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2013年10月18日金曜日

ネット上の個人情報を消すには

ツイッターに顧客のプライベートを書き込んで炎上する事件が相次いでいます。

  • 2011年1月、都内ホテルのアルバイト店員がスポーツ選手と芸能人の来店情報を投稿して、ホテル側が謝罪しました。
  • 2011年5月、スポーツ用品メーカー社員が来店したスポーツ選手に対する中傷を書き込んで炎上しました。 

どちらの騒動でも、投稿者はネット上で徹底的につるしあげられました。有志によって実名が特定され、住所や顔写真、交友関係、はては自宅の不動産登記簿謄本の画像までネットにアップされました。

コンピュータウイルスや誤操作で個人情報が流出したり、人違いで個人情報を晒されて中傷を受けた事例もあります。

個人情報の漏えいは、いまや誰もが直面するリスクといえます。 ネット上の情報は容易に拡散され、しかも半永久的に残ります。

自分の意に反して広まった情報は、もはやどうすることもできないのでしょうか。

プライバシー侵害は、民法709条の不法行為(故意または過失によって他人の権利や利益を違法に侵害する行為)に該当する場合があります。その場合、情報が掲載されたブログや掲示板の管理者に削除を請求したり、損害賠償を請求することができます。

どのような情報ならプライバシーとして保護されるのでしょうか。

日本初のプライバシー訴訟である昭和39年の『宴のあと』裁判で、東京地裁はプライバシー侵害の要件として、

(1)私生活上の事実または事実と受け取られるおそれがあり、
(2)一般人の感受性を基準として、当該私人の立場に立ったときに公開を欲しないだろうと認められ、
(3)一般の人に知られていないこと、

という3つをあげました。病歴や前科、出自、宗教といったセンシティブな情報の公開は、これらの要件に合致する可能性が高いでしょう。

もっとも、ネット上の炎上事件で晒されるのは、名前や住所、SNSの日記といった公開情報が中心で、先ほどの3要件に必ずしも該当するわけではありません。こうした公開情報は保護対象にならないのでしょうか。

プライバシーの保護範囲は、時代とともに広がっています。もともと公開されている情報でも、本来の趣旨と異なる形で公開され、私生活の平穏に重大な脅威を与えているなら、現在はプライバシー侵害とみられる場合もあります。


プライバシーの保護については、他の利益とのバランスも考慮する必要があります。

犯罪報道で被疑者の実名が報道されるのは、被疑者のプライバシーより、治安維持や国民の知る権利といった利益のほうが大きいと考えられているからです。逆に微罪なのに鬼の首をとったように私生活を暴けば、プライバシー侵害のほうが上回って不法行為になります。

プライバシー侵害と認められても、一度流出した個人情報をネット上から完全に消し去ることは難しいです。法的な手続きを踏んでいるのに削除に消極的な掲示板管理者がいたり、すでに拡散していて削除請求が追いつかないケースも多いからです。

2013年10月17日木曜日

個人データ抜く「アプリ」

スマートフォンの個人データを抜き取るアプリの公開が後を絶ちません。

約9万人のスマホがウイルスに感染し、電話帳にある電話番号やメールアドレスなど1190万件以上の個人情報が流出しました。しかもネットの裏情報では、逮捕された関係者が運営する出会い系や4クリック詐欺サイトから、闇金グループに金が流れているという情報が寄せられていました。この事案で、アプリを公開したとしてIT関連会社の社長ら男女5人が逮捕されました。この件について、東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分としました。

なぜ不起訴になったのでしょうか。

スマホのアプリには、必ずパーミッション画面が現れます。インストール直前に「同意します」「同意しません」という表示が出る例の画面です。今回不起訴処分となった背景には、個人情報を収集することにユーザーが同意した点、かつそのアプリがユーザーに説明した通り動画を再生する機能を満たしていた点、この2点の理由があったようです。

しかし実際のところ、多くのユーザーがパーミッションの同意事項についてよく読むこともなく、甘い誘惑に駆られて同意を与えているのが現状です。個人情報保護法では、本人の同意なく第三者に個人情報を提供してはならない、と定められているのですが、それを逆手に取ったやり方といえるでしょう。

