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2014年10月4日土曜日

契約書前文

契約書の前文に記載さ れている事項は.それ自体に法的な意味がな い場合も多い。

契約の内容は.あくまで表題の後に記載さ れた本文に規定され, 表題は契約上の意味を 持たない。

「も のとする」という言葉は,裁判上の和解など でいわゆる形成条項等であることを示すため に用いることが多く,契約当事者の義務を規 定する場合には,端的に「支払う」「売り渡 す」とすれば足りる。






2014年10月3日金曜日

consideration (約因)

  英米法において"agreement" (合意)が"contract" (契約) として効力を有するために は,"consideration" が必要である。

  売買における品物の引渡しと金銭の支払のよう に,一方の当事者が行うことに対応して他方の当事者が行うことを指し, 「約因」と訳される。

 とすると,あらゆる契約を締結する場合に、"consideration" の有無を確認すべきだという ことになる。建前上はそうだが以下の理由により特別な場合以外には気にしないでよい。

 第一に,“consideration" はかなり形式化されてきており,等価で、なくても何らかのギ ブアンドテイクがあればよいということになっている。

 第二に,およそ独立した企業同士の取引で, 対価がないということはほとんどありえない。

 英米法系以外の法律(日本法も)が準拠法になる場合には、”consideration" は要求さ れない。

2014年10月2日木曜日

契約書作成上のポイント

 具体的な契約条項の作成の前に確認すべき事項は,おおむね以下のとおりである。

 第1に,売買契約,賃貸借契約などの契約類型を選択する必要がある。 事 案によってはタイトルを工夫した方が良い場合もある。

 第2に,誰に権利義務が帰属するのか,す なわち,当事者を決定する必要がある(当事者は,契約書前文および末尾に明示されるこ とが多い)。


 具体的な契約書の条項を作成する際に留意 すべき点は,おおむね以下のとおりである。

 第1に,契約書の記載は,当事者にとって 重要な権利義務等を定めるものであるから, 明確かつ,簡潔である必要がある。すなわ ち,一方で、条項の全部または一部が無効となることを回避するため,条項が矛盾する表 現,解釈が分かれうる表現は避ける必要があ る。また,明示すべきものは明示的に記載 し不要なものは記載しないことにより,条 項として過不足のない明確な条項とする必要 がある。

 第2に,ある条項を規定する際に,当該条項により,何をしようとしているのかを明確 に意識する必要がある。それを実現する手掛 かりとして,条項の性質をいくつかに 分類しながら規定することが考えられる。

 給付条項は当事者の一方が相手 方または第三者に対し,特定の給付をなすこ とを合意の内容とする条項である。一方 が給付の義務を負い,他方が給付の権利を有 することになる。確認条項は,特定の事実ま たは権利もしくは法律関係の存否を確認する 旨の合意を内容とする条項である。当事者が 前提とする事実関係または法律関係を明示す る場合などに用いられる。

 第3に,紛争を予防するという契約書の主 目的に照らし想定される紛争を予防するた めにあらかじめ当事者の権利義務等を定めて おくことが重要である。

 第4に,特に上記の給付条項においては, 要件と効果を意識する必要がある。言い換え ると, どのような事実がそろえば, どのよう な権利義務が発生するのかを明確に意識する 必要がある。







offer/acceptance (申込み/承諾)

 契約は“offer"(申込み)と"acceptance"(承諾)により成立する。

 ある連絡が“offer" や“acceptance" と明示されていない限り,それらが“offer"や "acceptance" に該当するかどうかをあらかじめ明確に判断する基準はない。

 "offer" や“acceptance" という概念が問題になるのは, 交渉が中断し契約書にサイン されなかったが, 一方当事者が「契約が成立している」と主張して争いになった場合である。そして,途中の何らかのやりとりで契約が成立していると裁判所が認定しようとする 場合に,ある手紙が“offer" で,それへの返事が“acceptance" であるという分析をして 理由をつけるのである。

 実務上の指針としては, 契約書にサインすれば問題ない。

2014年10月1日水曜日

契約書作成の意義

 契約の成立には原則として契約書のような書面の作成は必須ではない。私人である当事者間では,原則として,契約書を作成しなくても,すなわち口頭の合意であっても契約が成立する。それにもかかわらず,契約書を作成する意義は何か。

 第1に,契約の内容を書面(契約書)にすることによって,将来起きるかもしれな い紛争を避けることができる(将来の紛争予防)。

 第2に,契約とは,合意により人と人との 聞の権利義務関係を形成するものであり,当 事者聞に一種の法律を制定するようなものであるから,その重要性に照らして,書面により客観性を確保し,その内容について一義 的に明確にしておくことが望ましい。また, 紛争にならなかったとしても,人間は誰しも が忘れやすいという経験則を尊重して,書面 化することが望ましい。

 第3に,コンブライアンスの観点がある。実務上は,法令を順守したことに ついて何らかの書面を残すのがコンブライア ンスの観点上からも要請される傾向にあり, その重要な側面として契約書を作成す る傾向が強くなっている。

 契約の種類や実現される経済的な利益に 応じて契約書の分量も変化する。

agreernent/contract (合意/契約)

 “agreement"とは法律的な効力の有無を問わず広い意味 での「合意」を一般に意味し,“contract"とはその中で法律的な効力を有するもの,すなわち「契約」を意味する。

 もっとも,実務上こ のように意識して使い分けられているわけではない。すなわち,ある書類が“Agreement" と題されていると効力がないおそれがあるというわけで、はなく,契約たりうる内容であればもちろん法律上の効力を有する。“Agreement"という題名の書類が,法律上は、"contract"に該当するというだけのことである。