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2013年9月15日日曜日

不法行為訴訟に関する国際裁判管轄と準拠法

不法行為に関する訴えに関する国際裁判管轄
不法行為に関する訴えに関する国際裁判管轄については不法行為地国に管轄がある(民事訴訟法5条9号参照)(大塚・237頁)。

(根拠)
  • 不法行為に関する証拠方法は通常不法行為地に集中しており、裁判の適正・迅速が期待できる。
  • 提訴可能な管轄の範囲を広げることは被害者にとって利益となる。
  • 不法行為地に被害者が居住する場合には被害者の救済に資する。
  • 加害者にその地での応訴を加害者に期待しても不当な要求とまではいえない。


「不法行為地」
「不法行為地」には、不法行為の原因となる行為がなされた地(行動地や加害行為地)だけでなく、結果(損害)発生地も含まれると解されている(大塚・237頁)。

「不法行為」の意味
わが国の国際民事訴訟法の立場から独自に決定すべきである(大塚・238頁)。知的財産権・物権・人格権などの侵害ももちろん不法行為と解される。
※ 債務不履行に基づく損害賠償請求についても不法行為地管轄が認められるかについては、肯定・否定の両説がある。

管轄原因事実の証明の必要性及びその程度
一応の証明説(判例、多数説)。一般に国内事件に比べて被告の応訴の負担が重い渉外事件では、 管轄原因事実についても、原告の主張のみではなく、一応の立証を必要とする(大塚239頁)。
被告が日本国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的な事実関係が証明されれば足りる(大塚239頁)。

準拠法
通則法17条は、不法行為に関する原則的連結政策としては、基本的に、不法行為は「結果発生地法」によるとするが、これに加えて、その地での結果発生が通常予見できない場合には行動地法によるとして、加害者側の予見可能性を考慮する。

「結果発生地」
法益侵害の結果が現実に発生した地のことであり、侵害された権利が侵害発生時に所在した地である。

法17条の適用範囲
不法行為の成立に関する問題及び不法行為の効力に関する問題は、不法行為地の準拠法による(大塚244頁)。