2014年4月12日土曜日
会社の機密を漏えいした社員に、どこまでの処分ができるのか?
今回は、会社の機密を漏えいした社員に、どこまでの処分ができるのかについて考えてみたいと思います。
近年、パソコンが一般的に普及したこともあり、社員が会社の機密事項にふれる機会は多いと思います。機密事項とは、他社の情報や、会社のノウハウなどさまざまです。
ここで、社員が会社の機密事項を漏らした場合の対応について考えます。
①機密漏えいは防止が第一
当然のことですが、機密漏えいは起こらないのが一番です。就業規則に機密保持についてしっかりと定めたり、機密保持誓約書などを結び、漏えいが起こらない体制をしっかりと整備しましょう。
就業規則にこのように定め、社員がもし機密漏えいを行った場合は懲戒の対象とすることを周知しておく必要があります。
②もし機密漏えいが起こってしまったら・・・
もし、実際に機密漏えいが起こってしまったら、会社としては厳格な処分、すなわち減給、けん責、あるいは解雇をしてもよいでしょう。
処分の度合いについては、これも就業規則の懲戒規定によることになりますが、漏れた情報の内容、動機や目的、経営への影響などを総合的に勘案して行うべきでしょう。もし、実際に会社に損害が生じていなくても、機密を漏らしたという事実のみをもって懲戒の対象となり得ます。労働者は労働法によって保護されており、よほどの理由がなければ解雇は難しいです。しかし、機密漏えいは程度によっては懲戒解雇にもなり得ます。厳格な態度で臨みましょう。
もっとも、故意でない情報漏えいで会社に損害を与えたとしても、その責任をすべて従業員が負わされることはありませんし、会社の内部管理責任も問われます。悪質性の低いミスを理由とした解雇は、裁判になれば会社が不当解雇で敗訴するリスクが高いでしょう
その他考えられる責任追及は、民事責任、刑事責任・行政法上の責任です。
民事責任で考えられるのは、漏えいのせいで業績が落ちたから損害賠償しろ、というものです。例えば、新製品について情報を流したために売り上げが激減した、というような場合があるでしょう。
刑事責任や行政法上の責任では、信用毀損罪で告発されるとか、風説を流布して株価に影響を与えたとして、証券取引等監視委員会に呼び出され、課徴金を科されることなどが考えられます。また、もし漏れた情報が厳重に管理されていた情報であれば、窃盗罪が適用されることもあります。場合によっては犯罪に該当するケースもありますので、会社としてはそこまで視野に入れた対応が必要となります。
③ まとめ
社員による会社の機密漏えいは、防止が一番なので、まずは就業規則などで機密漏えいに関する規定をしっかりと定め、社員に周知することが肝要です。そのうえで、もし機密漏えいが起こってしまった場合は、漏れた情報の内容、動機や目的、経営への影響などを総合的に考えて、処分を行ないます。
2013年11月1日金曜日
産業医面談
産業医とは
産業医とは、事業者との契約に基づき、企業内等で労働者の健康管理を行う医師のこと。労働安全衛生法は、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医を置くことを義務づけています。
事業者は、労働契約上、業務による過度の疲労や心理的負荷によって労働者の心身の健康を損なわないよう注意する健康配慮義務を負っています。産業医の役割は、事業者がこの義務を果たすことができるよう事業者を補助することにあります。そのため、産業医は治療等の医療行為は基本的に行わず、労働者の健康診断や面接、職場巡視を実施して労働者の健康状態を把握し、事業者に意見を述べることを主な職務としています。
したがって、産業医が労働者から職場でのパワハラやセクハラ、過重労働による心身の不調について相談を受けた場合には、これらの健康管理情報は配属先の上司などへの報告の対象となり得ます。事業者は、医師の意見を参考にしながら、労働者との面接指導を実施し、必要に応じて、労働者の就業場所や作業内容の変更、労働時間の短縮、休業命令、復職命令等の措置を決定します。
同意なしに報告される
それでは、産業医に相談した内容はすべて報告されてしまうのでしょうか。
産業医も、一般の医師と同様に守秘義務を負います。秘密漏示罪を定める刑法134条は、医師が正当な理由なく業務上知りえた他人の秘密を漏らした場合には6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処すとしており、これは産業医にも適用されます。
