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2013年11月30日土曜日

知財の基礎 全般

発明,考案の保護
  • 発明の技術情報営業秘密として管理することにより,その発明について不正競争防止法による保護を受けることができる。
  • 方法の考案について,実用新案法による保護を受けることができない
  • 天然物から人為的に抽出した成分について,特許法による保護を受けることができる。

2013年11月26日火曜日

特許権侵害訴訟

特許権侵害訴訟は原告側も被告側も通常業務以外にかなりのエネルギーが必要になります。 近年では、中小企業においても訴訟事件が増えてきました。

侵害を発見した場合は、確認、警告、差止・損害賠償という流れで対応します。侵害であると警告された場合は、「特許原簿で確認」→「特許で無効理由があるかを確認」→「特許無効審判の請求」又は「実施の中止」という流れで対応します。

ここでは,特許紛争を起こす側が留意すべき点について, 検討してます。

  • 警告状を出すべきか
  • 特許侵害といえるか?
    •  特許権の存在の確認
    •  クレームの確認
    •  対象製品・対象行為の特定
    •  クレームを侵害しているか
  • 勝てる見込み
    •  文言該当性
    •  立証可能性
    •  有効性
      • 特許発明が新規性・進歩性を有しない場合等には,特許無効審判が請求されると,特許が無効にされます(特123条)。
  • 訴訟の負担
    • 侵害者特許による反撃可能性
    • 費用
    • 時間
    • 不安定な法的状態
    • 評判の低下
  • 訴訟でできること
    • 特許が侵害されている場合,差止請求(特100条)と損害賠償請求(民709条)が主な手段となります。
  • 仮処分とは? 
    •  仮処分は,簡易・迅速な手続で,差止めを実現して相手方の競業行為を実質的に規制することができる手続ですので,訴訟戦略上重要です。
    •  仮処分の要件は,①被保全権利の存在、②保全の必要性 です。①については,本案の「1特許権が侵害されていること又は侵害されるおそれがあること」と同じです。 ②については,債権者(ここでは,特許権者)に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため差止めを必要とすると認められるかということです(民事保全法23条2項)。 具体的には,仮処分命令が発令されないことによる債権者の不利益と,仮処分命令が発令されることによる債務者(ここでは,侵害者)の不利益とが比較衡量して判断されます。 損害の立証が困難である場合(ex.債権者が値下げを余儀なくされる場合),債権者の実施品が主力製品である場合,債務者が債権者の損害を賠償するに十分な資力を有しない場合等の事情は,保全の必要性があると判断される方向に働きます。 
    • 差止めの仮処分のメリットは,簡易・迅速な手続で,本案とほとんど同じ内容の給付を実現することができることです。 そのため,「満足的仮処分(断行の仮処分)」とも呼ばれます。 
    • 仮処分のデメリットは,ほとんどのケースで,担保として保証金が必要となることです。 また,別途本案訴訟を提起するのが原則であり,提起しない場合には仮処分命令が取り消されるときもあります(民事保全法37条3項)。 
    • さらに,無効の蓋然性がある,均等論の主張を含む等,複雑な論点が予想される場合には,仮処分の迅速性の要請に適さないとして,取下げが勧告されることも少なくありません。 
    • 仮処分は,市場に極めて速いスピードで侵害品が氾濫し始めた場合に起こすのが伝統的な考え方ですが,最近では,差止めという強力な効果を早期に得ることができる方法であるため,仮処分提起により相手方を萎縮させて,早期の和解により実施料を獲得する手段としても用いることがあります。
  • 訴訟を避けて解決したい場合
    •  訴訟は,費用が高く時間がかかりがちであるというデメリットがあります。 また,訴訟は,公開の手続ですから(憲82条),紛争の当事者であることを公にしたくない場合(業界大手同士の紛争(業界に混乱を巻き起こす),公益的な主体(大学,金融機関等)の紛争)にも選択しづらい手段です。 このような場合,安価,迅速で非公開の手続として,調停や特許庁の判定があります。
  • 輸入品の場合
    •  侵害品が外国製品であり,個人輸入や小さな輸入代理店により,少しずつ,無数の輸入がなされるような場合には,一度日本国内に輸入されてしまうと,個々に侵害を問うことが事実上不可能になってしまいます。  このような場合には,関税定率法による輸入差止申立て(いわゆる「水際取締り」,「水際措置」)により,侵害品の輸入を差し止めることができます。 水際取締りがうまくできれば,国内での侵害排除措置を行う必要がなくなるので,有効な手段と言えます。  具体的には,特許権者は,自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に,税関長に対し,当該貨物の輸入を差止め,認定手続を執るべきことを申し立てることができます(関税法69条の13)。









2013年11月25日月曜日

特許権の要点2

特許権の活用

知的財産の活用として,ライセンスがあります。 技術の複雑化・高度化,特許の錯綜により,現在の特許ライセンスは,単純な契約では収まりきらないことも多くなりました。 ライセンス収入の極大化,収益の極大化を目指して,複雑なスキームを組むことも珍しくありません。 また,訴訟やライセンス以外にも,知的財産の活用の方法がいくつも考えられます。

ライセンス契約とは、自社の持つ特許や実用新案,意匠,商標,著作権等の知的財産を他社に使用させる契約のことです。 自社の知的財産をライセンスする側は「ライセンサー」と呼ばれ、ライセンスを受ける側は「ライセンシー」と呼ばれます。 このライセンサーとライセンシー間で、「ライセンスの対象」「利用の態様」「独占か非独占化」「期間」「金額」などの条件を定めなければなりません。

独占か非独占か
改良発明の取り扱い

ライセンス収入を得ることは「利益率の向上」「競合他社への競争力の維持」「開発リスクのヘッジ」など企業にとって大きなメリットとなります。












2013年11月24日日曜日

特許法の要点1

  • 特許法の目的: 発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること(1条)
  • 「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいいます(2条1項)。
    • 金融保険制度・課税方法などの人為的な取り決めや計算方法・暗号など自然法則の利用がないものは保護の対象とはなりません。
    • 発見そのもの(例えば、ニュートンの万有引力の法則の発見)は保護の対象とはなりません。
    • 創作は、高度のものである必要があり、技術水準の低い創作は保護されません。
  • 特許要件
    • 産業上利用できる、新規性、新規性喪失の例外、進歩性、先顧主義
  • 特許出願の手続
    • 願書
    • 明細書
    • 特許請求の範囲
    • 図面
    • 要約書
    • 当業者
    • 国内優先権
  • 国内優先権を主張するには、先の出願から1年以内に後の出願をしなければならない。 
    (1)出願
    出願するには、法令で規定された所定の書類を特許庁に提出する必要があります。 なお、我が国では、同じ発明であっても先に出願された発明のみが特許となる先願主義を採用していますので、発明をしたら早急に出願すべきでしょう。また、特許出願以前に発明を公表することはできるだけ避けることが賢明です。
    (2)方式審査
    特許庁に提出された出願書類は、所定の書式通りであるかどうかのチェックを受けます。 書類が整っていない、必要項目が記載されていない等の場合は、補正命令が発せられます。
    (3)出願公開
     出願された日から1年6月経過すると、発明の内容が公開公報によって公開されます。
    (4)審査請求
     特許出願されたものは、全てが審査されるわけではなく、出願人又は第三者が審査請求料を払って出願審査の請求があったものだけが審査されます。 審査請求は、出願から3年以内(注)であれば、いつでも誰でもすることができます。
    (5)みなし取り下げ(審査請求期間内に審査請求なし)
     出願から3年以内に審査請求のない出願は、取り下げられたものとみなされます。以後権利化することはできませんのでご注意下さい。
    (6)実体審査
     審査は、特許庁の審査官によって行われます。 審査官は、出願された発明が特許されるべきものか否かを判断します。 審査においては、まず、法律で規定された要件を満たしているか否か、すなわち、拒絶理由がないかどうかを調べます。
     主な要件としては以下のものがあります。
     1 自然法則を利用した技術思想か
     2 産業上利用できるか
     3 出願前にその技術思想はなかったか
     4 いわゆる当業者(その技術分野のことを理解している人)が容易に発明をすることができたものでないか
     5 他人よりも早く出願したか
     6 公序良俗に違反していないか
     7 明細書の記載は規程どおりか
     (7)拒絶理由通知
     審査官が拒絶の理由を発見した場合は、それを出願人に知らせるために拒絶理由通知書を送付します。
     (8)意見書補正書
     出願人は、拒絶理由通知書により示された従来技術とはこのような点で相違するという反論を意見書として提出したり、特許請求の範囲や明細書等を補正することにより拒絶理由が解消される場合には、その旨の補正書を提出する機会が与えられます。
    (9)特許査定
     審査の結果、審査官が拒絶理由を発見しなかった場合は、特許すべき旨の査定を行います。 また、意見書や補正書によって拒絶理由が解消した場合にも特許査定となります。
     (10)拒絶査定
     意見書や補正書をみても拒絶理由が解消されておらず、やはり特許できないと審査官が判断したときは、拒絶をすべき旨の査定を行います。
     (11)拒絶査定不服審判請求
     拒絶査定に不服があるときは、拒絶査定不服審判を請求することができます。
    (12)審理
     拒絶査定不服審判の審理は、三人または五人の審判官の合議体によって行われます。 審判官の合議体による決定を審決といいます。 審理の結果、拒絶理由が解消したと判断される場合には特許審決を行い、拒絶理由が解消せず特許できないと判断される場合には、拒絶審決を行います。
     (13)設定登録(特許料納付)
     特許査定がされた出願については、出願人が特許料を納めれば、特許原簿に登録され特許権が発生します。 ここではじめて、特許第何号という番号がつくことになります。 特許権の設定登録後、特許証書が出願人に送られます。
    (14)特許公報発行
     設定登録され発生した特許権は、その内容が特許公報に掲載されます。
    (15)無効審判請求
     特許権が設定登録された後でも無効理由がある場合、何人も無効審判を請求することができます。
    (16)審理
     無効審判請求の審理は、三人または五人の審判官の合議体によって行われます。 審理の結果、特許に無効理由がないと判断された場合は、特許の維持の審決が行われます。 一方、特許に無効理由があると判断された場合は、特許無効の審決が行われます。
    (17)知的財産高等裁判所
     拒絶査定不服審判の拒絶審決に対して不服がある出願人、特許無効審判の審決に対して不服がある当事者は、知的財産高等裁判所に出訴することができます。

