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2013年12月3日火曜日

知財の基礎 意匠法

意匠法の保護対象と登録要件

意匠登録を受けることができる可能性のある意匠
× 意匠登録出願の出願日の1カ月前に外国で公知となった他人の意匠に類似する意匠
× 物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠
意匠登録出願の出願日の3カ月前に自ら日本国内で頒布した刊行物に記載した意匠

○ さい銭箱
× 洗剤液
× マンション
○ ロボット・・・自動車の生産ライン用のロボットのみならず,踊る動きをするだけの玩具用のロボットについても,工業上利用できる物品として,意匠登録の対象となります。

○ 物品の機能を確保する形状を有する意匠
× 他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠
× 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある意匠

意匠登録を受けるための手続
  • 意匠登録出願は物品に係る創作についてなされたものであることから,技術的思想の創作を保護対象とする特許出願へ出願変更することが認められている。 
  • 密意匠としての請求をしていない意匠登録出願であっても,意匠登録前に特許庁から公開されることはない。
  • 意匠権の設定が登録されると,その登録内容を記載した意匠公報が発行される。
特殊な意匠登録出願
  • 部分意匠
  • 動的意匠
  • 組物の意匠
  • 秘密意匠
    • 意匠は登録後に意匠公報に掲載されて第三者に公表されます。ですから、登録よりも販売時期が遅れる場合などには、意匠が模倣されて,出願人が不利益をこうむるおそれがあります。 そこで意匠法は秘密意匠制度を設け、意匠登録から3年以内に限り、登録意匠を秘密にすることを認めています。

<事例>
電機メーカーX社は,携帯音楽プレーヤーについて意匠登録出願の準備をしているが,開発の遅れにより製品の発売が大幅に遅れそうなことがわかった。斬新なデザインであり,意匠登録出願後に,意匠登録され公開されることにより他社にデザインが知られるのを防ぎたい
この場合の適切な対応は、
  • 設定登録料の納付時に,秘密期間を1年とする秘密意匠の請求をする。
  • 意匠登録出願と同時に秘密期間を3年とする秘密意匠の請求をする。
※ 意匠登録出願について,登録査定の謄本の送達後に,設定登録料の納付期間を1年とする納付延長の請求をしても意味がない。

意匠権の管理と活用

意匠権の発生

存続期間
  • 意匠権の存続期間は,登録日から20年であって,その存続期間の延長を請求することができない
意匠権の活用

意匠権者の意思に基づくライセンス
  • 専用実施権の設定や通常実施権の許諾


<事例>
文房具メーカーX社は,ボールペンについて意匠権を有している。ライバルメーカーY社は,X社の登録意匠と類似する形態をシャープペンシルの形態に転用することを検討している。
  •  X社の登録意匠と類似する形態を,X社の登録意匠に係る物品と類似するシャープペンシルの形態に転用すると,X社の意匠権を侵害する可能性が高いので,Y社はX社から通常実施権の許諾を受けるべきである。

意匠権者の意思に基づかない通常実施権

意匠権の譲渡

意匠権の侵害と救済

意匠権者側

確認→警告→差止・損害賠償

<事例>
X社は携帯電話Aについて意匠権を有している。知的財産部の部員甲は,携帯電話Aと同一のデザインのおもちゃの携帯電話BをY社が販売していると,営業部の部員乙より連絡を受けた。なお,「携帯電話」と「おもちゃの携帯電話」は非類似物品とする。
  • 意匠権の効力範囲は、登録意匠に係る物品と同一又は類似の範囲で,かつ,その形態と同一又は類似の範囲をいいます。
  • 携帯電話Aは意匠登録されてるので、意匠権に基づいて、意匠権の効力範囲における第三者の業としての実施に対して,差止請求損害賠償請求ができます。
実施者側

意匠原簿で確認→意匠登録に無効理由がないか確認→意匠登録無効審判の請求 or 実施の中止

<事例>
食品メーカーX社は,新しいチョコレートを開発したところ,その外部の形状は,Y社が販売する万年筆と似た形状であった。Y社の意匠権を調べたところ物品を万年筆としたものだった。なお,「チョコレート」と「万年筆」は非類似物品である。
  • チョコレートとは,物品が非類似であり,Y社の意匠権の効力は及びません。