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2015年1月2日金曜日

プロバイダ責任制限法 著作権関係ガイドライン

 著作権関係ガイドラインは、特定電気通信(法2条1号) による著作権及び著作隣接権(「著作権等」)を侵害する情報の流通に関し て、プロバイダ等が責任を負わない場合を定めるプロバイダ責任制限法3条の趣旨を踏 まえ、情報発信者、著作権者等、プロバイダ等のそれぞれが置かれた立場等を考慮しつ つ、著作権者等及びプロバイダ等の行動基準を明確化するものである。

 これにより、関係者の予見可能性を高め、特定電気通信による著作権等を侵害する情報の流通に対する プロバイダ等による迅速かつ適切な対応を促進し、もってインターネットの円滑かつ健 全な利用を促進することを目的とするものである。

著作権関係のガイドラインの目的


特定電気通信を侵害する情報の流通に関して、プロバイダ等が責任を負わない場合を定めるプロバイダ責任制限法3条の趣旨を踏まえ、情報発信者、著作権者等プロバイダ等のそれぞれが置かれた立場等を考慮しつつ、著作権者等及びプロバイダ等の行動基準を明確化するものである。これにより、関係者の予見可能性を高め、特定電気通信による著作権等を侵害する情報の流通に対するプロバイダ等による迅速かつ適切な対応を促進し、もってインターネットの円滑かつ適切な対応を促進し、もってインターネットの円滑かつ健全な利用を促進することを目的とするものである。
プロバイダ等が発信者に連絡をして7日間経っても反論がない場合(法3条2項2号)でなくとも、速やかに削除等の送信防止措置を講ずることが可能な場合を現段階で可能な範囲で明らかにする。

ガイドラインの位置付け


 本ガイドラインは、プロバイダ等が責任を負わずにできると考えられる対応を可能な範囲で明らかにしたものであってプロバイダ等の義務を定めたものではない。

 その情報の流通によって本当に権利侵害があったか否か、さらに、情報を誤って削除 し、又は放置したことによってプロバイダ等が責任を負うか否かは、最終的には裁判所 によって決定されるものである。したがって、個々の事案において、作成されたガイド ラインに即した対応が行われたとしても、それのみで裁判所によっても法3条の「相当の理由」があると判断されるものではなく、ガイドラインの内容及びその作成手続にその信頼性を担保する根拠があり、著作権者等及びプロバイダ等が当該信頼性の高いガイ ドラインに従って適切に対応している場合において、はじめて裁判所によっても法3条 の「相当の理由」があると判断され、プロバイダ等が責任を負わないとされるものと期 待される。

 なお、ガイドラインに定めがなく、又はガイドラインの定める要件を満たさない場合であっても、プロバイダ責任制限法3条の「相当の理由」に核当する場合もありうるものである。


ガイドラインの適用範囲


申出の主体

送信防止措置の申し出をする者は、著作権等を侵害されたとする者本人及び弁護士等の代理人とする。

対象とする著作権等侵害の範囲

特定電気通信による情報の流通により著作権等が侵害される場合を対象とする。

対象とする著作物等の範囲

著作権等が侵害されている著作物、実演、レコード、放送及び有線放送及び侵害されている可能性がある著作物等を対象とする。

対象とする権利侵害の態様

(1)    著作権等侵害であることが容易に判断できる態様
著作権等侵害であることを自認しているもの
全部又は一部を丸写ししたファイル
標準的な圧縮方式により圧縮したもの
(2)    一定の技術を利用すること、個別に視聴等して著作物等と比較すること等の手間をかけることにより、著作権侵害であることが判断できる態様


参考

2015年1月1日木曜日

電子掲示板や投稿サイトの運営・管理者の法的義務とプロバイダ責任制限法 


制定の背景


 掲示板に他人の権利を侵害する書き込みがあるにもかかわらずこれを放置した場合,掲示板運営者は、損害賠償請求を受けることがある。

 インターネット上でサービスを提供する事業者は,(1)自らがコンテンツを提供する「コンテンツ・プロバイダ」と,(2)自分は情報を発信せず,情報発信者と受信者を媒介する「アクセス・プロバイダ」に分類できる。電子掲示板の運営者は一般に,(2)のアクセス・プロバイダに当たる。