    2013年11月23日土曜日

    著作権⑥

    1.  権利侵害
      1. 侵害とみなす行為
        1.  輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
        2. 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、 頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為
      2. 著作権が「侵害」された場合の対抗措置
        1.  「民事」の対抗措置 
          1. あっせん
          2. 差止請求  著作権の侵害を受けた者は、侵害をした者に対して、「侵害行為の停止」を求めることができます。また、侵害のおそれがある場合には、「予防措置」を求め ることができます(第112条、第116条)。 
          3. 名誉回復等の措置の請求  著作者又は実演家は、侵害者に対して、著作者等としての「名誉・声望を回復するための措置」を請求することができます(第115条、第116条)。  例えば、小説を無断で改ざんして出版されたような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置がこれに当たります。 
          4. 損害賠償請求  故意又は過失により他人の権利を侵害した者に対して、侵害を被った者は、侵害による損害の賠償を請求することができます(民法第709条)。侵害を被っ た者は損害の額を立証しなければなりませんが、それを軽減するために、侵害による損害額の「推定」ができる規定が設けられています(第114条)。 
          5. 不当利得返還請求  他人の権利を侵害することにより、利益を受けた者に対して、侵害を被った者は、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には、その利益が残っている範囲で の額を、知っていた場合には、利益に利息を付した額を、それぞれ請求することができます(民法第703条、第704条)。  例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その出版物の売上分などの返還を請求できます。 
        2. 刑事の対抗措置
          1.  著作権の侵害は「犯罪行為」であり、権利者が「告訴」を行うことを前提として,「3年以下の懲役」又は「300万円以下の罰金」という罰則規定が設けられています(第119条第1号)。
    2. 条約
      1. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
      2. TRIPs協定
      3. 著作権に関する世界知的所有権機関条約
      4.  
         

    2013年11月22日金曜日

    著作権⑤ 出版権と著作隣接権

    1. 出版権
      1. 複製権者は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。 
        1. 出版権は、複製権者の承諾を得た場合に限り、譲渡し、又は質権の目的とすることができる。
        2. 出版権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更若しくは消滅(混同又は複製権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
      2. 出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。  
    2. 著作隣接権
      1. 実演家
        1. 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)。 
        2. 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者。 
        3. 実演家の権利
          1. 氏名表示権
          2. 同一性保持権
          3. 録音権及び録画権
          4. 放送権及び有線放送権
          5. 送信可能化権
          6. 有線放送に対する報酬請求権
          7. 二次使用料を受ける権利
          8. 譲渡権
          9. 貸与権等    
      2. レコード製作者
        1. レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)
        2. レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者
        3. レコード製作者の権利
          1. 複製権
          2. 送信可能化権
          3. 二次使用料を受ける権利
          4. 譲渡権
          5. 貸与権等    
      3. 放送事業者
        1. 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信
        2. 放送事業者 放送を業として行う者
        3. 放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 再放送権及び有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. テレビジョン放送の伝達権  
      4. 有線放送事業者
        1. 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信
        2. 有線放送事業者 有線放送を業として行う者
        3. 有線放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 放送権及び再有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. 有線テレビジョン放送の伝達権  

    2013年11月21日木曜日

    著作権④ 著作権

    1.  著作権に含まれる権利の種類
      1.  複製権 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。 
        1. 楽譜やメロディーを暗譜(暗記)しても、楽曲の複製とはならない。
        2. レシピ自体をコピーすれば「複製」となるが、レシピどおりに料理を作っても、レシピの複製とはならない。なお、レシピに記載された「作り方(方法)」や「料理(文化的所産ではない。)は、著作物ではない。
      2. 上演権及び演奏権 
        1. 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。 
        2. レストランなど営利目的の場所での公衆(不特定多数又は特定多数)へ向けての楽曲の演奏は、その楽曲について「演奏権」の問題となり、「録音物」による再生も同様である。
      3. 上映権 
        1. 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
        2. 映画に限らず、あらゆる著作物について、それらのプロジェクター等を用いた映写は、「上映権」の問題となる。なお、放送・有線放送・インターネット等を用いた公に向けた「送信」が「公衆送信権」である。
      4. 公衆送信権 
        1. 著作者は、その著作物について、公衆送信自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。 
        2. たとえホームページにアクセスする者やダウンロードする者がいなくても、ホームページにアップした時点で公衆送信権の侵害となる。
      5. 公衆伝達権 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。 
      6. 口述権  
        1. 著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。 
      7. 展示権  
        1. 著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。 
      8. 頒布権  
        1. 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。 
        2. 頒布権は映画の著作物の複製物についてのみ認められる権利。映画以外の著作物については、譲渡権、貸与権に相当する。
      9. 譲渡権  
        1. 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつて は、当該映画の著作物の複製物を除く。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。 
      10. 貸与権  
        1. 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除 く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
      11. 翻訳権、翻案権等  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
      12. 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を 専有する。 
    2.  映画の著作物の著作権の帰属 
      1. 映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する
        1. 映画製作者=映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
    3. 私的使用のための複製  
      1. 著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用す ること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、その使用する者が複製することができる。 
        1. 町のダビング業者の所に設置されているセルフサービスの録音機器を使って、音楽CDを無断で複製することは、それが個人的に使う目的の複製であっても、著作権者及び著作隣接権者の了解が必要です。
      2. 翻訳、編曲、変形又は翻案 
      3. 作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示することはできない。
    4. 付随対象著作物の利用
    5. 検討の過程における利用
    6. 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用
    7.  図書館等における複製等
      1. 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(「図書館等」)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
        1. 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合 
        2. 図書館資料の保存のため必要がある場合 
        3. 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合
        4. 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるた めに当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用 いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の 用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒 体に記録することができる。
    8. 引用  
      1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報 資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する 旨の表示がある場合は、この限りでない。  
    9.  教科用図書等への掲載
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ず る学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下同 じ。)に掲載することができる。
      2. 前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    10. 教科用拡大図書等の作成のための複製等  
      1. 教科用図書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生徒の学習 の用に供するため、当該教科用図書に用いられている文字、図形等の拡大その他の当該児童又は生徒が当該著作物を使用するために必要な方式により複製するこ とができる。 
      2. 前項の規定により複製する教科用の図書その他の複製物(点字により複製するものを除き、当該教科用図書に掲載された著作物の全部又は相当部分を複 製するものに限る。以下この項において「教科用拡大図書等」という。)を作成しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知する とともに、営利を目的として当該教科用拡大図書等を頒布する場合にあつては、前条第二項に規定する補償金の額に準じて文化庁長官が毎年定める額の補償金を 当該著作物の著作権者に支払わなければならない。 
    11. 学校教育番組の放送等
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組 又は有線放送番組において放送し、若しくは有線放送し、又は当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として 自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、 及び当該放送番組用又は有線放送番組用の教材に掲載することができる。 
      2. 前項の規定により著作物を利用する者は、その旨を著作者に通知するとともに、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。  
    12.  学校その他の教育機関における複製等
      1. 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使 用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに その複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 
      2. 公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物 を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該 授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができ る。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。  
    13. 試験問題としての複製等  
      1. 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題と して複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとな る場合は、この限りでない。
      2. 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    14. 視覚障害者等のための複製等
      1. 公表された著作物は、点字により複製することができる。
      2. 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。 
    15. 聴覚障害者等のための複製等
      1. 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者 で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識 される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物 と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつて は当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、 当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式 による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
    16. 営利を目的としない上演等
    17. 時事問題に関する論説の転載等
      1. 新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを 除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域におい て受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力すること によるものを含む。)を行うことができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
    18.  政治上の演説等の利用
      1.  公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
      2.  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正 当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地 域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力 することによるものを含む。)を行うことができる。
      3. 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。
    19.  時事の事件の報道のための利用
      1.  写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。 
    20. 裁判手続等における複製
      1. 著作物は、必要と認められる場合には、その必要と認められる限度に おいて、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、 この限りでない。
        1. 裁判手続
        2. 立法又は行政の目的
        3. 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
        4. 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
    21.  行政機関情報公開法 等による開示のための利用
    22.  公文書管理法 等による保存等のための利用
    23.  国立国会図書館法 によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製
    24. 放送事業者等による一時的固定
    25. 美術の著作物等の原作品の所有者による展示
      1.  美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。
    26.  公開の美術の著作物等の利用
    27.  美術の著作物等の展示に伴う複製
      1. 美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第二十五条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。  
    28.  美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等
    29.  プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等
      1.  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。
    30. 保守、修理等のための一時的複製
    31.  送信の障害の防止等のための複製
    32. 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等
    33. 情報解析のための複製等
    34. 電子計算機における著作物の利用に伴う複製
    35. 情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用
    36. 複製物の目的外使用等
    37. 著作者人格権との関係: 著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。 
    38. 保護期間
      1. 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。   
      2. 著作権は、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。)五十年を経過するまでの間、存続する。
        1. 著作者が死亡した日の属する年の翌年から起算する。 
      3. 無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間の満了前にその著作者の死後五十年を経過 していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後五十年を経過したと認められる時において、消滅したものとする。  
      4. 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその創作後五十年以内に公表されなかつたときは、その創作後五十年)を経過するまでの間、存続する。 
      5. 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)を経過するまでの間、存続する。
      6. 継続的刊行物等の公表の時
      7. ベルヌ条約等の条約の加盟国で、その本国において定められる著作権の存続期間が第五十一条から第五十四 条までに定める著作権の存続期間より短いものについては、その本国において定められる著作権の存続期間による。  
        1.  
    39.  著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。 
      1. 保護期間が満了したとき。
      2. 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法 (明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条 (残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。 
      3. 著作権者である法人が解散した場合において、その著作権が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第二百三十九条第三項 (残余財産の国庫への帰属)その他これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
    40. 著作権の譲渡
      1. 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。 
        1. 複製権のみを譲渡することもできる。
      2. 著作権を譲渡する契約において、二次的著作物を創作するための翻訳・翻案権等(第二十七条)又は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(第二十八条)が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
      3. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限 
          1. 相続その他の一般承継による著作権の移転は、登録がなくとも第三者に対抗することができる。
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限 
    41. 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。  
    42. 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。 
      1. 利用許諾を与えても著作権者の地位には影響しないため、著作権者は、他人に利用を許諾した後であっても、その著作権を他人に譲渡することができる。
      2. 著作権譲渡と異なり、著作物の利用許諾は、独占的利用許諾の特約がある場合を除き、同時に複数の者に与えることができる。
    43. 著作権は、これを目的として質権を設定した場合においても、設定行為に別段の定めがない限り、著作権者が行使するものとする。 
    44. 登録
      1. 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。 
      2. 著作権者又は無名若しくは変名の著作物の発行者は、その著作物について第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録を受けることができる。 
      3. プログラムの著作物の著作者は、その著作物について創作年月日の登録を受けることができる。ただし、その著作物の創作後六月を経過した場合は、この限りでない。
      4. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限   