今回の不起訴処分により、今年はこうした不正アプリの横行が予想されます。法律が追いついていない以上、自分の身は自分で守るしかありません。

従来の情報漏えいと比べて深刻なのはスマホが電話であり、その中のアドレス帳に友人や取引先など個人情報が入っている点です。漏えいすれば他人に迷惑をかけることになります。「通話無料」「電波改善」「バッテリー長持ち」などを謳う中に、危険なアプリが少なくないのです。いま一度、自分のスマホ内のアプリを見直すことをお勧めします。

参考 個人データ抜く「アプリ」が罪に問われぬ理由

2013年10月16日水曜日

死後のデジタル資産の扱い、ネット上の通信の秘密

GmailやFacebookなどで、自分のプライベートなデータをネット企業に預けている人は多いでしょう。セキュリティに注意していれば、中身が外に漏れることはありません。しかし、本人が死んでしまったら、そのデータはどうなるのでしょうか。

故人のメールを見るニーズ

身内が亡くなると、以下の理由で故人のメールを見るニーズが発生することがあります。
  • 葬儀の通知を出したいが、故人の交友関係を知らない。
  • 家業を継ぐが、亡父が取引先とどのような話をしていたのかわからない。
  • 息子(娘) が自殺した原因を知りたい。 
  • 過労死であることを証明するため、過労死した故人のメールを確認したい。
とくに最近ではネット証券やネット銀行などの金銭絡みのアカウントもあるので注意が必要です。もしもデータを残していないと、あなたの貴重な財産が遺族が気づかないままほったらかしにされる事態になりかねないからです。 

端末内に有るデータは簡単に見ることはできますが、クラウド上にあるデータは厄介です。 Gmailを初めとするWEBメールは同じような問題を孕んでいます。

デジタルの世界の権利関係

日本では運営事業者と遺族との間で裁判所で争われたことが公表ベースではありません。そもそもデジタルの世界にはどのような権利が存在しているのでしょうか。

通信の秘匿、個人情報保護、著作権、デジタル財産権などいくつかの権利があります。

メールやメッセージのやり取りは通信の秘匿にあたります。

SNSでの書き込みや写真、イラストなどは著作権が関わってきます。

電気通信事業法の「通信の秘密」

通信の秘密は日本国民に認められた権利であり、憲法や電気通信事業法で保障されています。政府はもちろん、インターネットサービスプロバイダなどの電気通信事業者、さらに一般人も人の電子メールを勝手に見てはいけないことになっています。

犯罪捜査で捜査機関がプロバイダに情報開示を迫ることはあるものの、それも無制限ではありません。プロバイダが警察から捜査関係事項照会を受けて、ユーザーの名前や住所などの登録情報を本人の同意なく提供するケースはあります。ただ、メールの中身を明かすとなると、ハードルが一気に上がります。電気通信事業法に抵触する恐れがあるので、令状なしでは無理です。

個人情報保護法は、「個人情報」を生存する個人に関する情報に限っているため、死者に関する情報は保護の対象ではありません。しかし、電気通信事業法の「通信の秘密」の保護対象は、一般に生きている者に限定されていないと解釈されています。犯罪にかかわったなどの特殊なケースを除き、プロバイダが本人の許可なく第三者に明かすことはないと考えて良いでしょう。

 一方、遺族の側から見ると、この状況は厄介です。身内が亡くなると、故人のメールを見るニーズが発生することがありますが、通信の秘密の高い壁が立ちふさがるのです。


デジタル資産

では、電子データを「デジタル資産」などと呼ぶことがありますが、メールのデータを資産だと解釈し、遺族が「相続」することはできないのでしょうか。


データに資産的価値がある芸術的な写真や文章が含まれていれば、相続財産だという解釈も可能かもしれません。でも、事務的なメールだと、そのような解釈は難しいでしょう。メールアカウントは一身専属性が強く、相続財産とみなすのは難しいでしょう。

