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2014年11月21日金曜日

「忘れられる権利」欧州司法裁判所判決




2014年5月13日欧州連合(EU)の最高裁判所である欧州司法裁判所(ECJ)が下した「忘れられる権利」についての判決をきっかけに、日本でも「忘れられる権利」への関心が日々高まっている。

欧州司法裁判所判決の事案

 スペインの弁護士ゴンザレス氏は、2010年スペインの 情報保護局(AEPD)に、① スペインの新聞ラ・ヴァングァルディアの1998年度の記事がリンクされている検索結果を表示したグーグル・インクとグーグル・スペイン(以下、「グーグル」)に対しては、上記の記事を検索結果から削除するか遮断する措置を、② ラ・ヴァングァルディアに対しては、上記の記事を削除する措置を取らせるよう求めた。グーグル検索サービスでゴンザレス氏の名前を検索すると、ゴンザレス氏所有の不動産の公売に関する裁判所の判決内容が記載された上記1998年の新聞記事が表示され、 上記の記事にはゴンザレス氏の負債に関する詳細が記載されていた。
 これを受け、AEPDは、グーグルに対して関連リンクの削除を命じる決定を下したが(新聞社に対しては表現の自由などを理由に要請を棄却した。) 、グーグルがこれに対して異議を申立てスペイン高等裁判所に提訴し、同裁判所がEUの1995年データ保護準則(Directive 95/46/EC)がインターネット検索エンジンに適用されるかどうかなどに対する解釈を欧州司法裁判所に求めたところ、この答えとして出されたのが今回の判決である。

欧州司法裁判所判決の骨子

 判決の骨子は、① 会社のデータ処理サーバーが欧州外にあっても、検索エンジンの運営者がEU域内に支店や支社を置いているのであれば、EU準則は当該会社に適用され、② 検索エンジンの運営者は個人情報の処理者(controller)であるため、EU準則の責任から逃れることができず(検索エンジンが情報をインデクシング(indexing)して一時保存し、優先順位によってユーザーに提供するのは個人情報の「処理(processing)」であり、検索エンジンの運営者は「処理者(controller)」に当る。)、③ 個人は、ウェブページそのものの削除の如何とは無関係に、自分の名前で検索して表示された検索結果に対して直接検索エンジンにそのリンクの削除を求める権利を持つ、という内容である。
 加えて、欧州司法裁判所は、忘れられる権利が無限定に認められる権利ではなく、当該個人情報がデータの処理目的に対して不正確(inaccurate)、不適切(inadequate)、無関係であるか(irrelevant)、あるいは過度(excessive)な場合に適用されるものであり、事案によって表現の自由や他の基本権、公人としての役割などとバランスをとる必要があることを明確に判示した。
 これまで忘れられる権利の認定の如何とその範囲に対して多くの論争があったが、この判決は従来の個人情報の法理に基づき、検索エンジンの運営者に対するリンク削除権としての「忘れられる権利」を認めたことにその意味がある。