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2013年12月11日水曜日

プロバイダー責任制限法

 プロバイダー責任制限法は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」といいます。)の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものです。

 インターネットや携帯電話の掲示板などで誹謗中傷を受けたり、個人情報を掲載されて、個人の権利が侵害されるなどの事案が発生した場合、プロバイダ事業者や掲示板管理者などに対して、これを削除するよう要請しますが、事業者側がこれらを削除したことについて、権利者からの損害賠償の責任を免れるというものです。

 また、権利を侵害する情報を発信した者の、情報の開示請求ができることも規定しています。

 削除要求の方法は、権利を侵害された個人かその代理人(弁護士等)が、書面であれば実印を押印して印鑑証明をつけて、電子メールであれば電子署名をつけて、行うことになります。代理人が行う場合には、委任状の添付が求められます。

 削除要求の様式等については、 (社)テレコムサービス協会(http://www.telesa.or.jp)のホームページに、ガイドラインが示されています。

 プロバイダ責任制限法については、 総務省電気通信消費者相談センター (http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/madoguchi/tushin_madoguchi.html)へ、発信者情報の開示請求については、各プロバイダ事業者へ直接確認してください。

 総務省令によれば、開示請求できる発信者の情報は、
1 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
2 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
3 発信者の電子メールアドレス
4 侵害情報に係るIPアドレス
5 前号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
とされています。

参考

プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト

プロバイダ責任制限法について(警視庁)

2013年12月10日火曜日

知財の基礎 弁理士法

弁理士が単独で業として行うことができる業務
  • 商標登録出願に関する特許庁における手続の代理
  • 意匠権についてのライセンス契約の締結の代理


×  実用新案権に関する侵害訴訟の提起の代理

弁理士が他人の求めに応じ報酬を得て行う独占代理業務
  • 特許庁における出願手続の代理
※ 特許料の納付手続についての代理やライセンス契約における契約締結の媒介は弁理士の独占代理業務ではない。

弁理士の職務
  • 弁理士が所属する法人である特許業務法人は,その法人名義で特許出願の代理をすることができる。

2013年12月9日月曜日

知財の基礎 種苗法

品種登録を受けるための要件
  • 区別性
  • 均一性
  • 安定性
  • 未譲渡性
  • 名称の適切性
※ 新規性は不要
  • 試験目的の利用であれば,育成者権者の許可がなくても登録品種を利用できます。
  • 育成者権の存続期間は,品種登録の日から起算し,存続期間の延長をすることはできません。
  • 登録品種の育成方法についての特許権を有する者であれば,当該特許に係る方法により登録品種の種苗を生産することができます。
<事例>
X社は,病害に強いとうもろこしの新品種Aの育成に成功したことから,品種登録を受けることを検討している。
  • 品種Aについて品種登録を受けるためには,出願時に外国で公知の他のとうもろこしの品種と,明確に区別できることが必要です。
<事例>
薔薇の品種Aの育成者甲は,品種Aについて種苗法に基づく品種登録出願をしようと考えている。
  • 甲が2年前から品種Aを日本国内で継続的に販売している場合,品種登録を受けることはできません。
  • 品種Aが公然知られた他の品種Bと特性の全部又は一部によって明確に区別することができない場合,品種登録を受けることはできません。
意匠制度品種登録制度
  • 品種登録の要件として,創作非容易性は必要とされていない点で相違する。
  • 意匠権及び育成者権の存続期間は,登録日から起算する点で共通する。


 育成者権の侵害
  • 登録品種の種苗を育成者権者に無断で業として生産する行為は,育成者権の侵害となる。
  • 育成者権者から適法に譲り受けた登録品種の種苗を第三者に譲渡する行為は,育成者権の侵害とならない。

2013年12月8日日曜日

知財の基礎 独占禁止法

特許権のライセンス契約

○  ライセンスに係る製品の販売地域販売期間をライセンサーが制限すること
○  ライセンスに関連する特許をライセンシーが取得した場合に,ライセンサーが非独占的なライセンスを義務付けること
× ライセンスに係る製品の販売価格をライセンサーが制限すること
  • いわゆるパテントプールは効率的なスキームとして有用である半面,独占禁止法上の問題とならないように注意する必要がある。
  • 不当な取引制限を行っている事業者に対し当該行為を差し止める排除措置命令を行う行政機関は、公正取引委員会である。
<事例>
電機メーカーX社は,Y社に対して風力発電装置に関する特許権Aのライセンスを考えている。Y社が特許権Aに係る特許発明を改良し,特許権Bを取得した場合,特許権Bについて当社が独占的ライセンスを受けることはできるのか。
  • Y社からX社に特許権Bを譲渡させることが,市場におけるライセンサーの地位を強化するとして独占禁止法上問題となる以上、当社に独占的ライセンスをさせることも同様の理由で問題となる。

2013年12月7日土曜日

知財の基礎 不正競争防止法


営業秘密
  • 営業秘密として不正競争防止法で保護されるものが,他の知的財産法で保護されることもある。
  • 営業秘密とは, 秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報 であって, 公然と知られていない ものをいう。