 コンテンツ・プロバイダが,違法な情報や他人の権利を侵害する情報の発信について責任を負うのは当然である。ここで言う他人の権利には,以下のものがある。

  • 名誉権
  • プライバシー
  • 氏名権、肖像権
  • パブリシティ権
  • 著作権
  • 商標権
  • 意匠権
  • 営業秘密
  • 特許権

 しかし,アクセス・プロバイダは情報発信者ではない。このため,情報の内容までは法的責任を負わないのが原則である。この原則は,ニフティサーブ事件判決でも確認されている(東京高等裁判所2001年9月5日判決,判例タイムズ1088号94頁)。  

 ニフティサーブ事件は,掲示板で誹謗中傷を受けた女性が書き込みを行った大学講師を名誉毀損で訴えたもので,裁判所は大学講師に対しては損害賠償を命じたが,掲示板の運営者であるニフティには損害賠償義務はないと判断した。   

 とはいえ,掲示板に他人の権利を侵害する書き込みがあることを知りながら,運営者であるアクセス・プロバイダが削除せずに放置すると,「故意または過失により他人の権利を侵害した」として民法上の「不法行為責任」を負うことになる(動物病院事件(東京地方裁判所2002年6月26日判決,判例タイムズ1110号92頁))。

 一方で,不法行為責任を負うのを避けるために,アクセス・プロバイダが安易に書き込みを削除すると,今度は「表現の自由を侵害した」,「サービス契約に違反した」といった理由で,発言者側から訴えられる恐れがある。いわば、アクセス・プロバイダは、板挟み状態になる。

 このように、インターネット上の情報流通によって他人の権利が侵害されたとされる場合には、情報発信者、権利者、特定電気通信役務提供者(サーバの管理・運営者や電子掲示板の管理・運営者等(「プロバイダ等」))の三者の利害関係が絡むため、時として、その情報流通に対するプロバイダ等の対応には困難な場合がある。

 このような中で、平成13年11月にプロバイダ等の民事上の責任を制限する規定を有する特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号。以下、「プロバイダ責任制限法」又は単に「法」という。)が成立した。

法律の趣旨


この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。

・①損害賠償責任の制限、②発信者情報の開示、の2点を規定
・特定個人の民事上の権利侵害があった場合を対象

法律の対象


特定電気通信

不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)

・インターネットでのウェブページや電子掲示板などの不特定の者により受信されるものが対象
・ただし、放送に当たるものは、放送法等での規律があるため、対象外


特定電気通信役務提供者


特定電気通信設備(特定電気通信の用に供される電気通信設備)を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者

・プロバイダ、サーバの管理・運営者等が対象
・典型的には電気通信事業者に当たるプロバイダが対象になるが、営利の者に限定していないため、電気通信事業者以外の者も対象となる


 法律では,アクセス・プロバイダのことを「特定電気通信役務提供者」と呼んでいるが,その範囲は広い。企業か個人かは問わないし,営利事業ではなく非営利で掲示板を運営している場合も,特定電気通信役務提供者とみなされる。

削除の条件


 プロバイダー責任制限法は,被害者から削除要求があったことを発言者に通知し,7日以内に発言者が異議を唱えなければ,プロバイダが書き込みを削除しても発言者に対して一切の責任を負う必要はない,と定めている。これにより,他人の権利を侵害する書き込みを削除しやすくなった。

 また,被害者に対して損害賠償などの責任を負う条件も,「書き込みが権利を侵害していることを知ることができ,かつ削除が技術的に可能であるのに削除しなかった場合に限られる」と,明確に規定した(第3条)。

発言者情報開示の条件


 掲示板の書き込みは通常,匿名で行われることが多い。このため,権利を侵害された被害者が発信者に対して損害賠償を請求する際には,発信者の住所・氏名をプロバイダに開示してもらう必要がある。

 しかしプロバイダが発言者情報を開示すると,発信者の側からプライバシや「表現の自由」,「通信の秘密」を侵害したと抗議され,場合によっては法的責任を追及されることも起きてしまう。

 そこで,プロバイダー責任制限法は,プロバイダが発言者情報を開示する条件も明確にした。書き込みによって権利を侵害されたことが明らかであり,発言者情報の開示を受ける正当な理由があるときに限り,被害者が発信者情報の開示を請求できる,としたのである。ただし,プロバイダが判断に迷って開示を拒否したとしても,重大な過失がない限り,損害賠償の責任を負わないと定めている(第4条)。

