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2015年1月2日金曜日

プロバイダ責任制限法 著作権関係ガイドライン

 著作権関係ガイドラインは、特定電気通信(法2条1号) による著作権及び著作隣接権(「著作権等」)を侵害する情報の流通に関し て、プロバイダ等が責任を負わない場合を定めるプロバイダ責任制限法3条の趣旨を踏 まえ、情報発信者、著作権者等、プロバイダ等のそれぞれが置かれた立場等を考慮しつ つ、著作権者等及びプロバイダ等の行動基準を明確化するものである。

 これにより、関係者の予見可能性を高め、特定電気通信による著作権等を侵害する情報の流通に対する プロバイダ等による迅速かつ適切な対応を促進し、もってインターネットの円滑かつ健 全な利用を促進することを目的とするものである。

著作権関係のガイドラインの目的


特定電気通信を侵害する情報の流通に関して、プロバイダ等が責任を負わない場合を定めるプロバイダ責任制限法3条の趣旨を踏まえ、情報発信者、著作権者等プロバイダ等のそれぞれが置かれた立場等を考慮しつつ、著作権者等及びプロバイダ等の行動基準を明確化するものである。これにより、関係者の予見可能性を高め、特定電気通信による著作権等を侵害する情報の流通に対するプロバイダ等による迅速かつ適切な対応を促進し、もってインターネットの円滑かつ適切な対応を促進し、もってインターネットの円滑かつ健全な利用を促進することを目的とするものである。
プロバイダ等が発信者に連絡をして7日間経っても反論がない場合(法3条2項2号)でなくとも、速やかに削除等の送信防止措置を講ずることが可能な場合を現段階で可能な範囲で明らかにする。

ガイドラインの位置付け


 本ガイドラインは、プロバイダ等が責任を負わずにできると考えられる対応を可能な範囲で明らかにしたものであってプロバイダ等の義務を定めたものではない。

 その情報の流通によって本当に権利侵害があったか否か、さらに、情報を誤って削除 し、又は放置したことによってプロバイダ等が責任を負うか否かは、最終的には裁判所 によって決定されるものである。したがって、個々の事案において、作成されたガイド ラインに即した対応が行われたとしても、それのみで裁判所によっても法3条の「相当の理由」があると判断されるものではなく、ガイドラインの内容及びその作成手続にその信頼性を担保する根拠があり、著作権者等及びプロバイダ等が当該信頼性の高いガイ ドラインに従って適切に対応している場合において、はじめて裁判所によっても法3条 の「相当の理由」があると判断され、プロバイダ等が責任を負わないとされるものと期 待される。

 なお、ガイドラインに定めがなく、又はガイドラインの定める要件を満たさない場合であっても、プロバイダ責任制限法3条の「相当の理由」に核当する場合もありうるものである。


ガイドラインの適用範囲


申出の主体

送信防止措置の申し出をする者は、著作権等を侵害されたとする者本人及び弁護士等の代理人とする。

対象とする著作権等侵害の範囲

特定電気通信による情報の流通により著作権等が侵害される場合を対象とする。

対象とする著作物等の範囲

著作権等が侵害されている著作物、実演、レコード、放送及び有線放送及び侵害されている可能性がある著作物等を対象とする。

対象とする権利侵害の態様

(1)    著作権等侵害であることが容易に判断できる態様
著作権等侵害であることを自認しているもの
全部又は一部を丸写ししたファイル
標準的な圧縮方式により圧縮したもの
(2)    一定の技術を利用すること、個別に視聴等して著作物等と比較すること等の手間をかけることにより、著作権侵害であることが判断できる態様


参考

2015年1月1日木曜日

電子掲示板や投稿サイトの運営・管理者の法的義務とプロバイダ責任制限法 


制定の背景


 掲示板に他人の権利を侵害する書き込みがあるにもかかわらずこれを放置した場合,掲示板運営者は、損害賠償請求を受けることがある。

 インターネット上でサービスを提供する事業者は,(1)自らがコンテンツを提供する「コンテンツ・プロバイダ」と,(2)自分は情報を発信せず,情報発信者と受信者を媒介する「アクセス・プロバイダ」に分類できる。電子掲示板の運営者は一般に,(2)のアクセス・プロバイダに当たる。

 コンテンツ・プロバイダが,違法な情報や他人の権利を侵害する情報の発信について責任を負うのは当然である。ここで言う他人の権利には,以下のものがある。

  • 名誉権
  • プライバシー
  • 氏名権、肖像権
  • パブリシティ権
  • 著作権
  • 商標権
  • 意匠権
  • 営業秘密
  • 特許権

 しかし,アクセス・プロバイダは情報発信者ではない。このため,情報の内容までは法的責任を負わないのが原則である。この原則は,ニフティサーブ事件判決でも確認されている(東京高等裁判所2001年9月5日判決,判例タイムズ1088号94頁)。  

 ニフティサーブ事件は,掲示板で誹謗中傷を受けた女性が書き込みを行った大学講師を名誉毀損で訴えたもので,裁判所は大学講師に対しては損害賠償を命じたが,掲示板の運営者であるニフティには損害賠償義務はないと判断した。   

 とはいえ,掲示板に他人の権利を侵害する書き込みがあることを知りながら,運営者であるアクセス・プロバイダが削除せずに放置すると,「故意または過失により他人の権利を侵害した」として民法上の「不法行為責任」を負うことになる(動物病院事件(東京地方裁判所2002年6月26日判決,判例タイムズ1110号92頁))。

 一方で,不法行為責任を負うのを避けるために,アクセス・プロバイダが安易に書き込みを削除すると,今度は「表現の自由を侵害した」,「サービス契約に違反した」といった理由で,発言者側から訴えられる恐れがある。いわば、アクセス・プロバイダは、板挟み状態になる。

 このように、インターネット上の情報流通によって他人の権利が侵害されたとされる場合には、情報発信者、権利者、特定電気通信役務提供者(サーバの管理・運営者や電子掲示板の管理・運営者等(「プロバイダ等」))の三者の利害関係が絡むため、時として、その情報流通に対するプロバイダ等の対応には困難な場合がある。

 このような中で、平成13年11月にプロバイダ等の民事上の責任を制限する規定を有する特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号。以下、「プロバイダ責任制限法」又は単に「法」という。)が成立した。

法律の趣旨


この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。

・①損害賠償責任の制限、②発信者情報の開示、の2点を規定
・特定個人の民事上の権利侵害があった場合を対象

法律の対象


特定電気通信

不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)

・インターネットでのウェブページや電子掲示板などの不特定の者により受信されるものが対象
・ただし、放送に当たるものは、放送法等での規律があるため、対象外


特定電気通信役務提供者


特定電気通信設備(特定電気通信の用に供される電気通信設備)を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者

・プロバイダ、サーバの管理・運営者等が対象
・典型的には電気通信事業者に当たるプロバイダが対象になるが、営利の者に限定していないため、電気通信事業者以外の者も対象となる


 法律では,アクセス・プロバイダのことを「特定電気通信役務提供者」と呼んでいるが,その範囲は広い。企業か個人かは問わないし,営利事業ではなく非営利で掲示板を運営している場合も,特定電気通信役務提供者とみなされる。

削除の条件


 プロバイダー責任制限法は,被害者から削除要求があったことを発言者に通知し,7日以内に発言者が異議を唱えなければ,プロバイダが書き込みを削除しても発言者に対して一切の責任を負う必要はない,と定めている。これにより,他人の権利を侵害する書き込みを削除しやすくなった。

 また,被害者に対して損害賠償などの責任を負う条件も,「書き込みが権利を侵害していることを知ることができ,かつ削除が技術的に可能であるのに削除しなかった場合に限られる」と,明確に規定した(第3条)。

発言者情報開示の条件


 掲示板の書き込みは通常,匿名で行われることが多い。このため,権利を侵害された被害者が発信者に対して損害賠償を請求する際には,発信者の住所・氏名をプロバイダに開示してもらう必要がある。

 しかしプロバイダが発言者情報を開示すると,発信者の側からプライバシや「表現の自由」,「通信の秘密」を侵害したと抗議され,場合によっては法的責任を追及されることも起きてしまう。

 そこで,プロバイダー責任制限法は,プロバイダが発言者情報を開示する条件も明確にした。書き込みによって権利を侵害されたことが明らかであり,発言者情報の開示を受ける正当な理由があるときに限り,被害者が発信者情報の開示を請求できる,としたのである。ただし,プロバイダが判断に迷って開示を拒否したとしても,重大な過失がない限り,損害賠償の責任を負わないと定めている(第4条)。

 プロバイダー責任制限法により,書き込みの削除や発言者情報の開示に関する条件はある程度明確になった。しかし,実際問題として名誉権侵害などの権利侵害の有無の判断は難しいことも多い。


常に免責されるわけではない


 基本的には違法コンテンツであるとの申し出があり,プロバイダ等がそれに従って削除すれば,著作権者側からの損害賠償責任を免れることが可能な場合が多い,と考えられる。ただし,全く問題がないわけではない。

 この点参考となるのが,「ファイルローグ事件判決」である。ファイルローグ事件は,P2P(ピアツーピア)技術を利用した音楽ファイル交換サービスを提供していた会社に対して,著作権侵害が問われた事件である。この事件の場合,ユーザー同士はファイルをやり取りするためにP2P技術を利用しており,サービス提供会社が音楽情報ファイルを直接送信していたわけではない。したがって,形式的にみれば,サービス提供会社は公衆送信などを行った主体(当事者)とは言えない。

