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2014年11月29日土曜日

景品表示法

景品表示法第4条第1項第1号(優良誤認表示の禁止)

 景品表示法第4条第1項第1号は、事業者が,自己の供給する商品・サービスの取引において,その品質,規格その他の内容について,一般消費者に対し,
 (1) 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
 (2) 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています。

 具体的には,商品・サービスの品質を,実際よりも優れていると偽って宣伝したり,競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに,あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が優良誤認表示に該当します。 

 (1) 実際のものよりも著しく優良であると示すものの例 

①カシミア混用率が80%のセーター!こ「カシミヤ100%Jと表示した場合
②『入院1日目から入院給付金をお支払いjと表示したが、入院後に診断が確定した場合、その日からの給付金しか支払われないシステム、など

 (2) 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものの例

①「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、
実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していた、など

 なお,故意に偽って表示する場合だけでなく,誤って表示してしまった場合(過失)であっても,優良誤認表示に該当する場合は,景品表示法により規制されることになりますので注意が必要です。

 優良誤認表示を効果的に規制するため,消費者庁長官は,優良誤認表示に該当するか否 かを判断する必要がある場合には,期間を定めて,事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ,事業者が求められた資料を 期間内に提出しない場合や,提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には,当該表示は不当表示とみなされることにな ります(4条2項)


景品表示法第4条第1項第2号(有利誤認表示の禁止)
 
景品表示法第4条第1項第2号は,事業者が,自己の供給する商品・サービスの取引において,価格その他の取引条件について,一般消費者に対し,
 (1) 実際のものよりも著しく取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
 (2) 競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利である一般消費者に誤認されるもの
であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています。

 具体的には,商品・サービスの取引条件について,実際よりも有利であると偽って宣伝したり,競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに,あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が有利誤認表示に該当します。
 
 なお,故意に偽って表示する場合だけでなく,誤って表示してしまった場合であっても,有利誤認表示に該当する場合は,景品表示法により規制されることになりますので注意が必要です。
事業者が,有利誤認表示を行っていると認められた場合は,消費者庁は当該事業者に対し,措置命令などの措置を行うことになります。

2014年11月21日金曜日

「忘れられる権利」欧州司法裁判所判決




2014年5月13日欧州連合(EU)の最高裁判所である欧州司法裁判所(ECJ)が下した「忘れられる権利」についての判決をきっかけに、日本でも「忘れられる権利」への関心が日々高まっている。

欧州司法裁判所判決の事案

 スペインの弁護士ゴンザレス氏は、2010年スペインの 情報保護局(AEPD)に、① スペインの新聞ラ・ヴァングァルディアの1998年度の記事がリンクされている検索結果を表示したグーグル・インクとグーグル・スペイン(以下、「グーグル」)に対しては、上記の記事を検索結果から削除するか遮断する措置を、② ラ・ヴァングァルディアに対しては、上記の記事を削除する措置を取らせるよう求めた。グーグル検索サービスでゴンザレス氏の名前を検索すると、ゴンザレス氏所有の不動産の公売に関する裁判所の判決内容が記載された上記1998年の新聞記事が表示され、 上記の記事にはゴンザレス氏の負債に関する詳細が記載されていた。
 これを受け、AEPDは、グーグルに対して関連リンクの削除を命じる決定を下したが(新聞社に対しては表現の自由などを理由に要請を棄却した。) 、グーグルがこれに対して異議を申立てスペイン高等裁判所に提訴し、同裁判所がEUの1995年データ保護準則(Directive 95/46/EC)がインターネット検索エンジンに適用されるかどうかなどに対する解釈を欧州司法裁判所に求めたところ、この答えとして出されたのが今回の判決である。

欧州司法裁判所判決の骨子

 判決の骨子は、① 会社のデータ処理サーバーが欧州外にあっても、検索エンジンの運営者がEU域内に支店や支社を置いているのであれば、EU準則は当該会社に適用され、② 検索エンジンの運営者は個人情報の処理者(controller)であるため、EU準則の責任から逃れることができず(検索エンジンが情報をインデクシング(indexing)して一時保存し、優先順位によってユーザーに提供するのは個人情報の「処理(processing)」であり、検索エンジンの運営者は「処理者(controller)」に当る。)、③ 個人は、ウェブページそのものの削除の如何とは無関係に、自分の名前で検索して表示された検索結果に対して直接検索エンジンにそのリンクの削除を求める権利を持つ、という内容である。
 加えて、欧州司法裁判所は、忘れられる権利が無限定に認められる権利ではなく、当該個人情報がデータの処理目的に対して不正確(inaccurate)、不適切(inadequate)、無関係であるか(irrelevant)、あるいは過度(excessive)な場合に適用されるものであり、事案によって表現の自由や他の基本権、公人としての役割などとバランスをとる必要があることを明確に判示した。
 これまで忘れられる権利の認定の如何とその範囲に対して多くの論争があったが、この判決は従来の個人情報の法理に基づき、検索エンジンの運営者に対するリンク削除権としての「忘れられる権利」を認めたことにその意味がある。

2014年10月4日土曜日

契約書前文

契約書の前文に記載さ れている事項は.それ自体に法的な意味がな い場合も多い。

契約の内容は.あくまで表題の後に記載さ れた本文に規定され, 表題は契約上の意味を 持たない。

「も のとする」という言葉は,裁判上の和解など でいわゆる形成条項等であることを示すため に用いることが多く,契約当事者の義務を規 定する場合には,端的に「支払う」「売り渡 す」とすれば足りる。






2014年10月3日金曜日

consideration (約因)

  英米法において"agreement" (合意)が"contract" (契約) として効力を有するために は,"consideration" が必要である。

  売買における品物の引渡しと金銭の支払のよう に,一方の当事者が行うことに対応して他方の当事者が行うことを指し, 「約因」と訳される。

 とすると,あらゆる契約を締結する場合に、"consideration" の有無を確認すべきだという ことになる。建前上はそうだが以下の理由により特別な場合以外には気にしないでよい。

 第一に,“consideration" はかなり形式化されてきており,等価で、なくても何らかのギ ブアンドテイクがあればよいということになっている。

 第二に,およそ独立した企業同士の取引で, 対価がないということはほとんどありえない。

 英米法系以外の法律(日本法も)が準拠法になる場合には、”consideration" は要求さ れない。

2014年10月2日木曜日

契約書作成上のポイント

 具体的な契約条項の作成の前に確認すべき事項は,おおむね以下のとおりである。

 第1に,売買契約,賃貸借契約などの契約類型を選択する必要がある。 事 案によってはタイトルを工夫した方が良い場合もある。

 第2に,誰に権利義務が帰属するのか,す なわち,当事者を決定する必要がある(当事者は,契約書前文および末尾に明示されるこ とが多い)。


 具体的な契約書の条項を作成する際に留意 すべき点は,おおむね以下のとおりである。

 第1に,契約書の記載は,当事者にとって 重要な権利義務等を定めるものであるから, 明確かつ,簡潔である必要がある。すなわ ち,一方で、条項の全部または一部が無効となることを回避するため,条項が矛盾する表 現,解釈が分かれうる表現は避ける必要があ る。また,明示すべきものは明示的に記載 し不要なものは記載しないことにより,条 項として過不足のない明確な条項とする必要 がある。

 第2に,ある条項を規定する際に,当該条項により,何をしようとしているのかを明確 に意識する必要がある。それを実現する手掛 かりとして,条項の性質をいくつかに 分類しながら規定することが考えられる。

 給付条項は当事者の一方が相手 方または第三者に対し,特定の給付をなすこ とを合意の内容とする条項である。一方 が給付の義務を負い,他方が給付の権利を有 することになる。確認条項は,特定の事実ま たは権利もしくは法律関係の存否を確認する 旨の合意を内容とする条項である。当事者が 前提とする事実関係または法律関係を明示す る場合などに用いられる。

 第3に,紛争を予防するという契約書の主 目的に照らし想定される紛争を予防するた めにあらかじめ当事者の権利義務等を定めて おくことが重要である。

 第4に,特に上記の給付条項においては, 要件と効果を意識する必要がある。言い換え ると, どのような事実がそろえば, どのよう な権利義務が発生するのかを明確に意識する 必要がある。







offer/acceptance (申込み/承諾)