 プロバイダー責任制限法により,書き込みの削除や発言者情報の開示に関する条件はある程度明確になった。しかし,実際問題として名誉権侵害などの権利侵害の有無の判断は難しいことも多い。


常に免責されるわけではない


 基本的には違法コンテンツであるとの申し出があり,プロバイダ等がそれに従って削除すれば,著作権者側からの損害賠償責任を免れることが可能な場合が多い,と考えられる。ただし,全く問題がないわけではない。

 この点参考となるのが,「ファイルローグ事件判決」である。ファイルローグ事件は,P2P(ピアツーピア)技術を利用した音楽ファイル交換サービスを提供していた会社に対して,著作権侵害が問われた事件である。この事件の場合,ユーザー同士はファイルをやり取りするためにP2P技術を利用しており,サービス提供会社が音楽情報ファイルを直接送信していたわけではない。したがって,形式的にみれば,サービス提供会社は公衆送信などを行った主体(当事者)とは言えない。

 しかし、同判決は,サービスで交換されていたファイルの大部分が市販CDなどを複製したものであることなどを理由に,サービス提供会社も著作権等の侵害主体になると判断した。P2Pのサービス提供会社が著作権侵害主体となり得るのであれば,プロバイダ責任制限法の適用がありそうにも思える。しかし,結論としてはプロバイダ責任制限法による免責は受けられない,と判断した。

 プロバイダ責任制限法には免責されない例外的な場合がある(3条1項)。サービス提供者自身が権利侵害情報(違法コンテンツ)の「発信者」となる場合には免責が受けられない,と定めている

 動画/画像の共有配信サービスで考えれば,通常は動画を配信サーバーに投稿するユーザーが典型的な「発信者」である。

 ところが,ファイルローグ事件では,運営会社自身も違法複製ファイルを流通過程におくことに積極的にかかわっており「発信者」に該当する,したがって、プロバイダ責任制限法の適用対象外であると判断した。

 ファイルローグの事案は,P2Pのファイル交換システムが対象となっているので,動画共有配信事業とは事案は異なる。しかし、P2Pファイル交換システムの提供者は動画共有配信事業者よりもコンテンツのコントロール,管理の度合いが間接的であるにもかかわらず,著作権侵害の主体であると判断されている。したがって、より管理が容易であると思われる動画共有配信事業者の方が「侵害主体」であると判断される可能性は高いと言える

 動画共有配信事業者がプロバイダ責任制限法の「発信者」であるかどうかを判断する枠組みは,P2Pであるかどうかとは直接の関係はない。あくまでも,「実態」がどうなっているのかが重視される。

 したがって、サービス実態(違法なコンテンツがほとんどの場合等)によっては,動画共有配信事業者がプロバイダ責任制限法の適用を受けられないで「違法である」と判断される余地は残る。

参考

2013年12月11日水曜日

プロバイダー責任制限法

 プロバイダー責任制限法は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者(プロバイダ、サーバの管理・運営者等。以下「プロバイダ等」といいます。)の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものです。

 インターネットや携帯電話の掲示板などで誹謗中傷を受けたり、個人情報を掲載されて、個人の権利が侵害されるなどの事案が発生した場合、プロバイダ事業者や掲示板管理者などに対して、これを削除するよう要請しますが、事業者側がこれらを削除したことについて、権利者からの損害賠償の責任を免れるというものです。

 また、権利を侵害する情報を発信した者の、情報の開示請求ができることも規定しています。

 削除要求の方法は、権利を侵害された個人かその代理人(弁護士等)が、書面であれば実印を押印して印鑑証明をつけて、電子メールであれば電子署名をつけて、行うことになります。代理人が行う場合には、委任状の添付が求められます。

 削除要求の様式等については、 (社)テレコムサービス協会(http://www.telesa.or.jp)のホームページに、ガイドラインが示されています。

 プロバイダ責任制限法については、 総務省電気通信消費者相談センター (http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/madoguchi/tushin_madoguchi.html)へ、発信者情報の開示請求については、各プロバイダ事業者へ直接確認してください。

 総務省令によれば、開示請求できる発信者の情報は、
1 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
2 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
3 発信者の電子メールアドレス
4 侵害情報に係るIPアドレス
5 前号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
とされています。

参考

プロバイダ責任制限法関連情報Webサイト

プロバイダ責任制限法について(警視庁)

