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2013年9月2日月曜日

フェアユースとは

米国では、著作権を制限する「フェア ユース」という概念がある。この概念に基づき、著作権で保護されたコンテンツを批評、コメント、ニュース報道、教育、研究、調査で特定の方法により利 用する場合はフェアユースであると認められる場合がある。米国の判事は、以下に参考として示す 4 つの要素に従い、フェアユースであるという主張が有効かどうか判断する。他のいくつかの国にも、米国の「フェアユース」とは異なる条件で適用される 「フェア ディーリング」という同様の概念がある。


フェアユースの 4 つの要素:

1. 利用の目的と特性(その利用が、商用か非営利の教育目的かなど)

裁判所では通常、その利用が「変形的」であるかどうか、つまり、新しい表現や意味がオリジナルのコンテンツに追加されているかどうか、あるいはオリジナルのコンテンツのコピーにすぎないかどうかという点を重視する。

2. 著作物の性質

主に事実に基づく作品のコンテンツを利用する方が、完全なフィクション作品を利用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなる。

3. 著作権で保護されているその作品全体に対する利用部分の比率

オリジナルの作品から引用するコンテンツがごく一部である場合は、コンテンツの大半を引用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなる。ただし、ごく一部の利用であっても、それが作品の「本質的」な部分である場合は、時としてフェアユースではないと判断されることもある。

4. 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響

著作権所有者がオリジナルの作品から受けることができる利益を損ねるような利用は、フェアユースであると認められる可能性は低くなる。この要素に基づき、裁判所がパロディを例外としたケースもいくつかある。


日本の状況

日本の著作権法においても、著作権の効力が及ばない著作物の利用行為が規定されている(著作権法30条~47条の3)。しかし著作権法における著作権の制限規定は、著作権の効力が及ばない著作物の利用態様を個別具体的に列挙したものである点でそれを一般的抽象的に規定したアメリカ合衆国著作権法におけるフェアユース規定(17 U.S.C. § 107)とは異なる。

日本において著作権法30条 - 47条の3によって定められた範囲を超えて著作物を利用した場合に、フェアユースの抗弁によって著作権侵害を否定できるかがしばしば論点となる。著作権法1条(法目的)に見られる「文化的所産の公正な利用に留意」の文言に基づいてフェアユースの抗弁を認める説も存在するが、現在のところそれを認めた裁判例は存在しない。

もっとも権利濫用(民法1条3項)、公序良俗違反(民法90条)、 黙示許諾といった民法上の法理に基づく抗弁によって(著作権の行使を免れるという点で)フェアユースに類似する法的効果が認められる余地はある。ただし権利濫用は基本的に著作権者側の行為態様を、公序良俗違反は国家秩序や社会道徳をそれぞれ問題とするものであるのに対し、フェアユースの場合は著作物の利用者側の事情を問題とするものであるため必ずしも重なり合うものでもない。また黙示の許諾がある場合は著作権者による権利処分があったと認定できる場合であ り、フェアユースの法理と適用場面が重なるわけではない。

日本では、現在までのところ、フェアユース規定は法律化されていない。