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2013年11月26日火曜日

特許権侵害訴訟

特許権侵害訴訟は原告側も被告側も通常業務以外にかなりのエネルギーが必要になります。 近年では、中小企業においても訴訟事件が増えてきました。

侵害を発見した場合は、確認、警告、差止・損害賠償という流れで対応します。侵害であると警告された場合は、「特許原簿で確認」→「特許で無効理由があるかを確認」→「特許無効審判の請求」又は「実施の中止」という流れで対応します。

ここでは,特許紛争を起こす側が留意すべき点について, 検討してます。

  • 警告状を出すべきか
  • 特許侵害といえるか?
    •  特許権の存在の確認
    •  クレームの確認
    •  対象製品・対象行為の特定
    •  クレームを侵害しているか
  • 勝てる見込み
    •  文言該当性
    •  立証可能性
    •  有効性
      • 特許発明が新規性・進歩性を有しない場合等には,特許無効審判が請求されると,特許が無効にされます(特123条)。
  • 訴訟の負担
    • 侵害者特許による反撃可能性
    • 費用
    • 時間
    • 不安定な法的状態
    • 評判の低下
  • 訴訟でできること
    • 特許が侵害されている場合,差止請求(特100条)と損害賠償請求(民709条)が主な手段となります。
  • 仮処分とは? 
    •  仮処分は,簡易・迅速な手続で,差止めを実現して相手方の競業行為を実質的に規制することができる手続ですので,訴訟戦略上重要です。
    •  仮処分の要件は,①被保全権利の存在、②保全の必要性 です。①については,本案の「1特許権が侵害されていること又は侵害されるおそれがあること」と同じです。 ②については,債権者(ここでは,特許権者)に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため差止めを必要とすると認められるかということです(民事保全法23条2項)。 具体的には,仮処分命令が発令されないことによる債権者の不利益と,仮処分命令が発令されることによる債務者(ここでは,侵害者)の不利益とが比較衡量して判断されます。 損害の立証が困難である場合(ex.債権者が値下げを余儀なくされる場合),債権者の実施品が主力製品である場合,債務者が債権者の損害を賠償するに十分な資力を有しない場合等の事情は,保全の必要性があると判断される方向に働きます。 
    • 差止めの仮処分のメリットは,簡易・迅速な手続で,本案とほとんど同じ内容の給付を実現することができることです。 そのため,「満足的仮処分(断行の仮処分)」とも呼ばれます。 
    • 仮処分のデメリットは,ほとんどのケースで,担保として保証金が必要となることです。 また,別途本案訴訟を提起するのが原則であり,提起しない場合には仮処分命令が取り消されるときもあります(民事保全法37条3項)。 
    • さらに,無効の蓋然性がある,均等論の主張を含む等,複雑な論点が予想される場合には,仮処分の迅速性の要請に適さないとして,取下げが勧告されることも少なくありません。 
    • 仮処分は,市場に極めて速いスピードで侵害品が氾濫し始めた場合に起こすのが伝統的な考え方ですが,最近では,差止めという強力な効果を早期に得ることができる方法であるため,仮処分提起により相手方を萎縮させて,早期の和解により実施料を獲得する手段としても用いることがあります。
  • 訴訟を避けて解決したい場合
    •  訴訟は,費用が高く時間がかかりがちであるというデメリットがあります。 また,訴訟は,公開の手続ですから(憲82条),紛争の当事者であることを公にしたくない場合(業界大手同士の紛争(業界に混乱を巻き起こす),公益的な主体(大学,金融機関等)の紛争)にも選択しづらい手段です。 このような場合,安価,迅速で非公開の手続として,調停や特許庁の判定があります。
  • 輸入品の場合
    •  侵害品が外国製品であり,個人輸入や小さな輸入代理店により,少しずつ,無数の輸入がなされるような場合には,一度日本国内に輸入されてしまうと,個々に侵害を問うことが事実上不可能になってしまいます。  このような場合には,関税定率法による輸入差止申立て(いわゆる「水際取締り」,「水際措置」)により,侵害品の輸入を差し止めることができます。 水際取締りがうまくできれば,国内での侵害排除措置を行う必要がなくなるので,有効な手段と言えます。  具体的には,特許権者は,自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に,税関長に対し,当該貨物の輸入を差止め,認定手続を執るべきことを申し立てることができます(関税法69条の13)。