商品形態
  • 他人の商品の形態と同一であっても,その形態が,その商品の機能を確保するために不可欠なものであれば,不正競争防止法第2条第1項第3号(商品形態模倣行為)にいう「商品の形態」には該当しない。


  • 他人の周知な商品等表示を使用する行為は、他人の商品等と混同を生じさせる場合にのみ不正競争行為に該当する。
著名表示冒用行為
  • 著名とは,周知よりもさらによく知られた状態であり,全国的に知られていることが想定される。
  • 他人の著名な商品等表示と同一のものだけでなく,類似するものを使用した場合にも著名表示冒用行為に該当することがある。

2013年12月6日金曜日

知財の基礎 条約

知的財産に関する条約
  • パリ条約
  • 特許協力条約(PCT)
  • ヘーグ協定
  • マドリット協定議定書
  • ブタペスト条約
  • ベルヌ条約


パリ条約

パリ条約による優先権
  • パリ条約による優先権を主張して,外国に特許出願をすることができる期間は,最先の特許出願の日から12カ月である。
  • 同盟国の国民は,優先権の主張の基礎となる第一国の特許出願を,自国の特許庁ではなく,他の同盟国の特許庁へ出願することができる。
     
<事例>
化学品メーカーX社は,発明Aについて平成24年2月に特許出願Pを行ったが,発明Aに係る製品が輸出される可能性が出てきたことから,特許出願Pに基づいて,パリ条約による優先権の主張を伴う国際出願Qを平成24年12月に行った。
各指定国への国内移行手続が行える期限:  平成26年8月



特許協力条約(PCT)に基づく国際出願
  • 日本国の特許庁に対して,英語により出願書類を作成し,国際出願することができる。
  • 出願人は,原則として優先日から30カ月を経過する時までに各指定官庁に対し,所定の翻
    訳文を提出しなければならない。
  • 国際調査機関の書面による見解は,国際調査報告同時に作成される。
  • 国際調査報告は,出願人及び国際事務局に送付される。
  • 国際出願には,少なくとも,明細書及び請求の範囲と外見上認められる部分が含まれていなければならない。
  • 国際出願することによって,多数国に効力を及ぼす一の特許権を得ることができない。 国際出願をした後,指定国において権利化を望む場合には,所定の期間内に指定国ごとに国内移行手続を行う必要がある。
  • 国際出願をした後,国際予備審査を望む場合には,国際予備審査機関に対して国際予備審査請求を行う必要がある。
  • 国際出願について国際調査報告を受領した場合でも,請求の範囲について補正をすることができる。
  • 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願に関して,国際出願日として認められる日は、受理官庁が,国際出願を受理した日
  • 指定国を米国とした特許協力条約(PCT)に基づく国際出願を先の出願として,わが国にパリ条約による優先権主張を伴う特許出願をすることができます。
  • 日本の特許庁を受理官庁として特許協力条約(PCT)に基づく国際出願をする場合,指定国に日本を含めることはできます。
  •  国際出願した後,原則として優先日から1年6カ月後に国際公開が行われますが,国際事
    務局に請求することにより国際公開の時期を早めることもできます。

知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)
  • TRIPS協定では,内国民待遇の原則が採用されている。
  • TRIPS協定では,知的所有権に関する紛争解決について規定している。


国際出願における国際調査
  • 国際調査は,明細書及び図面に妥当な考慮を払った上で,請求の範囲に基づいて行われる。
  • 各国際出願は,国際調査の対象とされる。

<事例>

精密機器メーカーであるX社は,プリンタに関する発明について平成24年3月に日本において特許出願Pを行い,その 発明に係るプリンタを現在製造販売している。ところが,中国において平成25年1月ごろから早くもそのプリンタの模造品が出回っている事実を,X社は入手 した。
  • 特許出願Pに基づいてパリ条約による優先権を主張して,できるだけ早く中国に特許出願すべきである。このように直接中国に出願することにより,できるだけ早期に権利化すべきと考えられるからである。

マドリッド協定の議定書に基づく特例

2013年12月5日木曜日

知財の基礎 著作権法

著作権法に規定する目的
 著作権法は,「著作物並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し 著作者 の権利及びこれに隣接する権利を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ, 著作者 等の権利の保護を図り,もつて 文化の発展 に寄与すること」を目的としている。

「著作物」
  • 著作物とは,「 思想又は感情創作的に表現したものであって, 文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」であると,著作権法には定義されている。
  • アイデアは,著作物として保護されない。
  • 著作物は,創作性がなければならないため,表現に選択の幅があるほど著作物となる可能性が高い。
著作権の譲渡
  • 契約によって著作権を譲り受けた場合,著作権の譲渡の登録を文化庁に行わないと,第三者に著作権の譲渡があったときに対抗できない。
譲渡契約の対象となる権利
意匠登録を受ける権利
× 同一性保持権
公衆送信権


