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2012年10月29日月曜日

著作権法改正と違法ダウンロード

2010年改正のポイント

著作権法の一部が改正され2010年1月より施行されました。

一番の大きなポイントは、海賊版の音楽ファイルや映像について、これまではアップロードする側だけに著作権侵害が適用されていたのが、受け手側の責任も問われるようになったこと。つまり、ダウンロードすることが違法となります。

従来は「私的使用を目的とする複製」、つまりファイル共有ソフトなどを使って自分のパソコンや携帯にデータを落とし込んでも、プライベートで楽しむ分には例外として認められていました。

ところが、高速・大容量のインターネット通信の普及とともに、著作権者の許諾なく違法配信を行うサイトが増えると同時に、「Winny」をはじめとするファイル交換ソフトの登場で、誰もが簡単にコピーできるようになってしまいました。違法コピーが蔓延するインフラが想像以上に早く整ってしまったことが、法改正の背景にあります。

「Winny」を利用した音楽ファイルや映像のダウンロードはもちろん違法となりますが、「着メロ」「着うた」も気をつけなければなりません。レコード会社などが運営する正規サイトからのダウンロードは合法ですが、非正規サイトやファイル交換ソフトからのダウンロードは違法となります。

例外もあります。たとえば、「YouTube」に新作映画など違法映像がアップされていたとします。それを自分のパソコンにダウンロードすると法に触れますが、キャッシュを残してストリーミングするだけならば許されます。見る、聴くだけならいいけど、落としたらダメ。これが一応の線引きです。

この法改正にはいくつか問題があります。

条文を見ると、私的使用に関する新たな例外として「著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」が著作権侵害にあたると付け加えられました。

自動公衆送信とは、サーバーなどに登録されている情報を一般公衆からのリクエストに応じて送信することを指しますが、範囲が「録音又は録画」に限定されています。つまり、音楽と映像は対象となっているのに、ビジネスソフトウエアは規制外。さっそく関係者の一部からは不満の声が上がっています。

2つ目は、海賊版のコピーだという「事実を知りながら行う場合」のみがNGで、知らないで行えばとがめられないこと。これは、受け手側が悪意の場合に限定しているわけですが、受け手側が海賊版なのかを見分けることが常に容易だとは限りません。

2012年改正のポイント
 
 改正著作権法が2012年6月に可決、成立し、同年10月1日に施行されました。一般市民であっても、違法な海賊版と知りながら音楽や映像をインターネットで見つけてダウンロードして楽しんでいたら、著作権法違反で、2年以下の懲役または200万円以下の罰金となります。 

  私的利用目的であろうと違法です。

 著作権法違反で起訴するには著作権者や正規のコンテンツの配信事業者など被害を受けた側の告訴が必要です。米国は著作権者らの訴えがなくても起訴できるようにしており、今後、環太平洋経済連携協定(TPP)などで同様の制度の導入が協議される可能性はあります。


著作権法違反となる要件は、① 有償著作物等を、② 著作権侵害であることを知りつつ、③ デジタル方式の録音または録画をした場合に成立します。

しかし、この条文は不明確な点が多いです。

「有償著作物」とは
 
まず「有償著作物」とは何でしょうか。
 

  「録音され、又は録画された著作物又は実演等であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの」とあります。有償なのは、制作なのか、提供なのか、公衆の利用なのかなど、何をもって有償なのかが曖昧です。こうした疑問点がまったく詰められないまま、今回の法律が施行されてしまいました。


  • 個々の作品について有償性が必要なら、「1カ月見放題」のサービスはどうなるのでしょうか。
  • 音楽CDは有償とわかりますが、では民放の歌番組で歌手がCD発売に先立って披露した新曲はどうでしょうか。
  • CD販売までは視聴者は視聴料を払わないので無償著作物でしょうか。
  • 仮に、視聴者からお金を取っていなくても、スポンサーが代わりに費用を持っているのだから「有償著作物」という理屈が通れば、「1円でもどこかに費用がかかっている著作物」はすべて「有償著作物」になってしまいます。

