人を特定できないので、個人情報に該当しないでしょう。個人情報に該当しないメールアドレスを他人にわかる形で一斉送信しても、違法とはいえません。

    しかし、企業の内部において個人を特定できるアドレスと特定できないアドレスを別々に分類して管理するということは通常はありえません。また、アドレス自体が通称のような働きをして個人を識別する情報の1つとして取り扱われることも多くなっています。企業としては、すべてのメールアドレスが個人情報に該当するとの前提で取り扱うべきでしょう。

    このような考え方に立つと、メールアドレスが大量に漏えいする事故は、個人情報保護法上、安全管理措置義務(法20条)に違反したということになります。法では、安全管理措置義務違反について、直ちに何らかの制裁が想定されているわけではありません。しかし、民法の不法行為の規定を根拠に、漏えいされた顧客から損害賠償を請求されることは考えられます。   

     問題は、一斉送信され、自分のアドレスが他人にわかってしまうこと、および他人のアドレスを知ってしまうことについての不快感です。不快感は、一般的には法的に保護されません。

    例えば、自宅の郵便ポストに、見たくもないチラシが入っていて、不快感があっても、違法ではありません。そのチラシを捨てれば良いだけです。個人情報保護法ができる前、同窓会名簿も売買されていましたが違法ではありませんでした。

    ただし、今後、法規制ができたり、現時点で特定できないメールでも将来特定できる状況になれば、違法となるでしょう。

    結論として、明らかに個人が特定できるメールアドレスでやり取りをした場合、これは個人情報保護法に違反する可能性があるが、個人を特定できない場合には、違法性はありません。

    事実の公表・報告

    漏えい事故が発生した場合には、できる限り事実を公表することが求められていますし(法7条に基づき作成された基本方針)、主務大臣が個人情報の管理、利用のあり方について報告を求めてきたり(法32条)、取扱いに関し勧告や命令を受けることも考えられます(法34条)。いずれにしても企業の信頼を 大きく損ねることは間違いありません。


    送信したメールを取り消す方法

     送信したメールを取り消す


    お詫び文例

    個人情報(メールアドレス)の漏えいに関する報告とお詫び

    この度、弊社におきまして、お客様にメールにてお知らせをした際、送信業務の不手際により、お客様のメールアドレスが他のお客様のメール内に表示される、と いうトラブルが発生致しました。

    該当のお客様におかれましては多大なるご心配とご迷惑をおかけ致しました事、深くお詫び申し上げます。

    弊社はこれまで個人情報保護強化に取り組んで参りましたが、このような事案を招いた事を深く反省し、今後は管理体制の見直しと従業員への個人情報保護教育を徹底し、再発 防止に努めて参ります。

    今回の件につきましては、あらためて以下の通りご報告申し上げますとともに、ご迷惑をお掛け致しましたお客様に深くお詫びを申し上げます。



    1.事案の概要

    (流失日時・経緯を書きます。)

    平成●年●月●日(金)午後●時●分、●●に関する案内メールを送信した際に、個人のメールアドレスを「BCC」に設定して送信すべきところを「CC」で送信したため、全員のメールアドレス(●名分)が表示されて送信されました。 

    流出先はメールを受信された同じく●名の方です。

    2.対応状況

    上記電子メールの送信直後に担当職員がこれに気づき、本件に該当する関係者の方々に対し、直ちに御報告とお詫びを申し上げるとともに当該電子メールの削除をお願いいたしました。
    *現在のところ、この件に関して二次被害は確認されておりません。

    3.今後の対応

    (再発防止策を書きます。)

    ① 個人情報を含む重要なメールや複数先宛へのメール送信時の作業手順を見直し、全従業員に周知徹底致します。[複数の個人のメールアドレスあて送信する場合には、複数の職員によるダブルチェックを徹底することにより、個人情報の漏えい防止を徹底してまいります。] [今後このような事態が生じないよう、送信前に文書送信者以外の者が宛先及び送信内容を再度確認するなど、厳重かつ適正な管理を徹底してまいります。]
    ② 個人情報取り扱いについてのリスクの認識を全従業員に徹底し、必要かつ適切な措置 を講じます。
    ③ 本件に関し何らかの被害が発生した場合は、警察や当局の指導に基づき対応致します。

    〈 本件に関するお問い合わせ先 〉
    株式会社 ●●
     TEL:●●●-●●●-●●●●
    メールアドレス:●


    参考資料

    2013年11月4日月曜日

    インターネットでいじめにあったら

    インターネット上のトラブルは、年々増加傾向にあります。

    匿名掲示板、個人のブログ、Twitterなどでの誹謗中傷やプライバシー侵害行為の相談が増えているようです。有名人でなくとも、悪口を書かれたり、伏字だけれどもわかる人にはわかるような誹謗中傷をされるケースもあります。SNS(ミクシィやFacebook)でのなりすましケースも増えています。自分になりすまして、ウソの書き込みをされたり、プライベートな写真を公開されてしまうようです。

    対処方法はいくつかありますが、まずは、気にしないこと、無視することです。TwitterやSNSの場合、特定の人から自分のサイトを見られないようにブロックできます。また、自分も見ないようにしましょう。そのうち向こうも飽きてやめることも多いのです。

    ただ、どうしても見過ごせない誹謗中傷もあるでしょうし、なりすましをされているのは気持ち悪いと思われる人も多いでしょう。その場合は、サイトの運営会社に対し、迷惑行為を報告(スパム報告)します。多くのサイトには、そのような報告を受け付ける機能が付いています。Twitterなど国外の会社が運営しているサイトでも同様です。日本語で送っても、回答は英語かもしれませんが、対応してくれます。

    問題なのは、運営側にスパム報告をしても削除してくれないケースです。たとえば2ちゃんねるには削除依頼用のスレッドがありますが、応じてくれないことも多く、依頼自体が公開されるために逆効果となってしまうこともあります。 この場合は、「プロバイダ責任制限法」に基づいた手続を取ります。

    選択肢は2つあります。
    ① 加害者である書き込み主(アカウント主)を特定する
    ② サイト運営者に削除依頼をする

    ①であれば、まずは運営側に加害者についての「情報開示請求」を行い、IPアドレスとサーバーにアクセスした時間を教えるよう申し立てます。

    IPアドレスがわかれば接続プロバイダがわかるので、次はプロバイダ宛に該当人物について情報開示請求をします。つまり2回情報開示請求することになりますが、権利侵害が明らかなら開示請求は認められます。