 しかし、同判決は,サービスで交換されていたファイルの大部分が市販CDなどを複製したものであることなどを理由に,サービス提供会社も著作権等の侵害主体になると判断した。P2Pのサービス提供会社が著作権侵害主体となり得るのであれば,プロバイダ責任制限法の適用がありそうにも思える。しかし,結論としてはプロバイダ責任制限法による免責は受けられない,と判断した。

 プロバイダ責任制限法には免責されない例外的な場合がある(3条1項)。サービス提供者自身が権利侵害情報(違法コンテンツ)の「発信者」となる場合には免責が受けられない,と定めている

 動画/画像の共有配信サービスで考えれば,通常は動画を配信サーバーに投稿するユーザーが典型的な「発信者」である。

 ところが,ファイルローグ事件では,運営会社自身も違法複製ファイルを流通過程におくことに積極的にかかわっており「発信者」に該当する,したがって、プロバイダ責任制限法の適用対象外であると判断した。

 ファイルローグの事案は,P2Pのファイル交換システムが対象となっているので,動画共有配信事業とは事案は異なる。しかし、P2Pファイル交換システムの提供者は動画共有配信事業者よりもコンテンツのコントロール,管理の度合いが間接的であるにもかかわらず,著作権侵害の主体であると判断されている。したがって、より管理が容易であると思われる動画共有配信事業者の方が「侵害主体」であると判断される可能性は高いと言える

 動画共有配信事業者がプロバイダ責任制限法の「発信者」であるかどうかを判断する枠組みは,P2Pであるかどうかとは直接の関係はない。あくまでも,「実態」がどうなっているのかが重視される。

 したがって、サービス実態(違法なコンテンツがほとんどの場合等)によっては,動画共有配信事業者がプロバイダ責任制限法の適用を受けられないで「違法である」と判断される余地は残る。

参考

2014年11月21日金曜日

「忘れられる権利」欧州司法裁判所判決




2014年5月13日欧州連合(EU)の最高裁判所である欧州司法裁判所(ECJ)が下した「忘れられる権利」についての判決をきっかけに、日本でも「忘れられる権利」への関心が日々高まっている。

欧州司法裁判所判決の事案

 スペインの弁護士ゴンザレス氏は、2010年スペインの 情報保護局(AEPD)に、① スペインの新聞ラ・ヴァングァルディアの1998年度の記事がリンクされている検索結果を表示したグーグル・インクとグーグル・スペイン(以下、「グーグル」)に対しては、上記の記事を検索結果から削除するか遮断する措置を、② ラ・ヴァングァルディアに対しては、上記の記事を削除する措置を取らせるよう求めた。グーグル検索サービスでゴンザレス氏の名前を検索すると、ゴンザレス氏所有の不動産の公売に関する裁判所の判決内容が記載された上記1998年の新聞記事が表示され、 上記の記事にはゴンザレス氏の負債に関する詳細が記載されていた。
 これを受け、AEPDは、グーグルに対して関連リンクの削除を命じる決定を下したが(新聞社に対しては表現の自由などを理由に要請を棄却した。) 、グーグルがこれに対して異議を申立てスペイン高等裁判所に提訴し、同裁判所がEUの1995年データ保護準則(Directive 95/46/EC)がインターネット検索エンジンに適用されるかどうかなどに対する解釈を欧州司法裁判所に求めたところ、この答えとして出されたのが今回の判決である。

欧州司法裁判所判決の骨子

 判決の骨子は、① 会社のデータ処理サーバーが欧州外にあっても、検索エンジンの運営者がEU域内に支店や支社を置いているのであれば、EU準則は当該会社に適用され、② 検索エンジンの運営者は個人情報の処理者(controller)であるため、EU準則の責任から逃れることができず(検索エンジンが情報をインデクシング(indexing)して一時保存し、優先順位によってユーザーに提供するのは個人情報の「処理(processing)」であり、検索エンジンの運営者は「処理者(controller)」に当る。)、③ 個人は、ウェブページそのものの削除の如何とは無関係に、自分の名前で検索して表示された検索結果に対して直接検索エンジンにそのリンクの削除を求める権利を持つ、という内容である。
 加えて、欧州司法裁判所は、忘れられる権利が無限定に認められる権利ではなく、当該個人情報がデータの処理目的に対して不正確(inaccurate)、不適切(inadequate)、無関係であるか(irrelevant)、あるいは過度(excessive)な場合に適用されるものであり、事案によって表現の自由や他の基本権、公人としての役割などとバランスをとる必要があることを明確に判示した。
 これまで忘れられる権利の認定の如何とその範囲に対して多くの論争があったが、この判決は従来の個人情報の法理に基づき、検索エンジンの運営者に対するリンク削除権としての「忘れられる権利」を認めたことにその意味がある。

2014年9月18日木曜日

グーグル検索の逮捕記事表示について、原告男性の請求棄却

 検索サイト「グーグル」で自分の名前を検索すると過去の逮捕記事が表示され、名誉を傷付けられたとして京都市の40代の男性が「グーグル」の日本法人に対し、検索結果の表示中止と慰謝料など約1100万円を求めた訴訟の判決が17日、京都地裁でありました。
 京都地裁は、日本法人に表示阻止義務はないとして、名誉毀損に当たるかどうかは判断せず、男性の請求を棄却しました。
 今回の判決で、京都地裁は「サイトを管理、運営するのは(親会社で米国法人の)グーグルインク」と指摘し、「被告側に表示阻止義務を生じさせる法律上の根拠は認められない」と結論付けたそうです。

2014年8月14日木曜日

京都地裁判決

京都地裁判決の要旨(2014年8月7日)

 原告 X

 被告 ヤフー株式会社

 主文

 1 原告の請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 事実及び理由

第1 請求

 1 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する平成25年5月1日(不法行為の日の後の日)から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え

 2  被告は、被告の運営するインターネット上のウェブサイト「Yahoo! JAPAN」において、原告が逮捕された旨の事実を表示してはならない。

 3 被害は、被害の運営するインターネット上のウェブサイト「Yahoo! JAPAN」において、原告が逮捕された旨の事実が記載されているウェブサイトヘのリンクを表示してはならない。

第2 事案の概要

 本件は、原告が、インターネット上で検索サービス等を提供するウェブサイト「Yahoo! JAPAN」(以下「本件サイト」という)を運営する被告に対し、本件サイトで原告の氏名を検索語として検索を行うと、原告の逮捕に関する事実が表示されるところ、これにより原告の名誉毀損(きそん)及びプライバシー侵害が行われているとして、不法行為に基づき、損害賠償金1100万円及びこれに対する年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、人格権に基づき、本件サイトにおける、原告が逮捕された旨の事実の表示及び同事実が記載されているウェブサイトヘのリンク)の表示の各差し止めを求める事案である。

 1 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)

 (1)当事者等

 ア 原告

 原告は、40代の男性であり、平成24年11月にサンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したとして、同年12月に京都府迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕され、その後、同条例違反につき平成25年4月に執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 イ 被告

 被告は、情報処理サービス業及び情報提供サービス業等を目的とする株式会社であり、本件サイトを運営している。

 (2)本件サイト及び検索サービスの概要

 ア 本件サイトにおいては、利用者が単語等を入力すると、それに関連する検索結果が表示されるというインターネット上での検索サービスが提供されている。

 上記検索結果は、(1)検索ワードをその記載内容に含むウェブサイトヘのリンク、(2)スニペットと呼ばれる、リンク先サイトの記載内容の一部が自動的かつ機械的に抜粋されたもの、(3)リンク先サイトのURLのセットが羅列された一覧形式で表示される。

 イ 本件検索サービスにおいては、所定のプログラムに従ってウェブサイトを検索するというロボット型全文検索エンジンが採用されており、自動的かつ機械的にインターネット上の無数のウェブサイトの情報が収集され、利用者が本件サイトで検索ワードを入力すると、上記収集情報の中から抽出された検索ワードに関連する検索結果が表示されるという形でサービスが提供されている。

 (3)原告に関する検索結果

 本件検索サービスを利用し、検索ワードとして原告の氏名を入力すると、その検索結果として、原告の氏名が記載されたウェブサイトヘのリンクとスニペット、当該サイトのURLとがセットになったものが複数表示される。その中には、本件逮捕事実が記載されたウェブサイトへのリンク、スニペット及びURLが複数含まれており、スニペットのみで本件逮捕事実を認識し得るものも複数存在する。

 2 争点及び争点に関する当事者の主張

 (1)本件検索結果の表示は原告の名誉を毀損するものとして、被告に不法行為が成立するか(争点1)

(原告の主張)

 本件検索結果の表示は、原告の社会的評価を低下させるものとしてその名誉を毀損するものであり、原告が無名の一私人であること、本件逮捕事実に係る犯罪が軽微なものであること、原告が同事実により既に執行猶予判決を受けていることなどからすると、違法性が阻却されることもない。その具体的理由は以下のアないしウのとおりである。

 ア 本件検索結果の表示による事実の摘示

 本件検索サービスによる検索結果は、(1)被告が、ニュースまとめサイト等のサーバーに保存されている情報を被告のサーバーに複写・保存する、(2)本件検索サービスの利用者が本件サイトで検索ワードを入力すると、被告は、捜索ワードにふさわしい情報を被告のサーバーに保存された情報の中から検索して、該当情報の一部を利用者のパソコンに送信する(その送信された情報が利用者のパソコンに表示される)という過程を経て表示されているところ、上記(1)、(2)は被告の行為そのものである。リンクについては、利用者が該当惰報の内容の全部を認識するにはクリックという行為が介在することになるが、かかる形式論でリンクの表示につき被告の行為性が否定されるものではない。