 契約は“offer"(申込み)と"acceptance"(承諾)により成立する。

 ある連絡が“offer" や“acceptance" と明示されていない限り,それらが“offer"や "acceptance" に該当するかどうかをあらかじめ明確に判断する基準はない。

 "offer" や“acceptance" という概念が問題になるのは, 交渉が中断し契約書にサイン されなかったが, 一方当事者が「契約が成立している」と主張して争いになった場合である。そして,途中の何らかのやりとりで契約が成立していると裁判所が認定しようとする 場合に,ある手紙が“offer" で,それへの返事が“acceptance" であるという分析をして 理由をつけるのである。

 実務上の指針としては, 契約書にサインすれば問題ない。

2014年10月1日水曜日

契約書作成の意義

 契約の成立には原則として契約書のような書面の作成は必須ではない。私人である当事者間では,原則として,契約書を作成しなくても,すなわち口頭の合意であっても契約が成立する。それにもかかわらず,契約書を作成する意義は何か。

 第1に,契約の内容を書面(契約書)にすることによって,将来起きるかもしれな い紛争を避けることができる(将来の紛争予防)。

 第2に,契約とは,合意により人と人との 聞の権利義務関係を形成するものであり,当 事者聞に一種の法律を制定するようなものであるから,その重要性に照らして,書面により客観性を確保し,その内容について一義 的に明確にしておくことが望ましい。また, 紛争にならなかったとしても,人間は誰しも が忘れやすいという経験則を尊重して,書面 化することが望ましい。

 第3に,コンブライアンスの観点がある。実務上は,法令を順守したことに ついて何らかの書面を残すのがコンブライア ンスの観点上からも要請される傾向にあり, その重要な側面として契約書を作成す る傾向が強くなっている。

 契約の種類や実現される経済的な利益に 応じて契約書の分量も変化する。

agreernent/contract (合意/契約)

 “agreement"とは法律的な効力の有無を問わず広い意味 での「合意」を一般に意味し,“contract"とはその中で法律的な効力を有するもの,すなわち「契約」を意味する。

 もっとも,実務上こ のように意識して使い分けられているわけではない。すなわち,ある書類が“Agreement" と題されていると効力がないおそれがあるというわけで、はなく,契約たりうる内容であればもちろん法律上の効力を有する。“Agreement"という題名の書類が,法律上は、"contract"に該当するというだけのことである。

2014年9月18日木曜日

グーグル検索の逮捕記事表示について、原告男性の請求棄却

 検索サイト「グーグル」で自分の名前を検索すると過去の逮捕記事が表示され、名誉を傷付けられたとして京都市の40代の男性が「グーグル」の日本法人に対し、検索結果の表示中止と慰謝料など約1100万円を求めた訴訟の判決が17日、京都地裁でありました。
 京都地裁は、日本法人に表示阻止義務はないとして、名誉毀損に当たるかどうかは判断せず、男性の請求を棄却しました。
 今回の判決で、京都地裁は「サイトを管理、運営するのは(親会社で米国法人の)グーグルインク」と指摘し、「被告側に表示阻止義務を生じさせる法律上の根拠は認められない」と結論付けたそうです。

2014年9月1日月曜日

英文契約書の読み方

英文契約書は何故分厚いのでしょうか。英米法の世界は、「判例法主義」であり, 「制定法主義」と比べると,ある種の問題についての法がどのような解決を与えてくれているのか、指針がすぐには見当たらないため,当事者が紛争処理規範を契約書の中で取り決めておく必要があります。

以下に英文契約書の読み方についての留意事項を書きます。

(1)基本構成と基本用語を修得する

 契約書に使用される英文には,構成・文体・用語などいくつ かの点で際立った特徴があります。その特徴と基本的な表現を理解・修 得さえすれば,英文契約書を読むことは,決して難しくはあり ません。英文契約書は、その構文と基本用語さえ修得すれ ば、その意味やねらいを特定することが容易です。

(2)契約専門用語に慣れる

 英文契約書には、独特の語彙表現があふれています。通常の英文レターや会話ではな じみのない用語です。また,同じ語彙が別の意味で使われるこ ともあります。契約書に使用されるのは、古め かしい法律・契約書上の表現,ラテン語に起源のある用語、ビジネスに特有の専門用語など様々です。同じような用語 を繰り返して使う言い回しもあります。英文契約に独特な用語,用法,言い回しも,その一つひとつ の意味を知れば少しも難しくはありません。

2014年8月14日木曜日

京都地裁判決

京都地裁判決の要旨(2014年8月7日)

 原告 X

 被告 ヤフー株式会社

 主文

 1 原告の請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 事実及び理由

第1 請求

 1 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する平成25年5月1日(不法行為の日の後の日)から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え

 2  被告は、被告の運営するインターネット上のウェブサイト「Yahoo! JAPAN」において、原告が逮捕された旨の事実を表示してはならない。

 3 被害は、被害の運営するインターネット上のウェブサイト「Yahoo! JAPAN」において、原告が逮捕された旨の事実が記載されているウェブサイトヘのリンクを表示してはならない。

第2 事案の概要

 本件は、原告が、インターネット上で検索サービス等を提供するウェブサイト「Yahoo! JAPAN」(以下「本件サイト」という)を運営する被告に対し、本件サイトで原告の氏名を検索語として検索を行うと、原告の逮捕に関する事実が表示されるところ、これにより原告の名誉毀損(きそん)及びプライバシー侵害が行われているとして、不法行為に基づき、損害賠償金1100万円及びこれに対する年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、人格権に基づき、本件サイトにおける、原告が逮捕された旨の事実の表示及び同事実が記載されているウェブサイトヘのリンク)の表示の各差し止めを求める事案である。

 1 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)

 (1)当事者等

 ア 原告

 原告は、40代の男性であり、平成24年11月にサンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したとして、同年12月に京都府迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕され、その後、同条例違反につき平成25年4月に執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 イ 被告

 被告は、情報処理サービス業及び情報提供サービス業等を目的とする株式会社であり、本件サイトを運営している。

 (2)本件サイト及び検索サービスの概要

 ア 本件サイトにおいては、利用者が単語等を入力すると、それに関連する検索結果が表示されるというインターネット上での検索サービスが提供されている。

 上記検索結果は、(1)検索ワードをその記載内容に含むウェブサイトヘのリンク、(2)スニペットと呼ばれる、リンク先サイトの記載内容の一部が自動的かつ機械的に抜粋されたもの、(3)リンク先サイトのURLのセットが羅列された一覧形式で表示される。

 イ 本件検索サービスにおいては、所定のプログラムに従ってウェブサイトを検索するというロボット型全文検索エンジンが採用されており、自動的かつ機械的にインターネット上の無数のウェブサイトの情報が収集され、利用者が本件サイトで検索ワードを入力すると、上記収集情報の中から抽出された検索ワードに関連する検索結果が表示されるという形でサービスが提供されている。

 (3)原告に関する検索結果

 本件検索サービスを利用し、検索ワードとして原告の氏名を入力すると、その検索結果として、原告の氏名が記載されたウェブサイトヘのリンクとスニペット、当該サイトのURLとがセットになったものが複数表示される。その中には、本件逮捕事実が記載されたウェブサイトへのリンク、スニペット及びURLが複数含まれており、スニペットのみで本件逮捕事実を認識し得るものも複数存在する。

 2 争点及び争点に関する当事者の主張

 (1)本件検索結果の表示は原告の名誉を毀損するものとして、被告に不法行為が成立するか(争点1)

(原告の主張)

 本件検索結果の表示は、原告の社会的評価を低下させるものとしてその名誉を毀損するものであり、原告が無名の一私人であること、本件逮捕事実に係る犯罪が軽微なものであること、原告が同事実により既に執行猶予判決を受けていることなどからすると、違法性が阻却されることもない。その具体的理由は以下のアないしウのとおりである。