    氏名、住所などの本人確認が取れたら、権利侵害をやめるように警告するか、損害賠償請求をします。

    ②は、①より簡単です。サイトの運営会社に「送信防止措置」の依頼をします。そうすると、運営側は加害者に対して、「●●という申し立てがありますが、反論はありますか。削除してもよいでしょうか」と照会します。この時点で、加害者は自主的に削除するか、回答しないかのどちらかの対応を取ることが多いです。照会から一定期間内に回答がない場合は、運営側が削除しても良いことになっているので、そのまま削除されます。

    ①、②のいずれも、費用は書類代と切手代程度で済みます。やり方も、ガイドラインでインターネット上に公開されています。

    ただし、運営者が海外の場合(2ちゃんねるの場合は運営会社がシンガポールにあります。)、上記の手続を使うことができません。そのため、裁判所に削除や開示を認める決定をもらうことが必要です。この場合は、手続が複雑になりますので、弁護士に相談したほうが良いでしょう。

    FacebookやTwitterも日本の法律による請求を受け付けていません。ただし、Facebookは実名登録が基本原則となっているため、トラブルはそう多くないようです。Twitterについては、2010年11月に日本法人が設立され、この手続に応じてもらえる可能性が出てきました。 いずれにせよ、トラブルには巻き込まれないことが一番です。トラブルの原因は、やはりプライバシーに関することが多いので、書き込むときも他人のプライバシーに関わることには十分注意しましょう。

    2013年11月3日日曜日

    記事流用と著作権侵害

     新聞や雑誌の記事、書籍の一部などをコピーして社内の会議で配ったり、ウェブサイトの記事を社内メールで送ったりすることは日常的にあるはずです。法的には、これらの行為は著作権侵害となります。

    この場合、著作権法の例外は、個人での私的使用と公的図書館での複写です。これ以外は原則として、著作権者の承諾が必要になります。 記事の要約も著作権侵害となる場合があります。もとの文書を読まずとも内容がわかるような要約は、著作権法上の翻案に当たる場合があり、著作権者の承諾が必要です(著作権法27条)。

    また、記事の「見出し」は著作物として認められていませんが、営利のために転用などをした場合には「法的保護に値する利益を侵害した」として、不法行為(民法709条)になるとの見解が示されています(2005年10月・知財高裁)。

     著作権の理解が難しいのは、法律の建前と現実社会での運用が大きくズレているからでしょう。著作権者としては、紙面に「すかし」を入れたり、パソコンでの「コピー&ペースト」をできなくするなどの対策を講じれば、著作権を守れます。ただし、それでは逆に利用が滞り、著作物が流通しないという弊害もある、といえるのです。

     著作物の一部が違法コピーされた場合、一般的に損害賠償額は全体からの案分で算定されます。

    営利目的で記事を盗用するなどの悪質なケースでは、刑事事件になることもあります。2009年5月には、自分のブログに他人のサイトの文章を無断で掲載していたとして、大阪府の男性が著作権法違反の疑いで逮捕されました。このブログでは、著作権者の度重なる警告を無視したうえで、健康食品の通信販売サイトを紹介し仲介料を稼いでいたということです。


    2013年11月2日土曜日

    モンスタークレーマー

    わが国で企業や公的機関へのゆきすぎたクレーム行動が一般に広く問題視されるようになったのは約15年ほど前からのことでしょうか。

    そもそも正当なクレームは、企業経営を改善し活性化するための貴重な情報源となります。ところが、この時期から客観的にはとても正当とはいえない悪質なクレームが増え始めました。さらに「東芝クレーマー事件」によってインターネットの影響力が広く知れ渡り、同事件が起きた1999年ごろからは、インターネットを最大限活用して苦情の中身を社会に広めようとするクレーマーが出現しました。

    こうした事態への対処に企業側は頭を抱えているのが実情です。 かつても製品の不具合、サービス不良などを理由に企業へ因縁をつけるタイプの悪質クレーマーは存在しました。いわば暴力的背景を持ったクレーマーです。

    一方、近年問題なのは、製品の不具合など苦情の入り口は同じでも、そこから非難の方向を変えて、企業の社会的姿勢などを声高に追及するタイプのクレーマーです。苦情の前提と要求の内容には著しい差があったり、苦情の相談がなかったりするからモンスタークレーマーといってもいいでしょう。

    背景に「我こそは正義」という思い込みがあるため、大変対応しにくい相手です。

    というのは、暴力的背景を持ったクレーマーの場合、直接的には金銭を要求していなくても、要求の内容はわかりやすいのです。

    これに対して、“新種”であるモンスタークレーマーは、正義を述べ立てることによる自己陶酔や憂さ晴らしといった、別の動機によって行動しています。そのため、例えばモンスタークレーマーに金銭の提供を申し出たりすると、逆に相手の態度を硬化させ、問題を長引かせることにつながりかねないのです。「対応しにくい」というのは、このことでしょう。

    モンスタークレーマーの標的は企業だけではありません。被害はいまや自治体や国の機関、学校、病院、さらには芸能人や政治家といった個人にまで広がっています。

    また、クレーム慣れしているはずの企業でも、消費者相談室などの専門部署ではなく現場の個人が標的になることがあります。誰もがクレーマー被害に遭う危険があるのです。

    電話やネットを通じた「情報による攻撃」は、暴力をともなう物理的な攻撃よりも効果的に人を打ちのめすものです。たとえ専門的な訓練を受けたクレーム担当者であっても、モンスタークレーマーからの執拗な攻撃を受ければ「心が壊れてしまう」といわれています。通常業務を抱えた一般社員ならなおさらでしょう。 常軌を逸したクレーム電話が続いたり、ネット上の誹謗中傷がやまなかったりしたときは、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたるケースもあるので刑事告訴といった対応も可能です。


    2013年11月1日金曜日

    産業医面談

    産業医とは

    産業医とは、事業者との契約に基づき、企業内等で労働者の健康管理を行う医師のこと。労働安全衛生法は、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医を置くことを義務づけています。

