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2013年11月16日土曜日

「Google Books」を巡る著作権侵害訴訟

今回は、インターネット検索最大手の米Googleの書籍全文検索サービス「Google Books」を巡る著作権侵害訴訟について書いてみたいと思います。

Google Booksは、公共図書館や大学図書館の蔵書をデジタル化し、インターネットで検索・閲覧可能にしたサービスです。

<時系列>

2005年、図書館の蔵書を電子化し、ネットを通じて検索・閲覧できるようにする事業を開始。米国作家協会Authors Guildや米出版社協会(AAP)は、Google Books(当時の名称は「Google Book Search」)が著作権侵害に当たるとして、Googleを提訴。

2008年10月、Googleが一定の金額を払うことなどで和解に合意した。

2011年、地裁が和解の承認を拒否し、訴訟は振り出しに戻った。  

2012年10月、 Googleと米出版社協会(AAP)は、書籍の電子化を巡る訴訟で和解した。AAPと米作家協会がこの事業を著作権侵害だと訴えていたが、まずAAPとの訴訟が解決した。  グーグルはAAPを通じて訴えを起こした米出版大手マグロウヒルなど5社と和解した。この和解で出版社側はグーグルが電子化した書籍を一般公開するか、削除するかを選べるようになった。デジタル化した書籍を自社利用のために受け取ることも可能となった。

2013年9月、審問が開かれた。審問でGoogleは、著作権物が評論、ニュースレポート、授業、研究などに引用される場合フェアユースが認められているのと同様に、Google Booksがスキャンした書籍の一部のみを閲覧可能にしていることも、フェアユースの範囲にあると主張していた。  

2013年11月14日、ニューヨーク州南地区連邦地方裁判所は「Google Booksはフェアユースの範囲」とするGoogleの主張を認める判断を下しました。


<今回の判決内容>

米Bloombergが公開した裁判所の資料によると、Denny Chin判事は今回、「Google Booksは公衆に多大な恩恵をもたらしている」と判断。

「学生、教師、司書などさまざまな人々がより効率的に書籍を見つけ出すための貴重なツールになっている。書籍の入手が困難な人に対して書籍をより手軽に利用できるようにし、著者や出版社にとっての新たな読者と収入源を生み出している。実際、社会すべてが恩恵を受けている」と述べました。  
また同判事は、Google Booksでは全文が検索対象になっているものの、検索の結果閲覧できるのは書籍の一部に限られ、すべての内容を読めるようにはなっていないことも指摘しました。  

Authors Guildは今回の判決を受けて、「われわれは裁判所の判断には反対意見であり、たいへん失望している」との声明を発表。「Googleは世界中の価値ある著作権付き文学のほぼすべてのデジタル版を未承認で作成し、それを表示することで利益を得ている。われわれの見解では、こうした大量のデジタル化と利己的な利用はフェアユースの保護の範疇を越えている」とし、上訴する意向を示しました。  

一方Googleは、「長い道のりだった。われわれは今日の判決を心から喜んでいる」とのコメントを発表しています。

<判決の意義・影響>

 仮に判決が確定した場合でも、データが作家らの許可なく売られるわけではないので、現在流通している日本の出版社の電子書籍への影響は限定的とみられています。

  米国には、著作物の利用が「フェアユース(公正利用)」であれば著作権者の了解を得なくてもよいという規定があります。グーグルのプロジェクトは商業目的ですが、検索を重ねても全文は表示できないようにするなど、電子書籍ビジネスに悪影響が出ないよう工夫している点が評価されたようです。

  訴訟が起きた2005年当時に比べると、現在は電子書籍市場が拡大し、消費者がネット経由で本を買う頻度も増えました。市場環境が変わるなか、「ネット検索で探しやすくなれば書籍が売れて著作者にもプラスだ」と判断した今回の判決は、著作権保護の考え方に一石を投じる可能性もあります。