 ア 本件検索結果の表示による事実の摘示

 本件検索サービスによる検索結果は、(1)被告が、ニュースまとめサイト等のサーバーに保存されている情報を被告のサーバーに複写・保存する、(2)本件検索サービスの利用者が本件サイトで検索ワードを入力すると、被告は、捜索ワードにふさわしい情報を被告のサーバーに保存された情報の中から検索して、該当情報の一部を利用者のパソコンに送信する(その送信された情報が利用者のパソコンに表示される)という過程を経て表示されているところ、上記(1)、(2)は被告の行為そのものである。リンクについては、利用者が該当惰報の内容の全部を認識するにはクリックという行為が介在することになるが、かかる形式論でリンクの表示につき被告の行為性が否定されるものではない。

 したがって、被告がリンク及びスニペットを表示する行為は、単にリンク先サイトの存在及び所在を示すものではなく、事実の摘示そのものであるといえる。

 そして、本件検索結果の表示のうちスニペット部分には正に本件逮捕事実が摘示されているし、リンク部分もクリック一つでリンク先サイトに記載されている本件逮捕事実が目に触れられるようにしていることからすると、社会通念上、本件逮捕事実を摘示したものと評価できる。

 被告は、本件検索結果の表示は被告の意思が何ら介在しないから、表現行為に該当しない主張するが、本件検索結果の表示は被告が採用している検索エンジンによって行われているのであるから、被告の意思に基づくものであるといえる。そもそも、名誉毀損が成立するには、単に特定人の社会的評価を低下させる「事実の摘示」で足りるのであり、「意思内容の反映」、「表現」である必要はない。

 イ リンク先サイトの存在について

 リンク先サイトの存在によって、被告の行為が免責されることはない。リンク先サイトにおいて本件逮捕事実に関する情報が表示された時点では名誉毀損が成立しなかったとしても、これとは別の時点で、別の方法で本件逮捕事実を表示する行為については、独自に当該表示行為そのものについても名誉毀損の成否が検討されるべきである。

 ウ 違法性阻却について

 同種被害の防止の観点から犯行に対する注意を喚起する社会的必要性が高いとしても、軽微な犯罪について、執行猶予判決の言い渡し時以降においてまで犯人の実名を公衆に認知させる必要はないから、原告の実名を含む本件逮捕事実は公共の利害に関する事実とはいえない。

 また、本件検索結果の表示に係る被告の行為は、自動的かつ機械的になされているというのであるから、一片の公益目的も認められない。

 したがって、違法性阻却は認められない。

(被告の主張)

 ア 本件検索結果の表示は、本件逮捕事実の記載があるウェブサイトの存在及びURLを示すものにすぎず、本件逮捕事実を摘示しているわけではないから、名誉毀損の要件としての事実の摘示を欠いている。本件検索サービスは、単なる情報へのアクセス手段としての機能を有するにすぎないものであり、被告の意思内容の反映とはいえない。したがって、表現行為とはいえない検索結果の表示によって名誉毀損が成立する余地はない。本件逮捕事実が記載されているリンク先サイト(新聞記事等)につき名誉毀損が成立しないのに、本件検索サービス等の上記記事へのアクセス手段が違法となるというのは、常識にも反する。

 本件検索結果の表示のうちスニペット部分についても、自動的かつ機械的にリンク先サイトの情報を−部抜粋して表示しているにすぎないことに照らすと、被告が表現行為として自らの意思内容を表示したものとはいえないから、事実の摘示には当たらず、名誉毀損となるものではない。

 イ 仮に、本件検索結果の表示が「本件逮捕事実の記載があるウェブサイトの存在及びURL」という事実の摘示(表現行為)に当たると解されたとしても、本件逮捕事実の記載があるウェブサイトがインターネット上に存在するという事実は、真実である。また、現代の人々の生活にとってインターネットからの情報収集が不可欠であり、検索サービスがそのための必須のツールになっていることに照らせば、上記ウェブサイトを含め、あるウェブサイトの存在という事実には公共性があり、かつ、そのような情報を提示する行為に公益目的が認められることは明らかである。

 したがって、本件検索結果の表示については違法性が阻却される。

 ウ インターネット上には無数の言論が存在するところ、あらゆる言論に自由にアクセスできることは表現の自由の根本的要請である。本件検索サービスによる特定の検索結果につき名誉毀損が成立するとなると、被告は、当該検索結果において表示されたリンク先サイトへのアクセス制限を強制されることになるが、これは表現の自由の根幹を揺るがすものといわざるを得ない。

 (2)本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害するものとして、被告に不法行為が成立するか(争点2)

(原告の主張)

 本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害する。その理由については、争点1の主張のとおりである。

(被告の主張)

 原告の主張は争う。

 本件逮捕事実については、その発生からまだわずかな期間しか経過しておらず、みだりに公開されない利益としてのプライバシーの保護の対象となるものではない。また、被告は、本件検索結果の表示により、単に本件逮捕事実の記載があるウェブサイトの存在及び所在(URL)を示しているにすぎず、本件逮捕事実を公表しているものではないから、プライバシー侵害は生じ得ない。

 仮に、プライバシー侵害の問題が生じ得るとしても、上記ウェブサイトの存在及びURLという情報には公共性があり、かつ、そのような情報を提示する検索結果の表示という行為の目的及び方法に相当性が認められることは明らかであるから、違法性はない。

 (3)損害及び因果関係(争点3)

(原告の主張)

 ア 原告は、本件逮捕事実により勤務先を懲戒解雇となった後、平成25年4月に執行猶予判決を受け、心機一転して再就職のための活動をしようと考えていた。ところが、本件サイトで原告の氏名を検索すると、検索結果として、原告が逮捕された旨の記事が多数表示されたことから、企業等の採用担当者がインターネットで原告の氏名を検索すると本件逮捕事実を知ることになり、原告を採用することはないであろうと、将来を絶望するに至った。潜在顧客が原告の氏名を検索することを考えると、個人事業を営む道も絶たれたといえる。これらに限らず、原告が名乗った相手がインターネットで原告の氏名を検索することで、本件逮捕事実を知られるのではないかとの不安から、原告は通常の社会生活を送ることができない状態である。

 以上のことからすると、被告の名誉毀損行為及びプライバシー侵害行為によって原告が被った精神的損害は、1000万円を下回ることはない。また、弁護士費用としては100万円が相当である。

 イ 一般公衆は、インターネット上に多数存在する本件逮捕事実に関するウェブサイトの存在も所在も知らないのであり、被告の本件検索サービスによって初めて、本件逮捕事実に関するウェブサイトを目にし、そのため、原告に多大な精神的損害が生じるのであるから、被告の行為と原告の精神的損害との間の因果関係は明白である。

 また、被告以外の他社の検索サービスがあるからといって、上記因果関係が否定されるものではない。

(被告の主張)

 原告が主張する損害については立証がなされていない。

 また、仮に本件検索結果の表示がされなかったとしても、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトはこれが削除されるまで存在し続け、誰でも閲覧できる状態にあるし、被告以外の他社の検索サービスも存在するのであるから、本件検索結果の表示と原告が主張する損害との間には相当因果関係が認められない。

(4)本件差止請求の可否(争点4)

(原告の主張)

 平成26年5月に、欧州連合司法裁判所において、検索サービス最大手の会社に対し、他人に知られたくない情報が掲載されているサイトへのリンクを削除することを命じる判決が言い渡された。

 本件においても、憲法上の幸福追求横に由来する個人の名誉、プライバシー保護の観点から、本件差し止め請求が認められるべきである。

(被告の主張)

 争う。

当裁判所の判断

 1 争点1(本件検索結果の表示は原告の名誉を毀損するものとして、被告に不法行為が成立するか)について

 (1)本件検索結果の表示による事実の摘示

 ア 前提事実のとおり、本件検索サービスの仕組みは、被告が構築したものであるから、これによる検索結果の表示は、被告の意思に基づくものというべきであるが、本件検索サービスの目的(リンク先サイトの存在及びURLを利用者に知らせること)や、表示される検索結果が基本的には、被告が左右することのできない複数の条件(利用者が入力する検索ワードの内容、リンク先サイトの存在及びその記載内容等)の組み合わせによって自動的かつ機械的に定まること等にかんがみれば、被告が検索結果の表示によって本件検索サービスの利用者に摘示する事実とは、リンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部(スニペットとして表示される、当該サイトの記載内容のうち検索ワードを含む部分)という事実に止まるものと認めるのが相当であり、本件検索サービスの一般的な利用者の通常の認識にも合致するといえる。