    事業者は、労働契約上、業務による過度の疲労や心理的負荷によって労働者の心身の健康を損なわないよう注意する健康配慮義務を負っています。産業医の役割は、事業者がこの義務を果たすことができるよう事業者を補助することにあります。そのため、産業医は治療等の医療行為は基本的に行わず、労働者の健康診断や面接、職場巡視を実施して労働者の健康状態を把握し、事業者に意見を述べることを主な職務としています。

     したがって、産業医が労働者から職場でのパワハラやセクハラ、過重労働による心身の不調について相談を受けた場合には、これらの健康管理情報は配属先の上司などへの報告の対象となり得ます。事業者は、医師の意見を参考にしながら、労働者との面接指導を実施し、必要に応じて、労働者の就業場所や作業内容の変更、労働時間の短縮、休業命令、復職命令等の措置を決定します。


     同意なしに報告される

    それでは、産業医に相談した内容はすべて報告されてしまうのでしょうか。

    産業医も、一般の医師と同様に守秘義務を負います。秘密漏示罪を定める刑法134条は、医師が正当な理由なく業務上知りえた他人の秘密を漏らした場合には6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処すとしており、これは産業医にも適用されます。

    また労働安全衛生法も、産業医が健康診断等の実施によって知りえた労働者の秘密を漏らすことを禁じています。

    したがって、産業医であっても、労働者の同意がない限り、労働者の健康管理情報を上司に伝えてはならないのが原則です。

    他方で産業医は、労働者に健康上の問題があることを知ったときには、事業者にこれを指摘・報告する義務も負っています。また状況によっては事業者に積極的な情報提示を行って、自覚を促すべき場合もあります。

    この点について厚生労働省は、可能な限り本人の同意を得ることを基本としながらも、(1)同意を得ることが困難であり、開示することが労働者に明らかに有益である場合、(2)開示しないと公共の利益を著しく損なうことが明らかな場合等には、労働者の同意がなくてもその健康管理情報を上司その他の関係者に報告することができるとの意見をまとめています。

    たとえば、(1)労働者が自傷行為に及ぶ可能性が高い場合や、(2)健康診断の結果、伝染病が発覚し、直ちに対応しなければ他の労働者に健康被害が生じる危険がある場合などです。

    また労働者の同意の有無にかかわらず、報告が許される情報の内容やその報告先は、事業者が健康配慮措置を講じるために必要となる最小限の範囲にとどまります。たとえば、労働者の血液検査結果の詳細な数値や疾病の具体的診断名、セクハラ、パワハラの具体的な当事者名等の情報は必ずしも健康配慮措置のために必要ではありません。

    産業医は労働者に対して守秘義務を負う以上、上司らに報告する必要性があると判断したとしても、まずは労働者にその旨を説明し、同意を得るべきです。それができない事情があったとしても、可能な限り相談者が特定されることのないようにする等の配慮が必要です。

    労働者としては、産業医の役割と立場を理解し、産業医の診察、面接を受けた際には、上司らに報告される内容について事前に産業医に確認し、報告してほしくない相手と内容についてはその旨を明確に伝えておくことが大切になります。

    2013年10月30日水曜日

    ネット上で会社の内部情報を漏えいしたら

    今回は、社内の人間しか知らない内部情報をインターネットの掲示板に匿名で書き込んだところ、会社の上層部がそれをたまたま見つけて大騒ぎになったという場合について考えてみたいと思います。

    アクセスプロバイダへの発信者情報開示要求

    会社の犯人捜しは、まずアクセスプロバイダへの発信者情報開示要求から始まります。しかし書き込みの内容が殺人予告など犯罪性のあるものでない限り、プロバイダがすぐ開示に応じることは考えにくいです。なぜならインターネット上のやりとりは通信の秘密として法律上保護されているものです。これを簡単に漏らしてしまうプロバイダなど、誰も使わなくなってしまうでしょう。

    そこでプロバイダは自らの信用問題として、「開示してほしければ裁判を起こしてください。開示せよという判決が出たら従います」と突っぱねることになります。書き込まれた側はわざわざ裁判を起こすのは面倒臭いと考え、たいていの場合は泣き寝入りとなります。

    ただし、書き込みの内容が人に危害を加える予告であったり、信用毀損や風説の流布など株価に影響を及ぼすようなものであれば、プロバイダによっては開示に応じる可能性もあります。


    会社のパソコンを使って書き込みをした場合

    もし会社のパソコンを使って書き込みをした場合は、会社のサーバーを調べれば、誰のしわざかほぼ判明します。ただし、社員のプライバシーに関わることなので、会社も調査に踏み切るのは慎重になるでしょう。

    会社が社員のメールやアクセスログなどを調べることに入社時の誓約書で同意していたり、就業規則に書いてあれば、いくらプライバシーの侵害を叫んでも無駄です。

    発覚した場合の責任
     この場合、発生するのは民事責任、刑事責任・行政法上の責任、労働契約上の処分の3つです。

    民事責任で考えられるのは「この書き込みのせいで業績が落ちたから損害賠償しろ」というものです。これは新製品についてウソの情報を流したために売り上げが激減した、というような場合はともかく、会社への不満を言った程度ではそれほど大きな金額を請求されることはないでしょう。

    刑事責任や行政法上の責任では、信用毀損罪で告発されるとか、風説を流布して株価に影響を与えたとして、証券取引等監視委員会に呼び出され、課徴金を科されることなどが考えられます。

    しかし会社員にとって一番怖いのは、3つめの労働契約関係の処分、すなわち減給、けん責、あるいは解雇です。とりわけ解雇されると再就職にも差し支えます。

    労働者は労働法によって保護されており、よほどの理由がなければ解雇は難しいです。とはいえ、ここまで開き直るには精神力が必要です。

    居酒屋でグチをこぼすのとネットに会社の悪口を書くのは、法的にまったく重みが違うということを意識しましょう

    2013年10月28日月曜日

    スマホがウイルスに感染し、社内資料が流出したら

    スマートフォンが急速に普及しています。この便利な端末を利用して、通勤中や外出先、はたまた自宅でやり残した仕事をしている人も多いでしょう。

    しかし、会社から端末を支給されているケースはもちろんのこと、私用の携帯電話から会社の重要書類や個人情報が流出した場合に、不法行為(民法709条)を理由として損害賠償を請求される可能性があります。