著作者人格権
  • 同一性保持権は,著作者の意に反して,その著作物とその題号について,変更や切除などを行うことを禁止できる権利である。
  • 著作者人格権は,一身に専属するため,譲渡することはできない。
  • 著作者人格権を侵害する行為でなくても,著作物の使用が著作者の名誉や声望を害する場合には,著作者人格権の侵害とみなされる場合がある。
  •  

データベースの著作物と認められるための要件
  • データベースの体系的構成によって創作性が認められるものであること
  • データベースの情報の選択によって創作性が認められるものであること
※ データベースの情報が電子計算機によって機械的に検索可能であることは要求されない。

著作者
  • 著作物を創作した者は,その著作物の著作者となる。
  • 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物
    の著作者は,その作成の時に別段の定めがない限り,その法人等となる。
  • 映画の著作物の著作者には,その映画の著作物において複製された小説の著作者が含まれない。


映画の著作者になり得る者
  • 映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与したプロデューサー
  • 映画の著作物の製作に参加することを約束した映画監督 

※ 映画の著作物の脚本を執筆した脚本家はなれない。

 著作権の侵害
  • 他人の著作物の全体ではなく,一部だけをそのまま利用して作品を創作した場合であっても,その一部に創作性があれば,著作権の侵害となる。
  • 他人の著作物と本質的特徴を同じくする作品を,たまたま創作してしまった場合であっても,その他人の著作物の存在を知らなかったならば,著作権の侵害とならない。
著作権が侵害された場合に権利者がとることができる対応
  • 名誉回復措置請求
  • 不当利得返還請求


著作物を引用するための要件
  • 引用される著作物が公表されていること
※ 「引用される著作物の著作権者に通知すること」や「引用される著作物が営利目的のものでないこと」は不要
※ 他人の著作物を引用して利用する場合,その著作権者の承諾を得る必要はない。


二次的著作物
  • 原著作物の翻訳,映画化,編曲など,原著作物に新たな創作性を加えることにより創作された著作物は,二次的著作物となる。
  • 原著作物の権利者から許諾を得て創作された二次的著作物を利用する場合,その二次的著作物の権利者から許諾を受けれても原著作物の権利者からの許諾は必要である。
  • 著作権者に無断で二次的著作物を創作したら,著作権の侵害となる。

複製権
  • 著作権者は,著作物の複製物を譲渡により公衆に提供する権利を有している。 
  • 二次的著作物の著作権者は原著作者の許諾なく二次的著作物の複製をすることができない。
 <事例>
出版社X社は,漫画家丙が描いた漫画Bの出版を企画しています。漫画Bについて出版権の設定を受けたいのですが,丙は漫画Bの翻案権を丁に譲渡しています。この場合,X社は誰から出版権の設定を受けることができるのでしょうか。
  • 出版権は,複製権を有する者でなければ設定することができません。丙が複製権を有しているので,丙から出版権の設定を受けることができます。

著作権の存続期間
  • 法人名義の著作物には,その著作物の公表後,50年経過すると権利が消滅する著作物と70年経過すると権利が消滅する著作物とがある。
  • 映画の著作物の著作権の存続期間は,創作後70年以内に公表されないときは,創作後70年を経過したときに満了する。
 著作隣接権
  • レコード製作者の著作隣接権は,レコードに収録されている音を最初に録音して固定した者に発生する。
  • 放送事業者及び有線放送事業者の著作隣接権の存続期間は,その放送又は有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過したときに満了する。
実演家が有する権利

× 公表権
○ 譲渡権
○ 送信可能化権
○ 録音権及び録画権
○ 貸与権
  • 実演家は,期間経過商業用レコードを除いて,実演が録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する貸与権を有する。
  • 実演家がパブリックドメインとなった楽曲を演奏した場合でも,その実演に著作隣接権は発生する。

著作権法における登録制度
  • 著作物の第一発行年月日を登録しておくことにより,その日にその著作物の最初の発行(公
    表)があったものと推定される。
  • 無名又は変名で公表した著作物について,著作者の実名を登録しておくことにより,その者が著作物の著作者であると推定される。


著作隣接権の存続期間
  • 放送事業者が有する著作隣接権は,その放送が行われた日の属する年の翌年から50年後に消滅する。
<事例>
甲と乙は,2000年5月1日に楽曲を共同で創作し,2000年8月31日に当該楽曲を発表した。その後,甲は2008年12月5日に亡くなり,乙は2012年2月15日に亡くなった。
当該楽曲の著作権の存続期間が満了する時: 2062年12月31日

<事例>
自分のお気に入りの小説家が書いた10作品が収録された短編小説集について,いずれの場合にも,この本の著作権者等の許諾は得ていないものとする。
  • 自宅のプリンタについていたスキャナー機能を使ってすべてのページについてデジタルデータにして,タブレット型パソコンに入れていつでも読めるように持ち歩くことは、著作権が制限され,著作権を侵害する可能性が低いため、許される。
  • 子供の誕生日会で,子供の友人も10人ほど遊びに来るので,そのときに私がこの小説を朗読するには、著作権が制限され,著作権を侵害する可能性が低いため、許される。
  • これらの10作品のうちの1作品について、わずか8ページほどで完結する話としても、自分のホームページに全文を掲載して紹介することは、許されない。 著作権を侵害する可能性が高い。