これは、『一身専属権』の考えがあるからです。

一身専属権とは、ある人の一身に専属し、他人が取得または行使することのできない権利のことです。個別の人だけに帰属するもので、特殊な技能的な技術を相続、譲渡はできないことを指します。医師免許や弁護士免許などがそれにあたります。  


運営者の実務上の取扱い

では、もし遺族がプロバイダに情報開示を要求したらどうなるのでしょうか。


一身専属権という考えに基づいて、サイト「BIGLOBE」(NECビッグローブが運営)の会員規約では第8条(権利の譲渡等)の中で、「会員が死亡した場合は、BIGLOBEサービスを受ける権利を相続人が承継することはできません」と明記しているようです。


Gmailの場合、故人の正式な代理人としてアカウントへアクセスしたい場合の手続きは、HPに掲載されています。

まず、身分証明書、死亡診断書、故人のGmailアドレスから受信したメッセージのヘッダーと全文などの証明書類を提出します。審査をパスすれば、米国の裁判所命令や追加書類の提出など、さらなる法的手続きへと進みます。

Gmailの場合は、他のユーザーがあなたに代わってメールを閲覧、送信、削除できるように、Gmail へのアクセス権を他のユーザーに委任することができるそうです。
https://support.google.com/mail/answer/138350?hl=ja


Google以外では、事業者によって対応は異なり、それぞれのホームページなどにユーザーが亡くなった場合の対処法が掲載されています。たとえば Facebookでは、ユーザーが亡くなると遺族のリクエストによってアカウントが追悼アカウントとなり、メモリアルページに変更することができます。も はやログインはできなくなり、選ばれた人のみがメッセージを残せるようになるのです。

一方、Yahoo!などのようにユーザーが亡くなっても、遺族を含めたいっさいのアクセスを認めない厳格な事業者もあります。

ただ、会員が亡くなることを想定して、アカウントやパスワードの取り扱いについて明確な基準を定めているITサービス事業者は一部にとどまります。一般的には、ケースバイケースで判断されるようです。ほとんどのサービスはユーザーの死を想定すらしていないのです。

あらかじめ利用規約で手当てしておくことが理想的ですが、通信の秘密や相続といったデリケートな問題が絡むだけに、いまの段階ではルール化しづらいのでしょう。誰にどこまでデータを引き継ぐかユーザー自身に生前登録させるなど、柔軟な仕組みづくりが求められます。


もしあなたがもしものときに備えてメールアカウントの後始末を遺族に託したいなら、IDやパスワードなどの必要なデータやアカウントの扱いに関する希望などをなんらかの形で残しておくべきでしょう。たとえば遺書やエンディングノートなどにそれらのデータが書かれていれば、遺族は容易にアカウントにアクセスしてデータを取り出したり、削除することができるでしょう。





2013年10月15日火曜日

レシピと著作権

1.レシピの著作権

 レシピの著作権についてはどのように考えれば良いでしょうか?

  レシピは、著作物として認められにくい可能性があります。著作権には、事実、アイデアは保護せず、表現のみを保護するという原則があります。レシピのうち分量や手順については、表現の余地がほとんどなく、事実そのものといってよいでしょう。斬新な調理方法など、料理のアイデアも保護の対象外です。

 もっとも、同じ分量や手順でも、個人的なコメントを入れたり、イラストや写真を加えていけば、レシピも表現の一つといえるでしょう。

 したがって、例えばブログなど、インターネット上で公開されているレシピについて、作成者に無断で写真を流用するような行為は、著作権侵害の可能性があるので、注意が必要です。


2.レシピ本の著作権

 会社の栄養士がレシピ本を出版した場合、栄養士は著作権者として印税をもらえるのでしょうか?

