ページ

2013年11月7日木曜日

印鑑

実印と認印

近ごろでは印鑑の代わりに署名で済ませられる場面が増えてきました。本人が申請して役所で住民票をとるときや、一部の外資系金融機関で口座を開設する場合などでは、署名が印鑑の代わりの役割を果たしています。

そもそも、印鑑は申請や契約などに必要ないものなのでしょうか。

印鑑や署名どころか、契約書自体がなくても、たとえば口約束だけでも契約は成立しえます。

では、契約書や印鑑の役割とは何でしょうか。

それは、成立した契約が確かに存在したことを、客観的な証拠として残すことにあります。 特に印鑑は、後に争いとなり、裁判になった際の立証場面で、大きな役割を持つ可能性があります。それは、民事訴訟法228条4項に「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」との規定があるからです。

法律用語で「推定」とは、裁判で立証が済んだものとして扱われることを意味します。相手方が反証をしない限り、「推定」が維持され、契約書を証拠として示した側の勝訴となります。

ここで注意が必要なのが、「署名又は押印」が推定の条件になっているということです。法律上、契約の存在を示す証拠として、署名と押印は同じだということになります。両者で違いが出てくるのは、署名や押印が偽造されたことなどが疑われる場合、つまりもう一つの条件である「本人又はその代理人の」署名や押印であるかどうかが争われる場合です。

署名の場合には、筆跡鑑定が行われます。筆跡鑑定を行うには資格などは必要なく、誰でもできるものではありますが、裁判では、科学捜査研究所の出身者が行った鑑定結果が比較的信頼されています。具体的には、署名を一文字ずつ、たとえば、『最初の文字は明らかに違う、次の文字のここは類似していてここの部分は違うがどちらかというと類似している、その次の文字は明らかに同じ』というように鑑定し、それらの判断の組み合わせで、全体としてはどうかという結論を出します。もっとも、裁判官の判断を拘束する力は弱いようです。


このように手間とコストをかけても確定した判断が難しい署名に比べて、押印には「印鑑証明」というシステムがあります。署名の横に実印を押し、役所が発行した印鑑証明書を添えれば、当事者の意思で押印されたものと事実上推定されます。もちろん、この強力な効力により、逆に悪用される危険性もあります。

法人の実印であれば、厳重に保管し、押印の記録を残すのは必須です。押印の場に必ず2人以上の関係者を立ち会わせるようにするなどの慎重さも求められます。

一方、個人のいわゆる認印や三文判、法人の角印など、印鑑登録をしていない印鑑には「推定」の法的効力がありません。頻繁に使われ、印影も比較的シンプルであるため、どこかに押したものをスキャンして偽造される危険性も高いです。個人の印鑑は大量生産されている場合も多く、お金を出せば同じものを買えることすらあります。

したがって、争いとなった場合、印鑑登録されていない印鑑は実印よりも効果が大きく劣るのです。

署名とセットで使われることが多い個人の認印とは違い、法人の角印の場合、会社名や住所などは印刷やゴム印であることも多いです。

では、偽造などのトラブルを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

署名や会社名の上に認印や角印を重ねて押せば、黒と赤のインクの跡が交わり、他者による偽造が難しくなるります。なんとなく、あるいはスペースがないからという理由で、文字に重ねて押印していた人も多いでしょう。しかしこの習慣には、押印の偽造を防いでトラブルを予防する意味合いがあるのです。



2013年11月6日水曜日

NISA(ニーサ)

いよいよ来年1月からNISA(少額投資非課税制度)(ニーサ)が始まります。

NISAの5つのポイント
[1]投資信託・上場株式等の譲渡益・配当金等が非課税
[2]年間100万円の非課税枠
[3]最大500万円の投資額に対して最長5年間非課税
[4]対象は日本に住む20歳以上の方
[5]開設できるNISA口座は1人1口座

NISAに関するよくある質問

Q1:現在、特定口座で定期積立をしていますが、NISA口座を開いた場合はどう なりますか?

