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2012年12月21日金曜日

私的録音録画補償金制度

2012年11月8日付最高裁第1小法廷決定

 デジタル放送専用のDVDレコーダーなどの録 画機器を巡り、著作権団体の「私的録画補償金管理協会」が東芝に、機器の売り上げに応じた著作権料(私的録画補償金)約1億4千万円の支払いを求めた訴訟 の上告審で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は、協会側の上告を退ける決定をしました。東芝側勝訴の一、二審判決が確定しました。

  著作権法は私的に使う場合には著作物の複製を一定範囲で認めています。それに伴う著作物の販売機会の損失を補うのが私的録音録画補償金制度です。補償金制度は、録画機器の販売価格に著作権料を上乗せして、間接的に利用者から徴収。価格の1%をメーカー経由で同協会が集め、作家や俳優などの著作権者に分配するものです。メーカーはこれまで機器1台あたり約500円を価格に上乗せして消費者から回収し、著作権団体に支払ってきました。

  しかし、テレビ放送は昨年7月にデジタル化され、現在、録画機器の大半はデジタル専用です。2009年、東芝は、この同制度はアナログ放送の受信機が対象で、デジタル放送専用の機器には料金は課せない、デジタル放送の専用機種については「録画番組のコピーを10回までに制限する機能が付いている」などを理由に、補償金支払いを拒否しました。

 これに対し著作権団体が同社を訴えたのが今回の裁判です。

  一審・東京地裁判決は補償金の支払いを定めた著作権には法的強制力がないとして、協会の請求を棄却しました。二審・知的財産高裁判決は「著作権法が指定する対象機器はアナログ放送が前提で、デジタル放送専用機器は対象でない」として、控訴を棄却していました。最高裁もそれを踏襲しました。 DVDレコーダーなどのデジタル録画機に著作権料として価格の1%を課す私的録画補償金には根拠がないという判断です。

判決の影響

 消費者にとっては歓迎すべき判決かもしれませんが、権利者を保護するにはデジタル時代に適した課金制度を作っていく必要があります。

  録画補償金は2010年度で約25億円に上りますが、今回の最高裁の決定で家電各社とも補償金の支払いを見送ることにしました。テレビ放送も現在はデジタルに移行しており、今後登場する録画機は事実上、補償金の対象外となります。

  私的録音録画補償金制度はもともとミニディスクなど記録媒体に録音する機器が対象でした。ところが、記憶装置を内蔵した米アップルの携帯音楽プレーヤーなどが登場し、音楽の分野で先に形骸化が進みました。代わりに楽曲ごとに著作権料を課すことが可能になったのです。

  映像も今後は放送波でなく通信回線から取り込み、携帯端末などで見る機会が増えるでしょう。そうなれば音楽と同様、作品ごとに利用料を課せるようになります。記録媒体や機器に補償金を課すより、消費者から直接、著作権料を得る仕組み作りの方が重要になるでしょう。

  補償金は著作権団体が権利者に分配してきたものですが、丼勘定で徴収するため、権利者に適切に配分されてきたという保証もありません。デジタル技術を使い、作品ごとに課金する方が、著作権料の支払いについても透明性が高まるはずです。