    2013年11月20日水曜日

    著作権③ 著作者人格権

    1. 著作者人格権は、著作者の人格的・精神的利益が保護されるという権利であって財産権ではない。
    2. 公表権: 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。  
      1. 著作者は、公表するか否か、いつ、どのような方法で公表するかについても、決定権を有する。
      2. 著作者は、その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合には、当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示することについて同意したものと推定される。したがって、著作者は、特約により著作権の譲受人による公表を不可とすることもできる。 
    3. 氏名表示権
      1. 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。
      2. 原著作物の著作者の氏名表示権は、二次的著作物についても及ぶ。 
      3. 著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。  
        1. 例えば、伴奏者の人数、CDジャケットのデザイン上の制約、歌謡曲等の音楽のジャンルの関係上伴奏者の名前が省略されていることがありますが、レコード業界の長い間の慣行に照らして公正な慣行といえるのであれば、実演家の表示を省略されてもやむを得ないことになります。 
    4. 同一性保持権
      1. 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない。 
    5. 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。  
    6. 著作者人格権の一身専属性
      1. 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。 相続の対象ともならない。
      2. 出版社といえども、その目的を問わず、著作物に改変を加えることはできない。

    2013年11月19日火曜日

    著作権②

    1. 著作権の目的とならない著作物(法13条)
      1. 憲法その他の法令
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの 
      3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
      4. 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
    2. 著作者=「著作物を創作する者」(法2条1項2号)
      1. 監修者など実際に執筆や創作に関与していない者は著作者ではない。
    3. 著作者は、著作物を創作した時に自動的に「著作者」となり、その地位や権利を取得するのに登録その他特別な方式を必要としない。無方式主義。
    4. 著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代 えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。  
      1. 「推定」は反証できる。「みなす」は反証できない。
    5. 職務上作成する著作物の著作者: 法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除 く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等と する。
      1. ©マーク は通常の著作者表示の方法とはいえず、法人の場合には、正式な名称か周知の変名(有名な略称)を表示しなければ、著作者としての推定を受けられない。 
      2. 先生と生徒の間には職務著作の規定は適用されず、実際に論文を書いた生徒が著作者である。
      3. 従業員が起案して創作した著作物であっても、 法人その他使用者の発意に基づく著作物であるから職務著作となる。
      4. 独立して業務を行なう会社に委託した場合、当該受託会社の従業員の創作した著作物の著作者は受託会社(受託会社の職務著作)である。
    6. 映画の著作物の著作者: 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美 術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、職務著作の規定の適用がある場合は、この限りでない。  
      1.  小説家や俳優は、映画の著作物の著作者とはならない。

    2013年11月18日月曜日

    著作権①

    1. 著作権とは、「著作物を創作した著作者に独占的に認められる、著作物の利用に関する財産権」である。
      1. 個人の財産権は、憲法29条により保障される。
    2. 著作物の所有権が買主に移転しても、当然には(別途著作権移転の特約がない限り)、著作権は移転しない。
      1. 著作権は、知的財産権に属するが、主として産業上利用される権利ではないため、産業財産権ではない。
      2. 著作権は民法の特別法であるから、著作権に関する契約場面など著作権法に特に規定がない場合には、民法が適用される。
    3. 著作権法1条(目的)「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
      1. 著作権法では、侵害者に対する刑罰(懲役刑や罰金刑)についても規定している。
    4. 著作権も財産権であるから、その譲渡(売買や贈与)のほか、相続によって移転する。
    5. 著作権法においても契約は当事者間の合意のみによって成立するのであり(著作権法では、著作権の譲渡や利用許諾の方法を特に規定していないため)、著作権の譲渡契約や著作物の利用許諾契約も、当事者間の合意のみによって、合意が成立した時に、契約書など必要とせずに成立する(法61条、63条)。 
      1. 所有権と著作権は別個の権利であるから、所有者が所有物(動産)を質入れするのに、著作権者の承諾は必要ない。
    6. 著作権には「登記」という制度はないものの、「登録」の制度があり、著作権譲渡による著作権の移転は、「著作権移転の登録」をしなければ、第三者に対抗することができない(法77条)。
    7. 不当利得については著作権についても同様であり、例えば、利用許諾を与えていないのに著作物を利用して利益を受けた受益者に対し、著作権者は、不当利得の返還を請求することができる。
    8. 不法行為責任については著作権法においても同様であり、著作権等の侵害を理由として著作権者等が「損害賠償」や「名誉回復のための措置」を請求するには、侵害者側の「故意又は過失」を必要とする(著作権法115条、117条)。
    9. 著作物の要件
      1. 思想又は感情の表現であること
        1. 動物や機械による絵や写真は、人の思想や感情が創作的に表現されたものではなく、著作物ではない。
      2. 創作的なものであること
      3. 表現したものであること
      4. 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
    10. アンケートの集計結果や事務的な文書、論評を伴わない事実のみを伝えるニュースや記事等は、情報の有用性や作成労力に関わらず、著作物ではない(法10条2項)。
    11. 著作物の例示
      1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
      2. 音楽の著作物
        1. 楽譜上に音符等によって書かれていることは要件とされていない。「音」のみで表現された即興演奏や即興歌唱、打楽器のリズムも音楽の著作物に含まれる。
      3. 舞踊又は無言劇の著作物
      4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
        1. 幼稚園児の描いた絵であっても、人の手による創作的な表現物であるから美術の著作物である。 
      5. 建築の著作物
        1. 著作物となり得る建築物は、全ての建築物ではなく、宮殿や寺院など美的要素を含む芸術的価値のある建築物(歴史的価値は問わない。)である。
      6. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
      7. 映画の著作物
        1. 人が関与していない防犯カメラの映像は、その内容に関わらず映画の著作物ではない。 
        2. 父親が撮影したホームムービーの映像は、通常、被写体やアングルの選定に創作性が認められ、かつ、ディスク等に固定されており、映画の著作物である。
      8. 写真の著作物
      9. プログラムの著作物
        1. 文字や文法が著作物とはされないのと同様に、プログラムを作成するために用いられるプログラム言語、規約(プロトコル)、解法(アルゴリズム)には、独立した著作物としての保護が及ばない(法10条3項)。
    12. 二次的著作物とは、基となる他の著作物A(「原著作物」)に「創作的な変更等」を加えて、新たにBとして創作された著作物のことであり、著作権法においては、二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作された著作物をいうと定義されている(法2条1項11号)。 
      1. ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件 最判昭和53年9月7日
      2. 小説のイメージのみを利用し、表現部分を利用していない楽曲は、小説の二次的著作物とはならない。
    13. 編集著作物とは、著作権法においては、編集物(データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものと定義されている(法12条1項)。
      1.  選択したなら配列に工夫がなくても編集著作物。
    14. データベースとは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成 したもの」である(法2条1項10の3)。 「データベースの著作物」とは、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」である(法12条の2第1項)。
    15. 共同著作物=「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(法2条1項12号)
    16. 保護を受ける著作物(法6条)  
      1. 日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物 
      2. 最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたものを含む。) 
        1. 外国人の著作物であって、最初に日本国内で発行されたものでなくとも、最初の発行日から30日以内に日本国内で発行され又は同じ条約加盟国の国民の著作物であれば、日本の著作権法の保護対象となる。
      3. 前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