    今のところ携帯電話やスマートフォンの紛失やウイルス感染による大きな情報漏洩事故は起こっていません。しかし、会社のPCを紛失したり、不正アクセスによって個人情報が流出した事件は多数あります。PCであろうとスマートフォンであろうと、情報漏洩に対する法的な責任に差はありません。

    損害賠償の規模は決してバカにできません。過去に情報漏洩を起こし、顧客との間で裁判になった事例もあります。

    • TBC事件(2007年)では会員のスリーサイズなどの個人情報が漏れ、顧客1名につき3万5000円の賠償金を支払うことが命じられています
    • Yahoo!BB事件(07年)では1名につき5500円の賠償金を支払うことが命じられています。 

    賠償額は、漏洩した情報の価値によって決まります。TBC事件のように、秘匿性の高い情報ほど賠償額は高くなります。

    これらの機密情報や個人情報流出事件では、被害者が企業に損害賠償請求するケースがほとんどで、ミスや不正を犯した企業の担当者を直接訴えるケースはこれまでにはありません。

    しかし、今後は担当者個人に対し、被害者である顧客や企業が訴訟を起こす可能性がないとは言い切れません。 担当者個人が負う賠償の額は、情報流出が担当者の故意か過失かによって変わります。

    個人情報の流出を理由に企業が担当者に賠償請求した場合に、企業側のセキュリティ対策上の落ち度と担当者の過失分のバランスを鑑みて、賠償額が決定されます(過失相殺)。 つまり企業が万全のセキュリティ対策を講じているにもかかわらず、故意に情報を流出させた場合、流出した情報の価値すべてを賠償しなければならない可能性があるのです。たとえば、1件5万円の価値がある個人情報を故意に1万名分流出させてしまった場合、合計5億円も賠償しなければならない、ということです。

    もちろん、個人に対し損害賠償請求がなされなくても、会社の規定により譴責や減給、懲戒解雇の処分を受けることがあります。会社の機密情報を漏洩させることは、情報という価値のある無形の財産を会社から失わせたことになるので、会社のお金を使い込み横領するのに等しいのです。

    現在、スマートフォンはさらに進化し、ファイル共有などのクラウドサービスを活用する人も増えています。企業は、こうした技術の進歩に対応するセキュリティ対策を講じたうえで、情報保護ガイドラインを刷新し社員に徹底させることが重要です。

    社員も、自衛策を講じる必要があります。
    • スマートフォンには、最低限、パスワードなどのロックを設定する。
    • クラウドサービスを利用するときには、オンライン上の個々のファイルにパスワードを設定すれば、安全性はより高まります。
    • あやしいアプリケーションを決してダウンロードしない。
    • 社外秘のファイルをダウンロードして作業したら、作業後に必ず消去する。
    こうしたちょっとした工夫でリスクを軽減できます。 スマートフォンは携帯電話ではなく、数億円の価値を持つ資料が記録された媒体であり、同時に、資料が保存された倉庫(クラウド)に入るための鍵だと認識を改めることが重要です。


    2013年10月27日日曜日

    フィッシング詐欺

    高齢者を標的にした振り込め詐欺は、いまも深刻な社会問題です。しかし高齢者はインターネットをあまり使いませんから、インターネットバンキングの詐欺事件は、まだまだ始まったばかり。これからは被害が深刻化するおそれがあります。

    2011年秋、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行のインターネットバンキングで、不正送金による被害が発覚しました。

    被害額は三菱東京UFJで計数百万円(6件)、三井住友で計約1000万円(6件)。ある被害者は、1つの口座から200万円を盗られていました。

    インターネットバンキングの利用者の多くは、1日の送金限度額を100万円に設定しています。この被害者は、2日に分けて100万円ずつ抜き取られていたのです。

    なぜ、不正送金ができたのでしょうか。

    これはフィッシング詐欺の1種です。詐欺師らは利用者に銀行当局を装う偽メールを送りつけ、偽の銀行サイトへ誘導して個人情報を入力させるという手口で、IDやパスワードを入手したのです。

    クレジットカードの不正利用にも注意が必要です。ネット上ではカード番号と有効期限さえ打ち込めば、かなり自由に買い物ができます。ですから、ネットでの利用には慎重になるべきです。怪しいと思ったら、カードは使わず着払いなどを選択するといいでしょう。また、カード会社は顧客の購買行動をモニターし不自然な動きがあれば当人に問い合わせるので、不正はすぐに発覚します。

    2013年10月26日土曜日

    子供が勝手にネット契約したら

    子供が有料サイトを利用して、多額の請求を受けてしまったらどうなるのでしょうか。

    有料サイトの利用

    最近ではこんな事例があるようです。
    • ウイルスなどによる明らかに違法な誘導
    • ツイッターを利用して有料サイトへ誘いこもうとする業者
    • 宣伝を装って郵便でDVDを送りつけ、受け取った人がPCに挿入すると、知らないうちに有料サイトの会員にされてしまった。
    有料サイトの会費トラブルは月数千円、年会費1万円といった少額の場合が多いようですが、勧誘のしかたによっては違法性を問うことができます。

    違法性がなくても、有料サイトを使ったのが子供であれば、法に訴えて料金を返してもらうことが可能です。

    民法第5条の規定により、未成年者が親の同意なく行った法律行為は原則として取り消すことが認められています。したがって、インターネット上の詐欺で子供をターゲットにするのは、詐欺の手口としてもあまり巧妙とはいえないと思います。

    その他

    有料サイトの利用以外にも、子供が親のクレジットカードを使用し、インターネット・ショッピングで買い物してしまったというようなケースが考えられます。

    この場合も民法5条が適用され、カードを使用したのが未成年者だった場合、その取引は取り消すことができます。

    「子供が勝手に買ったものなので返品したい」という要望があった場合、業者も返品に応じるのが普通です。法律で消費者の権利が認められているので、裁判ともなれば、取り消されることは業者側も理解しています。


    2013年10月25日金曜日

    「応訴」しないとどうなるか

    今の日本では、騒音、水漏れなどささいなトラブルでも「訴えてやる!」と息巻く人が確実に増えています。

    もし、そんな人に訴えられたらどうなるのでしょうか。

    いくら「自分には何も非はない」と思っていても、訴えられたら必ず「応訴」しなくてはなりません。訴えられた人が裁判所からの呼び出しを無視していると、基本的に原告、つまり訴えた側の主張がすべて認められてしまうからです。