A1:現在、特定口座または一般口座で定期積立を利用する人は、NISA口座開設後、年間累計買付額が100万円になるまでは自動的にNISA口 座での買付になります。(選択することはできません)

Q2:NISA口座内と他の口座の損益通算はできますか?

A2:NISA口座の売買損益は、他の口座(特定/一般口座)との売買損益の通算はできません。

2013年11月5日火曜日

メールアドレスの誤送信

パソコンの初心者の方がよく陥るやってはいけないことがあります。 それは、全員のメールアドレスを「宛先欄」(=To:)には入れて送信することです。  これは絶対にやってはいけません。 何故なら、全員に全員のアドレスが伝わってしまいます。

メールアドレスの誤送信の法的問題点

特定の個人を識別できるメールアドレスは、「個人情報」に該当します。

 「個人情報」とは、特定の個人を識別できる情報です。一見識別できないメールアドレスでも、他の情報と容易に照合することができ、特定の個人を識別できる場合は、個人情報に当たります。しかし、記号の羅列のようなメールアドレスであれば、検索しても通常は個人を特定できないので、個人情報に該当しないでしょう。個人情報に該当しないメールアドレスを他人にわかる形で一斉送信しても、違法とはいえません。

しかし、企業の内部において個人を特定できるアドレスと特定できないアドレスを別々に分類して管理するということは通常はありえません。また、アドレス自体が通称のような働きをして個人を識別する情報の1つとして取り扱われることも多くなっています。企業としては、すべてのメールアドレスが個人情報に該当するとの前提で取り扱うべきでしょう。

このような考え方に立つと、メールアドレスが大量に漏えいする事故は、個人情報保護法上、安全管理措置義務(法20条)に違反したということになります。法では、安全管理措置義務違反について、直ちに何らかの制裁が想定されているわけではありません。しかし、民法の不法行為の規定を根拠に、漏えいされた顧客から損害賠償を請求されることは考えられます。   

 問題は、一斉送信され、自分のアドレスが他人にわかってしまうこと、および他人のアドレスを知ってしまうことについての不快感です。不快感は、一般的には法的に保護されません。

例えば、自宅の郵便ポストに、見たくもないチラシが入っていて、不快感があっても、違法ではありません。そのチラシを捨てれば良いだけです。個人情報保護法ができる前、同窓会名簿も売買されていましたが違法ではありませんでした。

ただし、今後、法規制ができたり、現時点で特定できないメールでも将来特定できる状況になれば、違法となるでしょう。

結論として、明らかに個人が特定できるメールアドレスでやり取りをした場合、これは個人情報保護法に違反する可能性があるが、個人を特定できない場合には、違法性はありません。

事実の公表・報告

漏えい事故が発生した場合には、できる限り事実を公表することが求められていますし(法7条に基づき作成された基本方針)、主務大臣が個人情報の管理、利用のあり方について報告を求めてきたり(法32条)、取扱いに関し勧告や命令を受けることも考えられます(法34条)。いずれにしても企業の信頼を 大きく損ねることは間違いありません。


送信したメールを取り消す方法

 送信したメールを取り消す


お詫び文例

個人情報(メールアドレス)の漏えいに関する報告とお詫び

この度、弊社におきまして、お客様にメールにてお知らせをした際、送信業務の不手際により、お客様のメールアドレスが他のお客様のメール内に表示される、と いうトラブルが発生致しました。

該当のお客様におかれましては多大なるご心配とご迷惑をおかけ致しました事、深くお詫び申し上げます。

弊社はこれまで個人情報保護強化に取り組んで参りましたが、このような事案を招いた事を深く反省し、今後は管理体制の見直しと従業員への個人情報保護教育を徹底し、再発 防止に努めて参ります。

今回の件につきましては、あらためて以下の通りご報告申し上げますとともに、ご迷惑をお掛け致しましたお客様に深くお詫びを申し上げます。

記

1.事案の概要

(流失日時・経緯を書きます。)

平成●年●月●日(金)午後●時●分、●●に関する案内メールを送信した際に、個人のメールアドレスを「BCC」に設定して送信すべきところを「CC」で送信したため、全員のメールアドレス(●名分)が表示されて送信されました。 