    2013年11月17日日曜日

    著作権の要点

    1. 著作権とは、「著作物を創作した著作者に独占的に認められる、著作物の利用に関する財産権」である。
      1. 個人の財産権は、憲法29条により保障される。
    2. 著作物の所有権が買主に移転しても、当然には(別途著作権移転の特約がない限り)、著作権は移転しない。
      1. 著作権は、知的財産権に属するが、主として産業上利用される権利ではないため、産業財産権ではない。
      2. 著作権は民法の特別法であるから、著作権に関する契約場面など著作権法に特に規定がない場合には、民法が適用される。
    3. 著作権法1条(目的)「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
      1. 著作権法では、侵害者に対する刑罰(懲役刑や罰金刑)についても規定している。
    4. 著作権も財産権であるから、その譲渡(売買や贈与)のほか、相続によって移転する。
    5. 著作権法においても契約は当事者間の合意のみによって成立するのであり(著作権法では、著作権の譲渡や利用許諾の方法を特に規定していないため)、著作権の譲渡契約や著作物の利用許諾契約も、当事者間の合意のみによって、合意が成立した時に、契約書など必要とせずに成立する(法61条、63条)。 
      1. 所有権と著作権は別個の権利であるから、所有者が所有物(動産)を質入れするのに、著作権者の承諾は必要ない。
    6. 著作権には「登記」という制度はないものの、「登録」の制度があり、著作権譲渡による著作権の移転は、「著作権移転の登録」をしなければ、第三者に対抗することができない(法77条)。
    7. 不当利得については著作権についても同様であり、例えば、利用許諾を与えていないのに著作物を利用して利益を受けた受益者に対し、著作権者は、不当利得の返還を請求することができる。
    8. 不法行為責任については著作権法においても同様であり、著作権等の侵害を理由として著作権者等が「損害賠償」や「名誉回復のための措置」を請求するには、侵害者側の「故意又は過失」を必要とする(著作権法115条、117条)。
    9. 著作物の要件
      1. 思想又は感情の表現であること
      2. 創作的なものであること
      3. 表現したものであること
      4. 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
    10. アンケートの集計結果や事務的な文書、論評を伴わない事実のみを伝えるニュースや記事等は、情報の有用性や作成労力に関わらず、著作物ではない(法10条2項)。
    11. 著作物の例示
      1. 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
      2. 音楽の著作物
        1. 楽譜上に音符等によって書かれていることは要件とされていない。「音」のみで表現された即興演奏や即興歌唱、打楽器のリズムも音楽の著作物に含まれる。
      3. 舞踊又は無言劇の著作物
      4. 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
      5. 建築の著作物
        1. 著作物となり得る建築物は、全ての建築物ではなく、宮殿や寺院など美的要素を含む芸術的価値のある建築物(歴史的価値は問わない。)である。
      6. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
      7. 映画の著作物
      8. 写真の著作物
      9. プログラムの著作物
        1. 文字や文法が著作物とはされないのと同様に、プログラムを作成するために用いられるプログラム言語、規約(プロトコル)、解法(アルゴリズム)には、独立した著作物としての保護が及ばない(法10条3項)。
    12. 二次的著作物とは、基となる他の著作物A(「原著作物」)に「創作的な変更等」を加えて、新たにBとして創作された著作物のことであり、著作権法においては、二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作された著作物をいうと定義されている(法2条1項11号)。
    13. 編集著作物とは、著作権法においては、編集物(データベースに該当するものを除く。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものと定義されている(法12条1項)。
    14. データベースとは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」である(法2条1項10の3)。 「データベースの著作物」とは、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するもの」である(法12条の2第1項)。
    15. 共同著作物=「二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(法2条1項12号)
    16. 保護を受ける著作物(法6条)  
      1. 日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物 
      2. 最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたものを含む。) 
      3. 前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物
    17. 著作権の目的とならない著作物(法13条)
      1. 憲法その他の法令
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの 
      3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
      4. 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
    18. 著作者=「著作物を創作する者」(法2条1項2号)
    19. 著作者は、著作物を創作した時に自動的に「著作者」となり、その地位や権利を取得するのに登録その他特別な方式を必要としない。
    20. 著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代 えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。  
    21. 職務上作成する著作物の著作者: 法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除 く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等と する。 
    22. 映画の著作物の著作者: 映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美 術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、職務著作の規定の適用がある場合は、この限りでない。  
    23. 公表権: 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。 
    24. 氏名表示権
      1. 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。
      2. その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
    25. 同一性保持権
      1. 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けない。 
    26. 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。  
    27. 著作者人格権の一身専属性
      1. 著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。
    28.  著作権に含まれる権利の種類
      1.  (複製権) 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。 
      2. 上演権及び演奏権)著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。 
      3. 上映権) 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
      4. 公衆送信権 著作者は、その著作物について、公衆送信自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。 
      5. 公衆伝達権 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。 
      6. 口述権  著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。 
      7. 展示権  著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。 
      8. 頒布権  著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。 
      9. 譲渡権  
        1. 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつて は、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。 
      10. 貸与権  著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除 く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
      11. 翻訳権、翻案権等  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。
      12. 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を 専有する。 
    29.  映画の著作物の著作権の帰属 
      1. 映画の著作物の著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する
        1. 映画製作者=映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいう。
    30. 私的使用のための複製  
      1. 著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用す ること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、その使用する者が複製することができる。 
      2. 翻訳、編曲、変形又は翻案 
      3. 作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示することはできない。
    31. 付随対象著作物の利用
    32. 検討の過程における利用
    33. 技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用
    34.  図書館等における複製等
      1. 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第三項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
        1. 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合 
        2. 図書館資料の保存のため必要がある場合 
        3. 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合
        4. 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるために当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。
    35. 引用  
      1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。 
      2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。  
    36.  教科用図書等への掲載
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書(小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される児童用又は生徒用の図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するものをいう。以下同じ。)に掲載することができる。
      2. 前項の規定により著作物を教科用図書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が毎年定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    37. 教科用拡大図書等の作成のための複製等  
      1. 教科用図書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童又は生徒の学習の用に供するため、当該教科用図書に用いられている文字、図形等の拡大その他の当該児童又は生徒が当該著作物を使用するために必要な方式により複製することができる。 
      2. 前項の規定により複製する教科用の図書その他の複製物(点字により複製するものを除き、当該教科用図書に掲載された著作物の全部又は相当部分を複製するものに限る。以下この項において「教科用拡大図書等」という。)を作成しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知するとともに、営利を目的として当該教科用拡大図書等を頒布する場合にあつては、前条第二項に規定する補償金の額に準じて文化庁長官が毎年定める額の補償金を当該著作物の著作権者に支払わなければならない。 
    38. 学校教育番組の放送等
      1. 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組又は有線放送番組において放送し、若しくは有線放送し、又は当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、及び当該放送番組用又は有線放送番組用の教材に掲載することができる。 
      2. 前項の規定により著作物を利用する者は、その旨を著作者に通知するとともに、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。  
    39.  学校その他の教育機関における複製等
      1. 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。 
      2. 公表された著作物については、前項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合には、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。  
    40. 試験問題としての複製等  
      1. 公表された著作物については、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製し、又は公衆送信を行うことができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
      2. 営利を目的として前項の複製又は公衆送信を行う者は、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 
    41. 視覚障害者等のための複製等
      1. 公表された著作物は、点字により複製することができる。
      2. 公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことができる。 
    42. 聴覚障害者等のための複製等
      1. 聴覚障害者その他聴覚による表現の認識に障害のある者(以下この条及び次条第五項において「聴覚障害者等」という。)の福祉に関する事業を行う者で次の各号に掲げる利用の区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であつて、聴覚によりその表現が認識される方式(聴覚及び他の知覚により認識される方式を含む。)により公衆に提供され、又は提示されているもの(当該著作物以外の著作物で、当該著作物において複製されているものその他当該著作物と一体として公衆に提供され、又は提示されているものを含む。以下この条において「聴覚著作物」という。)について、専ら聴覚障害者等で当該方式によつては当該聴覚著作物を利用することが困難な者の用に供するために必要と認められる限度において、それぞれ当該各号に掲げる利用を行うことができる。ただし、当該聴覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第七十九条の出版権の設定を受けた者により、当該聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この限りでない。 
    43. 営利を目的としない上演等
    44. 時事問題に関する論説の転載等
      1. 新聞紙又は雑誌に掲載して発行された政治上、経済上又は社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く。)は、他の新聞紙若しくは雑誌に転載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。ただし、これらの利用を禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
    45.  政治上の演説等の利用
      1.  公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
      2.  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人において行われた公開の演説又は陳述は、前項の規定によるものを除き、報道の目的上正 当と認められる場合には、新聞紙若しくは雑誌に掲載し、又は放送し、若しくは有線放送し、若しくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地 域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力 することによるものを含む。)を行うことができる。
      3. 前項の規定により放送され、若しくは有線放送され、又は自動公衆送信される演説又は陳述は、受信装置を用いて公に伝達することができる。
    46.  時事の事件の報道のための利用
      1.  写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。 
    47. 裁判手続等における複製
      1. 著作物は、必要と認められる場合には、その必要と認められる限度に おいて、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、 この限りでない。
        1. 裁判手続
        2. 立法又は行政の目的
        3. 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
        4. 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
    48.  行政機関情報公開法 等による開示のための利用
    49.  公文書管理法 等による保存等のための利用
    50.  国立国会図書館法 によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製
    51. 放送事業者等による一時的固定
    52. 美術の著作物等の原作品の所有者による展示
      1.  美術の著作物若しくは写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。
    53.  公開の美術の著作物等の利用
    54.  美術の著作物等の展示に伴う複製
      1. 美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第二十五条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。  
    55.  美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等
    56.  プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等
      1.  プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製又は翻案(これにより創作した二次的著作物の複製を含む。)をすることができる。
    57. 保守、修理等のための一時的複製
    58.  送信の障害の防止等のための複製
    59. 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等
    60. 情報解析のための複製等
    61. 電子計算機における著作物の利用に伴う複製
    62. 情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用
    63. 複製物の目的外使用等
    64. 著作者人格権との関係: 著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。 
    65. 保護期間
      1. 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。   
      2. 著作権は、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。)五十年を経過するまでの間、存続する。
        1. 著作者が死亡した日の属する年の翌年から起算する。 
      3. 無名又は変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年を経過するまでの間、存続する。ただし、その存続期間の満了前にその著作者の死後五十年を経過 していると認められる無名又は変名の著作物の著作権は、その著作者の死後五十年を経過したと認められる時において、消滅したものとする。  
      4. 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年(その著作物がその創作後五十年以内に公表されなかつたときは、その創作後五十年)を経過するまでの間、存続する。 
      5. 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年(その著作物がその創作後七十年以内に公表されなかつたときは、その創作後七十年)を経過するまでの間、存続する。
      6. 継続的刊行物等の公表の時
      7. ベルヌ条約等の条約の加盟国で、その本国において定められる著作権の存続期間が第五十一条から第五十四 条までに定める著作権の存続期間より短いものについては、その本国において定められる著作権の存続期間による。  
        1.  
    66.  著作権は、次に掲げる場合には、消滅する。 
      1. 保護期間が満了したとき。
      2. 著作権者が死亡した場合において、その著作権が民法 (明治二十九年法律第八十九号)第九百五十九条 (残余財産の国庫への帰属)の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。 
      3. 著作権者である法人が解散した場合において、その著作権が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第二百三十九条第三項 (残余財産の国庫への帰属)その他これに準ずる法律の規定により国庫に帰属すべきこととなるとき。
    67. 著作権の譲渡
      1. 著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる。 
      2. 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。
      3. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限 
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限 
    68. 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。  
    69. 著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができる。
    70. 著作権は、これを目的として質権を設定した場合においても、設定行為に別段の定めがない限り、著作権者が行使するものとする。 
    71. 登録
      1. 無名又は変名で公表された著作物の著作者は、現にその著作権を有するかどうかにかかわらず、その著作物についてその実名の登録を受けることができる。 
      2. 著作権者又は無名若しくは変名の著作物の発行者は、その著作物について第一発行年月日の登録又は第一公表年月日の登録を受けることができる。 
      3. プログラムの著作物の著作者は、その著作物について創作年月日の登録を受けることができる。ただし、その著作物の創作後六月を経過した場合は、この限りでない。
      4. 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
        1. 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は処分の制限
        2. 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限   
    72. 出版権
      1. 複製権者は、その著作物を文書又は図画として出版することを引き受ける者に対し、出版権を設定することができる。 
        1.  出版権の設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更若しくは消滅(混同又は複製権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。 
      2. 出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。  
    73. (著作隣接権)
      1. 実演家
        1. 実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)。 
        2. 実演家 俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者。 
        3. 実演家の権利
          1. 氏名表示権
          2. 同一性保持権
          3. 録音権及び録画権
          4. 放送権及び有線放送権
          5. 送信可能化権
          6. 有線放送に対する報酬請求権
          7. 二次使用料を受ける権利
          8. 譲渡権
          9. 貸与権等    
      2. レコード製作者
        1. レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)
        2. レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者
        3. レコード製作者の権利
          1. 複製権
          2. 送信可能化権
          3. 二次使用料を受ける権利
          4. 譲渡権
          5. 貸与権等    
      3. 放送事業者
        1. 放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信
        2. 放送事業者 放送を業として行う者
        3. 放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 再放送権及び有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. テレビジョン放送の伝達権  
      4. 有線放送事業者
        1. 有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信
        2. 有線放送事業者 有線放送を業として行う者
        3. 有線放送事業者の権利
          1. 複製権
          2. 放送権及び再有線放送権
          3. 送信可能化権
          4. 有線テレビジョン放送の伝達権  
    74.  権利侵害
      1. 侵害とみなす行為
        1.  輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
        2. 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為
      2. 著作権が「侵害」された場合の対抗措置
        1.  「民事」の対抗措置 
          1. あっせん
          2. 差止請求  著作権の侵害を受けた者は、侵害をした者に対して、「侵害行為の停止」を求めることができます。また、侵害のおそれがある場合には、「予防措置」を求め ることができます(第112条、第116条)。 
          3. 名誉回復等の措置の請求  著作者又は実演家は、侵害者に対して、著作者等としての「名誉・声望を回復するための措置」を請求することができます(第115条、第116条)。  例えば、小説を無断で改ざんして出版されたような場合、新聞紙上などに謝罪文を掲載させるなどの措置がこれに当たります。 
          4. 損害賠償請求  故意又は過失により他人の権利を侵害した者に対して、侵害を被った者は、侵害による損害の賠償を請求することができます(民法第709条)。侵害を被っ た者は損害の額を立証しなければなりませんが、それを軽減するために、侵害による損害額の「推定」ができる規定が設けられています(第114条)。 
          5. 不当利得返還請求  他人の権利を侵害することにより、利益を受けた者に対して、侵害を被った者は、侵害者が侵害の事実を知らなかった場合には、その利益が残っている範囲で の額を、知っていた場合には、利益に利息を付した額を、それぞれ請求することができます(民法第703条、第704条)。  例えば、自分で創作した物語を無断で出版された場合、その出版物の売上分などの返還を請求できます。 
        2. 刑事の対抗措置
          1.  著作権の侵害は「犯罪行為」であり、権利者が「告訴」を行うことを前提として,「3年以下の懲役」又は「300万円以下の罰金」という罰則規定が設けられています(第119条第1号)。
    75. 条約
      1. 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約
      2. TRIPs協定
      3. 著作権に関する世界知的所有権機関条約
      4.  
         