2013年10月19日土曜日

インターネット上の名誉毀損

 1. ネット上に事実無根の自分の悪評が書かれた場合

インターネット上の誹謗中傷は依然として続いています。決して他人事ではありません。

このところ、有名人のブログや掲示板に誹謗中傷や脅 迫的な書き込みを行って検挙されるケースが見られます。根も葉もないウワサを真に受けた人たちが集団的に攻撃的な書き込みを行い、いわゆる「炎上」に至ら せるケースも多くなっています。

従来は「2ちゃんねる」のような悪口サイトが中心でしたが、最近は、就職や結婚などのクチコミサイトやツイッターなどにも書き込まれることがあります。そのなかには過激で悪質なものも含まれており、被害者は思わぬダメージを受けてしまいます。

こうした名誉毀損や脅迫行為は、民事的には不法行為(民法709条)、刑事的には名誉毀損罪(刑法230条)や脅迫罪(刑法222条)に該当する可能性があります。

被害を受けたときの対応としては、民事的には、ブログや掲示板の管理者やホスティング業者に対して記事の削除を求めるとともに、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求によって発信者を特定して、損害賠償などの請求を行うという方法が考えられます。

 この場合、掲示板管理者などの下にはIPログ情報しかないのが通常ですから、その開示を受けたうえで、WHOIS検索(IPログの接続情報を調べるサービ ス)によって判明するISP(インターネットサービスプロバイダ)事業者に対して、第二段階の開示請求を行うことになります。

ISP事業者の下には、問題の投稿の日時に当該IPアドレスを付与した契約者に関する情報があるので、これによって投稿者を特定することができます。その 際、ISP事業者がIPログ情報を保存する期間は、短いところでは2カ月程度しか保存されないとも言われていますので、迅速に対処する必要があるでしょ う。

情報の流通による権利侵害が明白と事業者側が判断できない場合には裁判によることになりますが、第一段階の掲示板管理者などに対する場面では裁判所も開示の仮処分を認める傾向にありますので、短期間に最終のISP事業者の下までたどり着けることが多いと言えます。

削除請求を内容証明郵便で送付

被害に遭ったら、まずサイト管理者(コンテンツプロバイダ)に削除を求めましょう。その場合は、メールや問い合わせフォーマットを使っても構いませんが、被害個所を特定して「ここは不当なので削除せよ」と内容証明を送るのが無難です。これで大方は消してもらえ、解決に至ります。

やっかいなのは、削除を拒否された場合です。また、再び中傷を書き込まれたときに備えて、発信者が誰なのかを知っておきたいということもあるはずです。しかし、サイト管理者は表現の自由や個人情報保護を盾に「消さない」とか「情報は出せない」といってくることもあります。


プロバイダ責任制限法に基づいた仮処分申請

サイト管理者が、表現の自由や個人情報保護を根拠に、「消さない」とか「情報は出せない」といってくるときは、2002年に施行されたプロバイダ責任制限法に基づいた仮処分申請を行います。この法律は、被害者救済を重視しています。

リスクを避けたいと考えるサイト管理者は、違法情報であればおおむね削除しますし、持っているIPアドレスとタイムスタンプ(発信日時)を出してくることも多くなりました。

 この2つが入手できれば、サイトへの投稿を媒介する接続業者(アクセスプロバイダ)を特定し、発信者(契約者)を突き止める手がかりが得られたことになります。書き込みが消され、発信者につながる情報を得ることができれば、そこで矛を収めるという選択肢もありえます。

損害賠償請求訴訟

さらに、発信者に謝罪ないしは何らかの賠償をさせたい場合、IPアドレスからネット検索などで特定した接続業者に対して「発信者の氏名・住所の開示」を請求する訴訟を起こすことになります。

その際、訴える側に有利に働くのが、2010年4月8日に最高裁が出した判決です。これは、ネット上で名誉毀損などに当たる書き込みがなされた場合、接続業者に発信者情報を開示する義務があるとしたものです。実際に熾烈な争いになることはまずなく、数回程度の口頭弁論で終わることも多いです。 こうして、発信者本人が判明すれば、今度は発信者、すなわち加害者を名誉毀損で民事訴訟に持ち込めば好いでしょう。