 まず、レシピ本は著作物として認められにくい可能性があります。著作権には、事実、アイデアは保護せず、表現のみを保護するという原則があります。レシピのうち分量や手順については、表現の余地がほとんどなく、事実そのものといってよいでしょう。斬新な調理方法など、料理のアイデアも保護の対象外です。

 もっとも、同じ分量や手順でも、個人的なコメントを入れたり、イラストや写真を加えていけば、レシピも表現の一つといえるでしょう。

 次に問題となるのは、「職務著作」です。「職務著作」とは、会社の職務として作成した著作物について、法人等が著作権者としての地位を得ることができる制度(著作権法第15条)です。作成したのが個人でも、会社が資金を出してリスクを取ったなら、その成果を会社に帰属させるべきという考え方に基づいています。

 類似の制度として、特許法の規定する「職務発明」があります。職務発明の場合、特許はまず発明者個人に帰属し、それを会社に譲渡することになります。一方、職務著作は最初から著作権が会社に帰属します。譲渡する代わりに相当の対価を得られる職務発明と違い、職務著作の場合は会社が作成者に対して特別な対価を支払う義務はありません。

 したがって、レシピ本も、社員である栄養士が職務として作成した場合は、法的には印税は会社のもので、分け前を支払う必要はないということになります。

 どこまでが職務著作で、どこからが自分のものといえるのでしょうか。

 職務著作には、以下の5つの要件があります。

 《職務著作の要件》  
① 法人等の発意に基づき創作された著作物であること  
② その法人等の業務に従事する者が創作した著作物であること  
③ その法人等の職務上創作した著作物であること  
④ その法人等の著作名義で公表された著作物であること  
⑤ その法人等内部の契約や就業規則等に別段の規定がないこと 

 上記の要件のうち、注意が必要なのは②です。労働法上、派遣社員やアルバイトは会社と雇用関係にありませんが、会社の指揮命令で動いていれば著作権法上、業務に従事する者とみなされやすいです。

 ④「著作の名義」も、難しい問題を孕んでいます。会社名か個人名、どちらかで発表されていれば著作権者は明確ですが、「○○社××部長○田×朗」のように両方の名が入っていると話がややこしくなります。 ケースバイケースですが、両方の名が入っている場合は、著作の内容についてどちらが責任を取るのかというところが判断の分かれ目になるでしょう。もし自分の著作物であることを示したいなら、自分の名を著者として入れておくべきです。本であれば『これは私の個人的見解であり、所属する組織を代表するものではありません』と一言入れておくと、個人の著作であることがより明確になるでしょう。

2013年10月14日月曜日

動画投稿サイトの視聴と著作権

見逃したドラマを動画投稿サイトで視聴したことはありますか? もし、心当たりがあるなら、今後は気をつけたほうが良いでしょう。ドラマを動画投稿サイトにアップロードすることはもちろん、視聴することも著作権侵害として捕まる恐れがあるからです。

違法アップロードについて

著作権は著作権者に与えられた知的財産権の一種で、さまざまな権利から構成されています。ドラマなどのコンテンツを著作権者の許諾なく動画投稿サイトに投稿すれば、複製権(著作権法第21条)の侵害になります。不特定多数の人が視聴できる状態にすれば、送信可能化権(同法第23条1項)の侵害になります。

違法アップロードはしていないという人も、注意が必要です。違法にアップロードされた動画へのリンクを張るのも、著作権の侵害行為にあたる可能性があります。最近の動画投稿サイトはSNSと連携して簡単にリンクを張ることができますが、それによってアクセスが増えれば公衆送信権(同法第23条1項)の侵害を幇助したとして罪に問われる可能性があります。

もっとも、違法性が高くても警察が動くかどうかは別次元のことです。著作権侵害は、著作権者が告訴しないかぎり刑事罰に問えない親告罪です。通常は、著作権者から通報を受けた動画投稿サイトが削除するなどの対応をするため、告訴に至らない場合がほとんどです。

とはいえ、過去にはYouTubeへの違法アップロードで逮捕された例もあります。
  • 2010年6月には『週刊少年ジャンプ』の中身をデジカメで撮影して投稿した男子中学生が逮捕されました。
  • 2011年5月には、アイドルグループ「嵐」のDVD映像やバラエティー番組をYouTube上に公開した男性が逮捕されました。
では、 いったいどの程度のものであれば、警察が動き出すのでしょうか。