 前提事実のとおり、本件検索結果の表示は、原告の氏名を検索ワードとして本件検索サービスにより検索を行った結果の一部であり、ロボット型全文検索エンジンによって自動的かつ機械的に抽出された、原告の氏名の記載のある複数のウェブサイトヘのリンク、スニペット(本件逮捕事実が記載されたもの)及びURLであるから、これによって被告が摘示する事実は、「原告の氏名が記載されているウェブサイトとして、上記の複数のリンク先サイトが存在していること」及び「その所在(URL)」並びに「上記の複数のウエブサイト中の原告の氏名を含む部分の記載内容」という事実であると認めるのが相当であり、本件検索サービスの一般的な利用者の通常の認識にも合致するといえる。

 イ 原告は、本件検索結果の表示は正に本件逮捕事実の摘示である旨主張する。

 しかし、上記判示のとおり、本件検索結果の表示のうちリンク部分は、リンク先サイトの存在を示すものにすぎず、本件検索サービスの利用者がリンク部分をクリックすることでリンク先サイトを開くことができるからといって、被告自身がリンク先サイトに記載されている本件逮捕事実を摘示したものとみることはできない。また、スニペット部分に本件逮捕事実を認識できる記載があるとしても、スニペット部分は、利用者の検索の便宜を図るため、リンク先サイトの記載内容のうち検索ワードを含む部分を自動的かつ機械的に抜粋して表示するものであることからすれば、被告がスニペット部分の表示によって当該部分に認識されている事実自体の摘示を行っていると認めるのは相当ではなく、本件検索サービスのー股的な利用者の通常の認識とも合致しないというべきである。本件逮捕事実も、検索ワード(原告の氏名)を含んでいたことから検索ワードに付随して、無数のウェブサイトの情報の中から抽出され、スニペット部分に表示されたにすぎないのであるから、被告がスニペット部分の表示によって本件逮捕事実を自ら摘示したとみることはできないというべきである。

 ウ 以上のとおり、被告が本件検索結果の表示によって摘示する事実は、検索ワードである原告の氏名が含まれている複数のウェブサイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実であって、被告がスニペット部分の表示に含まれている本件逮捕事実自体を摘示しているとはいえないから、これにより被告が原告の名誉を毀損したとの原告の主張は、採用することができない。

 エ したがって、被告が本件検索結果の表示によって原告の名誉を毀損したとはいえないから、被告に原告に対する不法行為が成立するとはいえない。

 もっとも、上記判示のとおり、本件検索結果の表示のうちスニペット部分には本件逮捕事実を認識できる記載が含まれていることから、被告が本件検索結果の表示によって本件逮捕事実を自ら摘示したと解する余地がないではない。

 また、被告が本件検索結果の表示をもってした事実の摘示(検索ワードである原告の氏名を含む本件逮捕事実が記載されている複数のウェブサイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実の摘示)は、本件逮捕事実自体の摘示のように原告の社会的評価の低下に直結するとはいえないものの、そのような記載内容のウェブサイトが存在するということ自体が原告の社会的評価に悪影響を及ぼすという意味合いにおいて、原告の社会的評価を低下させる可能性があり得る。

 そこで、後記(2)においては、仮に、被告に本件検索結果の表示による原告への名誉毀損が成立すると解する場合、その違法性が阻却されるかどうかにつき検討する。

 (2)違法性阻却の可否

 ア 民事上の不法行為たる名誉毀損については、(1)その行為が公共の利害に関する事実に係り、(2)専ら公益を図る目的に出た場合には、(3)摘示された事実が真実であることが証明されたときは、上記行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決)。

 イ 以下、本件検索結果の表示による事実の摘示につき上記ア(1)ないし(3)が認められるかどうかにつき、検討する。

 (ア)(1)について

 本件逮捕事実は、原告が、サンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したという特殊な行為態様の犯罪事実に係るものであり、社会的な関心が高い事柄であるといえること、原告の逮捕からいまだ1年半程度しか経過していないことに照らせば、本件逮捕事実の適示はもちろんのこと、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実の摘示についても、公共の利害に関する事実に係る行為であると認められる。

 (イ)(2)について

 前提事実によれば、本件検索結果の表示は、本件検索サービスの利用者が検索ワードとして原告の氏名を入力することにより、自動的かつ機械的に表示されるものであると認められるから、その表示自体には被告の目的というものを観念し難い。

 しかしながら、被告が本件検索サービスを提供する目的には、一般公衆が、本件逮捕事実のような公共の利害に関する事実の情報にアクセスしやすくするという目的が含まれていると認められるから、公益を図る目的が含まれているといえる。本件検索結果の表示は、このような公益を図る目的を含む本件検索サービスの提供の結果であるから、公益を図る目的によるものといえる。

 (ウ)(3)について

 前提事実のとおり、本件逮捕事実は真実である。また、本件検素結果の表示は、本件検索サービスにおいて採用されたロボット型全文検索エンジンが、自動的かつ機械的に収集したインターネット上のウェブサイトの情報に基づき表示されたものであることに照らせぽ、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部は事実であると認められる(なお、リンク先サイトが削除されていたとしても、同サイトが存在していたことについての真実性は認められる)。

 したがって、仮に、被告が本件検索結果の表示をもって本件逮捕事実を摘示していると認められるとしても、または、被告が本件検索結果の表示をもって、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部という事実を摘示したことによって、原告の社会的評価が低下すると認められるとしても、その名誉毀損については、違法性が阻却され、不法行為は成立しないというべきである。

 2 争点2(本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害するものとして、被告に不法行為が成立するか)について

 (1)被告が本件検索結果の表示によって原告のプライバシーを侵害したかどうかは、本件検索結果の表示によって被告が適示した事実が何であったかにより異なりうるが、仮に本件検索結果の表示による被告の事実の摘示によって原告のプライバシーが侵害されたとしても、(1)摘示されている事実が社会の正当な関心事であり、(2)その摘示内容・摘示方法が不当なものでない場合には、違法性が阻却されると解するのが相当である。

 (2)これを本件についてみるに、争点1における違法性阻却につき判示したのと同様の理由により、本件逮捕事実の摘示はもとより、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部という事実の摘示も、社会の正当な関心事ということができ((1))、その摘示内容・摘示方法も、本件検索サービスによる検索の結果として、リンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部を表示しているにすぎない以上、その摘示内容、摘示方法が不当なものともいえない((2))。

 (3)したがって、本件検索結果の表示による上記事実の摘示に係る原告のプライバシー侵害については、違法性が阻却され、不法行為は成立しない。

 3 争点3(損害及び因果関係)及び争点4(本件差し止め請求の可否)

 本件検索結果の表示による被告の原告に対する名誉毀損及びプライバシーの侵害については、成立しないか、または、その違法性が阻却されるというべきであるから、争点3については判断の必要がない。

 また、上記1及び2で判示したところに照らせば、本件検索結果の表示によって原告の人格権が違法に侵害されているとも認められないから、争点4に係る原告の本件差し止め請求については理由がない。

 4 結論

 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

2014年8月7日木曜日

ベネッセコーポレーションの顧客情報漏洩事件

<ベネッセコーポレーションの顧客情報漏洩事件>

 企業が集積する個人情報が容易に流出する事件がまた起きました。
  ベネッセホールディングスの延べ1億件の顧客情報が漏洩したとみられる事件。

 逮捕された被疑者M(39)は、顧客情報データベースの保守管理の再委託先のシステムエンジニア(SE)でした。Mは、業務上与えられたデータベースへのアクセス権を使って不正に顧客データをコピーしていたのです。

 データベースの端末が置かれていた部屋は出入りをカメラで常時監視するなど、部外者の入場を厳しく制限していました。データベース端末に指定外の記憶媒体などを接続すると、エラーになる仕組みも取り入れられていたそうです。

 しかし、データの持ち出しに使用されたスマートフォンは最新型で、この仕組みを免れることができました。これを知ったMが、管理体制の隙を突いたようです。

<問題の背景>

 電子データ化された大量の顧客情報の保守管理を外注する企業は増えています。これに伴い、委託先の従業員が営業秘密に該当する大量の情報を不正に持ち出す事例は後を絶ちません。
  多くの企業は、顧客などに関する大量の情報を電子データ化し、管理を外注しています。再発防止策の確立は緊急課題です。