 したがって、被告がリンク及びスニペットを表示する行為は、単にリンク先サイトの存在及び所在を示すものではなく、事実の摘示そのものであるといえる。

 そして、本件検索結果の表示のうちスニペット部分には正に本件逮捕事実が摘示されているし、リンク部分もクリック一つでリンク先サイトに記載されている本件逮捕事実が目に触れられるようにしていることからすると、社会通念上、本件逮捕事実を摘示したものと評価できる。

 被告は、本件検索結果の表示は被告の意思が何ら介在しないから、表現行為に該当しない主張するが、本件検索結果の表示は被告が採用している検索エンジンによって行われているのであるから、被告の意思に基づくものであるといえる。そもそも、名誉毀損が成立するには、単に特定人の社会的評価を低下させる「事実の摘示」で足りるのであり、「意思内容の反映」、「表現」である必要はない。

 イ リンク先サイトの存在について

 リンク先サイトの存在によって、被告の行為が免責されることはない。リンク先サイトにおいて本件逮捕事実に関する情報が表示された時点では名誉毀損が成立しなかったとしても、これとは別の時点で、別の方法で本件逮捕事実を表示する行為については、独自に当該表示行為そのものについても名誉毀損の成否が検討されるべきである。

 ウ 違法性阻却について

 同種被害の防止の観点から犯行に対する注意を喚起する社会的必要性が高いとしても、軽微な犯罪について、執行猶予判決の言い渡し時以降においてまで犯人の実名を公衆に認知させる必要はないから、原告の実名を含む本件逮捕事実は公共の利害に関する事実とはいえない。

 また、本件検索結果の表示に係る被告の行為は、自動的かつ機械的になされているというのであるから、一片の公益目的も認められない。

 したがって、違法性阻却は認められない。

(被告の主張)

 ア 本件検索結果の表示は、本件逮捕事実の記載があるウェブサイトの存在及びURLを示すものにすぎず、本件逮捕事実を摘示しているわけではないから、名誉毀損の要件としての事実の摘示を欠いている。本件検索サービスは、単なる情報へのアクセス手段としての機能を有するにすぎないものであり、被告の意思内容の反映とはいえない。したがって、表現行為とはいえない検索結果の表示によって名誉毀損が成立する余地はない。本件逮捕事実が記載されているリンク先サイト(新聞記事等)につき名誉毀損が成立しないのに、本件検索サービス等の上記記事へのアクセス手段が違法となるというのは、常識にも反する。

 本件検索結果の表示のうちスニペット部分についても、自動的かつ機械的にリンク先サイトの情報を−部抜粋して表示しているにすぎないことに照らすと、被告が表現行為として自らの意思内容を表示したものとはいえないから、事実の摘示には当たらず、名誉毀損となるものではない。

 イ 仮に、本件検索結果の表示が「本件逮捕事実の記載があるウェブサイトの存在及びURL」という事実の摘示(表現行為)に当たると解されたとしても、本件逮捕事実の記載があるウェブサイトがインターネット上に存在するという事実は、真実である。また、現代の人々の生活にとってインターネットからの情報収集が不可欠であり、検索サービスがそのための必須のツールになっていることに照らせば、上記ウェブサイトを含め、あるウェブサイトの存在という事実には公共性があり、かつ、そのような情報を提示する行為に公益目的が認められることは明らかである。

 したがって、本件検索結果の表示については違法性が阻却される。

 ウ インターネット上には無数の言論が存在するところ、あらゆる言論に自由にアクセスできることは表現の自由の根本的要請である。本件検索サービスによる特定の検索結果につき名誉毀損が成立するとなると、被告は、当該検索結果において表示されたリンク先サイトへのアクセス制限を強制されることになるが、これは表現の自由の根幹を揺るがすものといわざるを得ない。

 (2)本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害するものとして、被告に不法行為が成立するか(争点2)

(原告の主張)

 本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害する。その理由については、争点1の主張のとおりである。

(被告の主張)

 原告の主張は争う。

 本件逮捕事実については、その発生からまだわずかな期間しか経過しておらず、みだりに公開されない利益としてのプライバシーの保護の対象となるものではない。また、被告は、本件検索結果の表示により、単に本件逮捕事実の記載があるウェブサイトの存在及び所在(URL)を示しているにすぎず、本件逮捕事実を公表しているものではないから、プライバシー侵害は生じ得ない。

 仮に、プライバシー侵害の問題が生じ得るとしても、上記ウェブサイトの存在及びURLという情報には公共性があり、かつ、そのような情報を提示する検索結果の表示という行為の目的及び方法に相当性が認められることは明らかであるから、違法性はない。

 (3)損害及び因果関係(争点3)

(原告の主張)

 ア 原告は、本件逮捕事実により勤務先を懲戒解雇となった後、平成25年4月に執行猶予判決を受け、心機一転して再就職のための活動をしようと考えていた。ところが、本件サイトで原告の氏名を検索すると、検索結果として、原告が逮捕された旨の記事が多数表示されたことから、企業等の採用担当者がインターネットで原告の氏名を検索すると本件逮捕事実を知ることになり、原告を採用することはないであろうと、将来を絶望するに至った。潜在顧客が原告の氏名を検索することを考えると、個人事業を営む道も絶たれたといえる。これらに限らず、原告が名乗った相手がインターネットで原告の氏名を検索することで、本件逮捕事実を知られるのではないかとの不安から、原告は通常の社会生活を送ることができない状態である。

 以上のことからすると、被告の名誉毀損行為及びプライバシー侵害行為によって原告が被った精神的損害は、1000万円を下回ることはない。また、弁護士費用としては100万円が相当である。

 イ 一般公衆は、インターネット上に多数存在する本件逮捕事実に関するウェブサイトの存在も所在も知らないのであり、被告の本件検索サービスによって初めて、本件逮捕事実に関するウェブサイトを目にし、そのため、原告に多大な精神的損害が生じるのであるから、被告の行為と原告の精神的損害との間の因果関係は明白である。

 また、被告以外の他社の検索サービスがあるからといって、上記因果関係が否定されるものではない。

(被告の主張)

 原告が主張する損害については立証がなされていない。

 また、仮に本件検索結果の表示がされなかったとしても、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトはこれが削除されるまで存在し続け、誰でも閲覧できる状態にあるし、被告以外の他社の検索サービスも存在するのであるから、本件検索結果の表示と原告が主張する損害との間には相当因果関係が認められない。

(4)本件差止請求の可否(争点4)

(原告の主張)

 平成26年5月に、欧州連合司法裁判所において、検索サービス最大手の会社に対し、他人に知られたくない情報が掲載されているサイトへのリンクを削除することを命じる判決が言い渡された。

 本件においても、憲法上の幸福追求横に由来する個人の名誉、プライバシー保護の観点から、本件差し止め請求が認められるべきである。

(被告の主張)

 争う。

当裁判所の判断

 1 争点1(本件検索結果の表示は原告の名誉を毀損するものとして、被告に不法行為が成立するか)について

 (1)本件検索結果の表示による事実の摘示

 ア 前提事実のとおり、本件検索サービスの仕組みは、被告が構築したものであるから、これによる検索結果の表示は、被告の意思に基づくものというべきであるが、本件検索サービスの目的(リンク先サイトの存在及びURLを利用者に知らせること)や、表示される検索結果が基本的には、被告が左右することのできない複数の条件(利用者が入力する検索ワードの内容、リンク先サイトの存在及びその記載内容等)の組み合わせによって自動的かつ機械的に定まること等にかんがみれば、被告が検索結果の表示によって本件検索サービスの利用者に摘示する事実とは、リンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部(スニペットとして表示される、当該サイトの記載内容のうち検索ワードを含む部分)という事実に止まるものと認めるのが相当であり、本件検索サービスの一般的な利用者の通常の認識にも合致するといえる。

 前提事実のとおり、本件検索結果の表示は、原告の氏名を検索ワードとして本件検索サービスにより検索を行った結果の一部であり、ロボット型全文検索エンジンによって自動的かつ機械的に抽出された、原告の氏名の記載のある複数のウェブサイトヘのリンク、スニペット(本件逮捕事実が記載されたもの)及びURLであるから、これによって被告が摘示する事実は、「原告の氏名が記載されているウェブサイトとして、上記の複数のリンク先サイトが存在していること」及び「その所在(URL)」並びに「上記の複数のウエブサイト中の原告の氏名を含む部分の記載内容」という事実であると認めるのが相当であり、本件検索サービスの一般的な利用者の通常の認識にも合致するといえる。

 イ 原告は、本件検索結果の表示は正に本件逮捕事実の摘示である旨主張する。

 しかし、上記判示のとおり、本件検索結果の表示のうちリンク部分は、リンク先サイトの存在を示すものにすぎず、本件検索サービスの利用者がリンク部分をクリックすることでリンク先サイトを開くことができるからといって、被告自身がリンク先サイトに記載されている本件逮捕事実を摘示したものとみることはできない。また、スニペット部分に本件逮捕事実を認識できる記載があるとしても、スニペット部分は、利用者の検索の便宜を図るため、リンク先サイトの記載内容のうち検索ワードを含む部分を自動的かつ機械的に抜粋して表示するものであることからすれば、被告がスニペット部分の表示によって当該部分に認識されている事実自体の摘示を行っていると認めるのは相当ではなく、本件検索サービスのー股的な利用者の通常の認識とも合致しないというべきである。本件逮捕事実も、検索ワード(原告の氏名)を含んでいたことから検索ワードに付随して、無数のウェブサイトの情報の中から抽出され、スニペット部分に表示されたにすぎないのであるから、被告がスニペット部分の表示によって本件逮捕事実を自ら摘示したとみることはできないというべきである。

 ウ 以上のとおり、被告が本件検索結果の表示によって摘示する事実は、検索ワードである原告の氏名が含まれている複数のウェブサイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実であって、被告がスニペット部分の表示に含まれている本件逮捕事実自体を摘示しているとはいえないから、これにより被告が原告の名誉を毀損したとの原告の主張は、採用することができない。