    といっても、一般常識から考えて多すぎる額の損害賠償の請求などは、裁判所によって減額されることになりますが、常識の範囲内で最も不利な扱いを受けてしまうでしょう。

    仮に賠償額が低くても、関係者が支払う代償はそれだけではありません。弁護士に書面作成や法廷での弁護を頼まなければならないし、何度も裁判所に呼び出されるという手間もバカにならないのです。


    2013年10月24日木曜日

    グローバル企業による租税回避

    2013年6月に開催された主要国首脳会議(G8サミット)で対策に向けたルールづくりが合意されるなど、グローバル企業による租税回避が問題になっています。

    租税回避は何らかの方法で税の負担を軽くする1つの類型です。

    日本国憲法は84条で立法によらなければ課税はできないという、「租税法律主義」を定めています。
    つまり、法律に基づいて課税が行われるということです。 もちろん、その法律に反する行為は「脱税」となります。

    ただし納税者は、その負担をなるべく軽くしたいと考えるのが常で、法律に従いつつ条文が想定する常識の範囲内で税負担を軽くする行為を「節税」と呼びます。

    そして、形式上法律には従っているものの、条文の想定する常識の範囲から外れた、いわゆる“グレーゾーン”の行為が租税回避です。

    例えば、祖父が孫を養子にしたり、相続人を増やして基礎控除を多くするために養子縁組をしたりすることなどは、以前から議論の対象となってきました。これによって相続税などを低くしようとするのは、場合によっては課税の公平性を害するとも考えられてきたのです。

    最近話題になっている租税回避は、税率の低い国に子会社をおき、そこに利益を集めて税負担を軽くするというものです。 たとえば、税率が高いA国にある本社が、税率の低いB国にある子会社に製品を原価に近い価格で販売します。次にB国の子会社は税率の高いC国の孫会社に利益を乗せた高い価格で製品を売ります。製品を安く売ったA国の本社、高く買ったC国の孫会社は利益が抑えられ、高い税率でも税負担が小さくなります。一方、B国の子会社は高い利益を挙げているものの、税率が低いので税負担は小さくなるというカラクリです。

    各国にある個別の会社ごとに納税をするが、決算はグループ連結で行います。その結果、税負担を低く抑えたうえ、その分だけ最終利益に上積みした好決算を株主に示すことができて、企業にとっては“一石二鳥”となります。

    ここでいうB国の役割を果たすのが、税金がゼロ、または税率が極端に低い「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれる国や地域です。英領のケイマン諸島やマン島、ガーンジー島の法人税はゼロないし非常に低税率として有名です。税率を決めるのはもちろん各国の自由です。産業がない国や地域では、企業誘致を図るために税率を抑えることがあります。

    しかし、欧米では財政の悪化から増税や歳出削減などで国民の負担が増しており、租税回避を図る企業、それを容認している税制のシステムに対して批判が高まっています。多額の利益を挙げるグローバル企業が、軒並みタックスヘイブンを使って税負担を逃れていると報じられたことも大きな影響を与えています。

    メスを入れるとすれば、1つひとつの事例をチェックしていくしかありません。前述の例では、A、B、Cの3つの国が、「親会社から子会社への販売価格は低すぎないか」「子会社から孫会社へ高く売りすぎでは」など、合同で調査する必要があります。移転価格の問題にも関連しうる話だ。とはいえ、調査をするにも数多くの壁に直面する可能性が高いです。

    2013年10月23日水曜日

    ストリートビューとプライバシー・肖像権

    ネット検索でおなじみ、米グーグル社が作成したストリートビューのサービスが、2008年8月より国内の主要都市に関して始まりました。

    ストリートビューとは、数メートルおきの地点ごとに、公道上から実際に撮影された360度のパノラマ画像を、地図などと組み合わせて自由に閲覧できるようにしたシステム。

    たとえば、初めて足を運ぶ待ち合わせ場所の下見代わりには、便利です。思い出の場所が現在どうなっているか、クリックひとつで眺めにいくのも楽しいですね。

    ただ、世の中の景色を手当たり次第に呑みこみ、全世界の人々に共有させてしまうストリートビューは、「すごい」「面白い」と同時に「マズい」「怖い」ともいえます。公開されている画像は、駅前などの公共の場だけではないからです。ストリートビューのカメラは、住宅街の細い路地にも入り込んで、そこに見えるものすべてを記録、データ化してしまいます。

    自宅がいつの間にかネットで公開されていて気持ち悪いという声が噴出しているのも当然の成り行きでしょう。 また、通行人が道ばたで転倒している瞬間などのストリートビュー画像を収集して面白がるような輩もいます。画像に写りこんだ通行人の顔には、ボカシが入るよう編集されていますが、不完全です。運悪くそのまま公開されている気の毒な人も少なくありません。

    ストリートビューの法的な問題点は主に2つあります。

    プライバシー

    まず、自宅の様子が公開されるという「プライバシー」の問題。人格権と直結する大切な概念ですが、公道から見える建物の外壁や、庭を囲む柵などの撮影については、プライバシーを持ち出しづらいのが現状です。室内の様子が写りこまない限り合法といえます。

    ただ、自宅の外観も、他の情報と組み合わせて個人が特定できるなら「個人情報」であり、個人情報保護法に反すると指摘する余地はあります。

    肖像権

    一方で、顔を撮影するという「肖像権」の問題。人の容貌も、原則として本人の許可なく記録することはできません。その了解を得なければ、被害者が慰謝料を請求する理由としても十分です。ストリートビューのプロジェクトには、肖像権と対峙できるほどの重要な社会的意義(報道・言論の自由など)が託されているとも思えません。まして、窓際で着替えている様子や、ラブホテルから出てくる男女を、その容貌が判別できるかたちで公開するなどは、プライバシー侵害とも結びつき、ストリートビューの不法行為性の疑いはより色濃くなります。


    2013年10月22日火曜日

    携帯をのぞき見すること

     浮気などの証拠を見つけようとして、持ち主に断りもなく、携帯電話の記録を覗き見ることに、違法性はないのでしょうか。

    信書開封罪(刑法133条)