また労働安全衛生法も、産業医が健康診断等の実施によって知りえた労働者の秘密を漏らすことを禁じています。
したがって、産業医であっても、労働者の同意がない限り、労働者の健康管理情報を上司に伝えてはならないのが原則です。
他方で産業医は、労働者に健康上の問題があることを知ったときには、事業者にこれを指摘・報告する義務も負っています。また状況によっては事業者に積極的な情報提示を行って、自覚を促すべき場合もあります。
この点について厚生労働省は、可能な限り本人の同意を得ることを基本としながらも、(1)同意を得ることが困難であり、開示することが労働者に明らかに有益である場合、(2)開示しないと公共の利益を著しく損なうことが明らかな場合等には、労働者の同意がなくてもその健康管理情報を上司その他の関係者に報告することができるとの意見をまとめています。
たとえば、(1)労働者が自傷行為に及ぶ可能性が高い場合や、(2)健康診断の結果、伝染病が発覚し、直ちに対応しなければ他の労働者に健康被害が生じる危険がある場合などです。
また労働者の同意の有無にかかわらず、報告が許される情報の内容やその報告先は、事業者が健康配慮措置を講じるために必要となる最小限の範囲にとどまります。たとえば、労働者の血液検査結果の詳細な数値や疾病の具体的診断名、セクハラ、パワハラの具体的な当事者名等の情報は必ずしも健康配慮措置のために必要ではありません。
産業医は労働者に対して守秘義務を負う以上、上司らに報告する必要性があると判断したとしても、まずは労働者にその旨を説明し、同意を得るべきです。それができない事情があったとしても、可能な限り相談者が特定されることのないようにする等の配慮が必要です。
労働者としては、産業医の役割と立場を理解し、産業医の診察、面接を受けた際には、上司らに報告される内容について事前に産業医に確認し、報告してほしくない相手と内容についてはその旨を明確に伝えておくことが大切になります。
産業医とは、事業者との契約に基づき、企業内等で労働者の健康管理を行う医師のこと。労働安全衛生法は、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医を置くことを義務づけています。
事業者は、労働契約上、業務による過度の疲労や心理的負荷によって労働者の心身の健康を損なわないよう注意する健康配慮義務を負っています。産業医の役割は、事業者がこの義務を果たすことができるよう事業者を補助することにあります。そのため、産業医は治療等の医療行為は基本的に行わず、労働者の健康診断や面接、職場巡視を実施して労働者の健康状態を把握し、事業者に意見を述べることを主な職務としています。
したがって、産業医が労働者から職場でのパワハラやセクハラ、過重労働による心身の不調について相談を受けた場合には、これらの健康管理情報は配属先の上司などへの報告の対象となり得ます。事業者は、医師の意見を参考にしながら、労働者との面接指導を実施し、必要に応じて、労働者の就業場所や作業内容の変更、労働時間の短縮、休業命令、復職命令等の措置を決定します。
同意なしに報告される
それでは、産業医に相談した内容はすべて報告されてしまうのでしょうか。
産業医も、一般の医師と同様に守秘義務を負います。秘密漏示罪を定める刑法134条は、医師が正当な理由なく業務上知りえた他人の秘密を漏らした場合には6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処すとしており、これは産業医にも適用されます。
また労働安全衛生法も、産業医が健康診断等の実施によって知りえた労働者の秘密を漏らすことを禁じています。
したがって、産業医であっても、労働者の同意がない限り、労働者の健康管理情報を上司に伝えてはならないのが原則です。
他方で産業医は、労働者に健康上の問題があることを知ったときには、事業者にこれを指摘・報告する義務も負っています。また状況によっては事業者に積極的な情報提示を行って、自覚を促すべき場合もあります。
この点について厚生労働省は、可能な限り本人の同意を得ることを基本としながらも、(1)同意を得ることが困難であり、開示することが労働者に明らかに有益である場合、(2)開示しないと公共の利益を著しく損なうことが明らかな場合等には、労働者の同意がなくてもその健康管理情報を上司その他の関係者に報告することができるとの意見をまとめています。
たとえば、(1)労働者が自傷行為に及ぶ可能性が高い場合や、(2)健康診断の結果、伝染病が発覚し、直ちに対応しなければ他の労働者に健康被害が生じる危険がある場合などです。