 エ したがって、被告が本件検索結果の表示によって原告の名誉を毀損したとはいえないから、被告に原告に対する不法行為が成立するとはいえない。

 もっとも、上記判示のとおり、本件検索結果の表示のうちスニペット部分には本件逮捕事実を認識できる記載が含まれていることから、被告が本件検索結果の表示によって本件逮捕事実を自ら摘示したと解する余地がないではない。

 また、被告が本件検索結果の表示をもってした事実の摘示(検索ワードである原告の氏名を含む本件逮捕事実が記載されている複数のウェブサイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実の摘示)は、本件逮捕事実自体の摘示のように原告の社会的評価の低下に直結するとはいえないものの、そのような記載内容のウェブサイトが存在するということ自体が原告の社会的評価に悪影響を及ぼすという意味合いにおいて、原告の社会的評価を低下させる可能性があり得る。

 そこで、後記(2)においては、仮に、被告に本件検索結果の表示による原告への名誉毀損が成立すると解する場合、その違法性が阻却されるかどうかにつき検討する。

 (2)違法性阻却の可否

 ア 民事上の不法行為たる名誉毀損については、(1)その行為が公共の利害に関する事実に係り、(2)専ら公益を図る目的に出た場合には、(3)摘示された事実が真実であることが証明されたときは、上記行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決)。

 イ 以下、本件検索結果の表示による事実の摘示につき上記ア(1)ないし(3)が認められるかどうかにつき、検討する。

 (ア)(1)について

 本件逮捕事実は、原告が、サンダルに仕掛けた小型カメラで女性を盗撮したという特殊な行為態様の犯罪事実に係るものであり、社会的な関心が高い事柄であるといえること、原告の逮捕からいまだ1年半程度しか経過していないことに照らせば、本件逮捕事実の適示はもちろんのこと、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びに当該サイトの記載内容の一部という事実の摘示についても、公共の利害に関する事実に係る行為であると認められる。

 (イ)(2)について

 前提事実によれば、本件検索結果の表示は、本件検索サービスの利用者が検索ワードとして原告の氏名を入力することにより、自動的かつ機械的に表示されるものであると認められるから、その表示自体には被告の目的というものを観念し難い。

 しかしながら、被告が本件検索サービスを提供する目的には、一般公衆が、本件逮捕事実のような公共の利害に関する事実の情報にアクセスしやすくするという目的が含まれていると認められるから、公益を図る目的が含まれているといえる。本件検索結果の表示は、このような公益を図る目的を含む本件検索サービスの提供の結果であるから、公益を図る目的によるものといえる。

 (ウ)(3)について

 前提事実のとおり、本件逮捕事実は真実である。また、本件検素結果の表示は、本件検索サービスにおいて採用されたロボット型全文検索エンジンが、自動的かつ機械的に収集したインターネット上のウェブサイトの情報に基づき表示されたものであることに照らせぽ、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部は事実であると認められる(なお、リンク先サイトが削除されていたとしても、同サイトが存在していたことについての真実性は認められる)。

 したがって、仮に、被告が本件検索結果の表示をもって本件逮捕事実を摘示していると認められるとしても、または、被告が本件検索結果の表示をもって、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部という事実を摘示したことによって、原告の社会的評価が低下すると認められるとしても、その名誉毀損については、違法性が阻却され、不法行為は成立しないというべきである。

 2 争点2(本件検索結果の表示は原告のプライバシーを侵害するものとして、被告に不法行為が成立するか)について

 (1)被告が本件検索結果の表示によって原告のプライバシーを侵害したかどうかは、本件検索結果の表示によって被告が適示した事実が何であったかにより異なりうるが、仮に本件検索結果の表示による被告の事実の摘示によって原告のプライバシーが侵害されたとしても、(1)摘示されている事実が社会の正当な関心事であり、(2)その摘示内容・摘示方法が不当なものでない場合には、違法性が阻却されると解するのが相当である。

 (2)これを本件についてみるに、争点1における違法性阻却につき判示したのと同様の理由により、本件逮捕事実の摘示はもとより、本件逮捕事実が記載されているリンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部という事実の摘示も、社会の正当な関心事ということができ((1))、その摘示内容・摘示方法も、本件検索サービスによる検索の結果として、リンク先サイトの存在及びURL並びにその記載内容の一部を表示しているにすぎない以上、その摘示内容、摘示方法が不当なものともいえない((2))。

 (3)したがって、本件検索結果の表示による上記事実の摘示に係る原告のプライバシー侵害については、違法性が阻却され、不法行為は成立しない。

 3 争点3(損害及び因果関係)及び争点4(本件差し止め請求の可否)

 本件検索結果の表示による被告の原告に対する名誉毀損及びプライバシーの侵害については、成立しないか、または、その違法性が阻却されるというべきであるから、争点3については判断の必要がない。

 また、上記1及び2で判示したところに照らせば、本件検索結果の表示によって原告の人格権が違法に侵害されているとも認められないから、争点4に係る原告の本件差し止め請求については理由がない。

 4 結論

 よって、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

2014年5月14日水曜日

忘れられる権利

  報道によれば、13日、インターネットに掲載された個人情報の削除を求める、いわゆる「忘れられる権利」を巡って、欧州連合(EU)の最高裁に当たる欧州司法裁判所(ルクセンブルク)が、検索大手グーグルに個人情報削除命令を出したそうです。

 欧州司法裁判所は、ネット検索結果として表示される過去の報道内容に、今も自分の名前が表示されるのは不当だと訴えていたスペイン人男性の訴えを認め、米グーグルに対し男性の個人情報を削除するよう命じる判決を下しました。同裁判所は「検索企業は一定の条件下で、個人名での検索で表示される結果からリンクを削除する義務がある」と指摘しました。

 この裁判では、プライバシー保護を優先するか、表現や情報の自由を優先するかが問われていました。

 原告のスペイン人男性は、1998年の新聞に掲載された自分の債務に関する記事を巡り、2010年に同国の情報保護当局に苦情を申し立てました。債務はすでに完済しているにもかかわらず、グーグルで検索するとこの記事が表示されるのは、情報保護の権利侵害に当たると訴えていました。

 当局は、新聞に対する請求は退ける一方で、グーグルに対しては、原告に関するニュースをこれ以上広める権利はないと判断し、検索結果からリンクを削除するよう命じたのです。
 
 これを不服としてグーグルが上訴し、スペインの高裁を経て欧州司法裁判所に判断が持ち越されていました。 13日の判決では、グーグルのような検索エンジンは情報の「管理者」に当たると認定し、請求があれば望まれないリンクを削除する義務があると判断。 「インターネット検索エンジンの運営者には、第三者によって公開されたウェブページに表示される個人情報の処理に関する責任がある」と指摘しました。

 グーグル社は、これまで情報を削除するかどうかの判断は個々のウェブサイトに委ねられると主張しており、判決に対して遺憾であると表明し、今後の対応について検討するとしています。

 EUは、情報保全に関する規則に個人の「忘れられる権利」を明記する方針で、判決はこれを先取りして認めた形です。これにより、個人は時間が経過し、現状にそぐわなくなった過去の情報の削除を求めることが可能となりました。

  EU域内に効果が及ぶ同裁判所の判断は、この権利を巡る今後の議論にも大きな影響を与えそうです。これにより、グーグルの検索事業は個人からの削除請求にさらされる恐れがあります。

<欧州の個人情報保護>

 個人情報保護に関しては、EUが一番厳しいです。 日本企業が海外進出するといってもアジアやアメリカとEUでは難易度が違います。社員の個人情報に関する規制がまるで違うからです。

 「忘れられる権利」も、そのような状況下で保証された権利です。個人情報保護やプライバシーに敏感な欧州では、忘れられる権利の必要性が活発に議論されています。

<表現の自由>

 この問題にかかっている利害は、欧州司法裁判所のニーロ・ヤースキネン法務官によって、裁判所に事前にはっきりと説明されていました。同氏は、「忘れられる権利」の法制化には「表現と情報の自由といった極めて重要な権利を犠牲にすることが伴う」と述べていました。

  さらに、検索エンジンにこのような義務を負わせることは、パブリッシャーの権利を侵害し、「私的関係者による公開コンテンツの検閲に至る」と付け加えていました。




2014年5月13日火曜日

リベンジポルノ


  報道によれば、元交際相手の女性の裸の画像をインターネットの掲示板に投稿したとして、名誉毀損の罪に問われた男性被告(46)に対し、名古屋地裁(山田亜湖裁判官)は13日までに、懲役10月(求刑懲役1年)の実刑判決を言い渡したそうです。

 山田裁判官は判決理由で「ネットへの画像掲載は回収の見込みが乏しく、被害者の精神的苦痛は大きい」と指摘。「女性が離れていき、警察からストーカー扱いされたことに怒りを募らせて犯行に及んでおり、動機は身勝手」と述べました。

 判決によると、蛭田被告は昨年8月、携帯電話を使って、以前交際していた女性の顔や裸を撮影した画像を実名付きでネット掲示板に投稿。不特定多数の人が閲覧できる状態にし、女性の名誉を傷付けました。

 「リベンジ(復讐)ポルノ」とは、恋人や配偶者への愛情表現として自分の裸などを撮って送った写真が、別れた後で腹いせにインターネットに投稿されるよ うなケースです。近年、社会問題化しています。昨年10月に東京都内で起きたストーカー事件を機に、リベンジポルノの危険性が知られるようになりました。

  こうした写真の送信は10年ほど前から米国で広まりました。リベンジポルノの土壌は日本でも広がりつつあります。スマートフォンの普及で気軽に写真を送れるようになり、若者を中心に被害が広がっているようです。

