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2013年12月5日木曜日

知財の基礎 著作権法

著作権法に規定する目的
 著作権法は,「著作物並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し 著作者 の権利及びこれに隣接する権利を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ, 著作者 等の権利の保護を図り,もつて 文化の発展 に寄与すること」を目的としている。

「著作物」
  • 著作物とは,「 思想又は感情創作的に表現したものであって, 文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」であると,著作権法には定義されている。
  • アイデアは,著作物として保護されない。
  • 著作物は,創作性がなければならないため,表現に選択の幅があるほど著作物となる可能性が高い。
著作権の譲渡
  • 契約によって著作権を譲り受けた場合,著作権の譲渡の登録を文化庁に行わないと,第三者に著作権の譲渡があったときに対抗できない。
譲渡契約の対象となる権利
意匠登録を受ける権利
× 同一性保持権
公衆送信権


著作者人格権
  • 同一性保持権は,著作者の意に反して,その著作物とその題号について,変更や切除などを行うことを禁止できる権利である。
  • 著作者人格権は,一身に専属するため,譲渡することはできない。
  • 著作者人格権を侵害する行為でなくても,著作物の使用が著作者の名誉や声望を害する場合には,著作者人格権の侵害とみなされる場合がある。
  •  

データベースの著作物と認められるための要件
  • データベースの体系的構成によって創作性が認められるものであること
  • データベースの情報の選択によって創作性が認められるものであること
※ データベースの情報が電子計算機によって機械的に検索可能であることは要求されない。

著作者
  • 著作物を創作した者は,その著作物の著作者となる。
  • 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物
    の著作者は,その作成の時に別段の定めがない限り,その法人等となる。
  • 映画の著作物の著作者には,その映画の著作物において複製された小説の著作者が含まれない。


映画の著作者になり得る者
  • 映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与したプロデューサー
  • 映画の著作物の製作に参加することを約束した映画監督 

※ 映画の著作物の脚本を執筆した脚本家はなれない。

 著作権の侵害
  • 他人の著作物の全体ではなく,一部だけをそのまま利用して作品を創作した場合であっても,その一部に創作性があれば,著作権の侵害となる。
  • 他人の著作物と本質的特徴を同じくする作品を,たまたま創作してしまった場合であっても,その他人の著作物の存在を知らなかったならば,著作権の侵害とならない。
著作権が侵害された場合に権利者がとることができる対応
  • 名誉回復措置請求
  • 不当利得返還請求


著作物を引用するための要件
  • 引用される著作物が公表されていること
※ 「引用される著作物の著作権者に通知すること」や「引用される著作物が営利目的のものでないこと」は不要
※ 他人の著作物を引用して利用する場合,その著作権者の承諾を得る必要はない。


二次的著作物
  • 原著作物の翻訳,映画化,編曲など,原著作物に新たな創作性を加えることにより創作された著作物は,二次的著作物となる。
  • 原著作物の権利者から許諾を得て創作された二次的著作物を利用する場合,その二次的著作物の権利者から許諾を受けれても原著作物の権利者からの許諾は必要である。
  • 著作権者に無断で二次的著作物を創作したら,著作権の侵害となる。

複製権
  • 著作権者は,著作物の複製物を譲渡により公衆に提供する権利を有している。 
  • 二次的著作物の著作権者は原著作者の許諾なく二次的著作物の複製をすることができない。
 <事例>
出版社X社は,漫画家丙が描いた漫画Bの出版を企画しています。漫画Bについて出版権の設定を受けたいのですが,丙は漫画Bの翻案権を丁に譲渡しています。この場合,X社は誰から出版権の設定を受けることができるのでしょうか。
  • 出版権は,複製権を有する者でなければ設定することができません。丙が複製権を有しているので,丙から出版権の設定を受けることができます。

著作権の存続期間
  • 法人名義の著作物には,その著作物の公表後,50年経過すると権利が消滅する著作物と70年経過すると権利が消滅する著作物とがある。
  • 映画の著作物の著作権の存続期間は,創作後70年以内に公表されないときは,創作後70年を経過したときに満了する。
 著作隣接権
  • レコード製作者の著作隣接権は,レコードに収録されている音を最初に録音して固定した者に発生する。
  • 放送事業者及び有線放送事業者の著作隣接権の存続期間は,その放送又は有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過したときに満了する。
実演家が有する権利

× 公表権
○ 譲渡権
○ 送信可能化権
○ 録音権及び録画権
○ 貸与権
  • 実演家は,期間経過商業用レコードを除いて,実演が録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する貸与権を有する。
  • 実演家がパブリックドメインとなった楽曲を演奏した場合でも,その実演に著作隣接権は発生する。