 従業員のモラルに頼るのはもう限界。重要情報へのアクセス管理の徹底などが強く求められています。

 委託先と守秘義務契約を結んでも、委託先の個々の社員にまで徹底させるのは難しいようです。データベースの保守管理を請け負うIT企業では、委託先や再委託先など様々な立場の人が出入りする現場では末端の不正まで見抜けないのです。

 漏洩した顧客情報が流通する背景には、2005年の個人情報保護法の完全施行で住民基本台帳から個人情報を入手しづらくなったことがあります。

 漏洩したベネッセの顧客情報は、2006年以降のデータが多いそうです。不正に入手した個人情報の売買は禁じられており、名簿業者らが不正取得の可能性を疑う余地はありました。しかし、「知らなかった」と言えば不正の認識の裏付けは難しく、いったん外部に出た情報の流通は規制が困難です。

<対策>
 
 今後は、委託先も含めて社員個人と守秘義務契約を結び、違反すれば損害賠償などのペナルティーがあることを認識させることが必要となるでしょう。

2014年7月19日土曜日

永住外国人の生活保護認めず 最高裁が初判断


 永住資格を持つ外国人が生活に困窮した場合、日本人と同様に生活保護法の適用対象となるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は18日、対象になるとした二審・福岡高裁判決を破棄し、原告側逆転敗訴の判決を言い渡した。同法が適用対象と定めた「国民」に永住外国人は含まれないと初めて判断した。

 原告は永住資格を持つ中国籍の女性(82)。2008年、大分市に生活保護を申請したが、預金があるとして却下された。一審・大分地裁は外国籍を理由に訴えを退けたが、二審・福岡高裁は「永住外国人は生活保護法を準用した法的保護の対象」と判断した。

 同小法廷はこの日の判決理由で「生活保護法が永住外国人に適用されると理解すべき根拠が見当たらない」と指摘。「行政措置によって事実上の保護対象となり得るにとどまる」と結論付けた。

 旧厚生省は1954年、外国人に対しては生活保護に準じた行政措置を実施すると通知し、90年に対象を永住外国人に限定。現在は自治体の裁量で生活保護費が支給されている。女性も11年10月に申請が認められ、現在は給付を受けている。

2014年6月18日水曜日

米国法人に対する仮処分

Q 米国法人に対する仮処分の国際送達は、どのようになされるのでしょうか?

 仮処分であっても、送達は裁判所から当事者に対してなされます(民事保全法17条)。
 送達に関しては、民事訴訟法98条以下に定められています。
 米国法人への送達については、領事送達又は中央当局送達のいずれかによることになります。

(1) 領事送達
嘱託書・判決書等の英訳がされた後、東京地裁所長→最高裁民事局長→外務省→アメリカに駐在する日本の大使、総領事又は領事→米国法人という経路で送付されます。

(2) 中央当局送達
要請書・判決書等の英訳がされた後、東京地裁所長→最高裁民事局長→アメリカ司法省→民間会社(実施当局)→米国法人という経路で送付されます。

 債権者代理人から決定の交付を事実上受けた場合であっても、「適式な送達」があったとは認められず、送達の効力も発生しません。
 
 仮処分の執行は、送達がされたときに効力が生じますので(民事保全法52条、民事執行法167条)、送達がない段階では間接強制の申立てを受けるリスクもありません。

2014年6月4日水曜日

ガバナンス・内部統制に関する事例


大和銀行株主代表訴訟事件

被告らのうち、11人に対して7億7500万ドル-...7000万ドルの損害賠償を命じた。
内部統制システムに関しては、ニューヨーク支庖における財務証券取引及びカストディ業務に関するリスク管理体制について、大綱のみならずその具体的仕組みについても整備されていなかったとまではいえないとしつつ、財務証券の保管残高の確認方法が著しく適切さを欠いている等と認定した。


ダスキン株主代表訴訟事件

取締役全員と監査役に、不祥事を知って自ら積極的に公表しないと決定し たことを理由に、寄与度に応じた因果関係の割合的認定により、一人あたり 5億5805万-2億2222万円の賠償責任が認められた。

日本システム技術事件

代表取締役に、不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失はない。

福岡魚市場事件
 
監視義務違反が認められた。ただし、損害との因果関係の立証がなく、他の請求原因により請求額全額である18億8000万円の賠償義務を負うこととなった。


ヤクルト本社事件
デリバティブによる損失に関する事例

新潮社フォーカス事件
今内部統制システムの構築義務違反を理由として、|日商法266条ノ3(会社法429条)の第三者責任が認められた。



日経インサイダー事件
社員のインサイダー取引規制に関する事例

雪印食品牛肉偽装事件

三菱商事事件

フライデー事件

ジャージー高木乳業事件









2014年5月24日土曜日

英文契約作成③

平易な言葉能動態を使用しましょう。

平易な言葉名詞ではなく動詞で行為を表現しましょう。

- Instead of: 'the parties reached agreement'
- Say: 'the parties agreed'


- Instead of: 'the Purchaser shall make payment'
- Say: 'the Purchaser shall pay'


平易な言葉二重否定を避けましょう

  

2014年5月23日金曜日

英文契約作成②


さて、ここで簡単なクイズです!
 
次のフレーズを簡易なフレーズに言い換えてみましょう。

- As to the manner in which
- Contained herein
- Due to the fact that
- In the event that
- We hereby confirm that we are in receipt of the following documents


さて、回答は・・・






- As to the manner in which:How
- Contained herein:In
- Due to the fact that:Because
- In the event that:If
- We hereby confirm that we are in receipt of the following documents:We have received
 
 

2014年5月22日木曜日

英文契約作成①

なぜ明確なドラフティングが重要なのでしょうか?

あなたのドラフティング力はどのくらいでしょうか
- どのようにあなた自身の作成能力を考えますか?

- あなたはどのようなフィードバックを受けていますか?
- あなたにとって最大の課題は何ですか?


「分かりやすい言葉」とは、あなたにとって何を意味するのでしょうか? 

かつて、消費者・一般人を保護しようとする観点から,Plain English(プレイン・イングリッシュ、平易な英語)を使って契約書を作成 しようと提唱されました。


平易な言葉:基本的なルール
- 短い文や段落を使用してください
- 長ったらしい冗長表現は避けてください
- 通常の意味普通の言葉を使用してください
必要な場合を除く)
古風かつ専門用語は避けてください
- 能動態を使用してください
- 名詞ではなく動詞で行為を表現してください
- 論理的な順序読みやすい形式をとりましょう


平易な言葉短い文
- 文章が長ければ長いほど、文法的な複雑さは増し、誤解のリスクが増えます。

- '25単語 'ルール


平易な言葉通常の意味での一般的な言葉を使う
- 例えば以下のような古風な言葉を避けましょう。

aforementioned
hereinafter
forthwith
henceforth

- 例えば以下のようなラテン語の使用は必要な場合に限りましょう。

pro rata
pari passu - フランスの法律用語には注意しましょう。
e.g. give, devise and bequeath



長ったらしい冗長表現は避けてください
 - Obviously/clearly/apparently/absolutely/very
- Must necessarily
- Duly signed
- As you would appreciate
- In view of the fact that
- Exressly agrees
- That particular requirement

- The actual position
- Basically

2014年5月20日火曜日

パソコン遠隔操作事件②

パソコンの遠隔操作事件で、これまで無罪を主張してきた元会社員Kが一転して「私が真犯人で、一連の事件はすべて自分の犯行だ」と認めました。

Kは保釈を取り消され20日午後、東京拘置所に勾留されました。

パソコンの遠隔操作事件では、インターネット関連会社の元社員Kが威力業務妨害などの罪に問われていて、今年3月に保釈され裁判では一貫して無罪を主張してきました。

しかし、弁護団によりますと、19日夜になってKが一転して一連の事件はすべて自分の犯行だと認めたということです。

また、今月16日に報道機関などに送られた自分が真犯人と主張するメールもKが送ったことを認めたということです。

Kは19日午前10時20分すぎに弁護団と電話で話したあと連絡がとれなくなっていましたが、午後9時半に弁護士に「自分が犯人です」と電話で伝えてきたということです。

そして「死のうと思って山の中をさまよったり電車に飛び込もうとしたが踏みきれない」と自殺をほのめかしたことから弁護士が思いとどまるよう説得し、20日朝保護して東京地検に連絡したということです。