    他人の携帯電話に届いたメールを覗き見ることは、「通信の秘密」を侵す行為です。他人宛ての手紙を勝手に読もうとして、封筒の口を破る行為に近いです。だとすれば、信書開封罪(刑法133条)に該当しないのでしょうか。

    信書開封罪の対象である「信書」とは、特定の人に意思を伝達する文書であり、郵便の封書が典型。携帯電話のメールは「信書」に含まれないので、処罰の対象外になります。

    行動監視ツールをインストールした場合

    行動監視ツールなどを夫の携帯電話やスマートフォンにこっそりインストールして利用するのは違法になります。 その行動監視結果を不用意に第三者に公表した場合には、名誉毀損が成立し、損害賠償や処罰の対象となることもあるでしょう。

    行動監視ツールは、(1)本人の同意がなければ物理的にインストール不可能な仕様になっており、かつ、(2)現に本人の同意があるのでない限り、違法なスパイウエアの1種として扱われます。

    そして、刑法上では、不正指令電磁的記録の作成罪、提供罪、供用罪、取得罪、保管罪(刑法168条の2、168条の3)として処罰されることがあります。

    さらに、行動監視ツールがクラウド型のときは、サービスを提供しているプロバイダについて電気通信事業法違反(通信の秘密を侵害する罪)が成立することがあります。

    例外として、一方の配偶者が認知症等の病気になり、他方の配偶者がその後見人になっている場合があります。後見人は本人の代わりに行動できますし、本人は正常に同意をすることができないので、このような場合には同意なしにインストール、利用することができます。


    不正アクセス罪

    携帯電話にセキュリティ・ロックがされている場合はどうでしょうか。

    持 ち主が設定したパスワードを入力しなければ携帯電話を使えないようにしていたのに、他人が持ち主の誕生日などを適当に入れたことで、偶然にパスワードが通 り、保存されていたメールを勝手に読んだ場合は、不正アクセス罪(不正アクセス行為禁止法3条、8条)に該当しないのでしょうか。

     不 正アクセス罪とは、情報を管理するサーバーコンピュータに、不正入手した他人のIDやパスワードを使って侵入することにより、他人になりすますネット犯罪です。たとえば、自分のパソコンで他人のふりをして、ウェブメールのサイトにログインし、メールを盗み見るなどの行為が想定されます。たとえば、通信回線を通して密かにロックを解除し、監視ツールをインストールした場合には、不正アクセス罪が成立することがありえます。

    一方、モバイルを直接操作した場合には、不正アクセス罪にはなりません。 他人が携帯電 話を使えないよう設定する場合のパスワードは、いわば携帯電話のスイッチ代わりに用いられるもので、そのパスワードを破ったからといって、不正アクセ ス罪が成立するわけではありません。


    しかし、携帯電話は、個人情報の宝庫です。電話帳を見れば、仕事関係や交友関係が一目で判明します。

    こうした個人情報を盗み取る行為を、犯罪として取り締まらないのは、なぜでしょうか。

    それは、携帯電話のメールの覗き見が実際に問題になるとしても、浮気がバレるなどのプライベートな場面が大半だからでしょう。何か大きな社会的問題でも生じない限り、法規制の動きは起こらないと考えられます。



    損害賠償請求

    携帯電話に保存された情報を勝手に覗かれたことで、プライバシーが侵害され、精神的な苦痛を受けたとして、民事上の慰謝料を請求する余地があります。

    夫婦であっても、お互いに独立した個人ですし、相手は自分の所有物ではありません。互いに家庭外の生活や秘密事項があって当然ですし、携帯電話の行動履歴や通信履歴は個人のプライバシーの一部です。

     したがって、妻が夫の同意なしに携帯メールをチェックした場合、プライバシー侵害として損害賠償の原因となることがあります。これはケースにもよりますが、夫婦であろうが他人同士であろうが原則的には同じです。

    ただ、慰謝料が認められるとしても、せいぜい数万円から10万円程度でしょう。

    それでは、他人の携帯電話を覗くとして、どの段階からプライバシーの侵害が発生すると考えられるのでしょうか。

    メールの内容まで読まなくても、いつ、誰からメールが届いたのか(誰にメールを出したのか)のリストを覗いただけで、その人のプライバシーを侵害することになり、慰謝料の支払いを求められる可能性があります。通信の秘密の保障は、通信の内容だけでなく、通信そのものの「存在」にまで及ぶためです。


    不倫が発覚したら訴訟証拠として使えるか

    一般に、行動監視が警察などによって令状なしに実行された場合、その監視結果としてのデータは違法収集証拠として刑事手続き上の証拠能力が認められない場合があります。

    これに対し、民事の訴訟では、原則として、どのような証拠でも証拠能力が肯定されます。

    そのため、もし不倫などが発覚して離婚訴訟になった場合、離婚訴訟は民事の訴訟ですので、同意なしに収集された行動監視結果のデータも「不貞行為」を証明するための証拠として用いることができます。

    この問題について過去の裁判の中で直接に判断を示したものはありません。しかし、一般に、興信所によって作成された調査報告書、こっそり録音した録音テープなどは、離婚訴訟等において証拠として認められてきました。おそらく、電子的なツールによる行動監視結果データも同じ扱いになるものと思われます。

     ただし、違法な証拠を用いて民事訴訟で勝訴しても、罪が消えるわけではないので、起訴されれば有罪となり服役することになります。 これは、調査依頼を受けた興信所や探偵社なども同様です。

    例えば、不正アクセスにより証拠を入手したような場合には不正アクセス罪として別途処罰されることになります。他人の家に勝手に入り込んで持ち出した書類等も民事訴訟では証拠になりますが、その場合にも勝訴しても住居侵入罪で服役しなければならないのです。

    2013年10月21日月曜日

    ネットコンテンツビジネスと著作権

    ブログで本を紹介する場合、その表紙画像を載せる行為は、著作権の侵害になるのでしょうか。

    法理論的には、著作権者に無断でネット上に作品を載せる行為は、複製権や公衆送信権の侵害に当たります。損害賠償責任が生じたり、刑事事件として立件されたりする可能性もあります。

