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2013年10月23日水曜日

ストリートビューとプライバシー・肖像権

ネット検索でおなじみ、米グーグル社が作成したストリートビューのサービスが、2008年8月より国内の主要都市に関して始まりました。

ストリートビューとは、数メートルおきの地点ごとに、公道上から実際に撮影された360度のパノラマ画像を、地図などと組み合わせて自由に閲覧できるようにしたシステム。

たとえば、初めて足を運ぶ待ち合わせ場所の下見代わりには、便利です。思い出の場所が現在どうなっているか、クリックひとつで眺めにいくのも楽しいですね。

ただ、世の中の景色を手当たり次第に呑みこみ、全世界の人々に共有させてしまうストリートビューは、「すごい」「面白い」と同時に「マズい」「怖い」ともいえます。公開されている画像は、駅前などの公共の場だけではないからです。ストリートビューのカメラは、住宅街の細い路地にも入り込んで、そこに見えるものすべてを記録、データ化してしまいます。

自宅がいつの間にかネットで公開されていて気持ち悪いという声が噴出しているのも当然の成り行きでしょう。 また、通行人が道ばたで転倒している瞬間などのストリートビュー画像を収集して面白がるような輩もいます。画像に写りこんだ通行人の顔には、ボカシが入るよう編集されていますが、不完全です。運悪くそのまま公開されている気の毒な人も少なくありません。

ストリートビューの法的な問題点は主に2つあります。

プライバシー

まず、自宅の様子が公開されるという「プライバシー」の問題。人格権と直結する大切な概念ですが、公道から見える建物の外壁や、庭を囲む柵などの撮影については、プライバシーを持ち出しづらいのが現状です。室内の様子が写りこまない限り合法といえます。

ただ、自宅の外観も、他の情報と組み合わせて個人が特定できるなら「個人情報」であり、個人情報保護法に反すると指摘する余地はあります。

肖像権

一方で、顔を撮影するという「肖像権」の問題。人の容貌も、原則として本人の許可なく記録することはできません。その了解を得なければ、被害者が慰謝料を請求する理由としても十分です。ストリートビューのプロジェクトには、肖像権と対峙できるほどの重要な社会的意義(報道・言論の自由など)が託されているとも思えません。まして、窓際で着替えている様子や、ラブホテルから出てくる男女を、その容貌が判別できるかたちで公開するなどは、プライバシー侵害とも結びつき、ストリートビューの不法行為性の疑いはより色濃くなります。