 ネットに出て困る写真は『撮らない、撮らせない』が大切です。ネット上に載ると消すことはほぼ不可能ですから。



2013年12月11日水曜日

プロバイダー責任制限法

 プロバイダー責任制限法は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」といいます。)の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものです。

 インターネットや携帯電話の掲示板などで誹謗中傷を受けたり、個人情報を掲載されて、個人の権利が侵害されるなどの事案が発生した場合、プロバイダ事業者や掲示板管理者などに対して、これを削除するよう要請しますが、事業者側がこれらを削除したことについて、権利者からの損害賠償の責任を免れるというものです。

 また、権利を侵害する情報を発信した者の、情報の開示請求ができることも規定しています。

 削除要求の方法は、権利を侵害された個人かその代理人(弁護士等)が、書面であれば実印を押印して印鑑証明をつけて、電子メールであれば電子署名をつけて、行うことになります。代理人が行う場合には、委任状の添付が求められます。

 削除要求の様式等については、 (社)テレコムサービス協会(http://www.telesa.or.jp)のホームページに、ガイドラインが示されています。

 プロバイダ責任制限法については、 総務省電気通信消費者相談センター (http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/madoguchi/tushin_madoguchi.html)へ、発信者情報の開示請求については、各プロバイダ事業者へ直接確認してください。

 総務省令によれば、開示請求できる発信者の情報は、
1 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
2 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
3 発信者の電子メールアドレス
4 侵害情報に係るIPアドレス
5 前号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
とされています。

参考

プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト

プロバイダ責任制限法について(警視庁)

2013年11月5日火曜日

メールアドレスの誤送信

パソコンの初心者の方がよく陥るやってはいけないことがあります。 それは、全員のメールアドレスを「宛先欄」(=To:)には入れて送信することです。  これは絶対にやってはいけません。 何故なら、全員に全員のアドレスが伝わってしまいます。

メールアドレスの誤送信の法的問題点

特定の個人を識別できるメールアドレスは、「個人情報」に該当します。

 「個人情報」とは、特定の個人を識別できる情報です。一見識別できないメールアドレスでも、他の情報と容易に照合することができ、特定の個人を識別できる場合は、個人情報に当たります。しかし、記号の羅列のようなメールアドレスであれば、検索しても通常は個人を特定できないので、個人情報に該当しないでしょう。個人情報に該当しないメールアドレスを他人にわかる形で一斉送信しても、違法とはいえません。

しかし、企業の内部において個人を特定できるアドレスと特定できないアドレスを別々に分類して管理するということは通常はありえません。また、アドレス自体が通称のような働きをして個人を識別する情報の1つとして取り扱われることも多くなっています。企業としては、すべてのメールアドレスが個人情報に該当するとの前提で取り扱うべきでしょう。

このような考え方に立つと、メールアドレスが大量に漏えいする事故は、個人情報保護法上、安全管理措置義務(法20条)に違反したということになります。法では、安全管理措置義務違反について、直ちに何らかの制裁が想定されているわけではありません。しかし、民法の不法行為の規定を根拠に、漏えいされた顧客から損害賠償を請求されることは考えられます。   

 問題は、一斉送信され、自分のアドレスが他人にわかってしまうこと、および他人のアドレスを知ってしまうことについての不快感です。不快感は、一般的には法的に保護されません。

例えば、自宅の郵便ポストに、見たくもないチラシが入っていて、不快感があっても、違法ではありません。そのチラシを捨てれば良いだけです。個人情報保護法ができる前、同窓会名簿も売買されていましたが違法ではありませんでした。

ただし、今後、法規制ができたり、現時点で特定できないメールでも将来特定できる状況になれば、違法となるでしょう。

結論として、明らかに個人が特定できるメールアドレスでやり取りをした場合、これは個人情報保護法に違反する可能性があるが、個人を特定できない場合には、違法性はありません。

事実の公表・報告

漏えい事故が発生した場合には、できる限り事実を公表することが求められていますし(法7条に基づき作成された基本方針)、主務大臣が個人情報の管理、利用のあり方について報告を求めてきたり(法32条)、取扱いに関し勧告や命令を受けることも考えられます(法34条)。いずれにしても企業の信頼を 大きく損ねることは間違いありません。


送信したメールを取り消す方法

 送信したメールを取り消す


お詫び文例

個人情報(メールアドレス)の漏えいに関する報告とお詫び

この度、弊社におきまして、お客様にメールにてお知らせをした際、送信業務の不手際により、お客様のメールアドレスが他のお客様のメール内に表示される、と いうトラブルが発生致しました。

該当のお客様におかれましては多大なるご心配とご迷惑をおかけ致しました事、深くお詫び申し上げます。

弊社はこれまで個人情報保護強化に取り組んで参りましたが、このような事案を招いた事を深く反省し、今後は管理体制の見直しと従業員への個人情報保護教育を徹底し、再発 防止に努めて参ります。

今回の件につきましては、あらためて以下の通りご報告申し上げますとともに、ご迷惑をお掛け致しましたお客様に深くお詫びを申し上げます。



1.事案の概要

(流失日時・経緯を書きます。)

平成●年●月●日(金)午後●時●分、●●に関する案内メールを送信した際に、個人のメールアドレスを「BCC」に設定して送信すべきところを「CC」で送信したため、全員のメールアドレス(●名分)が表示されて送信されました。 

流出先はメールを受信された同じく●名の方です。

2.対応状況

上記電子メールの送信直後に担当職員がこれに気づき、本件に該当する関係者の方々に対し、直ちに御報告とお詫びを申し上げるとともに当該電子メールの削除をお願いいたしました。
*現在のところ、この件に関して二次被害は確認されておりません。

3.今後の対応

(再発防止策を書きます。)

① 個人情報を含む重要なメールや複数先宛へのメール送信時の作業手順を見直し、全従業員に周知徹底致します。[複数の個人のメールアドレスあて送信する場合には、複数の職員によるダブルチェックを徹底することにより、個人情報の漏えい防止を徹底してまいります。] [今後このような事態が生じないよう、送信前に文書送信者以外の者が宛先及び送信内容を再度確認するなど、厳重かつ適正な管理を徹底してまいります。]
② 個人情報取り扱いについてのリスクの認識を全従業員に徹底し、必要かつ適切な措置 を講じます。
③ 本件に関し何らかの被害が発生した場合は、警察や当局の指導に基づき対応致します。

〈 本件に関するお問い合わせ先 〉
株式会社 ●●
 TEL:●●●-●●●-●●●●
メールアドレス:●


参考資料

2013年11月4日月曜日

インターネットでいじめにあったら

インターネット上のトラブルは、年々増加傾向にあります。

匿名掲示板、個人のブログ、Twitterなどでの誹謗中傷やプライバシー侵害行為の相談が増えているようです。有名人でなくとも、悪口を書かれたり、伏字だけれどもわかる人にはわかるような誹謗中傷をされるケースもあります。SNS(ミクシィやFacebook)でのなりすましケースも増えています。自分になりすまして、ウソの書き込みをされたり、プライベートな写真を公開されてしまうようです。

対処方法はいくつかありますが、まずは、気にしないこと、無視することです。TwitterやSNSの場合、特定の人から自分のサイトを見られないようにブロックできます。また、自分も見ないようにしましょう。そのうち向こうも飽きてやめることも多いのです。

ただ、どうしても見過ごせない誹謗中傷もあるでしょうし、なりすましをされているのは気持ち悪いと思われる人も多いでしょう。その場合は、サイトの運営会社に対し、迷惑行為を報告(スパム報告)します。多くのサイトには、そのような報告を受け付ける機能が付いています。Twitterなど国外の会社が運営しているサイトでも同様です。日本語で送っても、回答は英語かもしれませんが、対応してくれます。

問題なのは、運営側にスパム報告をしても削除してくれないケースです。たとえば2ちゃんねるには削除依頼用のスレッドがありますが、応じてくれないことも多く、依頼自体が公開されるために逆効果となってしまうこともあります。 この場合は、「プロバイダ責任制限法」に基づいた手続を取ります。

選択肢は2つあります。
① 加害者である書き込み主(アカウント主)を特定する
② サイト運営者に削除依頼をする

①であれば、まずは運営側に加害者についての「情報開示請求」を行い、IPアドレスとサーバーにアクセスした時間を教えるよう申し立てます。

IPアドレスがわかれば接続プロバイダがわかるので、次はプロバイダ宛に該当人物について情報開示請求をします。つまり2回情報開示請求することになりますが、権利侵害が明らかなら開示請求は認められます。

氏名、住所などの本人確認が取れたら、権利侵害をやめるように警告するか、損害賠償請求をします。

②は、①より簡単です。サイトの運営会社に「送信防止措置」の依頼をします。そうすると、運営側は加害者に対して、「●●という申し立てがありますが、反論はありますか。削除してもよいでしょうか」と照会します。この時点で、加害者は自主的に削除するか、回答しないかのどちらかの対応を取ることが多いです。照会から一定期間内に回答がない場合は、運営側が削除しても良いことになっているので、そのまま削除されます。

①、②のいずれも、費用は書類代と切手代程度で済みます。やり方も、ガイドラインでインターネット上に公開されています。

ただし、運営者が海外の場合(2ちゃんねるの場合は運営会社がシンガポールにあります。)、上記の手続を使うことができません。そのため、裁判所に削除や開示を認める決定をもらうことが必要です。この場合は、手続が複雑になりますので、弁護士に相談したほうが良いでしょう。