    2013年11月16日土曜日

    「Google Books」を巡る著作権侵害訴訟

    今回は、インターネット検索最大手の米Googleの書籍全文検索サービス「Google Books」を巡る著作権侵害訴訟について書いてみたいと思います。

    Google Booksは、公共図書館や大学図書館の蔵書をデジタル化し、インターネットで検索・閲覧可能にしたサービスです。

    <時系列>

    2005年、図書館の蔵書を電子化し、ネットを通じて検索・閲覧できるようにする事業を開始。米国作家協会Authors Guildや米出版社協会(AAP)は、Google Books(当時の名称は「Google Book Search」)が著作権侵害に当たるとして、Googleを提訴。

    2008年10月、Googleが一定の金額を払うことなどで和解に合意した。

    2011年、地裁が和解の承認を拒否し、訴訟は振り出しに戻った。  

    2012年10月、 Googleと米出版社協会(AAP)は、書籍の電子化を巡る訴訟で和解した。AAPと米作家協会がこの事業を著作権侵害だと訴えていたが、まずAAPとの訴訟が解決した。  グーグルはAAPを通じて訴えを起こした米出版大手マグロウヒルなど5社と和解した。この和解で出版社側はグーグルが電子化した書籍を一般公開するか、削除するかを選べるようになった。デジタル化した書籍を自社利用のために受け取ることも可能となった。

    2013年9月、審問が開かれた。審問でGoogleは、著作権物が評論、ニュースレポート、授業、研究などに引用される場合フェアユースが認められているのと同様に、Google Booksがスキャンした書籍の一部のみを閲覧可能にしていることも、フェアユースの範囲にあると主張していた。  