また労働者の同意の有無にかかわらず、報告が許される情報の内容やその報告先は、事業者が健康配慮措置を講じるために必要となる最小限の範囲にとどまります。たとえば、労働者の血液検査結果の詳細な数値や疾病の具体的診断名、セクハラ、パワハラの具体的な当事者名等の情報は必ずしも健康配慮措置のために必要ではありません。
産業医は労働者に対して守秘義務を負う以上、上司らに報告する必要性があると判断したとしても、まずは労働者にその旨を説明し、同意を得るべきです。それができない事情があったとしても、可能な限り相談者が特定されることのないようにする等の配慮が必要です。
労働者としては、産業医の役割と立場を理解し、産業医の診察、面接を受けた際には、上司らに報告される内容について事前に産業医に確認し、報告してほしくない相手と内容についてはその旨を明確に伝えておくことが大切になります。
2013年10月30日水曜日
ネット上で会社の内部情報を漏えいしたら
今回は、社内の人間しか知らない内部情報をインターネットの掲示板に匿名で書き込んだところ、会社の上層部がそれをたまたま見つけて大騒ぎになったという場合について考えてみたいと思います。
アクセスプロバイダへの発信者情報開示要求
会社の犯人捜しは、まずアクセスプロバイダへの発信者情報開示要求から始まります。しかし書き込みの内容が殺人予告など犯罪性のあるものでない限り、プロバイダがすぐ開示に応じることは考えにくいです。なぜならインターネット上のやりとりは通信の秘密として法律上保護されているものです。これを簡単に漏らしてしまうプロバイダなど、誰も使わなくなってしまうでしょう。
そこでプロバイダは自らの信用問題として、「開示してほしければ裁判を起こしてください。開示せよという判決が出たら従います」と突っぱねることになります。書き込まれた側はわざわざ裁判を起こすのは面倒臭いと考え、たいていの場合は泣き寝入りとなります。
ただし、書き込みの内容が人に危害を加える予告であったり、信用毀損や風説の流布など株価に影響を及ぼすようなものであれば、プロバイダによっては開示に応じる可能性もあります。
会社のパソコンを使って書き込みをした場合
もし会社のパソコンを使って書き込みをした場合は、会社のサーバーを調べれば、誰のしわざかほぼ判明します。ただし、社員のプライバシーに関わることなので、会社も調査に踏み切るのは慎重になるでしょう。
会社が社員のメールやアクセスログなどを調べることに入社時の誓約書で同意していたり、就業規則に書いてあれば、いくらプライバシーの侵害を叫んでも無駄です。
発覚した場合の責任
この場合、発生するのは民事責任、刑事責任・行政法上の責任、労働契約上の処分の3つです。
民事責任で考えられるのは「この書き込みのせいで業績が落ちたから損害賠償しろ」というものです。これは新製品についてウソの情報を流したために売り上げが激減した、というような場合はともかく、会社への不満を言った程度ではそれほど大きな金額を請求されることはないでしょう。
刑事責任や行政法上の責任では、信用毀損罪で告発されるとか、風説を流布して株価に影響を与えたとして、証券取引等監視委員会に呼び出され、課徴金を科されることなどが考えられます。
しかし会社員にとって一番怖いのは、3つめの労働契約関係の処分、すなわち減給、けん責、あるいは解雇です。とりわけ解雇されると再就職にも差し支えます。
労働者は労働法によって保護されており、よほどの理由がなければ解雇は難しいです。とはいえ、ここまで開き直るには精神力が必要です。
居酒屋でグチをこぼすのとネットに会社の悪口を書くのは、法的にまったく重みが違うということを意識しましょう
アクセスプロバイダへの発信者情報開示要求
会社の犯人捜しは、まずアクセスプロバイダへの発信者情報開示要求から始まります。しかし書き込みの内容が殺人予告など犯罪性のあるものでない限り、プロバイダがすぐ開示に応じることは考えにくいです。なぜならインターネット上のやりとりは通信の秘密として法律上保護されているものです。これを簡単に漏らしてしまうプロバイダなど、誰も使わなくなってしまうでしょう。
そこでプロバイダは自らの信用問題として、「開示してほしければ裁判を起こしてください。開示せよという判決が出たら従います」と突っぱねることになります。書き込まれた側はわざわざ裁判を起こすのは面倒臭いと考え、たいていの場合は泣き寝入りとなります。
ただし、書き込みの内容が人に危害を加える予告であったり、信用毀損や風説の流布など株価に影響を及ぼすようなものであれば、プロバイダによっては開示に応じる可能性もあります。
