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2013年12月4日水曜日

知財の基礎 商標法

商標法の保護対象と登録要件

商標法の目的
  • 商標法の目的は,商品やサービスの名称の登録を通じて,商品やサービスに蓄積された業務上の信用 を保護することにあります。ここで,商標とは,文字,図形,記号もしくは立体的形状もしくはこれらの結合又はこれらと色彩 の結合であって,業として商品を生産等をする者が,その商品について使用をするもの,もしくは 業として役務を提供等をする者が,その役務について使用をするものです。

<事例>
化粧品などのブランドメーカーX社は,商標Aを通じて,業務上の信用が化体し,世界的な知名度の確立に成功した。X社の同業他社は,X社の業務上の信用を利用して,利益を得ようと商標Aに類似する商標や混同する商標について商標登録出願する場合がある。かかる場合には,他人の周知の商標 と同一又は類似の商標をその商品等と同一又は類似の商品等について使用をする商標に該当することを理由として,商標登録出願が拒絶される。ここで,この 周知の商標かどうかについては,商標の審査基準によれば, 広告宣伝の回数,商標が使用されている期間や地域等に基づいて判断されるとされている。

商標法の保護対象

○ 記号と立体的形状の結合した商標
○ 文字と複数の図形の結合からなるもの
○ 記号のみからなるもの
× 色彩のみからなるもの
× 文字と音の結合した商標
× 図形と匂いの結合した商標
× ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

商標権の登録等

商標登録出願について, 登録査定の謄本が送達された後に,所定期間内に登録料を納付することにより設定登録され,商標権が発生します。また,登録料は, 5年分毎に分割して納付することもできます。さらに,他の知的財産権と異なり,商標権者は申請により存続期間を更新することができ,その更新手続をすることにより,半永久的に権利を存続させることも可能です。また,更新の申請のときに,登録商標を使用していることが要件とされません


<事例>
近々,「XYZ株式会社」という社名の法人を設立する予定の甲は,商標登録出願をすべきか否かを検討している。
  • XYZ株式会社の商品カタログの表紙において,「XYZ」の文字を大きく表示する予定であり,同社は商号登記を行っているが,商標登録出願をする必要性がある。
  • XYZ株式会社は,商品「被服」について「ABC」のブランド名を使用する予定であり,その店舗販売等に際しては,そのブランド名「ABC」が印刷された「包装用袋」が使用されるが,「包装用袋」を指定商品として,商標「ABC」について商標登録を受ける必要はない。
  •  XYZ株式会社が販売する予定の商品パッケージには独特の形状のものを使用する予定であるが,そのパッケージの形状のみからなる商標についても,商標登録を受けることはできる。

<事例>X社の知的財産部の部員甲は,新商品に使用する商標Aについての先行商標調査を行ったところ、X社と競合するY社が,商標Aと類似する登録商標Bを所有していることが判明した。
  • 登録商標Bに係る指定商品とX社が販売する商品とは商品区分が異なっているが,商標Aを選択する上では詳細に当該指定商品との類否関係を検討する必要がある
<事例>
 食品メーカーX社の知的財産部の部員甲が,新商品に表示する商標についての商標登録出願を検討している。
  • 外国の有名な化粧品メーカーY社で販売されている化粧品の著名なブランドMの語感が新商品のイメージと合い,また,Y社はブランドMについて日本に商標登録出願をしていないが,ブランドMについて新商品を指定商品とする商標登録出願をしても登録を受けることはできない。


商標登録を受けるための手続

商標登録出願
  • 他人の著名な芸名を含む商標は,その他人の承諾を得ている場合には,商標登録を受けることができる。 
  • 役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標は,商標登録を受けることができない。
  • 新商品の販売時期が未定であっても,販売することが確実な場合には商標登録出願をすべきである。


商標登録出願の審査又は手続
  • 商標登録出願に係る商標は,商標登録されるまでに公開されることがある。
  • 商標登録出願については,出願審査請求しなくても実体審査が行われる。
    文字と図形から構成される商標について商標登録出願をしたときは,その出願に係る商標を文字部分と図形部分とに分割して,新たな商標登録出願とすることができない
  • 審査官は,政令で定める期間内に商標登録出願について拒絶の理由を発見しないときは,商標登録をすべき旨の査定をしなければならない。

商標権の管理と活用

商標権の発生及び効力
  • 商標を使用する意思がなければ,商標登録を受けることはできない。
使用権
  • 専用使用権の設定は,登録しなければ効力は発生しない。

商標権の管理
  • 商標権の効力は,指定商品普通名称普通に用いられる方法で表示する商標に及ばない。
  • 登録商標は不正使用されていても,その事実をもって当然に商標権が失効することはない。
<事例>
家電メーカーX社は,登録商標Aについて指定商品Bとする商標権を有している。
  • 登録商標Aが指定商品Bの普通名称となった場合には,他人が登録商標Aを使用することを禁止できなくなる場合がある。

商標権の使用許諾契約
  • 口頭による登録商標の使用を認める旨の約束は,書面による契約書が作成されていなくとも,有効である。
  • 商標権使用許諾契約書の契約当事者の欄に,実印ではなく認印が押印されていても有効でる。

<事例>
米国の菓子メーカーX社は,日本に法人を設立し,自社商品であるドロップキャンディに「プチ☆ポム」という名称を付して日本での販売を開始した。一方,老舗の日本の菓子メーカーY社は,指定商品を洋菓子として,登録商標「プチ☆ポム」の商標権を有している。
  • Y社が日本国内で3年間継続して登録商標「プチ☆ポム」を使用していない場合,X社は当該商標登録の取消を求めることができる可能性がある。
  • X 社は日本のY社の登録商標と偶然同じ標章を使用していたのであるから,何らY社のビジネスを阻害する意図はなかった。このような場合であっても、Y社 が,X社がドロップキャンディ「プチ☆ポム」を日本で販売することを認めなければならない理由はなく,X社から申出があっても,ライセンス交渉等に応じる 必要はない。
  • X社とY社との交渉の結果,Y社はX社に,登録商標「プチ☆ポム」に係る商標権の全範囲について,専用使用権を設定した。専用使用権が設定登録された後であれば,Y社は商標権者であるとしても,自由に登録商標を使用することができない。


商標権の侵害と救済

<事例>
文房具メーカーX社は,マークMに係る商標Aについて指定商品Bとする商標権を取得した。当該商標権について権原を有しないY社の使用については・・・
  • Y社は,商標Aを,指定商品Bと類似する商品Cについて使用するとX社の商標権の侵害となる。
  • Y社は,商標Aを,指定商品Bと類似する役務Eについて使用するとX社の商標権の侵害となる。


商標法に規定されている制度
  • 出願公開制度
  • 存続期間の更新登録制度
※ 出願審査請求制度は規定されていない。


商標法に規定されている審判
  • 同一の商標登録に対して,商標登録無効審判と,不正使用取消審判とを請求することができる。
  • 拒絶査定を受けた商標登録出願人は,拒絶査定の謄本の送達日から3カ月以内であれば,拒絶査定に対する審判を請求することができる。  
  • 不使用取消審判は,利害関係人でなくても請求することができる。
  • 商標権者は,商標権を侵害する者に対する信用回復措置の請求をすることができる。