文化庁はインターネット上においてQ&Aコーナーを作って、「CDやDVDとして販売されている音楽・映画、インターネットでの有料配信されている音楽・映画が有償著作物」だとしています。

さらに、文化庁は、ドラマ等のテレビ番組について、DVD化されて販売されたり、有料でオンデマンド配信されたりしていれば「有償著作物」だが、単にテレビで放送されただけでは「有償著作物」には当たらないとしています。

文化庁の解釈でいけば、例えばインターネットに勝手にアップロードされたテレビドラマは、DVD化や有料オンデマンド配信が行われるまでは無償著作物で、DVD化した瞬間、有償著作物に変化するということになってしまいます。逆に1週間無料であれば、その間は有償性がなくなることになります。

たとえ当該サイト上に「今日からDVD化されました」などと記載がなかったとしても、ダウンロードすれば違法です。ダウンロードのたびに、DVD化や有料オンデマンド配信の事実があるかどうか、ユーザーがあらゆる手を尽くしても調べきれるわけがありません。


著作権侵害であることを知っているかどうか

  違法に配信されていても、海賊版と知らずに見たり、聞いたりするだけでは違法ではなく、刑事罰の対象にもなりません。 後から違法と知った場合も罰せられません。利用者が事前に違法だと知っていたかどうかは裁判で争われます。

 タイトルや説明文だけでは、著作権侵害のファイルかは不明で、ダウンロードしてみないとわからないことも多いです。内容を確認するには、ダウンロードしてみるしかないが、その行為自体が違法になりかねないのです。

 違法なサイトかどうか区別するには、コンテンツを適法に配信しているサービスに対し、日本レコード協会が『エルマーク』と呼ぶ認証のロゴを付与していますので、配信サイトがロゴを取得しているかが一つの目安になるでしょう。

ダウンロードせずに違法コンテンツを利用してしまう場合

 著作権侵害になるのは、利用者が違法なコンテンツを完全にダウンロードした場合です。動画投稿サイト「ユーチューブ」などストリーミング(逐次再生)と呼ぶ方式のサービスで違法な動画を視聴しても罰せられません。

 自分がダウンロードしなくても、友達に「○○というサイトでダウンロードできるよ」と勧めたら教唆犯が成立します。

 また、自分のパソコンで友達が勝手に違法ダウンロードした場合、警察はダウンロードに使用したパソコンのIPアドレスを手がかりに捜査します。つい最近もウイルスによるパソコンの遠隔操作事件で、IPアドレスという証拠だけで誤認逮捕が続出しました。つまり最初に犯人と疑われるのはパソコン所有者なのです。知らないでは済まされられません。なお、利用者が13歳以下だと、未成年なので少年法の適用になり、ただちに刑罰に処せられるとは限りません。


<改正の理由>

 最も大きな理由は、レコード業界などが違法ダウンロードによって大きな損害を被っていると主張していることです。業界の危機感が強いのです。超党派の議員立法による法改正でしたが、実質的な国会での議論は10日間程度で『改正を急ぎ過ぎたのではないか』という指摘もあります。

 音楽や映像は対象ですが、これから普及が見込まれる電子書籍や写真は対象から外れています。

海外でのルール
 
 先進国では日本の著作権法にあたる法律が整備され、違法ダウンロードに対する刑事罰もあります。例えば米国では1年以下の禁固または10万ドル(約780万円)以下の罰金。フランスは3年以下の禁固または30万ユーロ(約3000万円)以下の罰金と、米国よりも厳しいです。

音楽配信のコピー制限撤廃

 
   改正によるプラス面もあります。
 
 ビクターエンタテインメント(東京・渋谷)など音楽各社はインターネットで配信した楽曲のコピー制限を2012年中にも廃止する方向だそうです。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)などにダウンロードすると、メーカーの違う機器にも転送し再生できるようにするとのこと。欧米に出遅れたコピー制限の撤廃が日本でも始まれば配信サービスの使い勝手が改善し、低迷する音楽市場も活性化しそうですね。