<事例>
画家甲は,東北地方の冬の海の風景を描いた絵画Aを完成させ,「冬の海」という作品名をつけた。絵画Aを見た乙は絵画Aをたいへん気に入ったため,甲から購入した。
  • 問題(トラブル)が発生する可能性が低いもの
    • 乙が甲から絵画Aを購入した価格よりも高い価格で,乙が丙に絵画Aを売ること 
  • 問題(トラブル)が発生する可能性が高いもの
    • より印象的な作品名にするために,乙が作品名「冬の海」を,作品名「ある冬の日」に変えること
    • 絵画Aを購入したことを知らせるために,乙が絵画Aを写真に撮り,その画像を自分のブログに掲載すること


<事例>
バンドXのメンバーである甲と乙は,共同で作詞と作曲を行い,曲Aを創作した。
  • 甲が有する著作権の持分を丙に譲渡しようとする場合,甲は乙の許諾を得なければ丙に譲渡することができない。 
  • バンドXのファンである丁が無断で丁のブログで曲Aを流している場合,甲は単独で丁に差止請求をすることができる。
  • 乙が死亡し,乙には相続人がいない場合,乙が有する著作者人格権は,自動的に甲に移転されない。
<事例>甲は,自らが開設しているブログを開くと音楽や音が流れるようにしたいと考えた。そこで,自分が所有している音源の中から適当なものを選び,データをサーバーにアップしようとしている。

 甲が自作した曲を演奏し,それを甲が録音したもの
× プロの演奏家が演奏した有名なベートーベンの音楽を甲が録音したもの
× 色々な動物の鳴き声を収録した市販のCDを友人から借りて甲が複製したもの


<事例>
パ ソコンメーカーであるX社は,新製品の販売開始にあたり,テクノロジーと日本の伝統文化の融合をイメージしていた。そこで,X社の法務部の部員甲は,ウェ ブサイトの新製品の紹介ページや製品カタログの表紙には,古い寺院の外観や古い彫刻をカメラマン乙に依頼して撮影してもらった写真Aを採用したいと考え た。
  • 寺院の写真がいまだ撮影されていなかった場合,撮影前に寺院に立ち入り許可をとるべきである。
  • カメラマン乙が写真Aの利用について承諾しているとしても,契約書などの文書を交わし,権利義務について明らかにしておくことが望ましい。
<事例>
自社のヒット商品が紹介された新聞の記事について。いずれの場合についても,この新聞の著作権者等の許諾は得ていないものとする。

  • 自社の商品が新聞に取り上げられたことを宣伝したいと思うかもしれません。この場合、自社の商品に関する記事だからといって,この記事の画像データを自社のホームページに掲載してしまうと、著作権の侵害となります
  • 商品の性能を高めるため,この商品を改良することを計画しています。研究開発を目的として、この記事を,研究開発部門のメンバーに参考資料として配付するため,コピーしてしまうと、著作権の侵害となるため、問題です。
  • 家族と一緒にこの記事を見るためにコピーしても  「私的使用」にあたり,著作権の侵害となりません


2013年12月4日水曜日

知財の基礎 商標法

商標法の保護対象と登録要件

商標法の目的
  • 商標法の目的は,商品やサービスの名称の登録を通じて,商品やサービスに蓄積された業務上の信用 を保護することにあります。ここで,商標とは,文字,図形,記号もしくは立体的形状もしくはこれらの結合又はこれらと色彩 の結合であって,業として商品を生産等をする者が,その商品について使用をするもの,もしくは 業として役務を提供等をする者が,その役務について使用をするものです。

<事例>
化粧品などのブランドメーカーX社は,商標Aを通じて,業務上の信用が化体し,世界的な知名度の確立に成功した。X社の同業他社は,X社の業務上の信用を利用して,利益を得ようと商標Aに類似する商標や混同する商標について商標登録出願する場合がある。かかる場合には,他人の周知の商標 と同一又は類似の商標をその商品等と同一又は類似の商品等について使用をする商標に該当することを理由として,商標登録出願が拒絶される。ここで,この 周知の商標かどうかについては,商標の審査基準によれば, 広告宣伝の回数,商標が使用されている期間や地域等に基づいて判断されるとされている。

商標法の保護対象

○ 記号と立体的形状の結合した商標
○ 文字と複数の図形の結合からなるもの
○ 記号のみからなるもの
× 色彩のみからなるもの
× 文字と音の結合した商標
× 図形と匂いの結合した商標
× ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

商標権の登録等

商標登録出願について, 登録査定の謄本が送達された後に,所定期間内に登録料を納付することにより設定登録され,商標権が発生します。また,登録料は, 5年分毎に分割して納付することもできます。さらに,他の知的財産権と異なり,商標権者は申請により存続期間を更新することができ,その更新手続をすることにより,半永久的に権利を存続させることも可能です。また,更新の申請のときに,登録商標を使用していることが要件とされません