会社のパソコンを使って書き込みをした場合
もし会社のパソコンを使って書き込みをした場合は、会社のサーバーを調べれば、誰のしわざかほぼ判明します。ただし、社員のプライバシーに関わることなので、会社も調査に踏み切るのは慎重になるでしょう。
会社が社員のメールやアクセスログなどを調べることに入社時の誓約書で同意していたり、就業規則に書いてあれば、いくらプライバシーの侵害を叫んでも無駄です。
発覚した場合の責任
この場合、発生するのは民事責任、刑事責任・行政法上の責任、労働契約上の処分の3つです。
民事責任で考えられるのは「この書き込みのせいで業績が落ちたから損害賠償しろ」というものです。これは新製品についてウソの情報を流したために売り上げが激減した、というような場合はともかく、会社への不満を言った程度ではそれほど大きな金額を請求されることはないでしょう。
刑事責任や行政法上の責任では、信用毀損罪で告発されるとか、風説を流布して株価に影響を与えたとして、証券取引等監視委員会に呼び出され、課徴金を科されることなどが考えられます。
しかし会社員にとって一番怖いのは、3つめの労働契約関係の処分、すなわち減給、けん責、あるいは解雇です。とりわけ解雇されると再就職にも差し支えます。
労働者は労働法によって保護されており、よほどの理由がなければ解雇は難しいです。とはいえ、ここまで開き直るには精神力が必要です。
居酒屋でグチをこぼすのとネットに会社の悪口を書くのは、法的にまったく重みが違うということを意識しましょう
2013年10月12日土曜日
健康診断と法律
面倒でもサボッてはいけない
健康診断は、労働者の権利ではなく義務です。 事業者は労働者に対して、年1回、定期的に、医師による健康診断を行う義務を負います。ただ、義務が課せられているのは事業者だけではありません。労働者も、健康診断を受ける義務を負っています。自分の好きな病院で受診することも可能だが、その場合も結果を事業者に書面で提出する必要があります。違反しても罰則はないが、だからといって受診しなくていいことにはならないのです。
行政通達によると、健康診断の費用は会社が負担すべきだとされています。ただし、健康診断を行っている時間は、必ずしも法的に有給とする義務はありません。たとえば健康診断に半日かかったら、会社は半休扱いにしたり、その時間の賃金をカットしてもいいのです。
一般的な健康診断について、会社に健康診断時の賃金を支払う義務が課されていないのも、健康診断に関して労使双方が義務を負っているからです。また、会社で働いていようといまいと、人であれば自らの健康管理というものについては、普通に行われてしかるべきである、と考えることもできます。
健康診断を受けないと、相応のリスクもあります。過労で倒れるなどの業務災害に見舞われた場合、一般的には労災保険給付の申請をしたり、会社側に損害賠償請求を行うことになります。しかし法に定められた健康診断を受けていないと、過失相殺されて労働者側に不利に働くケースもあるのです。
一方、会社側のリスクはどうでしょうか。常時50人以上の労働者を使用している事業者は、労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務があります。実施報告書の人数と、実際に受診すべき人数が合わない場合、労基署から勧告や指導が入る可能性もあります。
また、社員に健康診断を受けさせる義務を果たしていないとみなされると、事業者は50万円以下の罰金に処されるのです。
どこから法令違反になるのかはケースバイケースですが、1回、スケジュール調整をして、あとは知らん顔という程度では、義務を果たしたとは認められにくいでしょう。社員がすっぽかしたら、少なくとも何回かは調整が必要です。そうした事業者としての義務を果たそうとした努力の経緯を労基署に説明できないと、違反とされるおそれがあります。
こうしたリスクを考えると、健康診断を渋る社員にも、何とか受診させたいところです。そのためには所定時間内で会社が賃金を負担するなど、社員が受診しやすい環境を整えることが第一でしょう。
就業規則に「社員は健康の維持に努め、会社の指定する医師の診断を受けなければならない。」と明記してもよいでしょう。就業規則に定めがあれば、それを根拠として社員に働きかけることが可能です。健康診断の受診拒否を理由として処分できるとしても、処分の程度は比較的低いものと考えるのが一般的ですが、十分に効果があるはずです。
検査項目を断れるのか?
