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2013年10月14日月曜日

動画投稿サイトの視聴と著作権

見逃したドラマを動画投稿サイトで視聴したことはありますか? もし、心当たりがあるなら、今後は気をつけたほうが良いでしょう。ドラマを動画投稿サイトにアップロードすることはもちろん、視聴することも著作権侵害として捕まる恐れがあるからです。

違法アップロードについて

著作権は著作権者に与えられた知的財産権の一種で、さまざまな権利から構成されています。ドラマなどのコンテンツを著作権者の許諾なく動画投稿サイトに投稿すれば、複製権(著作権法第21条)の侵害になります。不特定多数の人が視聴できる状態にすれば、送信可能化権(同法第23条1項)の侵害になります。

違法アップロードはしていないという人も、注意が必要です。違法にアップロードされた動画へのリンクを張るのも、著作権の侵害行為にあたる可能性があります。最近の動画投稿サイトはSNSと連携して簡単にリンクを張ることができますが、それによってアクセスが増えれば公衆送信権(同法第23条1項)の侵害を幇助したとして罪に問われる可能性があります。

もっとも、違法性が高くても警察が動くかどうかは別次元のことです。著作権侵害は、著作権者が告訴しないかぎり刑事罰に問えない親告罪です。通常は、著作権者から通報を受けた動画投稿サイトが削除するなどの対応をするため、告訴に至らない場合がほとんどです。

とはいえ、過去にはYouTubeへの違法アップロードで逮捕された例もあります。
  • 2010年6月には『週刊少年ジャンプ』の中身をデジカメで撮影して投稿した男子中学生が逮捕されました。
  • 2011年5月には、アイドルグループ「嵐」のDVD映像やバラエティー番組をYouTube上に公開した男性が逮捕されました。
では、 いったいどの程度のものであれば、警察が動き出すのでしょうか。

逮捕されるのは、かなり悪質なケースと言われています。何度も削除されたのにしつこくアップを続けたり、コンテンツの発売以前に内容を公開していれば、著作権者としても放置できませんし、警察も動かざるをえなくなります。

視聴者側について

2012年10月1日から改正著作権法が施行されました。違法にアップロードされた著作物と知りながらダウンロードすることは、従来から違法とされてきました。しかし、これまでは罰則がないため事実上、野放し状態でした。そこで、法改正により、有償の音楽や動画を違法な配信と知りながらインターネットからダウンロードする行為に2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されることになりました。

違法動画の閲覧は、ダウンロードではないから、「本当に観るだけ」なら、刑罰を科されることはありません。  しかし、自分では「単なる閲覧」と思っている行為が、実態はダウンロードだったとしたらどうでしょうか。

一般に動画サイトの動画は、主にダウンロードとストリーミングの方式があります。ダウンロードは、動画ファイルそのものをハードディスク上にコピーし、後でこれを再生する方法です。  一方、ストリーミングは、動画ファイル自体を入手するわけではなく、サーバーから流れてくるデータをいったんメモリー上に置き、その場で次々に再生し、再生が終わったデータはメモリーから削除される方式です。  後者なら、複製ではないし、ファイルをもらうわけではないので、「本当に観るだけ」といえます。

しかし、最近はダウンロードとストリーミングの良さを組み合わせたプログレッシブ・ダウンロードという技術があります。見かけ上はストリーミングですが、実際にはファイルを裏側でハードディスク上にダウンロードして、複製したファイルを再生しているにすぎません。そのため、「疑似ストリーミング」とも呼ばれています。要は実質的な「ダウンロード」なのです。

実はYouTubeやニコニコ動画は、このプログレッシブ・ダウンロードに当たり、「観るだけ」のつもりがダウンロードになっています。 YouTubeを利用すると、パソコン内のある場所に、視聴した動画ファイルがキャッシュ(一時記録)ファイルという形で保存されます。

これに関して文化庁は、YouTubeでの違法動画の閲覧に伴って手元のパソコンに作成されるキャッシュファイルは、「著作権法47条の8という例外規定が適用され、権利侵害にならないと考えられる」としています。

しかし、文化庁の解釈は裁判所で否定されたこともあり、文化庁が言っているから大丈夫というわけではありません。技術を詳細に検討した結果、裁判所が適用を否定するという可能性があります。

しかも、この例外規定には、あくまでもネット経由で送信されたデータを受信して観る場合という但し書きがあります。  この但し書きは、同じ動画をもう1度再生するときに問題となります。2度目の再生では、YouTubeのサーバーから再度データが流れてくるのではなく、手元のキャッシュファイルが再生されます。これはまさにダウンロード済みのファイルを再生していることになり、例外規定は適用されず、違法になりかねないのです。

本当にプログレッシブ・ダウンロードが対象外ならば、きちんと著作権法に反映させるべきだったのですが、現状は曖昧で場当たり的な規定になっています。  このような曖昧な規定は、警察によって恣意的に運用される可能性もあります。

違法アップロードさえ逮捕例が少ない現状では、視聴によって逮捕されるリスクは低いでしょう。ただ、著作権侵害が横行する状態が続けば、見せしめ的に逮捕 が行われる可能性もあります。例えば違法アップロードを発見して、プロバイダに資料を提出させ、ダウンロードした者を割り出す。その中に“めぼしい人物”がいたら捜索・差し押さえするようなケースです。めぼしい人物とは、有名人、一流企業の社員など見せしめ効果のある人間ということになります。心当たりのある方は、注意するに越したことはないでしょう。 著作権への高い意識を持つことが求められます。