逮捕されるのは、かなり悪質なケースと言われています。何度も削除されたのにしつこくアップを続けたり、コンテンツの発売以前に内容を公開していれば、著作権者としても放置できませんし、警察も動かざるをえなくなります。

視聴者側について

2012年10月1日から改正著作権法が施行されました。違法にアップロードされた著作物と知りながらダウンロードすることは、従来から違法とされてきました。しかし、これまでは罰則がないため事実上、野放し状態でした。そこで、法改正により、有償の音楽や動画を違法な配信と知りながらインターネットからダウンロードする行為に2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されることになりました。

違法動画の閲覧は、ダウンロードではないから、「本当に観るだけ」なら、刑罰を科されることはありません。  しかし、自分では「単なる閲覧」と思っている行為が、実態はダウンロードだったとしたらどうでしょうか。

一般に動画サイトの動画は、主にダウンロードとストリーミングの方式があります。ダウンロードは、動画ファイルそのものをハードディスク上にコピーし、後でこれを再生する方法です。  一方、ストリーミングは、動画ファイル自体を入手するわけではなく、サーバーから流れてくるデータをいったんメモリー上に置き、その場で次々に再生し、再生が終わったデータはメモリーから削除される方式です。  後者なら、複製ではないし、ファイルをもらうわけではないので、「本当に観るだけ」といえます。

しかし、最近はダウンロードとストリーミングの良さを組み合わせたプログレッシブ・ダウンロードという技術があります。見かけ上はストリーミングですが、実際にはファイルを裏側でハードディスク上にダウンロードして、複製したファイルを再生しているにすぎません。そのため、「疑似ストリーミング」とも呼ばれています。要は実質的な「ダウンロード」なのです。

実はYouTubeやニコニコ動画は、このプログレッシブ・ダウンロードに当たり、「観るだけ」のつもりがダウンロードになっています。 YouTubeを利用すると、パソコン内のある場所に、視聴した動画ファイルがキャッシュ(一時記録)ファイルという形で保存されます。

これに関して文化庁は、YouTubeでの違法動画の閲覧に伴って手元のパソコンに作成されるキャッシュファイルは、「著作権法47条の8という例外規定が適用され、権利侵害にならないと考えられる」としています。

しかし、文化庁の解釈は裁判所で否定されたこともあり、文化庁が言っているから大丈夫というわけではありません。技術を詳細に検討した結果、裁判所が適用を否定するという可能性があります。

しかも、この例外規定には、あくまでもネット経由で送信されたデータを受信して観る場合という但し書きがあります。  この但し書きは、同じ動画をもう1度再生するときに問題となります。2度目の再生では、YouTubeのサーバーから再度データが流れてくるのではなく、手元のキャッシュファイルが再生されます。これはまさにダウンロード済みのファイルを再生していることになり、例外規定は適用されず、違法になりかねないのです。

本当にプログレッシブ・ダウンロードが対象外ならば、きちんと著作権法に反映させるべきだったのですが、現状は曖昧で場当たり的な規定になっています。  このような曖昧な規定は、警察によって恣意的に運用される可能性もあります。

違法アップロードさえ逮捕例が少ない現状では、視聴によって逮捕されるリスクは低いでしょう。ただ、著作権侵害が横行する状態が続けば、見せしめ的に逮捕 が行われる可能性もあります。例えば違法アップロードを発見して、プロバイダに資料を提出させ、ダウンロードした者を割り出す。その中に“めぼしい人物”がいたら捜索・差し押さえするようなケースです。めぼしい人物とは、有名人、一流企業の社員など見せしめ効果のある人間ということになります。心当たりのある方は、注意するに越したことはないでしょう。 著作権への高い意識を持つことが求められます。



2013年10月13日日曜日

善管注意義務

東電や勝俣前会長に法的な責任はあるのでしょうか。

原子力損害の賠償に関する法律第三条によると、原子力事業者は原子力損害に対して無過失責任を負うことになっています。しかし、但し書きに「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない」と免責規定があります。