年に1回、会社で受ける健康診断は、会社が費用を負担してくれるものです。タダで健康管理ができて、ありがたいことですが、なかには体重やメンタルヘルスの結果など、人に知られたくない項目もありますよね。断れる検査はないのでしょうか。
法律によれば、事業者は労働者に対して医師による健康診断を行う義務を負っています(労働安全衛生法第66条1項)。そうして法律は快適な職場環境を確保し、経済活動を下支えしています。違反した企業は労働犯罪として処罰の対象(最高で50万円の罰金)になる可能性すらあります。
ただ、義務を負うのは会社側だけではありません。労働者側にも事業者が行う健康診断を受ける義務があります(同条5項)。
健康診断には、法律で必須とされている項目と、そうでない項目があります。必須項目については、当然ながら受診拒否はできません。必須でない項目についても、会社側の安全配慮義務や労働者側の健康保持義務の観点から、診断を受けさせる義務・受ける義務がある程度認められています。しかし、仕事に関係がないものや就業規則に書かれていないものはグレーゾーンで、拒否できる余地があります。
たとえばメンタルヘルスは法定外の項目です。法律では時間外労働が月80時間を超えた人にカウンセリングを受けさせるよう決まっていますが、そうでない人にまで定期健康診断で精神科の面接を受けさせるのはやりすぎで、拒否できる可能性は十分にあります。
一方、必須項目である体重については測定を拒否できず、会社に内緒にしておくこともできません。「体重は個人情報だから教えたくない」という理屈も通らないのです。個人情報保護法では、会社が個人情報を取得する場合には従業員の同意が必要とされています。しかし、他の法律で定めがあるときは適用外です。体重については労働安全衛生法に定められているので、個人情報保護法を盾に取ることはできません。
もっとも、健康診断実施の事務に従事した人がそこで知りえた秘密を漏らす行為は法律違反となります(労安法104条)。必要があれば直属の上司に通知されるケースもありますが、必要もないのに健康診断の結果を社内に広めることは許されません。秘密を洩らした人は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金で、会社も刑事罰を受けることになります。
見落としの責任は問えるか
診断を受ける側にとっては、無料であるため、その重要性が見落とされがちですが、健康診断を通じて、ガンなど重大な病気の発見につながることもあります。
しかし、大企業の定期健診を担当している医師の中には、診断が不十分な場合もあります。
従業員が多い企業の健康診断では、担当医が一度に大量の診断を余儀なくされます。定期健診の対象となる従業員の頭数が増えるほど、担当医の実入りはよくなります。
一方、従業員ひとりにかける時間や集中力が減殺され、問題ある症状を見落としかねません。ガンなどの早期発見を逸する危険も高まります。 殊に肺ガンの兆候を見極めるレントゲン読影では、病巣の影と、それ以外の影(鎖骨や昔かかった結核の痕など)との区別をしづらい場合があるそうです。 そこで、その人の過去のレントゲン写真と見比べ、変化を読み取る『比較読影』が重要となります。にもかかわらず、一度撮影したレントゲン写真を倉庫へしまい込んだまま比較を怠る、おざなりな健康診断も横行しています。
では、医師は定期健診の診断結果に対してどの程度責任を負うのでしょうか。
ガンなどを含めて病気の兆候を見落とされた場合は医療ミスとして医師の責任を問うことができます。多額の損害賠償や慰謝料を患者側が請求できる医療ミスとしては、手術や投薬の間違いなど。加えて、健康診断のように保健福祉的な領域でも、その落ち度に関して法的な責任を問える場面があります。
たとえば、健診の後に、ガンなど重大な病気にかかり、大手術を受けて命は助かった場合を考えてみましょう。
仮に健診が真っ当に行われていれば、ガンを早期発見でき、小さな手術で済んだはずであることが証明できたのなら、その差額や精神的苦痛を損害賠償として請求できます。
しかし、たとえば不幸にして亡くなってしまった場合、遺族が損害賠償を請求しても、症状の進行が早い肺ガンなどの疾病では、「仮に見落としがなかったとしても、手遅れでいずれ亡くなっていたでしょう」と判断されることもあり得ます。その場合は見落としと死亡の間に因果関係がなくなるため、死亡についての法的責任は問えません。
このように、実際に損害賠償が認められるかどうかは、個別のケースによるということになります。
