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2013年10月18日金曜日

ネット上の個人情報を消すには

ツイッターに顧客のプライベートを書き込んで炎上する事件が相次いでいます。

  • 2011年1月、都内ホテルのアルバイト店員がスポーツ選手と芸能人の来店情報を投稿して、ホテル側が謝罪しました。
  • 2011年5月、スポーツ用品メーカー社員が来店したスポーツ選手に対する中傷を書き込んで炎上しました。 

どちらの騒動でも、投稿者はネット上で徹底的につるしあげられました。有志によって実名が特定され、住所や顔写真、交友関係、はては自宅の不動産登記簿謄本の画像までネットにアップされました。

コンピュータウイルスや誤操作で個人情報が流出したり、人違いで個人情報を晒されて中傷を受けた事例もあります。

個人情報の漏えいは、いまや誰もが直面するリスクといえます。 ネット上の情報は容易に拡散され、しかも半永久的に残ります。

自分の意に反して広まった情報は、もはやどうすることもできないのでしょうか。

プライバシー侵害は、民法709条の不法行為(故意または過失によって他人の権利や利益を違法に侵害する行為)に該当する場合があります。その場合、情報が掲載されたブログや掲示板の管理者に削除を請求したり、損害賠償を請求することができます。

どのような情報ならプライバシーとして保護されるのでしょうか。

日本初のプライバシー訴訟である昭和39年の『宴のあと』裁判で、東京地裁はプライバシー侵害の要件として、

(1)私生活上の事実または事実と受け取られるおそれがあり、
(2)一般人の感受性を基準として、当該私人の立場に立ったときに公開を欲しないだろうと認められ、
(3)一般の人に知られていないこと、

という3つをあげました。病歴や前科、出自、宗教といったセンシティブな情報の公開は、これらの要件に合致する可能性が高いでしょう。

もっとも、ネット上の炎上事件で晒されるのは、名前や住所、SNSの日記といった公開情報が中心で、先ほどの3要件に必ずしも該当するわけではありません。こうした公開情報は保護対象にならないのでしょうか。

プライバシーの保護範囲は、時代とともに広がっています。もともと公開されている情報でも、本来の趣旨と異なる形で公開され、私生活の平穏に重大な脅威を与えているなら、現在はプライバシー侵害とみられる場合もあります。


プライバシーの保護については、他の利益とのバランスも考慮する必要があります。

犯罪報道で被疑者の実名が報道されるのは、被疑者のプライバシーより、治安維持や国民の知る権利といった利益のほうが大きいと考えられているからです。逆に微罪なのに鬼の首をとったように私生活を暴けば、プライバシー侵害のほうが上回って不法行為になります。

プライバシー侵害と認められても、一度流出した個人情報をネット上から完全に消し去ることは難しいです。法的な手続きを踏んでいるのに削除に消極的な掲示板管理者がいたり、すでに拡散していて削除請求が追いつかないケースも多いからです。