<事例>
近々,「XYZ株式会社」という社名の法人を設立する予定の甲は,商標登録出願をすべきか否かを検討している。
  • XYZ株式会社の商品カタログの表紙において,「XYZ」の文字を大きく表示する予定であり,同社は商号登記を行っているが,商標登録出願をする必要性がある。
  • XYZ株式会社は,商品「被服」について「ABC」のブランド名を使用する予定であり,その店舗販売等に際しては,そのブランド名「ABC」が印刷された「包装用袋」が使用されるが,「包装用袋」を指定商品として,商標「ABC」について商標登録を受ける必要はない。
  •  XYZ株式会社が販売する予定の商品パッケージには独特の形状のものを使用する予定であるが,そのパッケージの形状のみからなる商標についても,商標登録を受けることはできる。

<事例>X社の知的財産部の部員甲は,新商品に使用する商標Aについての先行商標調査を行ったところ、X社と競合するY社が,商標Aと類似する登録商標Bを所有していることが判明した。
  • 登録商標Bに係る指定商品とX社が販売する商品とは商品区分が異なっているが,商標Aを選択する上では詳細に当該指定商品との類否関係を検討する必要がある
<事例>
 食品メーカーX社の知的財産部の部員甲が,新商品に表示する商標についての商標登録出願を検討している。
  • 外国の有名な化粧品メーカーY社で販売されている化粧品の著名なブランドMの語感が新商品のイメージと合い,また,Y社はブランドMについて日本に商標登録出願をしていないが,ブランドMについて新商品を指定商品とする商標登録出願をしても登録を受けることはできない。


商標登録を受けるための手続

商標登録出願
  • 他人の著名な芸名を含む商標は,その他人の承諾を得ている場合には,商標登録を受けることができる。 
  • 役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標は,商標登録を受けることができない。
  • 新商品の販売時期が未定であっても,販売することが確実な場合には商標登録出願をすべきである。


商標登録出願の審査又は手続
  • 商標登録出願に係る商標は,商標登録されるまでに公開されることがある。
  • 商標登録出願については,出願審査請求しなくても実体審査が行われる。
    文字と図形から構成される商標について商標登録出願をしたときは,その出願に係る商標を文字部分と図形部分とに分割して,新たな商標登録出願とすることができない
  • 審査官は,政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは,商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。

商標権の管理と活用

商標権の発生及び効力
  • 商標を使用する意思がなければ,商標登録を受けることはできない。
使用権
  • 専用使用権の設定は,登録しなければ効力は発生しない。

商標権の管理
  • 商標権の効力は,指定商品普通名称普通に用いられる方法で表示する商標に及ばない。
  • 登録商標は不正使用されていても,その事実をもって当然に商標権が失効することはない。
<事例>
家電メーカーX社は,登録商標Aについて指定商品Bとする商標権を有している。
  • 登録商標Aが指定商品Bの普通名称となった場合には,他人が登録商標Aを使用することを禁止できなくなる場合がある。

商標権の使用許諾契約
  • 口頭による登録商標の使用を認める旨の約束は,書面による契約書が作成されていなくとも,有効である。
  • 商標権使用許諾契約書の契約当事者の欄に,実印ではなく認印が押印されていても有効でる。

<事例>
米国の菓子メーカーX社は,日本に法人を設立し,自社商品であるドロップキャンディに「プチ☆ポム」という名称を付して日本での販売を開始した。一方,老舗の日本の菓子メーカーY社は,指定商品を洋菓子として,登録商標「プチ☆ポム」の商標権を有している。
  • Y社が日本国内で3年間継続して登録商標「プチ☆ポム」を使用していない場合,X社は当該商標登録の取消を求めることができる可能性がある。
  • X 社は日本のY社の登録商標と偶然同じ標章を使用していたのであるから,何らY社のビジネスを阻害する意図はなかった。このような場合であっても、Y社 が,X社がドロップキャンディ「プチ☆ポム」を日本で販売することを認めなければならない理由はなく,X社から申出があっても,ライセンス交渉等に応じる 必要はない。
  • X社とY社との交渉の結果,Y社はX社に,登録商標「プチ☆ポム」に係る商標権の全範囲について,専用使用権を設定した。専用使用権が設定登録された後であれば,Y社は商標権者であるとしても,自由に登録商標を使用することができない。


商標権の侵害と救済

<事例>
文房具メーカーX社は,マークMに係る商標Aについて指定商品Bとする商標権を取得した。当該商標権について権原を有しないY社の使用については・・・
  • Y社は,商標Aを,指定商品Bと類似する商品Cについて使用するとX社の商標権の侵害となる。
  • Y社は,商標Aを,指定商品Bと類似する役務Eについて使用するとX社の商標権の侵害となる。


商標法に規定されている制度
  • 出願公開制度
  • 存続期間の更新登録制度
※ 出願審査請求制度は規定されていない。


商標法に規定されている審判
  • 同一の商標登録に対して,商標登録無効審判と,不正使用取消審判とを請求することができる。
  • 拒絶査定を受けた商標登録出願人は,拒絶査定の謄本の送達日から3カ月以内であれば,拒絶査定に対する審判を請求することができる。  
  • 不使用取消審判は,利害関係人でなくても請求することができる。
  • 商標権者は,商標権を侵害する者に対する信用回復措置の請求をすることができる。 