医療訴訟は専門的で敷居の高い分野です。健診のミスを指摘するには、別の医師による証言が必要ですが、まるで同業者を売るかのような証言には多くの医師が躊躇することもあり、協力を得るのは簡単ではありません。このような医療事故に遭った場合は、医療裁判に関する経験や人脈が豊富な弁護士を頼るべきでしょう。
健康診断は、労働者の権利ではなく義務です。 事業者は労働者に対して、年1回、定期的に、医師による健康診断を行う義務を負います。ただ、義務が課せられているのは事業者だけではありません。労働者も、健康診断を受ける義務を負っています。自分の好きな病院で受診することも可能だが、その場合も結果を事業者に書面で提出する必要があります。違反しても罰則はないが、だからといって受診しなくていいことにはならないのです。
行政通達によると、健康診断の費用は会社が負担すべきだとされています。ただし、健康診断を行っている時間は、必ずしも法的に有給とする義務はありません。たとえば健康診断に半日かかったら、会社は半休扱いにしたり、その時間の賃金をカットしてもいいのです。
一般的な健康診断について、会社に健康診断時の賃金を支払う義務が課されていないのも、健康診断に関して労使双方が義務を負っているからです。また、会社で働いていようといまいと、人であれば自らの健康管理というものについては、普通に行われてしかるべきである、と考えることもできます。
健康診断を受けないと、相応のリスクもあります。過労で倒れるなどの業務災害に見舞われた場合、一般的には労災保険給付の申請をしたり、会社側に損害賠償請求を行うことになります。しかし法に定められた健康診断を受けていないと、過失相殺されて労働者側に不利に働くケースもあるのです。
一方、会社側のリスクはどうでしょうか。常時50人以上の労働者を使用している事業者は、労働基準監督署に健康診断の結果を報告する義務があります。実施報告書の人数と、実際に受診すべき人数が合わない場合、労基署から勧告や指導が入る可能性もあります。
また、社員に健康診断を受けさせる義務を果たしていないとみなされると、事業者は50万円以下の罰金に処されるのです。
どこから法令違反になるのかはケースバイケースですが、1回、スケジュール調整をして、あとは知らん顔という程度では、義務を果たしたとは認められにくいでしょう。社員がすっぽかしたら、少なくとも何回かは調整が必要です。そうした事業者としての義務を果たそうとした努力の経緯を労基署に説明できないと、違反とされるおそれがあります。
こうしたリスクを考えると、健康診断を渋る社員にも、何とか受診させたいところです。そのためには所定時間内で会社が賃金を負担するなど、社員が受診しやすい環境を整えることが第一でしょう。
就業規則に「社員は健康の維持に努め、会社の指定する医師の診断を受けなければならない。」と明記してもよいでしょう。就業規則に定めがあれば、それを根拠として社員に働きかけることが可能です。健康診断の受診拒否を理由として処分できるとしても、処分の程度は比較的低いものと考えるのが一般的ですが、十分に効果があるはずです。
検査項目を断れるのか?
年に1回、会社で受ける健康診断は、会社が費用を負担してくれるものです。タダで健康管理ができて、ありがたいことですが、なかには体重やメンタルヘルスの結果など、人に知られたくない項目もありますよね。断れる検査はないのでしょうか。
法律によれば、事業者は労働者に対して医師による健康診断を行う義務を負っています(労働安全衛生法第66条1項)。そうして法律は快適な職場環境を確保し、経済活動を下支えしています。違反した企業は労働犯罪として処罰の対象(最高で50万円の罰金)になる可能性すらあります。
ただ、義務を負うのは会社側だけではありません。労働者側にも事業者が行う健康診断を受ける義務があります(同条5項)。
健康診断には、法律で必須とされている項目と、そうでない項目があります。必須項目については、当然ながら受診拒否はできません。必須でない項目についても、会社側の安全配慮義務や労働者側の健康保持義務の観点から、診断を受けさせる義務・受ける義務がある程度認められています。しかし、仕事に関係がないものや就業規則に書かれていないものはグレーゾーンで、拒否できる余地があります。
たとえばメンタルヘルスは法定外の項目です。法律では時間外労働が月80時間を超えた人にカウンセリングを受けさせるよう決まっていますが、そうでない人にまで定期健康診断で精神科の面接を受けさせるのはやりすぎで、拒否できる可能性は十分にあります。