FacebookやTwitterも日本の法律による請求を受け付けていません。ただし、Facebookは実名登録が基本原則となっているため、トラブルはそう多くないようです。Twitterについては、2010年11月に日本法人が設立され、この手続に応じてもらえる可能性が出てきました。 いずれにせよ、トラブルには巻き込まれないことが一番です。トラブルの原因は、やはりプライバシーに関することが多いので、書き込むときも他人のプライバシーに関わることには十分注意しましょう。

2013年10月30日水曜日

ネット上で会社の内部情報を漏えいしたら

今回は、社内の人間しか知らない内部情報をインターネットの掲示板に匿名で書き込んだところ、会社の上層部がそれをたまたま見つけて大騒ぎになったという場合について考えてみたいと思います。

アクセスプロバイダへの発信者情報開示要求

会社の犯人捜しは、まずアクセスプロバイダへの発信者情報開示要求から始まります。しかし書き込みの内容が殺人予告など犯罪性のあるものでない限り、プロバイダがすぐ開示に応じることは考えにくいです。なぜならインターネット上のやりとりは通信の秘密として法律上保護されているものです。これを簡単に漏らしてしまうプロバイダなど、誰も使わなくなってしまうでしょう。

そこでプロバイダは自らの信用問題として、「開示してほしければ裁判を起こしてください。開示せよという判決が出たら従います」と突っぱねることになります。書き込まれた側はわざわざ裁判を起こすのは面倒臭いと考え、たいていの場合は泣き寝入りとなります。

ただし、書き込みの内容が人に危害を加える予告であったり、信用毀損や風説の流布など株価に影響を及ぼすようなものであれば、プロバイダによっては開示に応じる可能性もあります。


会社のパソコンを使って書き込みをした場合

もし会社のパソコンを使って書き込みをした場合は、会社のサーバーを調べれば、誰のしわざかほぼ判明します。ただし、社員のプライバシーに関わることなので、会社も調査に踏み切るのは慎重になるでしょう。

会社が社員のメールやアクセスログなどを調べることに入社時の誓約書で同意していたり、就業規則に書いてあれば、いくらプライバシーの侵害を叫んでも無駄です。

発覚した場合の責任
 この場合、発生するのは民事責任、刑事責任・行政法上の責任、労働契約上の処分の3つです。

民事責任で考えられるのは「この書き込みのせいで業績が落ちたから損害賠償しろ」というものです。これは新製品についてウソの情報を流したために売り上げが激減した、というような場合はともかく、会社への不満を言った程度ではそれほど大きな金額を請求されることはないでしょう。

刑事責任や行政法上の責任では、信用毀損罪で告発されるとか、風説を流布して株価に影響を与えたとして、証券取引等監視委員会に呼び出され、課徴金を科されることなどが考えられます。

しかし会社員にとって一番怖いのは、3つめの労働契約関係の処分、すなわち減給、けん責、あるいは解雇です。とりわけ解雇されると再就職にも差し支えます。

労働者は労働法によって保護されており、よほどの理由がなければ解雇は難しいです。とはいえ、ここまで開き直るには精神力が必要です。

居酒屋でグチをこぼすのとネットに会社の悪口を書くのは、法的にまったく重みが違うということを意識しましょう

2013年10月28日月曜日

スマホがウイルスに感染し、社内資料が流出したら

スマートフォンが急速に普及しています。この便利な端末を利用して、通勤中や外出先、はたまた自宅でやり残した仕事をしている人も多いでしょう。

しかし、会社から端末を支給されているケースはもちろんのこと、私用の携帯電話から会社の重要書類や個人情報が流出した場合に、不法行為(民法709条)を理由として損害賠償を請求される可能性があります。

今のところ携帯電話やスマートフォンの紛失やウイルス感染による大きな情報漏洩事故は起こっていません。しかし、会社のPCを紛失したり、不正アクセスによって個人情報が流出した事件は多数あります。PCであろうとスマートフォンであろうと、情報漏洩に対する法的な責任に差はありません。

損害賠償の規模は決してバカにできません。過去に情報漏洩を起こし、顧客との間で裁判になった事例もあります。

  • TBC事件(2007年)では会員のスリーサイズなどの個人情報が漏れ、顧客1名につき3万5000円の賠償金を支払うことが命じられています
  • Yahoo!BB事件(07年)では1名につき5500円の賠償金を支払うことが命じられています。 

賠償額は、漏洩した情報の価値によって決まります。TBC事件のように、秘匿性の高い情報ほど賠償額は高くなります。

これらの機密情報や個人情報流出事件では、被害者が企業に損害賠償請求するケースがほとんどで、ミスや不正を犯した企業の担当者を直接訴えるケースはこれまでにはありません。

しかし、今後は担当者個人に対し、被害者である顧客や企業が訴訟を起こす可能性がないとは言い切れません。 担当者個人が負う賠償の額は、情報流出が担当者の故意か過失かによって変わります。

個人情報の流出を理由に企業が担当者に賠償請求した場合に、企業側のセキュリティ対策上の落ち度と担当者の過失分のバランスを鑑みて、賠償額が決定されます(過失相殺)。 つまり企業が万全のセキュリティ対策を講じているにもかかわらず、故意に情報を流出させた場合、流出した情報の価値すべてを賠償しなければならない可能性があるのです。たとえば、1件5万円の価値がある個人情報を故意に1万名分流出させてしまった場合、合計5億円も賠償しなければならない、ということです。

もちろん、個人に対し損害賠償請求がなされなくても、会社の規定により譴責や減給、懲戒解雇の処分を受けることがあります。会社の機密情報を漏洩させることは、情報という価値のある無形の財産を会社から失わせたことになるので、会社のお金を使い込み横領するのに等しいのです。

現在、スマートフォンはさらに進化し、ファイル共有などのクラウドサービスを活用する人も増えています。企業は、こうした技術の進歩に対応するセキュリティ対策を講じたうえで、情報保護ガイドラインを刷新し社員に徹底させることが重要です。

社員も、自衛策を講じる必要があります。
  • スマートフォンには、最低限、パスワードなどのロックを設定する。
  • クラウドサービスを利用するときには、オンライン上の個々のファイルにパスワードを設定すれば、安全性はより高まります。
  • あやしいアプリケーションを決してダウンロードしない。
  • 社外秘のファイルをダウンロードして作業したら、作業後に必ず消去する。
こうしたちょっとした工夫でリスクを軽減できます。 スマートフォンは携帯電話ではなく、数億円の価値を持つ資料が記録された媒体であり、同時に、資料が保存された倉庫(クラウド)に入るための鍵だと認識を改めることが重要です。


2013年10月27日日曜日

フィッシング詐欺

高齢者を標的にした振り込め詐欺は、いまも深刻な社会問題です。しかし高齢者はインターネットをあまり使いませんから、インターネットバンキングの詐欺事件は、まだまだ始まったばかり。これからは被害が深刻化するおそれがあります。

2011年秋、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行のインターネットバンキングで、不正送金による被害が発覚しました。

被害額は三菱東京UFJで計数百万円(6件)、三井住友で計約1000万円(6件)。ある被害者は、1つの口座から200万円を盗られていました。

インターネットバンキングの利用者の多くは、1日の送金限度額を100万円に設定しています。この被害者は、2日に分けて100万円ずつ抜き取られていたのです。

なぜ、不正送金ができたのでしょうか。

これはフィッシング詐欺の1種です。詐欺師らは利用者に銀行当局を装う偽メールを送りつけ、偽の銀行サイトへ誘導して個人情報を入力させるという手口で、IDやパスワードを入手したのです。

クレジットカードの不正利用にも注意が必要です。ネット上ではカード番号と有効期限さえ打ち込めば、かなり自由に買い物ができます。ですから、ネットでの利用には慎重になるべきです。怪しいと思ったら、カードは使わず着払いなどを選択するといいでしょう。また、カード会社は顧客の購買行動をモニターし不自然な動きがあれば当人に問い合わせるので、不正はすぐに発覚します。

2013年10月26日土曜日

子供が勝手にネット契約したら

子供が有料サイトを利用して、多額の請求を受けてしまったらどうなるのでしょうか。

有料サイトの利用

最近ではこんな事例があるようです。
  • ウイルスなどによる明らかに違法な誘導
  • ツイッターを利用して有料サイトへ誘いこもうとする業者
  • 宣伝を装って郵便でDVDを送りつけ、受け取った人がPCに挿入すると、知らないうちに有料サイトの会員にされてしまった。
有料サイトの会費トラブルは月数千円、年会費1万円といった少額の場合が多いようですが、勧誘のしかたによっては違法性を問うことができます。

違法性がなくても、有料サイトを使ったのが子供であれば、法に訴えて料金を返してもらうことが可能です。

民法第5条の規定により、未成年者が親の同意なく行った法律行為は原則として取り消すことが認められています。したがって、インターネット上の詐欺で子供をターゲットにするのは、詐欺の手口としてもあまり巧妙とはいえないと思います。

その他

有料サイトの利用以外にも、子供が親のクレジットカードを使用し、インターネット・ショッピングで買い物してしまったというようなケースが考えられます。

この場合も民法5条が適用され、カードを使用したのが未成年者だった場合、その取引は取り消すことができます。

「子供が勝手に買ったものなので返品したい」という要望があった場合、業者も返品に応じるのが普通です。法律で消費者の権利が認められているので、裁判ともなれば、取り消されることは業者側も理解しています。