2013年12月3日火曜日

知財の基礎 意匠法

意匠法の保護対象と登録要件

意匠登録を受けることができる可能性のある意匠
× 意匠登録出願の出願日の1カ月前に外国で公知となった他人の意匠に類似する意匠
× 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
意匠登録出願の出願日の3カ月前に自ら日本国内で頒布した刊行物に記載した意匠

○ さい銭箱
× 洗剤液
× マンション
○ ロボット・・・自動車の生産ライン用のロボットのみならず,踊る動きをするだけの玩具用のロボットについても,工業上利用できる物品として,意匠登録の対象となります。

○ 物品の機能を確保する形状を有する意匠
× 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
× 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠

意匠登録を受けるための手続
  • 意匠登録出願は物品に係る創作についてなされたものであることから,技術的思想の創作を保護対象とする特許出願へ出願変更することが認められている。 
  • 密意匠としての請求をしていない意匠登録出願であっても,意匠登録前に特許庁から公開されることはない。
  • 意匠権の設定が登録されると,その登録内容を記載した意匠公報が発行される。
特殊な意匠登録出願
  • 部分意匠
  • 動的意匠
  • 組物の意匠
  • 秘密意匠
    • 意匠は登録後に意匠公報に掲載されて第三者に公表されます。ですから、登録よりも販売時期が遅れる場合などには、意匠が模倣されて,出願人が不利益をこうむるおそれがあります。 そこで意匠法は秘密意匠制度を設け、意匠登録から3年以内に限り、登録意匠を秘密にすることを認めています。

<事例>
電機メーカーX社は,携帯音楽プレーヤーについて意匠登録出願の準備をしているが,開発の遅れにより製品の発売が大幅に遅れそうなことがわかった。斬新なデザインであり,意匠登録出願後に,意匠登録され公開されることにより他社にデザインが知られるのを防ぎたい
この場合の適切な対応は、
  • 設定登録料の納付時に,秘密期間を1年とする秘密意匠の請求をする。
  • 意匠登録出願と同時に秘密期間を3年とする秘密意匠の請求をする。
※ 意匠登録出願について,登録査定の謄本の送達後に,設定登録料の納付期間を1年とする納付延長の請求をしても意味がない。

意匠権の管理と活用

意匠権の発生

存続期間
  • 意匠権の存続期間は,登録日から20年であって,その存続期間の延長を請求することができない
意匠権の活用

意匠権者の意思に基づくライセンス
  • 専用実施権の設定や通常実施権の許諾


<事例>
文房具メーカーX社は,ボールペンについて意匠権を有している。ライバルメーカーY社は,X社の登録意匠と類似する形態をシャープペンシルの形態に転用することを検討している。
  •  X社の登録意匠と類似する形態を,X社の登録意匠に係る物品と類似するシャープペンシルの形態に転用すると,X社の意匠権を侵害する可能性が高いので,Y社はX社から通常実施権の許諾を受けるべきである。

意匠権者の意思に基づかない通常実施権

意匠権の譲渡

意匠権の侵害と救済

意匠権者側

確認→警告→差止・損害賠償

<事例>
X社は携帯電話Aについて意匠権を有している。知的財産部の部員甲は,携帯電話Aと同一のデザインのおもちゃの携帯電話BをY社が販売していると,営業部の部員乙より連絡を受けた。なお,「携帯電話」と「おもちゃの携帯電話」は非類似物品とする。
  • 意匠権の効力範囲は、登録意匠に係る物品と同一又は類似の範囲で,かつ,その形態と同一又は類似の範囲をいいます。
  • 携帯電話Aは意匠登録されてるので、意匠権に基づいて、意匠権の効力範囲における第三者の業としての実施に対して,差止請求損害賠償請求ができます。
実施者側

意匠原簿で確認→意匠登録に無効理由がないか確認→意匠登録無効審判の請求 or 実施の中止

<事例>
食品メーカーX社は,新しいチョコレートを開発したところ,その外部の形状は,Y社が販売する万年筆と似た形状であった。Y社の意匠権を調べたところ物品を万年筆としたものだった。なお,「チョコレート」と「万年筆」は非類似物品である。
  • チョコレートとは,物品が非類似であり,Y社の意匠権の効力は及びません。

2013年12月2日月曜日

知財の基礎 実用新案法

実用新案法の概要

  • 特許法で定義された発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であるのに対して、実用新案法で定義された考案は「自然法則を利用した技術的思想の創作」とされ、発明と考案では創作の程度に違いがあります。
  •  特許制度は権利の安定性重視の観点から審査主義を採用しているのに対して、実用新案制度では、早期登録の観点から無審査主義を採用しています。
  • 実用新案登録出願は,新規性進歩性などの登録要件について実体審査がされないので早期に実用新案権が設定登録される。また,その存続期間は,出願日から10年をもって終了する。