弁護団によりますと、Kは犯行を認めた理由について16日のメールの送信に使ったとみられる携帯電話をその前日、東京の荒川河川敷に埋める様子を警視 庁の捜査員が目撃していたと報道されたことを知り「もはや言い逃れができないと思った」と説明しているということです。

Kは22日、裁判に出廷する予定になっていますが、弁護団が「これまでの無罪主張を撤回し、みずからの関与を洗いざらい話すべきだ」と伝えたところKは了承したということです。

東京地検は、裁判所が保釈の取り消しを認めたことから20日午前11時ごろ弁護士事務所にいた被告を拘束しました。

そして、午後1時20分ごろ身柄を東京拘置所に移して再び勾留しました。

 主任弁護人の佐藤博史弁護士は記者会見で「裏切られたという感情はない」と語りつつ、「完全にだまされた」とも述べ、刑事弁護人としての複雑な感情をのぞかせました。

 
これについては、弁護士ドットコムで興味深い記事が掲載されています。

「佐藤弁護士が批判される理由はない」 ベテラン弁護士が語る「刑事弁護人」の心得

パソコン遠隔操作事件


 パソコンの遠隔操作事件では、インターネットの掲示板などに殺害や爆破の予告を書き込んだとして、インターネット関連会社の元社員が威力業務妨害などの罪に問われています。

 被告人は、今年3月に保釈されましたが、その後の裁判で一貫して無罪を主張しています。 この事件について今月16日、被告人が裁判に出廷中に、報道各社などに自分が真犯人と主張する人物からメールが届きました。 メールには、「自分が被告のパソコンをウイルスに感染させたうえで、他人のパソコンを遠隔操作したのが事件の真相だ」などと記され、被告人が逮捕されるように仕向けたとする内容でした。

 ところが、捜査関係者によりますと、メールが送られる前日に被告人が東京・江戸川区の荒川の河川敷を訪れて何かを埋めるのを捜査員が目撃し翌日にその場を掘り返したところ携帯電話が見つかり、中にメールの文面や送信した痕跡が残っていたということです。

 メールは裁判の出廷中に送られるよう、タイマー機能を使って送られた疑いがあり、捜査当局は、真犯人の存在を示すために、被告自身がメールを送ったと判断したということです。 そのうえで、このメールの送信は他人の犯行に見せかけるための工作で、保釈条件にも違反したとして、東京地検は被告人の保釈の取り消しを裁判所に請求しました。請求が認められれば、彼は再び収監されることになります。
 

 また、メールの中には特定の団体を脅すような内容が記されていたことから、東京地検と警視庁は、被告人との関連を調べるため、容疑者を特定しないまま脅迫の疑いで、東京・江東区の自宅を捜索しました。

 被告人はメールについて先週の会見で、自分が送ったことを否定したうえで、「犯人しか知りえないような内容が書かれており、信ぴょう性は高いのではないか。これをもって裁判を終わりにしてほしい」と話していました。


 仮に真犯人からのメールであるとすると,内容的にもメールを出す時期的にも不自然ですよね。
もっと世間の注目を集める方法や意表をついた内容があるのに、この程度の内容でこのタイミングというのは。

 土中から掘り出したスマホに真犯人メールが残っていた、被告人のDNAが付着していた、といった話しも報道されていますが、これらは警察リーク情報の丸呑みなので、ちょっと割り引いて考える必要があります。

 それにしても、あの程度の内容のメールしか送れなかったということは、仮に被告人が送ったとしも、そのことは被告人が真犯人である証拠にはならないということかもしれません。その行動が、早く自由の身になりたいという気持ちから出たものだとしたら、哀れですね。

 なお、今回のメールが自作自演であることを捜査機関が立証したとしても、本訴の公訴事実を立証することにはなりません。真犯人メールに秘密の暴露の内容があれば別ですが、もし真犯人メールに秘密の暴露の内容があれば、リークなんかしないで法廷に出すでしょう。 仮に真犯人メールが自作自演だとしても、本人による犯人隠避罪は成立しません。ありうるとすれば、脅迫。捜査機関サイドは、メールの中には特定の団体(皇居ランナー等)を脅すような内容が記されていたことから、脅迫の疑いで立件しそうな勢いです。


 現在、保釈中であるにもかかわらず、弁護人や家族も連絡がとれていないとのことです。どこに行ったのか,気になります。

2014年5月19日月曜日

ウナギ産地偽装、社長に有罪判決 静岡地裁

 台湾産ウナギを静岡県産と偽って販売したとして、不正競争防止法違反の罪に問われた加工販売店の社長に静岡地裁は15日、懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決を言い渡しました。法人としての同社は罰金100万円としました。

  村山浩昭裁判官は判決理由で「業者や消費者を欺き、本県特産のウナギに対する信頼を損なったのは悪質」と指摘する一方で「返金に応じて弁済しており、再発防止のチェック体制を整備している」と述べました。

 判決によると、被告人は昨年4月から5月にかけ、台湾産ウナギの加工品約100キロを静岡産と偽って静岡市の業者に約68万円で販売したそうです。

2014年5月18日日曜日

ダイビング事故、元ガイドに無罪判決

 沖縄でのダイビング中の事故を防げず客に障害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた元ダイビング店経営者でガイドとして引率していた被告人(53)に、札幌地裁(田尻克已裁判長)は15日、無罪の判決を言い渡しました。求刑は罰金30万円でした。

  判決理由で田尻裁判長は「被告人が客の近くにいたとしても客の異常に気付けたとは言えず、仮に対処したとしても客がおぼれた可能性は残る」と指摘しました。

 弁護側は「被告人は適切に客の状態を観察しており事故は防げなかった」と無罪を主張していました。

 被告人は2009年4月20日、沖縄県座間味村の海で女性客を引率中、そばで注意を払う義務を怠って先に進んだ結果、客がパニック状態に陥って溺れたのに気付かず、低酸素脳症などの傷害を負わせたとして那覇地検に起訴されました。客の女性は腕などに障害が残ったそうです。

 なお、那覇地裁が被告人の住所を管轄する札幌地裁へ移送したため、札幌地裁で判決が出されたようです。

2014年5月16日金曜日

サムスンに995万円のみ請求権 アップル訴訟で知財高裁

 アメリカのアップルと韓国のサムスン電子による一連の裁判で、知的財産高等裁判所はスマートフォンなどの通信技術の特許についてサムスンの主張を一部で認め、ライセンス料に相当する990万円の賠償を求めることができるという判決を言い渡しました。

 スマートフォンやタブレット端末の技術を巡り、アメリカのアップルと韓国のサムスン電子による裁判は世界各地で続いています。

 このうち今回の訴訟の対象は、アップル製のスマホ「iPhone 4」などに使われているサムスンの通信技術です。

 通信技術の特許に関する裁判では1審の東京地方裁判所が去年、アップルの勝訴としたため、サムスンが控訴していました。

 控訴審判決で、知的財産高裁(飯村敏明裁判長)は、「サムスンによる損害賠償請求は、ライセンス料相当額を超える部分では認められない」との判断を示しました。

 損害賠償請求権をすべて認めなかった一審・東京地裁判決を変更し、ライセンス料相当額として995万円だけの損害賠償請求権を認め、サムスンはアップル側にそれ以上は請求できないとしました。

 一方でアップルの一部機種に対する販売禁止などの仮処分は、「権利濫用になる」として、請求を却下した一審判決を維持しました。

 この裁判で知財高裁は「審理の参考にするため」として、他社に特許を使わせる際の条件などについて一般の意見を募集しました。日本の裁判所では初めて一般から意見を募集するという取り組みです。弁護士や研究者などから合わせて58通の意見が寄せられました。判決では「貴重で有益な資料」になったと述べました。

2014年5月15日木曜日

知財保護の自民提言

 報道によれば、自民党が、15日、営業秘密の保護など知的財産の活用に関する提言をまとめたそうです。

<内容>

・ 秘密を漏洩した関係者らの罰金刑の引き上げ
・ 被害を受けた企業の裁判での立証負担の軽減策
・ 特許権などの取得にかかる審査期間(2012年度は30カ月)を今後10年以内で14カ月以内と半減させるよう審査体制を整備