    2013年11月14日、ニューヨーク州南地区連邦地方裁判所は「Google Booksはフェアユースの範囲」とするGoogleの主張を認める判断を下しました。


    <今回の判決内容>

    米Bloombergが公開した裁判所の資料によると、Denny Chin判事は今回、「Google Booksは公衆に多大な恩恵をもたらしている」と判断。

    「学生、教師、司書などさまざまな人々がより効率的に書籍を見つけ出すための貴重なツールになっている。書籍の入手が困難な人に対して書籍をより手軽に利用できるようにし、著者や出版社にとっての新たな読者と収入源を生み出している。実際、社会すべてが恩恵を受けている」と述べました。  
    また同判事は、Google Booksでは全文が検索対象になっているものの、検索の結果閲覧できるのは書籍の一部に限られ、すべての内容を読めるようにはなっていないことも指摘しました。  

    Authors Guildは今回の判決を受けて、「われわれは裁判所の判断には反対意見であり、たいへん失望している」との声明を発表。「Googleは世界中の価値ある著作権付き文学のほぼすべてのデジタル版を未承認で作成し、それを表示することで利益を得ている。われわれの見解では、こうした大量のデジタル化と利己的な利用はフェアユースの保護の範疇を越えている」とし、上訴する意向を示しました。  

    一方Googleは、「長い道のりだった。われわれは今日の判決を心から喜んでいる」とのコメントを発表しています。

    <判決の意義・影響>

     仮に判決が確定した場合でも、データが作家らの許可なく売られるわけではないので、現在流通している日本の出版社の電子書籍への影響は限定的とみられています。

      米国には、著作物の利用が「フェアユース(公正利用)」であれば著作権者の了解を得なくてもよいという規定があります。グーグルのプロジェクトは商業目的ですが、検索を重ねても全文は表示できないようにするなど、電子書籍ビジネスに悪影響が出ないよう工夫している点が評価されたようです。

      訴訟が起きた2005年当時に比べると、現在は電子書籍市場が拡大し、消費者がネット経由で本を買う頻度も増えました。市場環境が変わるなか、「ネット検索で探しやすくなれば書籍が売れて著作者にもプラスだ」と判断した今回の判決は、著作権保護の考え方に一石を投じる可能性もあります。

    2013年11月14日木曜日

    日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料に関する契約方法を巡る訴訟

     今回は、日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料に関する契約方法を巡る訴訟について書きたいと思います。 テレビやラジオで放送される音楽の著作権使用料を巡り、独占禁止法違反(私的独占)で排除措置命令を受けた日本音楽著作権協会(JASRAC)の審判・訴訟です。

        放送局は放送事業収入の1.5%を払えば、JASRACの管理する楽曲を自由に使える「包括的利用許諾契約」を締結することができます。 公取委は2009年にいったんは独禁法違反を認めてJASRACに排除措置命令を出したが、JASRACの不服申し立てを受けて2012年には一転して命令を取り消す審決をしました。  

     東京高裁判決(飯村敏明裁判長)は、JASRACがテレビ局やラジオ局と結ぶ包括契約が「他の事業者を排除する効果がある」と認定し、独占禁止法に違反しないとした昨年の公正取引委員会の審決を取り消しました。


    <争点>  

    テレビ番組などで使われる楽曲の著作権管理事業を巡り、日本音楽著作権協会(JASRAC)の契約方法が同業他社の新規参入を妨げているか。


      問題となったのは、JASRACがテレビ局やラジオ局と結んでいる包括契約。JASRACに放送事業収入の1.5%を支払えば、290万曲近い管理楽曲を自由に使えるので、局側にとっては割安で便利な方法です。

     一方、新規参入したイーライセンス(東京・渋谷)の契約は、管理する約5300曲の利用に応じて個別に使用料を受ける形です。同社の楽曲を使うと余分な支払いが生じるため、結果的にJASRACの楽曲しか使われない状態になっている、と訴えました。

      他の管理業者には著作権料を別途払う必要があり、経費節約のため一部の放送局が意図的にJASRAC以外の利用を控えていたということです。  


    <背景>

     包括契約はもともとJASRACが音楽著作権をすべて管理していたことから生まれました。どんぶり勘定のほうが放送局にも管理団体にも都合がよかったからです。

      ところが演歌からポップスなどへと嗜好が移る中、著作権料の分配方法に疑問の声が上がるようになりました。12年前の法改正で管理業務への新規参入が認められたのはそのためだったのですが、包括制度によりJASRACの独占状態は変わらなかったのです。

     2001年の著作権等管理事業法施行で楽曲の著作権管理への新規参入が可能になった後も、JASRACは圧倒的なシェアを持ち続けています。


    <今回の提訴>
     
       2009年2月、 公取委は、テレビ局などの放送局が事業収入の1.5%を払えば楽曲を自由に使えるという包括契約は新規参入を阻んでいるとして、独占禁止法違反(私的独占)でJASRACに排除措置命令を出しました。
      
     公取委は、放送局が他の管理事業者の楽曲を使うと、新たな費用負担が生じることになるため、新規業者の参入の妨げになっていると判断。楽曲の使用に応じ た仕組みにするよう求める排除措置命令を出しました。

     一方、JASRACは命令を不服として、審判請求しました。

     2012年、公正取引委員会は、「違反があったとする証拠はない」として、命令を取り消す審決を出しました(2012年6月12日付審決)。審判で公取委が覆すのは、1994年のエレベーター保守点検を巡る価格カルテル以来でした。

       審決は、新規事業者の管理する楽曲を回避したのは放送局1社だけで、JASRACの管理する楽曲と比べても、遜色なく放送局に使われていたと指摘。その上で「他の事業者の活動を排除する効果があるとは断定できない」と結論付けました。


     2012年7月10日、音楽著作権管理のイーライセンス(東京・渋谷)は、日本音楽著作権協会(JASRAC)が放送局と結ぶ楽曲利用料の包括契約について、公正取引委員会が出した審決の取り消しを求める訴訟を東京高裁に起こしました。

       訴状によると、イーライセンスは、公取委の審決には事実認定に明らかな誤りがあると主張。イーライセンスが管理する楽曲の利用自粛を促す放送局内の文書があるにもかかわらず「(放送局側は)利用を回避していない」とした解釈も誤りだなどとしています。

    <高裁判決の分析>

      高裁判決は独禁法違反の有無について確定的な判断をしていませんが、JASRACのビジネスモデルに疑問を投げかけ、審理を事実上、公取委に差し戻しました。

     判決は、「経費削減の観点から、放送局側が追加負担の要らないJASRACの楽曲を選択するのは自然だ」と指摘しています。一部の放送局でイーライセンスの利用を控えるよう社内通知文書が出ていたことにも触れ、「包括契約は新規参入を著しく困難にした」と結論づけました。

     ただ、独禁法違反が実際にあったとまでは認定せず、「独禁法違反の要件に当たるかどうかを判断すべきだ」と公取委に審判のやり直しを求めるにとどめました。

     
    13日、公正取引委員会と第三者として訴訟に参加したJASRACは独占禁止法に違反しないとする公取委の審決を取り消した東京高裁判決を不服として上告しました。引き続き最高裁で公取委の審決の是非が争われ、高裁判決がこのまま確定した場合でも公取委が改めて審判を行うことになるでしょう。問題が決着するまでにはなお一定の時間がかかりそうですね。

    2013年11月7日木曜日

    印鑑

    実印と認印

    近ごろでは印鑑の代わりに署名で済ませられる場面が増えてきました。本人が申請して役所で住民票をとるときや、一部の外資系金融機関で口座を開設する場合などでは、署名が印鑑の代わりの役割を果たしています。

    そもそも、印鑑は申請や契約などに必要ないものなのでしょうか。

    印鑑や署名どころか、契約書自体がなくても、たとえば口約束だけでも契約は成立しえます。

    では、契約書や印鑑の役割とは何でしょうか。

    それは、成立した契約が確かに存在したことを、客観的な証拠として残すことにあります。 特に印鑑は、後に争いとなり、裁判になった際の立証場面で、大きな役割を持つ可能性があります。それは、民事訴訟法228条4項に「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」との規定があるからです。

    法律用語で「推定」とは、裁判で立証が済んだものとして扱われることを意味します。相手方が反証をしない限り、「推定」が維持され、契約書を証拠として示した側の勝訴となります。

    ここで注意が必要なのが、「署名又は押印」が推定の条件になっているということです。法律上、契約の存在を示す証拠として、署名と押印は同じだということになります。両者で違いが出てくるのは、署名や押印が偽造されたことなどが疑われる場合、つまりもう一つの条件である「本人又はその代理人の」署名や押印であるかどうかが争われる場合です。

    署名の場合には、筆跡鑑定が行われます。筆跡鑑定を行うには資格などは必要なく、誰でもできるものではありますが、裁判では、科学捜査研究所の出身者が行った鑑定結果が比較的信頼されています。具体的には、署名を一文字ずつ、たとえば、『最初の文字は明らかに違う、次の文字のここは類似していてここの部分は違うがどちらかというと類似している、その次の文字は明らかに同じ』というように鑑定し、それらの判断の組み合わせで、全体としてはどうかという結論を出します。もっとも、裁判官の判断を拘束する力は弱いようです。