流出先はメールを受信された同じく●名の方です。

2.対応状況

上記電子メールの送信直後に担当職員がこれに気づき、本件に該当する関係者の方々に対し、直ちに御報告とお詫びを申し上げるとともに当該電子メールの削除をお願いいたしました。
*現在のところ、この件に関して二次被害は確認されておりません。

3.今後の対応

(再発防止策を書きます。)

① 個人情報を含む重要なメールや複数先宛へのメール送信時の作業手順を見直し、全従業員に周知徹底致します。[複数の個人のメールアドレスあて送信する場合には、複数の職員によるダブルチェックを徹底することにより、個人情報の漏えい防止を徹底してまいります。] [今後このような事態が生じないよう、送信前に文書送信者以外の者が宛先及び送信内容を再度確認するなど、厳重かつ適正な管理を徹底してまいります。]
② 個人情報取り扱いについてのリスクの認識を全従業員に徹底し、必要かつ適切な措置 を講じます。
③ 本件に関し何らかの被害が発生した場合は、警察や当局の指導に基づき対応致します。

〈 本件に関するお問い合わせ先 〉
株式会社 ●●
 TEL:●●●-●●●-●●●●
メールアドレス:●


参考資料

2013年11月4日月曜日

インターネットでいじめにあったら

インターネット上のトラブルは、年々増加傾向にあります。

匿名掲示板、個人のブログ、Twitterなどでの誹謗中傷やプライバシー侵害行為の相談が増えているようです。有名人でなくとも、悪口を書かれたり、伏字だけれどもわかる人にはわかるような誹謗中傷をされるケースもあります。SNS(ミクシィやFacebook)でのなりすましケースも増えています。自分になりすまして、ウソの書き込みをされたり、プライベートな写真を公開されてしまうようです。

対処方法はいくつかありますが、まずは、気にしないこと、無視することです。TwitterやSNSの場合、特定の人から自分のサイトを見られないようにブロックできます。また、自分も見ないようにしましょう。そのうち向こうも飽きてやめることも多いのです。

ただ、どうしても見過ごせない誹謗中傷もあるでしょうし、なりすましをされているのは気持ち悪いと思われる人も多いでしょう。その場合は、サイトの運営会社に対し、迷惑行為を報告(スパム報告)します。多くのサイトには、そのような報告を受け付ける機能が付いています。Twitterなど国外の会社が運営しているサイトでも同様です。日本語で送っても、回答は英語かもしれませんが、対応してくれます。

問題なのは、運営側にスパム報告をしても削除してくれないケースです。たとえば2ちゃんねるには削除依頼用のスレッドがありますが、応じてくれないことも多く、依頼自体が公開されるために逆効果となってしまうこともあります。 この場合は、「プロバイダ責任制限法」に基づいた手続を取ります。

選択肢は2つあります。
① 加害者である書き込み主(アカウント主)を特定する
② サイト運営者に削除依頼をする

①であれば、まずは運営側に加害者についての「情報開示請求」を行い、IPアドレスとサーバーにアクセスした時間を教えるよう申し立てます。

IPアドレスがわかれば接続プロバイダがわかるので、次はプロバイダ宛に該当人物について情報開示請求をします。つまり2回情報開示請求することになりますが、権利侵害が明らかなら開示請求は認められます。

氏名、住所などの本人確認が取れたら、権利侵害をやめるように警告するか、損害賠償請求をします。

②は、①より簡単です。サイトの運営会社に「送信防止措置」の依頼をします。そうすると、運営側は加害者に対して、「●●という申し立てがありますが、反論はありますか。削除してもよいでしょうか」と照会します。この時点で、加害者は自主的に削除するか、回答しないかのどちらかの対応を取ることが多いです。照会から一定期間内に回答がない場合は、運営側が削除しても良いことになっているので、そのまま削除されます。