 知財立国としての日本。競争も厳しい世界です。ぜひとも頑張ってよい制度を作ってほしいものです。

2014年5月14日水曜日

忘れられる権利

  報道によれば、13日、インターネットに掲載された個人情報の削除を求める、いわゆる「忘れられる権利」を巡って、欧州連合(EU)の最高裁に当たる欧州司法裁判所(ルクセンブルク)が、検索大手グーグルに個人情報削除命令を出したそうです。

 欧州司法裁判所は、ネット検索結果として表示される過去の報道内容に、今も自分の名前が表示されるのは不当だと訴えていたスペイン人男性の訴えを認め、米グーグルに対し男性の個人情報を削除するよう命じる判決を下しました。同裁判所は「検索企業は一定の条件下で、個人名での検索で表示される結果からリンクを削除する義務がある」と指摘しました。

 この裁判では、プライバシー保護を優先するか、表現や情報の自由を優先するかが問われていました。

 原告のスペイン人男性は、1998年の新聞に掲載された自分の債務に関する記事を巡り、2010年に同国の情報保護当局に苦情を申し立てました。債務はすでに完済しているにもかかわらず、グーグルで検索するとこの記事が表示されるのは、情報保護の権利侵害に当たると訴えていました。

 当局は、新聞に対する請求は退ける一方で、グーグルに対しては、原告に関するニュースをこれ以上広める権利はないと判断し、検索結果からリンクを削除するよう命じたのです。
 
 これを不服としてグーグルが上訴し、スペインの高裁を経て欧州司法裁判所に判断が持ち越されていました。 13日の判決では、グーグルのような検索エンジンは情報の「管理者」に当たると認定し、請求があれば望まれないリンクを削除する義務があると判断。 「インターネット検索エンジンの運営者には、第三者によって公開されたウェブページに表示される個人情報の処理に関する責任がある」と指摘しました。

 グーグル社は、これまで情報を削除するかどうかの判断は個々のウェブサイトに委ねられると主張しており、判決に対して遺憾であると表明し、今後の対応について検討するとしています。

 EUは、情報保全に関する規則に個人の「忘れられる権利」を明記する方針で、判決はこれを先取りして認めた形です。これにより、個人は時間が経過し、現状にそぐわなくなった過去の情報の削除を求めることが可能となりました。

  EU域内に効果が及ぶ同裁判所の判断は、この権利を巡る今後の議論にも大きな影響を与えそうです。これにより、グーグルの検索事業は個人からの削除請求にさらされる恐れがあります。

<欧州の個人情報保護>

 個人情報保護に関しては、EUが一番厳しいです。 日本企業が海外進出するといってもアジアやアメリカとEUでは難易度が違います。社員の個人情報に関する規制がまるで違うからです。

 「忘れられる権利」も、そのような状況下で保証された権利です。個人情報保護やプライバシーに敏感な欧州では、忘れられる権利の必要性が活発に議論されています。

<表現の自由>

 この問題にかかっている利害は、欧州司法裁判所のニーロ・ヤースキネン法務官によって、裁判所に事前にはっきりと説明されていました。同氏は、「忘れられる権利」の法制化には「表現と情報の自由といった極めて重要な権利を犠牲にすることが伴う」と述べていました。

  さらに、検索エンジンにこのような義務を負わせることは、パブリッシャーの権利を侵害し、「私的関係者による公開コンテンツの検閲に至る」と付け加えていました。




2014年5月13日火曜日

リベンジポルノ


  報道によれば、元交際相手の女性の裸の画像をインターネットの掲示板に投稿したとして、名誉毀損の罪に問われた男性被告(46)に対し、名古屋地裁(山田亜湖裁判官)は13日までに、懲役10月(求刑懲役1年)の実刑判決を言い渡したそうです。

 山田裁判官は判決理由で「ネットへの画像掲載は回収の見込みが乏しく、被害者の精神的苦痛は大きい」と指摘。「女性が離れていき、警察からストーカー扱いされたことに怒りを募らせて犯行に及んでおり、動機は身勝手」と述べました。

 判決によると、蛭田被告は昨年8月、携帯電話を使って、以前交際していた女性の顔や裸を撮影した画像を実名付きでネット掲示板に投稿。不特定多数の人が閲覧できる状態にし、女性の名誉を傷付けました。

 「リベンジ(復讐)ポルノ」とは、恋人や配偶者への愛情表現として自分の裸などを撮って送った写真が、別れた後で腹いせにインターネットに投稿されるよ うなケースです。近年、社会問題化しています。昨年10月に東京都内で起きたストーカー事件を機に、リベンジポルノの危険性が知られるようになりました。

  こうした写真の送信は10年ほど前から米国で広まりました。リベンジポルノの土壌は日本でも広がりつつあります。スマートフォンの普及で気軽に写真を送れるようになり、若者を中心に被害が広がっているようです。

 ネットに出て困る写真は『撮らない、撮らせない』が大切です。ネット上に載ると消すことはほぼ不可能ですから。



2014年5月12日月曜日

FCPA(アメリカ贈賄禁止法)の摘発が急増

 米司法当局が外国公務員に対する企業などの贈賄行為を禁止する海外腐敗行為防止法(FCPA)による摘発を強めています。最近10年で摘発件数は約10倍に急増しました。当局が積極的な法令解釈で摘発対象を広げているためです。

<FCPAとは>

 FCPAは米企業の外国の公務員に対する贈賄問題を機に1977年に施行されましたが、その後20年摘発事例は極めて少なかったようです。2000年代前半の法改正後、にわかに摘発が始まり、90年代後半に年間数件だった摘発が、2010年ごろには30件超に膨らみました。背景にあるのは、法律を管轄する司法省と米証券取引委員会(SEC)による積極的な法令解釈です。

 たとえば、FCPAの規制対象は原則として米企業ですが、外国企業も米企業と共謀したり、不正な支払いの一部を米国内で行ったりした場合には適用されます。当局は「米国内の行為」に「米銀を経由して資金をドル決済することも含まれる」と解釈し摘発しています。

 外国公務員への贈賄規制で米国ほど厳しい国は少ないです。そのため、米企業が競争上不利にならないよう、当局は米企業以外への適用に熱心です。

 米当局は外国公務員の定義も解釈を広げてきました。法令は「政府、その部局、機関、もしくは関連機関の職員・従業員」と規定していますが、当局は実務で「国営、実質的に支配する会社の従業員も含まれる」としているのです。

 アルカテル・ルーセントは10年、マレーシアの通信会社TMBの従業員に不適切な支払いをしたと摘発されました。この件ではマレーシア政府のTMBへの出資比率は43%にすぎませんでした。しかし、米当局は同国財務省がTMBの支出に拒否権を持つことなどから、TMBの従業員を公務員とみなしたのです。

 FCPAの適用範囲が裁判所で争われる事例が少ないことも、当局が積極的な摘発を続ける背景となっています。当局が解釈を広げても、摘発対象となった企業や個人の多くが「不訴追」や「訴追延期」を条件に和解金を払う司法取引に合意してしまうからです。

 FCPAや独禁法の執行は、民主党政権下では厳しくなる傾向があります。商習慣が異なるアジアや中東などで活動する日本企業は、特にFCPAを巡る議論に敏感になるべきです。

 米連邦控訴裁判所では現在、米通信会社幹部がハイチの国有電話会社の従業員に賄賂を贈った容疑を巡って裁判が行われています。国有会社の従業員が公務員にあたるかどうかが争われており、今後の判決次第では、増加する一方の米当局による摘発動向に影響を与える可能性もありそうです。

<日本企業も対象に>

 日本企業の摘発もあります。日本企業には、法令順守の徹底が求められています。

  丸紅は今年3月、インドネシアの公務員への贈賄容疑で米当局の摘発を受け、罰金約90億円で和解したと発表しました。昨年4月にはパナソニックの米国子会社が外国政府関係者への贈賄の疑いで当局の調査を受けていると米メディアが報じました。

 丸紅は火力発電所の設備を受注するため、インドネシアの国会議員や国有電力会社幹部に賄賂を贈ったとされます。問題とされた事業は日本の円借款で日本企業が手掛けるプロジェクトだったようですが、仏重電アルストムの米国法人と企業連合を組んだため、FCPAの摘発対 象とされました。