今回の震災が「異常に巨大な天災地変」にあたれば東電に賠償の責任はないことになります。もっとも、これは議論のありうるところで、全電源喪失は予見可能だったから、異常に巨大な天災地変とはいえないという見解もあります。

また、勝俣前会長を含めた現・旧役員27人は、善管注意義務等に違反して損害を生じさせたとして、計約5兆5000億円の賠償を求める株主代表訴訟を起こされました。善管注意義務とは、善良な管理者が負う注意義務のことです。業務を委任された人は、通常人が期待する程度の注意を払い、考えられるリスクに対して対策する義務を負います(民法644条)。

2013年10月12日土曜日

健康診断と法律

面倒でもサボッてはいけない

健康診断は、労働者の権利ではなく義務です。 事業者は労働者に対して、年1回、定期的に、医師による健康診断を行う義務を負います。ただ、義務が課せられているのは事業者だけではありません。労働者も、健康診断を受ける義務を負っています。自分の好きな病院で受診することも可能だが、その場合も結果を事業者に書面で提出する必要があります。違反しても罰則はないが、だからといって受診しなくていいことにはならないのです。

行政通達によると、健康診断の費用は会社が負担すべきだとされています。ただし、健康診断を行っている時間は、必ずしも法的に有給とする義務はありません。たとえば健康診断に半日かかったら、会社は半休扱いにしたり、その時間の賃金をカットしてもいいのです。

一般的な健康診断について、会社に健康診断時の賃金を支払う義務が課されていないのも、健康診断に関して労使双方が義務を負っているからです。また、会社で働いていようといまいと、人であれば自らの健康管理というものについては、普通に行われてしかるべきである、と考えることもできます。

健康診断を受けないと、相応のリスクもあります。過労で倒れるなどの業務災害に見舞われた場合、一般的には労災保険給付の申請をしたり、会社側に損害賠償請求を行うことになります。しかし法に定められた健康診断を受けていないと、過失相殺されて労働者側に不利に働くケースもあるのです。

一方、会社側のリスクはどうでしょうか。常時50人以上の労働者を使用している事業者は、労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務があります。実施報告書の人数と、実際に受診すべき人数が合わない場合、労基署から勧告や指導が入る可能性もあります。

また、社員に健康診断を受けさせる義務を果たしていないとみなされると、事業者は50万円以下の罰金に処されるのです。

どこから法令違反になるのかはケースバイケースですが、1回、スケジュール調整をして、あとは知らん顔という程度では、義務を果たしたとは認められにくいでしょう。社員がすっぽかしたら、少なくとも何回かは調整が必要です。そうした事業者としての義務を果たそうとした努力の経緯を労基署に説明できないと、違反とされるおそれがあります。

こうしたリスクを考えると、健康診断を渋る社員にも、何とか受診させたいところです。そのためには所定時間内で会社が賃金を負担するなど、社員が受診しやすい環境を整えることが第一でしょう。

就業規則に「社員は健康の維持に努め、会社の指定する医師の診断を受けなければならない。」と明記してもよいでしょう。就業規則に定めがあれば、それを根拠として社員に働きかけることが可能です。健康診断の受診拒否を理由として処分できるとしても、処分の程度は比較的低いものと考えるのが一般的ですが、十分に効果があるはずです。


検査項目を断れるのか?
 
年に1回、会社で受ける健康診断は、会社が費用を負担してくれるものです。タダで健康管理ができて、ありがたいことですが、なかには体重やメンタルヘルスの結果など、人に知られたくない項目もありますよね。断れる検査はないのでしょうか。

法律によれば、事業者は労働者に対して医師による健康診断を行う義務を負っています(労働安全衛生法第66条1項)。そうして法律は快適な職場環境を確保し、経済活動を下支えしています。違反した企業は労働犯罪として処罰の対象(最高で50万円の罰金)になる可能性すらあります。