    「引用」だから著作権侵害にならないという人もいるかもしれません。著作権法では、批評などの目的で他人の著作物の一部を引用することが条件付きで認められています。ただ、ブログの批評対象は本の内容であって、表紙ではないから「引用」でないとも捉えられます。

    これは、白黒の判別が難しいグレーゾーンです。つまり、法に触れる可能性があるということです。

    では、自分の行為がグレーゾーンに該当する場合、すべきかどうかの判断はどうすればいいのでしょうか。
    ポイントは2つあります。
    ① その行為で著作権者の収入機会を奪っていないか。
    ② 著作権者の感情を極端に害していないか。

    著作権者の収入機会を奪う行為、批評を超えて、著作権者や作品の尊厳を傷つける行為は「黒」に近くなります。

    著作権者との係争を抱えつつ、全文検索などのビジネスを進めるGoogleやamazonなどの米国企業に対し、コンテンツビジネスではほとんど存在感を示せない日本企業。この差は、グレーゾーンにあえて踏み込むしたたかさを持てるかどうかの違いが一因なのかもしれません。

    2013年10月20日日曜日

    撮影禁止の建物を合法的にブログ掲載する方法

    撮影禁止・制限がされている建造物を撮影し、それをブログに掲載したり出版したりした場合、どのような法律的な問題が生じるのでしょうか。

    著作権

    建造物に著作権が認められるのは例外的。また、仮に著作権が認められても、著作権法46条の規定により、写真撮影して出版物などに掲載しても著作権侵害とはなりません。

    「パブリシティ権」の問題

    神社仏閣などを撮影し、広告に使うケースを考えてみましょう。神社仏閣の写真が顧客の目にとまり、業者に儲けをもたらす可能性があります。そこで、そのような顧客吸引力を保護するために「パブリシティ権」という概念があります。

    しかし、現時点での最高裁判所の判断は、芸能人やスポーツ選手など、人間のみに認めるというものです。神社仏閣のパブリシティ権は法律上保護されていません。

    『敷地』管理権の侵害

    撮影禁止ルールを破って写真を撮る行為は、神社仏閣の『敷地』管理権の侵害として、問題が処理され得ます。写真撮影を制限する対応は、その神社や寺院などが持つ敷地の管理権(「所有物の使用、収益」)を根拠に許されるわけです。

    民法206条は、一般論として「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定めています。

    地主が自分の土地を使ってトクをしようとする行為は、原則として他の誰にも差し止められません。これは「私的所有権絶対の原則」と呼ばれ、国家にも干渉されない神聖な権利だとされています。

    宗教団体が利益を追求しない存在であったとしても、あるいはその建造物が文化や歴史と結びついた公共財であったとしても、敷地を所有していれば、その所有権は絶対であり、敷地内でルールに反して撮影すれば、不法行為として、損害賠償を求められる可能性があります。

    ただ、撮影禁止の施設であっても、公道からの撮影であれば、プライバシー侵害など別の問題が生じない限り、法律上許されます。撮影料を請求されても支払うかどうかは自由です。

    なお、敷地内から撮影する場合、不法行為の成否は、敷地管理者が看板などを立てて、撮影禁止のルールを明示しているかどうかが分かれ目になります。

     撮影禁止の看板が設置されていなかったため、敷地内での撮影が不法行為にならないとされた判例があります。私有地に根を下ろすカエデの大木を、カメラマンが地主に断りなく撮影し、写真集にまとめて出版したケースに対してです。

    このケースでは、「撮影には許可が必要」との看板が設置される以前に、カメラマンがカエデの大木を撮影し、土地所有者の許可を得ずに出版したことに対し、原告の土地所有者が所有権の損害だとして、出版差し止めと損害賠償を求めましたが、原告が敗訴しました。

    撮影時に看板が設置されていれば、損害賠償が認められた可能性が高いでしょう。


    2013年10月19日土曜日

    インターネット上の名誉毀損

     1. ネット上に事実無根の自分の悪評が書かれた場合

    インターネット上の誹謗中傷は依然として続いています。決して他人事ではありません。

    このところ、有名人のブログや掲示板に誹謗中傷や脅 迫的な書き込みを行って検挙されるケースが見られます。根も葉もないウワサを真に受けた人たちが集団的に攻撃的な書き込みを行い、いわゆる「炎上」に至ら せるケースも多くなっています。

    従来は「2ちゃんねる」のような悪口サイトが中心でしたが、最近は、就職や結婚などのクチコミサイトやツイッターなどにも書き込まれることがあります。そのなかには過激で悪質なものも含まれており、被害者は思わぬダメージを受けてしまいます。

    こうした名誉毀損や脅迫行為は、民事的には不法行為(民法709条)、刑事的には名誉毀損罪(刑法230条)や脅迫罪(刑法222条)に該当する可能性があります。

    被害を受けたときの対応としては、民事的には、ブログや掲示板の管理者やホスティング業者に対して記事の削除を求めるとともに、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求によって発信者を特定して、損害賠償などの請求を行うという方法が考えられます。

     この場合、掲示板管理者などの下にはIPログ情報しかないのが通常ですから、その開示を受けたうえで、WHOIS検索(IPログの接続情報を調べるサービ ス)によって判明するISP(インターネットサービスプロバイダ)事業者に対して、第二段階の開示請求を行うことになります。

    ISP事業者の下には、問題の投稿の日時に当該IPアドレスを付与した契約者に関する情報があるので、これによって投稿者を特定することができます。その 際、ISP事業者がIPログ情報を保存する期間は、短いところでは2カ月程度しか保存されないとも言われていますので、迅速に対処する必要があるでしょ う。

    情報の流通による権利侵害が明白と事業者側が判断できない場合には裁判によることになりますが、第一段階の掲示板管理者などに対する場面では裁判所も開示の仮処分を認める傾向にありますので、短期間に最終のISP事業者の下までたどり着けることが多いと言えます。

    削除請求を内容証明郵便で送付

    被害に遭ったら、まずサイト管理者(コンテンツプロバイダ)に削除を求めましょう。その場合は、メールや問い合わせフォーマットを使っても構いませんが、被害個所を特定して「ここは不当なので削除せよ」と内容証明を送るのが無難です。これで大方は消してもらえ、解決に至ります。