  廃止に動き出したのは法改正がきっかけです。海賊版のネット購入に罰金などを科す改正著作権法が2012年10月に施行されることになり、音楽各社はコピー制限をなくしても違法なコピーに一定の歯止めがかかると判断しました。スマホやタブレット(多機能携帯端末)などいろいろな機器で楽曲を楽しみたい利用者のニーズも反映した形です。

   音楽会社や配信会社は現在、違法コピーを防ぐため、DRM(デジタル著作権管理)と呼ばれる技術を使って楽曲を暗号化、自由に複製できなくしています。例えばソニーグループの配信サービスで買ったものは米アップルのスマホや携帯音楽プレーヤーに転送して聴くことが原則できません。

   制限がなくなると、利用者は買った楽曲をさまざまなメーカーの機器に送り、使い分けて聴くことができることになります。例えばスマホで買った場合はメモリーカードなどにそれをコピーし、パソコンやタブレットに差し込んで複製できる。パソコンにダウンロードした楽曲ならCDにも書き込める。

   コピー制限を全面的になくすのはビクターのほかエイベックス・グループ・ホールディングス、ワーナーミュージック・ジャパン(東京・港)など。EMIミュージック・ジャパン(東京・港)やユニバーサルミュージック(東京・港)も一部配信会社向けから順次見直すそうです。ソニー・ミュージックエンタテインメントも検討中とのこと。

 過去に購入したコピー制限付きの既存の楽曲については、音楽大手は2012年2月に米アップルの「iTunesストア」向けの楽曲に限ってコピー制限をなくしました。アップルは過去に購入した楽曲についてもコピー制限を解除するサービスを始めています。料金は1曲当たり50円から。アップル以外の配信業者については同様のサービスを提供するかは未定だそうです。

 コピー制限が付いた楽曲を再生するには、暗号を解除するなど特別なソフトを機器に組み込む必要がありました。配信会社と機器メーカーで仕様が違う場合もあり、開発の手間やコストが負担になっていたのです。

   制限撤廃により、音楽再生機能だけが機器に組み込まれていれば、ネットで購入した楽曲を自由に聴けるようになります。テレビやオーディオ機器など、さまざまな家電製品で、ネット経由で購入した楽曲を楽しむことができるようになるのです。

 コピー制限を撤廃しても楽曲には利用者を特定するIDが埋め込まれています。ネットの履歴などからだれが違法アップロードしたかを突き止めることができ、これが抑止力になるでしょう。

2012年10月6日土曜日

YouTubeの著作権管理システム

 報道によれば、2012年10月4日、グーグルは、動画配信サイト「YouTube」の著作権管理システムについて説明会を開催しました。違法にアップロードされた動画や音楽を検出する「コンテンツID」の機能を定期的に強化し、映像の歪みやサイズの違いがあってもより正確に抽出できるように改良を進めているとしたそうです。
 
 YouTubeでは2007年に著作権管理システム「コンテンツID」を導入しました。まず、コンテンツの所有者から違法アップロードを防ぎたい動画や音楽のデータの提供を受けます。そのデータの内容を分析し、特徴を抽出してIDファイルあるいはフィンガープリント(指紋)と呼ばれるデータとして保存します。ユーザーがYouTubeに動画を投稿した時に、IDファイルと照合して違法アップロードではないか診断します。YouTubeでは、時間換算で毎日100年分もの動画をスキャンしているそうです。

  当初のコンテンツIDシステムは、検出精度に問題があったため徐々に改良を進めているそうです。例えば、ユーザーがテレビに写っている動画をビデオカメラで撮影してコピーした場合のように、映像に歪みや傾きがあった場合でも、正確に検出できるようにしました。ほかにも色の違いや左右反転にも対応できるようにしました。場合によっては、本来は違法ではないものが、違法だと判断されるミスが起きることもあります。そうした場合に備えて、ユーザーによる申し立ての機能も追加しました。

2012年10月1日月曜日

はじめに

 法律の世界って面白い?
 世の中にまつわる法律のよしなしごとを、備忘のため、本ブログを開設することを決意しました。
 特定の事実を前提とした個別具体的な内容を記載するつもりはありませんのであしからず。