著作権法における登録制度
  • 著作物の第一発行年月日を登録しておくことにより,その日にその著作物の最初の発行(公
    表)があったものと推定される。
  • 無名又は変名で公表した著作物について,著作者の実名を登録しておくことにより,その者が著作物の著作者であると推定される。


著作隣接権の存続期間
  • 放送事業者が有する著作隣接権は,その放送が行われた日の属する年の翌年から50年後に消滅する。
<事例>
甲と乙は,2000年5月1日に楽曲を共同で創作し,2000年8月31日に当該楽曲を発表した。その後,甲は2008年12月5日に亡くなり,乙は2012年2月15日に亡くなった。
当該楽曲の著作権の存続期間が満了する時: 2062年12月31日

<事例>
自分のお気に入りの小説家が書いた10作品が収録された短編小説集について,いずれの場合にも,この本の著作権者等の許諾は得ていないものとする。
  • 自宅のプリンタについていたスキャナー機能を使ってすべてのページについてデジタルデータにして,タブレット型パソコンに入れていつでも読めるように持ち歩くことは、著作権が制限され,著作権を侵害する可能性が低いため、許される。
  • 子供の誕生日会で,子供の友人も10人ほど遊びに来るので,そのときに私がこの小説を朗読するには、著作権が制限され,著作権を侵害する可能性が低いため、許される。
  • これらの10作品のうちの1作品について、わずか8ページほどで完結する話としても、自分のホームページに全文を掲載して紹介することは、許されない。 著作権を侵害する可能性が高い。

<事例>
画家甲は,東北地方の冬の海の風景を描いた絵画Aを完成させ,「冬の海」という作品名をつけた。絵画Aを見た乙は絵画Aをたいへん気に入ったため,甲から購入した。
  • 問題(トラブル)が発生する可能性が低いもの
    • 乙が甲から絵画Aを購入した価格よりも高い価格で,乙が丙に絵画Aを売ること 
  • 問題(トラブル)が発生する可能性が高いもの
    • より印象的な作品名にするために,乙が作品名「冬の海」を,作品名「ある冬の日」に変えること
    • 絵画Aを購入したことを知らせるために,乙が絵画Aを写真に撮り,その画像を自分のブログに掲載すること


<事例>
バンドXのメンバーである甲と乙は,共同で作詞と作曲を行い,曲Aを創作した。
  • 甲が有する著作権の持分を丙に譲渡しようとする場合,甲は乙の許諾を得なければ丙に譲渡することができない。 
  • バンドXのファンである丁が無断で丁のブログで曲Aを流している場合,甲は単独で丁に差止請求をすることができる。
  • 乙が死亡し,乙には相続人がいない場合,乙が有する著作者人格権は,自動的に甲に移転されない。
<事例>甲は,自らが開設しているブログを開くと音楽や音が流れるようにしたいと考えた。そこで,自分が所有している音源の中から適当なものを選び,データをサーバーにアップしようとしている。

 甲が自作した曲を演奏し,それを甲が録音したもの
× プロの演奏家が演奏した有名なベートーベンの音楽を甲が録音したもの
× 色々な動物の鳴き声を収録した市販のCDを友人から借りて甲が複製したもの


<事例>
パ ソコンメーカーであるX社は,新製品の販売開始にあたり,テクノロジーと日本の伝統文化の融合をイメージしていた。そこで,X社の法務部の部員甲は,ウェ ブサイトの新製品の紹介ページや製品カタログの表紙には,古い寺院の外観や古い彫刻をカメラマン乙に依頼して撮影してもらった写真Aを採用したいと考え た。
  • 寺院の写真がいまだ撮影されていなかった場合,撮影前に寺院に立ち入り許可をとるべきである。
  • カメラマン乙が写真Aの利用について承諾しているとしても,契約書などの文書を交わし,権利義務について明らかにしておくことが望ましい。
<事例>
自社のヒット商品が紹介された新聞の記事について。いずれの場合についても,この新聞の著作権者等の許諾は得ていないものとする。

  • 自社の商品が新聞に取り上げられたことを宣伝したいと思うかもしれません。この場合、自社の商品に関する記事だからといって,この記事の画像データを自社のホームページに掲載してしまうと、著作権の侵害となります
  • 商品の性能を高めるため,この商品を改良することを計画しています。研究開発を目的として、この記事を,研究開発部門のメンバーに参考資料として配付するため,コピーしてしまうと、著作権の侵害となるため、問題です。
  • 家族と一緒にこの記事を見るためにコピーしても  「私的使用」にあたり,著作権の侵害となりません