一方、必須項目である体重については測定を拒否できず、会社に内緒にしておくこともできません。「体重は個人情報だから教えたくない」という理屈も通らないのです。個人情報保護法では、会社が個人情報を取得する場合には従業員の同意が必要とされています。しかし、他の法律で定めがあるときは適用外です。体重については労働安全衛生法に定められているので、個人情報保護法を盾に取ることはできません。
もっとも、健康診断実施の事務に従事した人がそこで知りえた秘密を漏らす行為は法律違反となります(労安法104条)。必要があれば直属の上司に通知されるケースもありますが、必要もないのに健康診断の結果を社内に広めることは許されません。秘密を洩らした人は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金で、会社も刑事罰を受けることになります。
見落としの責任は問えるか
診断を受ける側にとっては、無料であるため、その重要性が見落とされがちですが、健康診断を通じて、ガンなど重大な病気の発見につながることもあります。
しかし、大企業の定期健診を担当している医師の中には、診断が不十分な場合もあります。
従業員が多い企業の健康診断では、担当医が一度に大量の診断を余儀なくされます。定期健診の対象となる従業員の頭数が増えるほど、担当医の実入りはよくなります。
一方、従業員ひとりにかける時間や集中力が減殺され、問題ある症状を見落としかねません。ガンなどの早期発見を逸する危険も高まります。 殊に肺ガンの兆候を見極めるレントゲン読影では、病巣の影と、それ以外の影(鎖骨や昔かかった結核の痕など)との区別をしづらい場合があるそうです。 そこで、その人の過去のレントゲン写真と見比べ、変化を読み取る『比較読影』が重要となります。にもかかわらず、一度撮影したレントゲン写真を倉庫へしまい込んだまま比較を怠る、おざなりな健康診断も横行しています。
では、医師は定期健診の診断結果に対してどの程度責任を負うのでしょうか。
ガンなどを含めて病気の兆候を見落とされた場合は医療ミスとして医師の責任を問うことができます。多額の損害賠償や慰謝料を患者側が請求できる医療ミスとしては、手術や投薬の間違いなど。加えて、健康診断のように保健福祉的な領域でも、その落ち度に関して法的な責任を問える場面があります。
たとえば、健診の後に、ガンなど重大な病気にかかり、大手術を受けて命は助かった場合を考えてみましょう。
仮に健診が真っ当に行われていれば、ガンを早期発見でき、小さな手術で済んだはずであることが証明できたのなら、その差額や精神的苦痛を損害賠償として請求できます。
しかし、たとえば不幸にして亡くなってしまった場合、遺族が損害賠償を請求しても、症状の進行が早い肺ガンなどの疾病では、「仮に見落としがなかったとしても、手遅れでいずれ亡くなっていたでしょう」と判断されることもあり得ます。その場合は見落としと死亡の間に因果関係がなくなるため、死亡についての法的責任は問えません。
このように、実際に損害賠償が認められるかどうかは、個別のケースによるということになります。
医療訴訟は専門的で敷居の高い分野です。健診のミスを指摘するには、別の医師による証言が必要ですが、まるで同業者を売るかのような証言には多くの医師が躊躇することもあり、協力を得るのは簡単ではありません。このような医療事故に遭った場合は、医療裁判に関する経験や人脈が豊富な弁護士を頼るべきでしょう。
2013年10月4日金曜日
解雇特区って・・・
日経新聞の記事
突っ込みどころは、
① そもそも論として、人材の流動化を進めたいなら、対象を特区ではなく社会全体に広げないと、需要供給のバランスが取れない。「特区に入ったが最後、常に雇用が不安定」となる一方で、特区外は相変わらず雇用が固定しているのでは、どうにもなりません。対象者が不幸になるだけではないでしょうか。人は物じゃないんです。特区という発想自体、どうかと思います。
② 対象者については、修士号保有者まで含める点で広汎すぎると思います。今や修士号保有者は結構多いし、そもそも修士号があるからといっても、即就職につながるとは限らないような気がします。
③ また、弁護士も例としてあげられているけれど、そもそも企業内弁護士はまだ少ないし、契約形態も雇用契約とは限らないので、あまり関係ない気がします。
④ そもそも、外資系企業においては、もとから雇用が不安定です。ここで解雇規制を緩和したところで、外資系企業にとって日本の魅力がUPするとは思えません。外資系企業にアピールしたいなら、やはり法人税の減税とか、思い切った変革が必要です。
実際のところは、これをきっかけに解雇規制を緩和したいだけではな
アメリカのように、徹底的に雇用が流動化して
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