ただし、示談になることもよくあります。「2度とやらない」という旨の念書を取り、慰謝料を受け取ります。

しかし、示談での慰謝料は高額を期待できないことも多く、判決になれば弁護士費用は損害額の1割程度しか認められません。裁判に1、2年近くかかることもあり、その間のコストを考えれば経済的合理性を欠くことになってしまいます。


悪質で被害が重い場合は警察に「被害届」を出す 

 「2ちゃんねる」などの一部の掲示板では、民事裁判手続きを事実上無視しているため、発信者情報を遡ることが困難になっています。

 被害が重い場合などは、刑事事件に発展する可能性も高くなりますので、警察への被害届提出や告訴を検討することになるでしょう。 この点、「2ちゃんねる」などでは民事裁判手続きが無視されるために、一般的に刑事手続きによらなければならない現状があり、刑事法の謙抑性に照らすと憂慮される状況となっています。

また、刑法に定める名誉毀損罪で告訴を試みても、警察や検察での立件が難しい面があります。

さらに、①内容に公共性がある、②目的に公共性がある、③内容が真実と証明できる、の3点を満たせば罪に問えません。特に③の真実についての論点が重要になりますが、ネット上の言論の真実性については事案に応じて裁判所の個別判断になります。

ま た、IPアドレスなどのアクセスログ(利用履歴)の保存期間は法律で定められていません。そのため、大手プロバイダでも3カ月~半年ぐらいしか保存しない ことが多いのです。しかも最近の傾向として、どんどん短くなってきています。削除だけでなく、発信者を探り出すには、早めに動き出すことが大切です。


2. クチコミサイトでお店の悪口を書かれたら

飲食店やホテルを選ぶときに役立つ口コミサイト。実際に足を運んだユーザーが書き込むリアルな評価が人気の秘密です。しかし一方で、悪口を書き込んで店とトラブルになることもあるようです。

真っ先に思い浮かぶのは民事における損害賠償請求ですね。また、名誉毀損は犯罪行為でもあります。3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金という刑事罰に処されるおそれがあるのです(刑法230条)。

たとえばラーメン店がカルト集団と一体であるかのような書き込みをした男性が名誉毀損罪に問われた裁判では、2010年3月、最高裁が被告側の上告を棄却。罰金30万円の有罪判決が確定しました。

どのような書き込みをしたら罪に問われるのでしょうか。

意見の表明なら、名誉毀損罪にあたりません。

名誉毀損罪は、事実の摘示が要件の一つ。たとえば『店にゴキブリがいた』という事実を書いてはじめて名誉毀損罪に問われる可能性が生じます。単に『おいしくない、汚い、接客が気に入らない』と感想を書くだけなら表現の自由です。

しかし、単に感想を述べるだけでは説得力に欠けてつまらないでしょうから、自分の意見を裏づけるために、客観的事実を書くケースもあるでしょう。

この場合は、事実が真実であるかどうかが分かれ目になります。ウソをついたら、名誉を傷つけたとして名誉毀損罪になりえます。

また、虚偽の情報でお店の経済的評価を貶めたり、営業に支障をきたせば、信用毀損罪・業務妨害罪に処されます(刑法233条)。信用毀損罪・業務妨害罪の法定刑は、名誉毀損罪と同じです。どちらにしてもウソはご法度です。

では、真実なら何を書いてもいいのでしょうか。

そうではありません。名誉毀損罪は、公共の利害にかかわる事実で、目的が公益を図ることだった場合、それが真実なら罰しないことになっています(刑法230条の2)。逆に言えば、内容に公共性がなかったり、目的に公益性がなければ、本当のことを書いても名誉毀損罪が成立します。

個人のプライバシーを暴くような書き込みは公共性がないためにアウトです。

ただし、通常のグルメ批評であれば、刑事事件として立件される可能性はほとんど考えられないでしょう。一般的に飲食店は公衆を相手に商売しているので、料理やサービスに関するレビューは利害公共性があると考えられます。また目的公益性に関しても、個人的な嫌がらせや復讐心であることを証明するのは現実的には難しい場合もあるでしょう。


 なお、民事での損害賠償も同じ枠組みです。店に損害が発生しても、内容が真実で公共性があり、目的に公益性があれば、賠償請求は認められません。

3. 犯罪にあたる書き込み
 
 ネット上の書き込みや投稿を巡っては民間団体「インターネット・ホットラインセンター(IHC)」が、薬物広告や児童ポルノといった存在自体が違法の「違法情報」などを中心に民間からの通報を受理しています。