    このように手間とコストをかけても確定した判断が難しい署名に比べて、押印には「印鑑証明」というシステムがあります。署名の横に実印を押し、役所が発行した印鑑証明書を添えれば、当事者の意思で押印されたものと事実上推定されます。もちろん、この強力な効力により、逆に悪用される危険性もあります。

    法人の実印であれば、厳重に保管し、押印の記録を残すのは必須です。押印の場に必ず2人以上の関係者を立ち会わせるようにするなどの慎重さも求められます。

    一方、個人のいわゆる認印や三文判、法人の角印など、印鑑登録をしていない印鑑には「推定」の法的効力がありません。頻繁に使われ、印影も比較的シンプルであるため、どこかに押したものをスキャンして偽造される危険性も高いです。個人の印鑑は大量生産されている場合も多く、お金を出せば同じものを買えることすらあります。

    したがって、争いとなった場合、印鑑登録されていない印鑑は実印よりも効果が大きく劣るのです。

    署名とセットで使われることが多い個人の認印とは違い、法人の角印の場合、会社名や住所などは印刷やゴム印であることも多いです。

    では、偽造などのトラブルを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

    署名や会社名の上に認印や角印を重ねて押せば、黒と赤のインクの跡が交わり、他者による偽造が難しくなるります。なんとなく、あるいはスペースがないからという理由で、文字に重ねて押印していた人も多いでしょう。しかしこの習慣には、押印の偽造を防いでトラブルを予防する意味合いがあるのです。



    2013年11月6日水曜日

    NISA(ニーサ)

    いよいよ来年1月からNISA(少額投資非課税制度)(ニーサ)が始まります。

    NISAの5つのポイント
    [1]投資信託・上場株式等の譲渡益・配当金等が非課税
    [2]年間100万円の非課税枠
    [3]最大500万円の投資額に対して最長5年間非課税
    [4]対象は日本に住む20歳以上の方
    [5]開設できるNISA口座は1人1口座

    NISAに関するよくある質問

    Q1:現在、特定口座で定期積立をしていますが、NISA口座を開いた場合はどう なりますか?

    A1:現在、特定口座または一般口座で定期積立を利用する人は、NISA口座開設後、年間累計買付額が100万円になるまでは自動的にNISA口 座での買付になります。(選択することはできません)

    Q2:NISA口座内と他の口座の損益通算はできますか?

    A2:NISA口座の売買損益は、他の口座(特定/一般口座)との売買損益の通算はできません。

    2013年11月5日火曜日

    メールアドレスの誤送信

    パソコンの初心者の方がよく陥るやってはいけないことがあります。 それは、全員のメールアドレスを「宛先欄」(=To:)には入れて送信することです。  これは絶対にやってはいけません。 何故なら、全員に全員のアドレスが伝わってしまいます。

    メールアドレスの誤送信の法的問題点

    特定の個人を識別できるメールアドレスは、「個人情報」に該当します。

     「個人情報」とは、特定の個人を識別できる情報です。一見識別できないメールアドレスでも、他の情報と容易に照合することができ、特定の個人を識別できる場合は、個人情報に当たります。しかし、記号の羅列のようなメールアドレスであれば、検索しても通常は個人を特定できないので、個人情報に該当しないでしょう。個人情報に該当しないメールアドレスを他人にわかる形で一斉送信しても、違法とはいえません。

    しかし、企業の内部において個人を特定できるアドレスと特定できないアドレスを別々に分類して管理するということは通常はありえません。また、アドレス自体が通称のような働きをして個人を識別する情報の1つとして取り扱われることも多くなっています。企業としては、すべてのメールアドレスが個人情報に該当するとの前提で取り扱うべきでしょう。

    このような考え方に立つと、メールアドレスが大量に漏えいする事故は、個人情報保護法上、安全管理措置義務(法20条)に違反したということになります。法では、安全管理措置義務違反について、直ちに何らかの制裁が想定されているわけではありません。しかし、民法の不法行為の規定を根拠に、漏えいされた顧客から損害賠償を請求されることは考えられます。   

     問題は、一斉送信され、自分のアドレスが他人にわかってしまうこと、および他人のアドレスを知ってしまうことについての不快感です。不快感は、一般的には法的に保護されません。

    例えば、自宅の郵便ポストに、見たくもないチラシが入っていて、不快感があっても、違法ではありません。そのチラシを捨てれば良いだけです。個人情報保護法ができる前、同窓会名簿も売買されていましたが違法ではありませんでした。

    ただし、今後、法規制ができたり、現時点で特定できないメールでも将来特定できる状況になれば、違法となるでしょう。

    結論として、明らかに個人が特定できるメールアドレスでやり取りをした場合、これは個人情報保護法に違反する可能性があるが、個人を特定できない場合には、違法性はありません。

    事実の公表・報告

    漏えい事故が発生した場合には、できる限り事実を公表することが求められていますし(法7条に基づき作成された基本方針)、主務大臣が個人情報の管理、利用のあり方について報告を求めてきたり(法32条)、取扱いに関し勧告や命令を受けることも考えられます(法34条)。いずれにしても企業の信頼を 大きく損ねることは間違いありません。


    送信したメールを取り消す方法

     送信したメールを取り消す


    お詫び文例

    個人情報(メールアドレス)の漏えいに関する報告とお詫び

    この度、弊社におきまして、お客様にメールにてお知らせをした際、送信業務の不手際により、お客様のメールアドレスが他のお客様のメール内に表示される、と いうトラブルが発生致しました。

    該当のお客様におかれましては多大なるご心配とご迷惑をおかけ致しました事、深くお詫び申し上げます。

    弊社はこれまで個人情報保護強化に取り組んで参りましたが、このような事案を招いた事を深く反省し、今後は管理体制の見直しと従業員への個人情報保護教育を徹底し、再発 防止に努めて参ります。

    今回の件につきましては、あらためて以下の通りご報告申し上げますとともに、ご迷惑をお掛け致しましたお客様に深くお詫びを申し上げます。



    1.事案の概要

    (流失日時・経緯を書きます。)

    平成●年●月●日(金)午後●時●分、●●に関する案内メールを送信した際に、個人のメールアドレスを「BCC」に設定して送信すべきところを「CC」で送信したため、全員のメールアドレス(●名分)が表示されて送信されました。 

    流出先はメールを受信された同じく●名の方です。

    2.対応状況

    上記電子メールの送信直後に担当職員がこれに気づき、本件に該当する関係者の方々に対し、直ちに御報告とお詫びを申し上げるとともに当該電子メールの削除をお願いいたしました。
    *現在のところ、この件に関して二次被害は確認されておりません。

    3.今後の対応

    (再発防止策を書きます。)

    ① 個人情報を含む重要なメールや複数先宛へのメール送信時の作業手順を見直し、全従業員に周知徹底致します。[複数の個人のメールアドレスあて送信する場合には、複数の職員によるダブルチェックを徹底することにより、個人情報の漏えい防止を徹底してまいります。] [今後このような事態が生じないよう、送信前に文書送信者以外の者が宛先及び送信内容を再度確認するなど、厳重かつ適正な管理を徹底してまいります。]
    ② 個人情報取り扱いについてのリスクの認識を全従業員に徹底し、必要かつ適切な措置 を講じます。
    ③ 本件に関し何らかの被害が発生した場合は、警察や当局の指導に基づき対応致します。

    〈 本件に関するお問い合わせ先 〉
    株式会社 ●●
     TEL:●●●-●●●-●●●●
    メールアドレス:●


    参考資料

    2013年11月4日月曜日

    インターネットでいじめにあったら

    インターネット上のトラブルは、年々増加傾向にあります。

    匿名掲示板、個人のブログ、Twitterなどでの誹謗中傷やプライバシー侵害行為の相談が増えているようです。有名人でなくとも、悪口を書かれたり、伏字だけれどもわかる人にはわかるような誹謗中傷をされるケースもあります。SNS(ミクシィやFacebook)でのなりすましケースも増えています。自分になりすまして、ウソの書き込みをされたり、プライベートな写真を公開されてしまうようです。

    対処方法はいくつかありますが、まずは、気にしないこと、無視することです。TwitterやSNSの場合、特定の人から自分のサイトを見られないようにブロックできます。また、自分も見ないようにしましょう。そのうち向こうも飽きてやめることも多いのです。

    ただ、どうしても見過ごせない誹謗中傷もあるでしょうし、なりすましをされているのは気持ち悪いと思われる人も多いでしょう。その場合は、サイトの運営会社に対し、迷惑行為を報告(スパム報告)します。多くのサイトには、そのような報告を受け付ける機能が付いています。Twitterなど国外の会社が運営しているサイトでも同様です。日本語で送っても、回答は英語かもしれませんが、対応してくれます。

    問題なのは、運営側にスパム報告をしても削除してくれないケースです。たとえば2ちゃんねるには削除依頼用のスレッドがありますが、応じてくれないことも多く、依頼自体が公開されるために逆効果となってしまうこともあります。 この場合は、「プロバイダ責任制限法」に基づいた手続を取ります。

    選択肢は2つあります。
    ① 加害者である書き込み主(アカウント主)を特定する
    ② サイト運営者に削除依頼をする

    ①であれば、まずは運営側に加害者についての「情報開示請求」を行い、IPアドレスとサーバーにアクセスした時間を教えるよう申し立てます。

    IPアドレスがわかれば接続プロバイダがわかるので、次はプロバイダ宛に該当人物について情報開示請求をします。つまり2回情報開示請求することになりますが、権利侵害が明らかなら開示請求は認められます。