<事例>
ゴルフクラブメーカーX社は,新規なゴルフクラブAを開発して実用新案登録出願をした。ゴルフクラブAは,グリップの形状に特徴があり,これまでにない新しいデザインなので意匠権として保護すべきではないかとの意見があり,X社の知的財産部で検討を行うことになった。
  • グリップの形状に特徴があるので,ゴルフクラブ全体の形状の他にグリップの部分について部分意匠として意匠登録出願をした方がよいでしょう。
  • 物品のデザインについては,不正競争防止法により保護を受けることができることがあります。不正競争防止法により保護を受けるためには,意匠登録出願をしていることは要件となりません。

実用新案権を行使するために必要な書類
  • 特許庁の審査官が作成した実用新案技術評価書


2013年12月1日日曜日

知財の基礎 特許法

特許法の目的と保護要件

特許を受けることができる発明
 ○ コンピュータゲーム用のプログラム
 ○ 病院でのみ用いられる人間の癌の診断装置
 × 急カーブを安全に曲がるための自転車の運転方法


特許要件


産業上利用することができる発明
  • 特許を受けることができる発明は,産業上利用できる発明である必要がある。
  • 工業的に生産することができない物でも,産業上利用することができる発明には該当する。
  • ここでいう産業には,物を生産する製造業や建設業等といった工業だけでなく,飲食業や金融業等のいわゆるサービス業も含まれる。
  • 人間を手術する際に使用する手術用器具は,産業上利用することができる発明に該当する。

 新規性

 新規性を喪失した発明
  • 特許出願前に外国においてのみ公然知られた発明は,新規性を喪失した発明である。
  • 特許出願前に電気通信回線を通じて利用可能となった発明であっても,新規性を喪失した発明とならないことがある。
発明の新規性喪失の例外規定
  • 公知となった発明であっても,その発明が公知となった日から6カ月以内に特許出願した場合には,設定登録される場合がある。
  • 特許出願人がした特許出願に係る公開公報に掲載された発明について,新規性喪失の例外規定の適用を受けることができない。
  •  特許出願前に中国国内において,中国人が中国語によって中国人のみを対象とした公開セミナーにおいて発表した発明は,わが国における特許出願前にわが国国内において公知となっていない場合であっても,新規性がなく特許を受けることはできません。
<事例>
  • 甲は独自に創作した発明Aについて,平成24年10月10日午後3時に特許出願Pをした。 
  • 乙は独自に創作した発明Aと同じ発明について平成24年10月10日午前11時に学会で発表を行った。
    • 乙の行為により特許出願Pが拒絶される。特許出願Pの出願時点が,乙の行為よりも時間的に遅く,特許出願Pは新規性を喪失するため。
  • 丙は,独自に創作した発明Aと同じ発明について平成24年10月1日に中国において中国語で新聞紙面上に発表していた。
    • 丙の行為により特許出願Pが拒絶される。 丙の行為により特許出願Pは新規性を喪失するため。
  • 丁は独自に創作した発明Aと同じ発明について平成24年4月20日に特許出願Qを行い,早期審査を経て登録され,平成24年10月22日に特許掲載公報が発行された。
    • 丁の行為により特許出願Pが拒絶される。 特許出願Pに対して,特許出願Qは先願の地位を有するため
先願主義
  • 同じ発明について,異なった日に二以上の特許出願があった場合は,最初に特許出願をした者だけに特許権が認められる。
  • 全く同じ発明について異なった日に特許出願がされた場合には,特許庁長官から出願人に対して協議をするように命令が出され,協議の結果定められた出願人が特許を受けることができます。ただし,協議が成立しなかった場合は,特許は最初に出願をした者に認められることになります。

特許出願の手続

特許出願の必要書類

1. 願書  出願人・発明者に関する住所・氏名を記載する書面です。
2. 明細書  発明の内容を詳細に説明するための書面です。
3. 特許請求の範囲  特許を受けたい発明の内容を簡潔かつ明確に記載する書面です。 請求項に区分して記載します。 特許請求の範囲に記載された発明の内容が、権利の範囲を定めることになります。 もっとも重要な書面です。
4. 要約書  発明の概要を記載する書面です。

※ 図面は必ずしも願書に添付しなくてもよい。


特許発明の技術的範囲
  • 特許発明の技術的範囲は,願書に添付した 特許請求の範囲 の記載に基づいて定めなければならない。

特許出願の出願審査請求
 出願から3年以内に審査請求をしなければ、審査されません。 審査されなければ特許になることはありません。 審査請求は、出願直後(公開前でも可)に行うことも可能です。また、早期に審査結果を得たい場合は、「早期審査請求」を行うことで、2、3ヶ月で審査結果を得ることも可能です。 早期審査請求を行うか、通常通りの審査請求にするかは、戦略的にとらえて選択する必要があります。
  • 出願審査請求した後に,出願審査請求を取り下げることはできない。
  • 特許出願に係る公開公報により,特許出願の事実を知った第三者は,出願審査請求することができる。

<事例>
甲は,特許出願Aについて,請求項の数を3とする特許出願をすることとし,特許出願時にあわせて出願審査請求をすることとした。この場合,出願時に支払うべき費用は,145,000(円)になる。
参考
特許出願料 15,000円
出願審査請求料 1件につき118,000円に1請求項につき4,000円を加えた額