2014年5月10日土曜日

認知症徘徊事故訴訟

  愛知県大府市で2007年、自宅を出て徘徊(はいかい)中に電車にはねられて死亡した認知症患者の男性(当時91)の家族に、JR東海が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、名古屋高裁であった。長門栄吉裁判長は男性の妻と長男に約720万円の賠償を命じた一審判決を変更、妻のみに約360万円の支払いを命じた。

 長男の賠償責任は認めなかった。


<高裁判決>

  判決によると、男性は07年12月7日、大府市のJR共和駅構内で電車にはねられ死亡。自宅で妻と長男の妻が介護していたが、男性は2人が目を離した間に外出した。JR東海は振り替え輸送費や人件費などを家族側に請求していた。

 長門裁判長は判決理由で、当時85歳だった妻に関して「1945年の婚姻以降、同居して生活してきた夫婦。自立した生活を送れない男性を監督する義務があった」と述べた。

 男性の認知症はかなり進行し、目を離すと外出する恐れがあったうえ、いったん外出すると追いかけることは困難だったと指摘。妻が家屋の出入りを知らせるセンサーの電源を切ったままにしていたことなどを挙げ、「男性に対する監督は十分でなかった点がある」として妻の監督に過失があったと判断した。

 長男については20年以上も別居生活を送っていたことなどを挙げ、監督者に該当しないとして賠償責任を認めなかった。

 「利用客への監視が十分で駅ホームの扉が施錠されていれば、事故を防止できたと推認される」などとしてJR東海側にも安全に配慮する責務があったと判断し、賠償額は一審から5割減額した。

<そして上告>

 JR東海は8日、男性の妻に約360万円の支払いを命じた二審・名古屋高裁判決を不服として上告した。

 同社の柘植康英社長は15日の会見で、最高裁に上告した理由について「遺族だけが上告した場合、最高裁での争点が、男性の妻に監督義務があるかどうかだけに限定され、長男に責任がないという前提で議論される可能性があるため」と述べた。高裁判決で指摘された安全対策については、柘植社長は「非常停止ボタンの整備など、これまでも多くの対策を取ってきている。ホームの安全対策はこれからも行っていく」と語った。

 男性の妻は9日、自身に約360万円の支払いを命じた二審・名古屋高裁判決を不服として上告した。 妻の代理人は「家族が十分介護してきた中で義務が尽くされていないとされ、承服できない」とのコメントを出している。

<社会への影響>

 認知症のため徘徊して事故に遭う場合が増えている。深刻な問題だ。認知症患者の急増が見込まれるなか、家族の責任を引き続き認めた司法判断は介護現場に影響を与えそうだ。家族が四六時中、見守るには限界がある。社会全体で対応すべき時だ。

  

2014年4月18日金曜日

違法音楽ファイル削除要請

日経新聞の15日の記事によれば、13年度の違法音楽ファイル削除要請は、前年度比2.66倍に上ったそうです。

日本レコード協会は2014年4月14日、2013年度における違法音楽ファイル削除要請件数の実績を発表しました。

同協会は2013年4月1日から、インターネット上の違法な音楽配信対策の強化と適法コンテンツ利用促進を目的とする新組織「著作権保護・促進センター(CPPC:Copyright Protection and Promotion Center)」を協会内に設置しています。

CPPCの違法音楽ファイルの探索により、日本レコード協会の2013年度の違法音楽ファイル削除要請件数は81万3447件(2012年度比266%)となったそうです。

削除要請先の内訳は、全体の70%(56万8774件)が動画サイトに対するもので、30%(24万4673件)がストレージサイトに対するもの。スマートフォンアプリからのリンク保存先となっていた一部ストレージサイトの違法音楽ファイルを徹底的に削除させたことにより、同アプリからの当該ストレージサイトの利用が激減するという効果が出てきているそうです。  

現在、CPPCは世界20か国・約120サイトに対し削除要請を実施しています。このうち削除要請の98%以上が海外サイト事業者に対してのもので、国内サイト事業者に対しての削除要請は少数にとどまるそうです。日本レコード協会は、「国内・海外にかかわらずインターネット上にまん延している違法音楽配信への対策を積極的に展開する」としています。

2014年4月12日土曜日

会社の機密を漏えいした社員に、どこまでの処分ができるのか?



 今回は、会社の機密を漏えいした社員に、どこまでの処分ができるのかについて考えてみたいと思います。

 近年、パソコンが一般的に普及したこともあり、社員が会社の機密事項にふれる機会は多いと思います。機密事項とは、他社の情報や、会社のノウハウなどさまざまです。

 ここで、社員が会社の機密事項を漏らした場合の対応について考えます。

①機密漏えいは防止が第一

 当然のことですが、機密漏えいは起こらないのが一番です。就業規則に機密保持についてしっかりと定めたり、機密保持誓約書などを結び、漏えいが起こらない体制をしっかりと整備しましょう。


 就業規則にこのように定め、社員がもし機密漏えいを行った場合は懲戒の対象とすることを周知しておく必要があります。



②もし機密漏えいが起こってしまったら・・・

 もし、実際に機密漏えいが起こってしまったら、会社としては厳格な処分、すなわち減給、けん責、あるいは解雇をしてもよいでしょう。

 処分の度合いについては、これも就業規則の懲戒規定によることになりますが、漏れた情報の内容、動機や目的、経営への影響などを総合的に勘案して行うべきでしょう。もし、実際に会社に損害が生じていなくても、機密を漏らしたという事実のみをもって懲戒の対象となり得ます。労働者は労働法によって保護されており、よほどの理由がなければ解雇は難しいです。しかし、機密漏えいは程度によっては懲戒解雇にもなり得ます。厳格な態度で臨みましょう。

 もっとも、故意でない情報漏えいで会社に損害を与えたとしても、その責任をすべて従業員が負わされることはありませんし、会社の内部管理責任も問われます。悪質性の低いミスを理由とした解雇は、裁判になれば会社が不当解雇で敗訴するリスクが高いでしょう

 その他考えられる責任追及は、民事責任、刑事責任・行政法上の責任です。

 民事責任で考えられるのは、漏えいのせいで業績が落ちたから損害賠償しろ、というものです。例えば、新製品について情報を流したために売り上げが激減した、というような場合があるでしょう。

 刑事責任や行政法上の責任では、信用毀損罪で告発されるとか、風説を流布して株価に影響を与えたとして、証券取引等監視委員会に呼び出され、課徴金を科されることなどが考えられます。また、もし漏れた情報が厳重に管理されていた情報であれば、窃盗罪が適用されることもあります。場合によっては犯罪に該当するケースもありますので、会社としてはそこまで視野に入れた対応が必要となります。


③ まとめ

 社員による会社の機密漏えいは、防止が一番なので、まずは就業規則などで機密漏えいに関する規定をしっかりと定め、社員に周知することが肝要です。そのうえで、もし機密漏えいが起こってしまった場合は、漏れた情報の内容、動機や目的、経営への影響などを総合的に考えて、処分を行ないます。

2014年2月24日月曜日

スマホなどを巡る米アップルと韓国サムスン電子の特許訴訟

 報道によれば、スマホなどを巡る米アップルと韓国サムスン電子の特許訴訟で、首脳級の和解協議が合意に至らなかったそうです。

 2013年11月、米カリフォルニア州北部地区連邦地裁で、サムスンに9億3000万ドル(約950億円)の賠償を命じる陪審評決が出ました。

 その後、同地裁が和解協議を命じました。これにより、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)と、サムスンでスマホ部門を統括する申宗均(シン・チョンギュン)社長らが、仲裁者立ち会いの下で2月第1週に面会しました。

 その後もそれぞれが仲裁者に連絡をとり和解の道を探りました。しかし、ついに合意はできなかったようです。

 両社が21日付で提出した状況説明書類の中で、和解決裂を明らかにしたそうです。書類には「両社には(和解の)意思が残っている」とあり今後、協議を続ける可能性もあるようです。

 近く、2013年11月の陪審評決に近い内容の判決が出る見通しです。3月には同地裁で別の商品を対象にした両社の特許訴訟の審理も始まります。和解が成立しない限り、これらの日程に従って係争が続くことになります。