    やっかいなのは、削除を拒否された場合です。また、再び中傷を書き込まれたときに備えて、発信者が誰なのかを知っておきたいということもあるはずです。しかし、サイト管理者は表現の自由や個人情報保護を盾に「消さない」とか「情報は出せない」といってくることもあります。


    プロバイダ責任制限法に基づいた仮処分申請

    サイト管理者が、表現の自由や個人情報保護を根拠に、「消さない」とか「情報は出せない」といってくるときは、2002年に施行されたプロバイダ責任制限法に基づいた仮処分申請を行います。この法律は、被害者救済を重視しています。

    リスクを避けたいと考えるサイト管理者は、違法情報であればおおむね削除しますし、持っているIPアドレスとタイムスタンプ(発信日時)を出してくることも多くなりました。

     この2つが入手できれば、サイトへの投稿を媒介する接続業者(アクセスプロバイダ)を特定し、発信者(契約者)を突き止める手がかりが得られたことになります。書き込みが消され、発信者につながる情報を得ることができれば、そこで矛を収めるという選択肢もありえます。

    損害賠償請求訴訟

    さらに、発信者に謝罪ないしは何らかの賠償をさせたい場合、IPアドレスからネット検索などで特定した接続業者に対して「発信者の氏名・住所の開示」を請求する訴訟を起こすことになります。

    その際、訴える側に有利に働くのが、2010年4月8日に最高裁が出した判決です。これは、ネット上で名誉毀損などに当たる書き込みがなされた場合、接続業者に発信者情報を開示する義務があるとしたものです。実際に熾烈な争いになることはまずなく、数回程度の口頭弁論で終わることも多いです。 こうして、発信者本人が判明すれば、今度は発信者、すなわち加害者を名誉毀損で民事訴訟に持ち込めば好いでしょう。

    ただし、示談になることもよくあります。「2度とやらない」という旨の念書を取り、慰謝料を受け取ります。

    しかし、示談での慰謝料は高額を期待できないことも多く、判決になれば弁護士費用は損害額の1割程度しか認められません。裁判に1、2年近くかかることもあり、その間のコストを考えれば経済的合理性を欠くことになってしまいます。


    悪質で被害が重い場合は警察に「被害届」を出す 

     「2ちゃんねる」などの一部の掲示板では、民事裁判手続きを事実上無視しているため、発信者情報を遡ることが困難になっています。

     被害が重い場合などは、刑事事件に発展する可能性も高くなりますので、警察への被害届提出や告訴を検討することになるでしょう。 この点、「2ちゃんねる」などでは民事裁判手続きが無視されるために、一般的に刑事手続きによらなければならない現状があり、刑事法の謙抑性に照らすと憂慮される状況となっています。

    また、刑法に定める名誉毀損罪で告訴を試みても、警察や検察での立件が難しい面があります。

    さらに、①内容に公共性がある、②目的に公共性がある、③内容が真実と証明できる、の3点を満たせば罪に問えません。特に③の真実についての論点が重要になりますが、ネット上の言論の真実性については事案に応じて裁判所の個別判断になります。

    ま た、IPアドレスなどのアクセスログ(利用履歴)の保存期間は法律で定められていません。そのため、大手プロバイダでも3カ月~半年ぐらいしか保存しない ことが多いのです。しかも最近の傾向として、どんどん短くなってきています。削除だけでなく、発信者を探り出すには、早めに動き出すことが大切です。


    2. クチコミサイトでお店の悪口を書かれたら

    飲食店やホテルを選ぶときに役立つ口コミサイト。実際に足を運んだユーザーが書き込むリアルな評価が人気の秘密です。しかし一方で、悪口を書き込んで店とトラブルになることもあるようです。

    真っ先に思い浮かぶのは民事における損害賠償請求ですね。また、名誉毀損は犯罪行為でもあります。3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金という刑事罰に処されるおそれがあるのです(刑法230条)。

    たとえばラーメン店がカルト集団と一体であるかのような書き込みをした男性が名誉毀損罪に問われた裁判では、2010年3月、最高裁が被告側の上告を棄却。罰金30万円の有罪判決が確定しました。

    どのような書き込みをしたら罪に問われるのでしょうか。

    意見の表明なら、名誉毀損罪にあたりません。

    名誉毀損罪は、事実の摘示が要件の一つ。たとえば『店にゴキブリがいた』という事実を書いてはじめて名誉毀損罪に問われる可能性が生じます。単に『おいしくない、汚い、接客が気に入らない』と感想を書くだけなら表現の自由です。

    しかし、単に感想を述べるだけでは説得力に欠けてつまらないでしょうから、自分の意見を裏づけるために、客観的事実を書くケースもあるでしょう。

    この場合は、事実が真実であるかどうかが分かれ目になります。ウソをついたら、名誉を傷つけたとして名誉毀損罪になりえます。

    また、虚偽の情報でお店の経済的評価を貶めたり、営業に支障をきたせば、信用毀損罪・業務妨害罪に処されます(刑法233条)。信用毀損罪・業務妨害罪の法定刑は、名誉毀損罪と同じです。どちらにしてもウソはご法度です。

    では、真実なら何を書いてもいいのでしょうか。

    そうではありません。名誉毀損罪は、公共の利害にかかわる事実で、目的が公益を図ることだった場合、それが真実なら罰しないことになっています(刑法230条の2)。逆に言えば、内容に公共性がなかったり、目的に公益性がなければ、本当のことを書いても名誉毀損罪が成立します。

    個人のプライバシーを暴くような書き込みは公共性がないためにアウトです。

    ただし、通常のグルメ批評であれば、刑事事件として立件される可能性はほとんど考えられないでしょう。一般的に飲食店は公衆を相手に商売しているので、料理やサービスに関するレビューは利害公共性があると考えられます。また目的公益性に関しても、個人的な嫌がらせや復讐心であることを証明するのは現実的には難しい場合もあるでしょう。


     なお、民事での損害賠償も同じ枠組みです。店に損害が発生しても、内容が真実で公共性があり、目的に公益性があれば、賠償請求は認められません。

    3. 犯罪にあたる書き込み
     
     ネット上の書き込みや投稿を巡っては民間団体「インターネット・ホットラインセンター(IHC)」が、薬物広告や児童ポルノといった存在自体が違法の「違法情報」などを中心に民間からの通報を受理しています。