2013年10月23日水曜日

ストリートビューとプライバシー・肖像権

ネット検索でおなじみ、米グーグル社が作成したストリートビューのサービスが、2008年8月より国内の主要都市に関して始まりました。

ストリートビューとは、数メートルおきの地点ごとに、公道上から実際に撮影された360度のパノラマ画像を、地図などと組み合わせて自由に閲覧できるようにしたシステム。

たとえば、初めて足を運ぶ待ち合わせ場所の下見代わりには、便利です。思い出の場所が現在どうなっているか、クリックひとつで眺めにいくのも楽しいですね。

ただ、世の中の景色を手当たり次第に呑みこみ、全世界の人々に共有させてしまうストリートビューは、「すごい」「面白い」と同時に「マズい」「怖い」ともいえます。公開されている画像は、駅前などの公共の場だけではないからです。ストリートビューのカメラは、住宅街の細い路地にも入り込んで、そこに見えるものすべてを記録、データ化してしまいます。

自宅がいつの間にかネットで公開されていて気持ち悪いという声が噴出しているのも当然の成り行きでしょう。 また、通行人が道ばたで転倒している瞬間などのストリートビュー画像を収集して面白がるような輩もいます。画像に写りこんだ通行人の顔には、ボカシが入るよう編集されていますが、不完全です。運悪くそのまま公開されている気の毒な人も少なくありません。

ストリートビューの法的な問題点は主に2つあります。

プライバシー

まず、自宅の様子が公開されるという「プライバシー」の問題。人格権と直結する大切な概念ですが、公道から見える建物の外壁や、庭を囲む柵などの撮影については、プライバシーを持ち出しづらいのが現状です。室内の様子が写りこまない限り合法といえます。

ただ、自宅の外観も、他の情報と組み合わせて個人が特定できるなら「個人情報」であり、個人情報保護法に反すると指摘する余地はあります。

肖像権

一方で、顔を撮影するという「肖像権」の問題。人の容貌も、原則として本人の許可なく記録することはできません。その了解を得なければ、被害者が慰謝料を請求する理由としても十分です。ストリートビューのプロジェクトには、肖像権と対峙できるほどの重要な社会的意義(報道・言論の自由など)が託されているとも思えません。まして、窓際で着替えている様子や、ラブホテルから出てくる男女を、その容貌が判別できるかたちで公開するなどは、プライバシー侵害とも結びつき、ストリートビューの不法行為性の疑いはより色濃くなります。


2013年10月21日月曜日

ネットコンテンツビジネスと著作権

ブログで本を紹介する場合、その表紙画像を載せる行為は、著作権の侵害になるのでしょうか。

法理論的には、著作権者に無断でネット上に作品を載せる行為は、複製権や公衆送信権の侵害に当たります。損害賠償責任が生じたり、刑事事件として立件されたりする可能性もあります。

「引用」だから著作権侵害にならないという人もいるかもしれません。著作権法では、批評などの目的で他人の著作物の一部を引用することが条件付きで認められています。ただ、ブログの批評対象は本の内容であって、表紙ではないから「引用」でないとも捉えられます。

これは、白黒の判別が難しいグレーゾーンです。つまり、法に触れる可能性があるということです。

では、自分の行為がグレーゾーンに該当する場合、すべきかどうかの判断はどうすればいいのでしょうか。
ポイントは2つあります。
① その行為で著作権者の収入機会を奪っていないか。
② 著作権者の感情を極端に害していないか。

著作権者の収入機会を奪う行為、批評を超えて、著作権者や作品の尊厳を傷つける行為は「黒」に近くなります。

著作権者との係争を抱えつつ、全文検索などのビジネスを進めるGoogleやamazonなどの米国企業に対し、コンテンツビジネスではほとんど存在感を示せない日本企業。この差は、グレーゾーンにあえて踏み込むしたたかさを持てるかどうかの違いが一因なのかもしれません。

2013年10月20日日曜日

撮影禁止の建物を合法的にブログ掲載する方法

撮影禁止・制限がされている建造物を撮影し、それをブログに掲載したり出版したりした場合、どのような法律的な問題が生じるのでしょうか。

著作権

建造物に著作権が認められるのは例外的。また、仮に著作権が認められても、著作権法46条の規定により、写真撮影して出版物などに掲載しても著作権侵害とはなりません。

「パブリシティ権」の問題

神社仏閣などを撮影し、広告に使うケースを考えてみましょう。神社仏閣の写真が顧客の目にとまり、業者に儲けをもたらす可能性があります。そこで、そのような顧客吸引力を保護するために「パブリシティ権」という概念があります。

しかし、現時点での最高裁判所の判断は、芸能人やスポーツ選手など、人間のみに認めるというものです。神社仏閣のパブリシティ権は法律上保護されていません。

『敷地』管理権の侵害

撮影禁止ルールを破って写真を撮る行為は、神社仏閣の『敷地』管理権の侵害として、問題が処理され得ます。写真撮影を制限する対応は、その神社や寺院などが持つ敷地の管理権(「所有物の使用、収益」)を根拠に許されるわけです。

民法206条は、一般論として「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定めています。

地主が自分の土地を使ってトクをしようとする行為は、原則として他の誰にも差し止められません。これは「私的所有権絶対の原則」と呼ばれ、国家にも干渉されない神聖な権利だとされています。

宗教団体が利益を追求しない存在であったとしても、あるいはその建造物が文化や歴史と結びついた公共財であったとしても、敷地を所有していれば、その所有権は絶対であり、敷地内でルールに反して撮影すれば、不法行為として、損害賠償を求められる可能性があります。

ただ、撮影禁止の施設であっても、公道からの撮影であれば、プライバシー侵害など別の問題が生じない限り、法律上許されます。撮影料を請求されても支払うかどうかは自由です。

なお、敷地内から撮影する場合、不法行為の成否は、敷地管理者が看板などを立てて、撮影禁止のルールを明示しているかどうかが分かれ目になります。

 撮影禁止の看板が設置されていなかったため、敷地内での撮影が不法行為にならないとされた判例があります。私有地に根を下ろすカエデの大木を、カメラマンが地主に断りなく撮影し、写真集にまとめて出版したケースに対してです。

このケースでは、「撮影には許可が必要」との看板が設置される以前に、カメラマンがカエデの大木を撮影し、土地所有者の許可を得ずに出版したことに対し、原告の土地所有者が所有権の損害だとして、出版差し止めと損害賠償を求めましたが、原告が敗訴しました。

撮影時に看板が設置されていれば、損害賠償が認められた可能性が高いでしょう。


2013年10月19日土曜日

インターネット上の名誉毀損

 1. ネット上に事実無根の自分の悪評が書かれた場合

インターネット上の誹謗中傷は依然として続いています。決して他人事ではありません。

このところ、有名人のブログや掲示板に誹謗中傷や脅 迫的な書き込みを行って検挙されるケースが見られます。根も葉もないウワサを真に受けた人たちが集団的に攻撃的な書き込みを行い、いわゆる「炎上」に至ら せるケースも多くなっています。

従来は「2ちゃんねる」のような悪口サイトが中心でしたが、最近は、就職や結婚などのクチコミサイトやツイッターなどにも書き込まれることがあります。そのなかには過激で悪質なものも含まれており、被害者は思わぬダメージを受けてしまいます。

こうした名誉毀損や脅迫行為は、民事的には不法行為(民法709条)、刑事的には名誉毀損罪(刑法230条)や脅迫罪(刑法222条)に該当する可能性があります。

被害を受けたときの対応としては、民事的には、ブログや掲示板の管理者やホスティング業者に対して記事の削除を求めるとともに、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求によって発信者を特定して、損害賠償などの請求を行うという方法が考えられます。

 この場合、掲示板管理者などの下にはIPログ情報しかないのが通常ですから、その開示を受けたうえで、WHOIS検索(IPログの接続情報を調べるサービ ス)によって判明するISP(インターネットサービスプロバイダ)事業者に対して、第二段階の開示請求を行うことになります。

ISP事業者の下には、問題の投稿の日時に当該IPアドレスを付与した契約者に関する情報があるので、これによって投稿者を特定することができます。その 際、ISP事業者がIPログ情報を保存する期間は、短いところでは2カ月程度しか保存されないとも言われていますので、迅速に対処する必要があるでしょ う。

情報の流通による権利侵害が明白と事業者側が判断できない場合には裁判によることになりますが、第一段階の掲示板管理者などに対する場面では裁判所も開示の仮処分を認める傾向にありますので、短期間に最終のISP事業者の下までたどり着けることが多いと言えます。

削除請求を内容証明郵便で送付

被害に遭ったら、まずサイト管理者(コンテンツプロバイダ)に削除を求めましょう。その場合は、メールや問い合わせフォーマットを使っても構いませんが、被害個所を特定して「ここは不当なので削除せよ」と内容証明を送るのが無難です。これで大方は消してもらえ、解決に至ります。

やっかいなのは、削除を拒否された場合です。また、再び中傷を書き込まれたときに備えて、発信者が誰なのかを知っておきたいということもあるはずです。しかし、サイト管理者は表現の自由や個人情報保護を盾に「消さない」とか「情報は出せない」といってくることもあります。


プロバイダ責任制限法に基づいた仮処分申請

サイト管理者が、表現の自由や個人情報保護を根拠に、「消さない」とか「情報は出せない」といってくるときは、2002年に施行されたプロバイダ責任制限法に基づいた仮処分申請を行います。この法律は、被害者救済を重視しています。

リスクを避けたいと考えるサイト管理者は、違法情報であればおおむね削除しますし、持っているIPアドレスとタイムスタンプ(発信日時)を出してくることも多くなりました。

 この2つが入手できれば、サイトへの投稿を媒介する接続業者(アクセスプロバイダ)を特定し、発信者(契約者)を突き止める手がかりが得られたことになります。書き込みが消され、発信者につながる情報を得ることができれば、そこで矛を収めるという選択肢もありえます。

損害賠償請求訴訟

さらに、発信者に謝罪ないしは何らかの賠償をさせたい場合、IPアドレスからネット検索などで特定した接続業者に対して「発信者の氏名・住所の開示」を請求する訴訟を起こすことになります。

