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2013年11月2日土曜日

モンスタークレーマー

わが国で企業や公的機関へのゆきすぎたクレーム行動が一般に広く問題視されるようになったのは約15年ほど前からのことでしょうか。

そもそも正当なクレームは、企業経営を改善し活性化するための貴重な情報源となります。ところが、この時期から客観的にはとても正当とはいえない悪質なクレームが増え始めました。さらに「東芝クレーマー事件」によってインターネットの影響力が広く知れ渡り、同事件が起きた1999年ごろからは、インターネットを最大限活用して苦情の中身を社会に広めようとするクレーマーが出現しました。

こうした事態への対処に企業側は頭を抱えているのが実情です。 かつても製品の不具合、サービス不良などを理由に企業へ因縁をつけるタイプの悪質クレーマーは存在しました。いわば暴力的背景を持ったクレーマーです。

一方、近年問題なのは、製品の不具合など苦情の入り口は同じでも、そこから非難の方向を変えて、企業の社会的姿勢などを声高に追及するタイプのクレーマーです。苦情の前提と要求の内容には著しい差があったり、苦情の相談がなかったりするからモンスタークレーマーといってもいいでしょう。

背景に「我こそは正義」という思い込みがあるため、大変対応しにくい相手です。

というのは、暴力的背景を持ったクレーマーの場合、直接的には金銭を要求していなくても、要求の内容はわかりやすいのです。

これに対して、“新種”であるモンスタークレーマーは、正義を述べ立てることによる自己陶酔や憂さ晴らしといった、別の動機によって行動しています。そのため、例えばモンスタークレーマーに金銭の提供を申し出たりすると、逆に相手の態度を硬化させ、問題を長引かせることにつながりかねないのです。「対応しにくい」というのは、このことでしょう。

モンスタークレーマーの標的は企業だけではありません。被害はいまや自治体や国の機関、学校、病院、さらには芸能人や政治家といった個人にまで広がっています。

また、クレーム慣れしているはずの企業でも、消費者相談室などの専門部署ではなく現場の個人が標的になることがあります。誰もがクレーマー被害に遭う危険があるのです。

電話やネットを通じた「情報による攻撃」は、暴力をともなう物理的な攻撃よりも効果的に人を打ちのめすものです。たとえ専門的な訓練を受けたクレーム担当者であっても、モンスタークレーマーからの執拗な攻撃を受ければ「心が壊れてしまう」といわれています。通常業務を抱えた一般社員ならなおさらでしょう。 常軌を逸したクレーム電話が続いたり、ネット上の誹謗中傷がやまなかったりしたときは、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたるケースもあるので刑事告訴といった対応も可能です。