    氏名、住所などの本人確認が取れたら、権利侵害をやめるように警告するか、損害賠償請求をします。

    ②は、①より簡単です。サイトの運営会社に「送信防止措置」の依頼をします。そうすると、運営側は加害者に対して、「●●という申し立てがありますが、反論はありますか。削除してもよいでしょうか」と照会します。この時点で、加害者は自主的に削除するか、回答しないかのどちらかの対応を取ることが多いです。照会から一定期間内に回答がない場合は、運営側が削除しても良いことになっているので、そのまま削除されます。

    ①、②のいずれも、費用は書類代と切手代程度で済みます。やり方も、ガイドラインでインターネット上に公開されています。

    ただし、運営者が海外の場合(2ちゃんねるの場合は運営会社がシンガポールにあります。)、上記の手続を使うことができません。そのため、裁判所に削除や開示を認める決定をもらうことが必要です。この場合は、手続が複雑になりますので、弁護士に相談したほうが良いでしょう。

    FacebookやTwitterも日本の法律による請求を受け付けていません。ただし、Facebookは実名登録が基本原則となっているため、トラブルはそう多くないようです。Twitterについては、2010年11月に日本法人が設立され、この手続に応じてもらえる可能性が出てきました。 いずれにせよ、トラブルには巻き込まれないことが一番です。トラブルの原因は、やはりプライバシーに関することが多いので、書き込むときも他人のプライバシーに関わることには十分注意しましょう。

    2013年11月3日日曜日

    記事流用と著作権侵害

     新聞や雑誌の記事、書籍の一部などをコピーして社内の会議で配ったり、ウェブサイトの記事を社内メールで送ったりすることは日常的にあるはずです。法的には、これらの行為は著作権侵害となります。

    この場合、著作権法の例外は、個人での私的使用と公的図書館での複写です。これ以外は原則として、著作権者の承諾が必要になります。 記事の要約も著作権侵害となる場合があります。もとの文書を読まずとも内容がわかるような要約は、著作権法上の翻案に当たる場合があり、著作権者の承諾が必要です(著作権法27条)。

    また、記事の「見出し」は著作物として認められていませんが、営利のために転用などをした場合には「法的保護に値する利益を侵害した」として、不法行為(民法709条)になるとの見解が示されています(2005年10月・知財高裁)。

     著作権の理解が難しいのは、法律の建前と現実社会での運用が大きくズレているからでしょう。著作権者としては、紙面に「すかし」を入れたり、パソコンでの「コピー&ペースト」をできなくするなどの対策を講じれば、著作権を守れます。ただし、それでは逆に利用が滞り、著作物が流通しないという弊害もある、といえるのです。

     著作物の一部が違法コピーされた場合、一般的に損害賠償額は全体からの案分で算定されます。

    営利目的で記事を盗用するなどの悪質なケースでは、刑事事件になることもあります。2009年5月には、自分のブログに他人のサイトの文章を無断で掲載していたとして、大阪府の男性が著作権法違反の疑いで逮捕されました。このブログでは、著作権者の度重なる警告を無視したうえで、健康食品の通信販売サイトを紹介し仲介料を稼いでいたということです。


    2013年11月2日土曜日

    モンスタークレーマー

    わが国で企業や公的機関へのゆきすぎたクレーム行動が一般に広く問題視されるようになったのは約15年ほど前からのことでしょうか。

    そもそも正当なクレームは、企業経営を改善し活性化するための貴重な情報源となります。ところが、この時期から客観的にはとても正当とはいえない悪質なクレームが増え始めました。さらに「東芝クレーマー事件」によってインターネットの影響力が広く知れ渡り、同事件が起きた1999年ごろからは、インターネットを最大限活用して苦情の中身を社会に広めようとするクレーマーが出現しました。

    こうした事態への対処に企業側は頭を抱えているのが実情です。 かつても製品の不具合、サービス不良などを理由に企業へ因縁をつけるタイプの悪質クレーマーは存在しました。いわば暴力的背景を持ったクレーマーです。

    一方、近年問題なのは、製品の不具合など苦情の入り口は同じでも、そこから非難の方向を変えて、企業の社会的姿勢などを声高に追及するタイプのクレーマーです。苦情の前提と要求の内容には著しい差があったり、苦情の相談がなかったりするからモンスタークレーマーといってもいいでしょう。

    背景に「我こそは正義」という思い込みがあるため、大変対応しにくい相手です。

    というのは、暴力的背景を持ったクレーマーの場合、直接的には金銭を要求していなくても、要求の内容はわかりやすいのです。

    これに対して、“新種”であるモンスタークレーマーは、正義を述べ立てることによる自己陶酔や憂さ晴らしといった、別の動機によって行動しています。そのため、例えばモンスタークレーマーに金銭の提供を申し出たりすると、逆に相手の態度を硬化させ、問題を長引かせることにつながりかねないのです。「対応しにくい」というのは、このことでしょう。

    モンスタークレーマーの標的は企業だけではありません。被害はいまや自治体や国の機関、学校、病院、さらには芸能人や政治家といった個人にまで広がっています。

    また、クレーム慣れしているはずの企業でも、消費者相談室などの専門部署ではなく現場の個人が標的になることがあります。誰もがクレーマー被害に遭う危険があるのです。

    電話やネットを通じた「情報による攻撃」は、暴力をともなう物理的な攻撃よりも効果的に人を打ちのめすものです。たとえ専門的な訓練を受けたクレーム担当者であっても、モンスタークレーマーからの執拗な攻撃を受ければ「心が壊れてしまう」といわれています。通常業務を抱えた一般社員ならなおさらでしょう。 常軌を逸したクレーム電話が続いたり、ネット上の誹謗中傷がやまなかったりしたときは、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたるケースもあるので刑事告訴といった対応も可能です。


    2013年11月1日金曜日

    産業医面談

    産業医とは

    産業医とは、事業者との契約に基づき、企業内等で労働者の健康管理を行う医師のこと。労働安全衛生法は、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医を置くことを義務づけています。

    事業者は、労働契約上、業務による過度の疲労や心理的負荷によって労働者の心身の健康を損なわないよう注意する健康配慮義務を負っています。産業医の役割は、事業者がこの義務を果たすことができるよう事業者を補助することにあります。そのため、産業医は治療等の医療行為は基本的に行わず、労働者の健康診断や面接、職場巡視を実施して労働者の健康状態を把握し、事業者に意見を述べることを主な職務としています。

     したがって、産業医が労働者から職場でのパワハラやセクハラ、過重労働による心身の不調について相談を受けた場合には、これらの健康管理情報は配属先の上司などへの報告の対象となり得ます。事業者は、医師の意見を参考にしながら、労働者との面接指導を実施し、必要に応じて、労働者の就業場所や作業内容の変更、労働時間の短縮、休業命令、復職命令等の措置を決定します。


     同意なしに報告される

    それでは、産業医に相談した内容はすべて報告されてしまうのでしょうか。

    産業医も、一般の医師と同様に守秘義務を負います。秘密漏示罪を定める刑法134条は、医師が正当な理由なく業務上知りえた他人の秘密を漏らした場合には6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処すとしており、これは産業医にも適用されます。

    また労働安全衛生法も、産業医が健康診断等の実施によって知りえた労働者の秘密を漏らすことを禁じています。

    したがって、産業医であっても、労働者の同意がない限り、労働者の健康管理情報を上司に伝えてはならないのが原則です。

    他方で産業医は、労働者に健康上の問題があることを知ったときには、事業者にこれを指摘・報告する義務も負っています。また状況によっては事業者に積極的な情報提示を行って、自覚を促すべき場合もあります。

    この点について厚生労働省は、可能な限り本人の同意を得ることを基本としながらも、(1)同意を得ることが困難であり、開示することが労働者に明らかに有益である場合、(2)開示しないと公共の利益を著しく損なうことが明らかな場合等には、労働者の同意がなくてもその健康管理情報を上司その他の関係者に報告することができるとの意見をまとめています。

    たとえば、(1)労働者が自傷行為に及ぶ可能性が高い場合や、(2)健康診断の結果、伝染病が発覚し、直ちに対応しなければ他の労働者に健康被害が生じる危険がある場合などです。

    また労働者の同意の有無にかかわらず、報告が許される情報の内容やその報告先は、事業者が健康配慮措置を講じるために必要となる最小限の範囲にとどまります。たとえば、労働者の血液検査結果の詳細な数値や疾病の具体的診断名、セクハラ、パワハラの具体的な当事者名等の情報は必ずしも健康配慮措置のために必要ではありません。

    産業医は労働者に対して守秘義務を負う以上、上司らに報告する必要性があると判断したとしても、まずは労働者にその旨を説明し、同意を得るべきです。それができない事情があったとしても、可能な限り相談者が特定されることのないようにする等の配慮が必要です。

    労働者としては、産業医の役割と立場を理解し、産業医の診察、面接を受けた際には、上司らに報告される内容について事前に産業医に確認し、報告してほしくない相手と内容についてはその旨を明確に伝えておくことが大切になります。