ただ、義務を負うのは会社側だけではありません。労働者側にも事業者が行う健康診断を受ける義務があります(同条5項)。

健康診断には、法律で必須とされている項目と、そうでない項目があります。必須項目については、当然ながら受診拒否はできません。必須でない項目についても、会社側の安全配慮義務や労働者側の健康保持義務の観点から、診断を受けさせる義務・受ける義務がある程度認められています。しかし、仕事に関係がないものや就業規則に書かれていないものはグレーゾーンで、拒否できる余地があります。

たとえばメンタルヘルスは法定外の項目です。法律では時間外労働が月80時間を超えた人にカウンセリングを受けさせるよう決まっていますが、そうでない人にまで定期健康診断で精神科の面接を受けさせるのはやりすぎで、拒否できる可能性は十分にあります。

一方、必須項目である体重については測定を拒否できず、会社に内緒にしておくこともできません。「体重は個人情報だから教えたくない」という理屈も通らないのです。個人情報保護法では、会社が個人情報を取得する場合には従業員の同意が必要とされています。しかし、他の法律で定めがあるときは適用外です。体重については労働安全衛生法に定められているので、個人情報保護法を盾に取ることはできません。

もっとも、健康診断実施の事務に従事した人がそこで知りえた秘密を漏らす行為は法律違反となります(労安法104条)。必要があれば直属の上司に通知されるケースもありますが、必要もないのに健康診断の結果を社内に広めることは許されません。秘密を洩らした人は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金で、会社も刑事罰を受けることになります。

見落としの責任は問えるか

診断を受ける側にとっては、無料であるため、その重要性が見落とされがちですが、健康診断を通じて、ガンなど重大な病気の発見につながることもあります。

しかし、大企業の定期健診を担当している医師の中には、診断が不十分な場合もあります。

従業員が多い企業の健康診断では、担当医が一度に大量の診断を余儀なくされます。定期健診の対象となる従業員の頭数が増えるほど、担当医の実入りはよくなります。

一方、従業員ひとりにかける時間や集中力が減殺され、問題ある症状を見落としかねません。ガンなどの早期発見を逸する危険も高まります。 殊に肺ガンの兆候を見極めるレントゲン読影では、病巣の影と、それ以外の影(鎖骨や昔かかった結核の痕など)との区別をしづらい場合があるそうです。 そこで、その人の過去のレントゲン写真と見比べ、変化を読み取る『比較読影』が重要となります。にもかかわらず、一度撮影したレントゲン写真を倉庫へしまい込んだまま比較を怠る、おざなりな健康診断も横行しています。

では、医師は定期健診の診断結果に対してどの程度責任を負うのでしょうか。

ガンなどを含めて病気の兆候を見落とされた場合は医療ミスとして医師の責任を問うことができます。多額の損害賠償や慰謝料を患者側が請求できる医療ミスとしては、手術や投薬の間違いなど。加えて、健康診断のように保健福祉的な領域でも、その落ち度に関して法的な責任を問える場面があります。

たとえば、健診の後に、ガンなど重大な病気にかかり、大手術を受けて命は助かった場合を考えてみましょう。

仮に健診が真っ当に行われていれば、ガンを早期発見でき、小さな手術で済んだはずであることが証明できたのなら、その差額や精神的苦痛を損害賠償として請求できます。

しかし、たとえば不幸にして亡くなってしまった場合、遺族が損害賠償を請求しても、症状の進行が早い肺ガンなどの疾病では、「仮に見落としがなかったとしても、手遅れでいずれ亡くなっていたでしょう」と判断されることもあり得ます。その場合は見落としと死亡の間に因果関係がなくなるため、死亡についての法的責任は問えません。

このように、実際に損害賠償が認められるかどうかは、個別のケースによるということになります。

医療訴訟は専門的で敷居の高い分野です。健診のミスを指摘するには、別の医師による証言が必要ですが、まるで同業者を売るかのような証言には多くの医師が躊躇することもあり、協力を得るのは簡単ではありません。このような医療事故に遭った場合は、医療裁判に関する経験や人脈が豊富な弁護士を頼るべきでしょう。