その際、訴える側に有利に働くのが、2010年4月8日に最高裁が出した判決です。これは、ネット上で名誉毀損などに当たる書き込みがなされた場合、接続業者に発信者情報を開示する義務があるとしたものです。実際に熾烈な争いになることはまずなく、数回程度の口頭弁論で終わることも多いです。 こうして、発信者本人が判明すれば、今度は発信者、すなわち加害者を名誉毀損で民事訴訟に持ち込めば好いでしょう。

ただし、示談になることもよくあります。「2度とやらない」という旨の念書を取り、慰謝料を受け取ります。

しかし、示談での慰謝料は高額を期待できないことも多く、判決になれば弁護士費用は損害額の1割程度しか認められません。裁判に1、2年近くかかることもあり、その間のコストを考えれば経済的合理性を欠くことになってしまいます。


悪質で被害が重い場合は警察に「被害届」を出す 

 「2ちゃんねる」などの一部の掲示板では、民事裁判手続きを事実上無視しているため、発信者情報を遡ることが困難になっています。

 被害が重い場合などは、刑事事件に発展する可能性も高くなりますので、警察への被害届提出や告訴を検討することになるでしょう。 この点、「2ちゃんねる」などでは民事裁判手続きが無視されるために、一般的に刑事手続きによらなければならない現状があり、刑事法の謙抑性に照らすと憂慮される状況となっています。

また、刑法に定める名誉毀損罪で告訴を試みても、警察や検察での立件が難しい面があります。

さらに、①内容に公共性がある、②目的に公共性がある、③内容が真実と証明できる、の3点を満たせば罪に問えません。特に③の真実についての論点が重要になりますが、ネット上の言論の真実性については事案に応じて裁判所の個別判断になります。

ま た、IPアドレスなどのアクセスログ(利用履歴)の保存期間は法律で定められていません。そのため、大手プロバイダでも3カ月~半年ぐらいしか保存しない ことが多いのです。しかも最近の傾向として、どんどん短くなってきています。削除だけでなく、発信者を探り出すには、早めに動き出すことが大切です。


2. クチコミサイトでお店の悪口を書かれたら

飲食店やホテルを選ぶときに役立つ口コミサイト。実際に足を運んだユーザーが書き込むリアルな評価が人気の秘密です。しかし一方で、悪口を書き込んで店とトラブルになることもあるようです。

真っ先に思い浮かぶのは民事における損害賠償請求ですね。また、名誉毀損は犯罪行為でもあります。3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金という刑事罰に処されるおそれがあるのです(刑法230条)。

たとえばラーメン店がカルト集団と一体であるかのような書き込みをした男性が名誉毀損罪に問われた裁判では、2010年3月、最高裁が被告側の上告を棄却。罰金30万円の有罪判決が確定しました。

どのような書き込みをしたら罪に問われるのでしょうか。

意見の表明なら、名誉毀損罪にあたりません。

名誉毀損罪は、事実の摘示が要件の一つ。たとえば『店にゴキブリがいた』という事実を書いてはじめて名誉毀損罪に問われる可能性が生じます。単に『おいしくない、汚い、接客が気に入らない』と感想を書くだけなら表現の自由です。

しかし、単に感想を述べるだけでは説得力に欠けてつまらないでしょうから、自分の意見を裏づけるために、客観的事実を書くケースもあるでしょう。

この場合は、事実が真実であるかどうかが分かれ目になります。ウソをついたら、名誉を傷つけたとして名誉毀損罪になりえます。

また、虚偽の情報でお店の経済的評価を貶めたり、営業に支障をきたせば、信用毀損罪・業務妨害罪に処されます(刑法233条)。信用毀損罪・業務妨害罪の法定刑は、名誉毀損罪と同じです。どちらにしてもウソはご法度です。

では、真実なら何を書いてもいいのでしょうか。

そうではありません。名誉毀損罪は、公共の利害にかかわる事実で、目的が公益を図ることだった場合、それが真実なら罰しないことになっています(刑法230条の2)。逆に言えば、内容に公共性がなかったり、目的に公益性がなければ、本当のことを書いても名誉毀損罪が成立します。

個人のプライバシーを暴くような書き込みは公共性がないためにアウトです。

ただし、通常のグルメ批評であれば、刑事事件として立件される可能性はほとんど考えられないでしょう。一般的に飲食店は公衆を相手に商売しているので、料理やサービスに関するレビューは利害公共性があると考えられます。また目的公益性に関しても、個人的な嫌がらせや復讐心であることを証明するのは現実的には難しい場合もあるでしょう。


 なお、民事での損害賠償も同じ枠組みです。店に損害が発生しても、内容が真実で公共性があり、目的に公益性があれば、賠償請求は認められません。

3. 犯罪にあたる書き込み
 
 ネット上の書き込みや投稿を巡っては民間団体「インターネット・ホットラインセンター(IHC)」が、薬物広告や児童ポルノといった存在自体が違法の「違法情報」などを中心に民間からの通報を受理しています。 

2013年10月18日金曜日

ネット上の個人情報を消すには

ツイッターに顧客のプライベートを書き込んで炎上する事件が相次いでいます。

  • 2011年1月、都内ホテルのアルバイト店員がスポーツ選手と芸能人の来店情報を投稿して、ホテル側が謝罪しました。
  • 2011年5月、スポーツ用品メーカー社員が来店したスポーツ選手に対する中傷を書き込んで炎上しました。 

どちらの騒動でも、投稿者はネット上で徹底的につるしあげられました。有志によって実名が特定され、住所や顔写真、交友関係、はては自宅の不動産登記簿謄本の画像までネットにアップされました。

コンピュータウイルスや誤操作で個人情報が流出したり、人違いで個人情報を晒されて中傷を受けた事例もあります。

個人情報の漏えいは、いまや誰もが直面するリスクといえます。 ネット上の情報は容易に拡散され、しかも半永久的に残ります。

自分の意に反して広まった情報は、もはやどうすることもできないのでしょうか。

プライバシー侵害は、民法709条の不法行為(故意または過失によって他人の権利や利益を違法に侵害する行為)に該当する場合があります。その場合、情報が掲載されたブログや掲示板の管理者に削除を請求したり、損害賠償を請求することができます。

どのような情報ならプライバシーとして保護されるのでしょうか。

日本初のプライバシー訴訟である昭和39年の『宴のあと』裁判で、東京地裁はプライバシー侵害の要件として、

(1)私生活上の事実または事実と受け取られるおそれがあり、
(2)一般人の感受性を基準として、当該私人の立場に立ったときに公開を欲しないだろうと認められ、
(3)一般の人に知られていないこと、

という3つをあげました。病歴や前科、出自、宗教といったセンシティブな情報の公開は、これらの要件に合致する可能性が高いでしょう。

もっとも、ネット上の炎上事件で晒されるのは、名前や住所、SNSの日記といった公開情報が中心で、先ほどの3要件に必ずしも該当するわけではありません。こうした公開情報は保護対象にならないのでしょうか。

プライバシーの保護範囲は、時代とともに広がっています。もともと公開されている情報でも、本来の趣旨と異なる形で公開され、私生活の平穏に重大な脅威を与えているなら、現在はプライバシー侵害とみられる場合もあります。


プライバシーの保護については、他の利益とのバランスも考慮する必要があります。

犯罪報道で被疑者の実名が報道されるのは、被疑者のプライバシーより、治安維持や国民の知る権利といった利益のほうが大きいと考えられているからです。逆に微罪なのに鬼の首をとったように私生活を暴けば、プライバシー侵害のほうが上回って不法行為になります。

プライバシー侵害と認められても、一度流出した個人情報をネット上から完全に消し去ることは難しいです。法的な手続きを踏んでいるのに削除に消極的な掲示板管理者がいたり、すでに拡散していて削除請求が追いつかないケースも多いからです。

2013年10月17日木曜日

個人データ抜く「アプリ」

スマートフォンの個人データを抜き取るアプリの公開が後を絶ちません。

約9万人のスマホがウイルスに感染し、電話帳にある電話番号やメールアドレスなど1190万件以上の個人情報が流出しました。しかもネットの裏情報では、逮捕された関係者が運営する出会い系や4クリック詐欺サイトから、闇金グループに金が流れているという情報が寄せられていました。この事案で、アプリを公開したとしてIT関連会社の社長ら男女5人が逮捕されました。この件について、東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分としました。

なぜ不起訴になったのでしょうか。

スマホのアプリには、必ずパーミッション画面が現れます。インストール直前に「同意します」「同意しません」という表示が出る例の画面です。今回不起訴処分となった背景には、個人情報を収集することにユーザーが同意した点、かつそのアプリがユーザーに説明した通り動画を再生する機能を満たしていた点、この2点の理由があったようです。

しかし実際のところ、多くのユーザーがパーミッションの同意事項についてよく読むこともなく、甘い誘惑に駆られて同意を与えているのが現状です。個人情報保護法では、本人の同意なく第三者に個人情報を提供してはならない、と定められているのですが、それを逆手に取ったやり方といえるでしょう。

今回の不起訴処分により、今年はこうした不正アプリの横行が予想されます。法律が追いついていない以上、自分の身は自分で守るしかありません。

従来の情報漏えいと比べて深刻なのはスマホが電話であり、その中のアドレス帳に友人や取引先など個人情報が入っている点です。漏えいすれば他人に迷惑をかけることになります。「通話無料」「電波改善」「バッテリー長持ち」などを謳う中に、危険なアプリが少なくないのです。いま一度、自分のスマホ内のアプリを見直すことをお勧めします。

参考 個人データ抜く「アプリ」が罪に問われぬ理由