ページ

2014年11月29日土曜日

景品表示法

景品表示法第4条第1項第1号(優良誤認表示の禁止)

 景品表示法第4条第1項第1号は、事業者が,自己の供給する商品・サービスの取引において,その品質,規格その他の内容について,一般消費者に対し,
 (1) 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
 (2) 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの
であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています。

 具体的には,商品・サービスの品質を,実際よりも優れていると偽って宣伝したり,競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに,あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が優良誤認表示に該当します。 

 (1) 実際のものよりも著しく優良であると示すものの例 

①カシミア混用率が80%のセーター!こ「カシミヤ100%Jと表示した場合
②『入院1日目から入院給付金をお支払いjと表示したが、入院後に診断が確定した場合、その日からの給付金しか支払われないシステム、など

 (2) 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すものの例

①「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、
実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していた、など

 なお,故意に偽って表示する場合だけでなく,誤って表示してしまった場合(過失)であっても,優良誤認表示に該当する場合は,景品表示法により規制されることになりますので注意が必要です。

 優良誤認表示を効果的に規制するため,消費者庁長官は,優良誤認表示に該当するか否 かを判断する必要がある場合には,期間を定めて,事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ,事業者が求められた資料を 期間内に提出しない場合や,提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には,当該表示は不当表示とみなされることにな ります(4条2項)


景品表示法第4条第1項第2号(有利誤認表示の禁止)
 
景品表示法第4条第1項第2号は,事業者が,自己の供給する商品・サービスの取引において,価格その他の取引条件について,一般消費者に対し,
 (1) 実際のものよりも著しく取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
 (2) 競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利である一般消費者に誤認されるもの
であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止しています。

 具体的には,商品・サービスの取引条件について,実際よりも有利であると偽って宣伝したり,競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに,あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が有利誤認表示に該当します。
 
 なお,故意に偽って表示する場合だけでなく,誤って表示してしまった場合であっても,有利誤認表示に該当する場合は,景品表示法により規制されることになりますので注意が必要です。
事業者が,有利誤認表示を行っていると認められた場合は,消費者庁は当該事業者に対し,措置命令などの措置を行うことになります。

2014年11月21日金曜日

「忘れられる権利」欧州司法裁判所判決




2014年5月13日欧州連合(EU)の最高裁判所である欧州司法裁判所(ECJ)が下した「忘れられる権利」についての判決をきっかけに、日本でも「忘れられる権利」への関心が日々高まっている。

欧州司法裁判所判決の事案

 スペインの弁護士ゴンザレス氏は、2010年スペインの 情報保護局(AEPD)に、① スペインの新聞ラ・ヴァングァルディアの1998年度の記事がリンクされている検索結果を表示したグーグル・インクとグーグル・スペイン(以下、「グーグル」)に対しては、上記の記事を検索結果から削除するか遮断する措置を、② ラ・ヴァングァルディアに対しては、上記の記事を削除する措置を取らせるよう求めた。グーグル検索サービスでゴンザレス氏の名前を検索すると、ゴンザレス氏所有の不動産の公売に関する裁判所の判決内容が記載された上記1998年の新聞記事が表示され、 上記の記事にはゴンザレス氏の負債に関する詳細が記載されていた。
 これを受け、AEPDは、グーグルに対して関連リンクの削除を命じる決定を下したが(新聞社に対しては表現の自由などを理由に要請を棄却した。) 、グーグルがこれに対して異議を申立てスペイン高等裁判所に提訴し、同裁判所がEUの1995年データ保護準則(Directive 95/46/EC)がインターネット検索エンジンに適用されるかどうかなどに対する解釈を欧州司法裁判所に求めたところ、この答えとして出されたのが今回の判決である。

欧州司法裁判所判決の骨子

 判決の骨子は、① 会社のデータ処理サーバーが欧州外にあっても、検索エンジンの運営者がEU域内に支店や支社を置いているのであれば、EU準則は当該会社に適用され、② 検索エンジンの運営者は個人情報の処理者(controller)であるため、EU準則の責任から逃れることができず(検索エンジンが情報をインデクシング(indexing)して一時保存し、優先順位によってユーザーに提供するのは個人情報の「処理(processing)」であり、検索エンジンの運営者は「処理者(controller)」に当る。)、③ 個人は、ウェブページそのものの削除の如何とは無関係に、自分の名前で検索して表示された検索結果に対して直接検索エンジンにそのリンクの削除を求める権利を持つ、という内容である。
 加えて、欧州司法裁判所は、忘れられる権利が無限定に認められる権利ではなく、当該個人情報がデータの処理目的に対して不正確(inaccurate)、不適切(inadequate)、無関係であるか(irrelevant)、あるいは過度(excessive)な場合に適用されるものであり、事案によって表現の自由や他の基本権、公人としての役割などとバランスをとる必要があることを明確に判示した。
 これまで忘れられる権利の認定の如何とその範囲に対して多くの論争があったが、この判決は従来の個人情報の法理に基づき、検索エンジンの運営者に対するリンク削除権としての「忘れられる権利」を認めたことにその意味がある。