特許権の設定登録前における特許出願に関する手続
  • 拒絶査定不服審判の請求
  • 拒絶査定不服審判の請求と同時に行うことができる手続として,訂正の請求がある。

拒絶理由通知

<事例>
電機メーカーX社の開発エンジニアである甲がしたテレビに関する発明Aについて,X社が特許出願Pを行い出願審査請求したところ,審査官から拒絶理由が通知された。

  • 甲がとり得る措置として,最も適切と考えられるものは、審査官の見解に対する反論を記載した意見書や,その意見の内容を立証するための実験証明書を提出することである。
  • 意見書は必ず提出しなければならないというわけではない。
  • 補正により新規事項を追加することは一切禁止されている。

その後,さらに拒絶査定の謄本が送達されてきた。
  • 拒絶査定は,審査の最終処分であるが,それに対して不服がある場合は,特許庁に対して拒絶査定不服審判を請求し,一定の範囲内で補正することもできる。
拒絶査定不服審判
1.拒絶査定不服審判を請求するにあたって検討すべきこと
 (1)審判請求の要否の検討について   
 (2)補正の検討について
 (3)分割出願の検討について
2.審判請求した場合の手続き   
(1)審判請求時に明細書等を補正した場合
(2)審判請求時に明細書等を補正しない場合

審決取消訴訟

特許権の管理と活用
  • 特許権は,設定の登録により発生する。

特許権等に対するライセンス契約 
  • 特許権者は,専用実施権を設定したときには,特許発明を実施できない。
<事例>
医薬品メーカーX社は,自社の特許製品と類似する胃薬Aが同業他社Y社から販売されているとの情報を得た。そのため,X社はY社に対して,特許権を侵害している旨を知らせる警告書を送付した。警告書を送付する目的はどれか。
  • 侵害訴訟を提起する可能性を示唆する目的
  • ライセンス契約の交渉をする目的

特許権の侵害と救済

<事例>
 電機メーカーX社の知的財産部の部員甲は,開発者乙とともに新たに販売を開始しようとしている製品Aが特許侵害をしていないかを調査していた。その結果,今回の調査で新たに発見した電機メーカーY社の特許権Pを侵害している可能性が高いことを発見した。
  • 特許権Pの出願日において,すでにX社では製品Aの生産の準備をしていたことを客観的に証明できるのであれば,製品Aの販売を開始しても問題はなさそうです

特許権を侵害するとの警告を受けた場合
  • 特許権がすでに存続期間の満了により消滅している場合でも,特許権の消滅前の実施行為に対して損害賠償請求を受ける場合がある。
  • 特許に無効理由がなく,特許掲載公報に記載されている特許権者が警告者と同一であっても,この警告者の権利行使が認められない場合がある。
<事例>
ソフトウエア開発メーカーX社に対して,同業他社のY社から,X社がインターネットを通じて販売しているコンピュータプログラムAがY社の特許権Pを侵害しているとして,コンピュータプログラムAの販売の中止を求める警告書が届いた。
  • X社が販売しているコンピュータプログラムAは,X社が独自に技術開発し,Y社による特許出願より前に,実施の準備をしていたので,X社は先使用による通常実施権を有する旨を回答する。
<事例>
X社が,Y社が製品Aを製造販売する行為が,自社の特許権を侵害していると考えている場合の、X社がとり得る措置
  • X社はY社に対して,実施料相当額を超える損害賠償請求ができる。
  • X社が差止請求訴訟を提起する場合には,事前にY社に対しX社が警告書を送る必用はない。
  • X社はY社に対して,Y社が製品Aの製造販売により得た利益額を超える不当利得返還請求をすることはできない。



 <事例>

通信機器メーカーの技術者甲は,自らの発明について特許出願(請求項の数は3)したところ,出願内容について補正することなく特許査定の謄本が送達された。特許権を発生させるために納付する必要がある特許料は8700円になる。

特許料(特許法第107条第1項)
各年の区分 金額
第一年から第三年まで 毎年二千三百円に一請求項につき二百円を加えた額
第四年から第六年まで 毎年七千百円に一請求項につき五百円を加えた額
第七年から第九年まで 毎年二万千四百円に一請求項につき千七百円を加えた額
第十年から第二十五年まで 毎年六万千六百円に一請求項につき四千八百円を加えた額


特許法に規定する手続の期間
  • 国内優先権の主張を伴う特許出願は,先の出願日から1年6カ月経過後に出願公開される。

<事例>
バイオベンチャー企業のX社は,平成21年2月にバイオ技術に関連する発明について特許出願Aをし,その出願は平成22年8月に出願公開がされたところ,出願公開公報を見たY社からライセンスの申入があった。そこで,X社は特許出願Aについて,平成23年1月に出願審査請求を行い,平成24年11月に特許査定がなされ,平成25年1月に設定登録がされた。
→ 特許出願Aに係る特許権の存続期間の終期は,平成41年2月