①、②のいずれも、費用は書類代と切手代程度で済みます。やり方も、ガイドラインでインターネット上に公開されています。

ただし、運営者が海外の場合(2ちゃんねるの場合は運営会社がシンガポールにあります。)、上記の手続を使うことができません。そのため、裁判所に削除や開示を認める決定をもらうことが必要です。この場合は、手続が複雑になりますので、弁護士に相談したほうが良いでしょう。

FacebookやTwitterも日本の法律による請求を受け付けていません。ただし、Facebookは実名登録が基本原則となっているため、トラブルはそう多くないようです。Twitterについては、2010年11月に日本法人が設立され、この手続に応じてもらえる可能性が出てきました。 いずれにせよ、トラブルには巻き込まれないことが一番です。トラブルの原因は、やはりプライバシーに関することが多いので、書き込むときも他人のプライバシーに関わることには十分注意しましょう。

2013年11月3日日曜日

記事流用と著作権侵害

 新聞や雑誌の記事、書籍の一部などをコピーして社内の会議で配ったり、ウェブサイトの記事を社内メールで送ったりすることは日常的にあるはずです。法的には、これらの行為は著作権侵害となります。

この場合、著作権法の例外は、個人での私的使用と公的図書館での複写です。これ以外は原則として、著作権者の承諾が必要になります。 記事の要約も著作権侵害となる場合があります。もとの文書を読まずとも内容がわかるような要約は、著作権法上の翻案に当たる場合があり、著作権者の承諾が必要です(著作権法27条)。

また、記事の「見出し」は著作物として認められていませんが、営利のために転用などをした場合には「法的保護に値する利益を侵害した」として、不法行為(民法709条)になるとの見解が示されています(2005年10月・知財高裁)。

 著作権の理解が難しいのは、法律の建前と現実社会での運用が大きくズレているからでしょう。著作権者としては、紙面に「すかし」を入れたり、パソコンでの「コピー&ペースト」をできなくするなどの対策を講じれば、著作権を守れます。ただし、それでは逆に利用が滞り、著作物が流通しないという弊害もある、といえるのです。

 著作物の一部が違法コピーされた場合、一般的に損害賠償額は全体からの案分で算定されます。

営利目的で記事を盗用するなどの悪質なケースでは、刑事事件になることもあります。2009年5月には、自分のブログに他人のサイトの文章を無断で掲載していたとして、大阪府の男性が著作権法違反の疑いで逮捕されました。このブログでは、著作権者の度重なる警告を無視したうえで、健康食品の通信販売サイトを紹介し仲介料を稼いでいたということです。


2013年11月2日土曜日

モンスタークレーマー

わが国で企業や公的機関へのゆきすぎたクレーム行動が一般に広く問題視されるようになったのは約15年ほど前からのことでしょうか。

そもそも正当なクレームは、企業経営を改善し活性化するための貴重な情報源となります。ところが、この時期から客観的にはとても正当とはいえない悪質なクレームが増え始めました。さらに「東芝クレーマー事件」によってインターネットの影響力が広く知れ渡り、同事件が起きた1999年ごろからは、インターネットを最大限活用して苦情の中身を社会に広めようとするクレーマーが出現しました。

こうした事態への対処に企業側は頭を抱えているのが実情です。 かつても製品の不具合、サービス不良などを理由に企業へ因縁をつけるタイプの悪質クレーマーは存在しました。いわば暴力的背景を持ったクレーマーです。

一方、近年問題なのは、製品の不具合など苦情の入り口は同じでも、そこから非難の方向を変えて、企業の社会的姿勢などを声高に追及するタイプのクレーマーです。苦情の前提と要求の内容には著しい差があったり、苦情の相談がなかったりするからモンスタークレーマーといってもいいでしょう。

背景に「我こそは正義」という思い込みがあるため、大変対応しにくい相手です。

というのは、暴力的背景を持ったクレーマーの場合、直接的には金銭を要求していなくても、要求の内容はわかりやすいのです。

これに対して、“新種”であるモンスタークレーマーは、正義を述べ立てることによる自己陶酔や憂さ晴らしといった、別の動機によって行動しています。そのため、例えばモンスタークレーマーに金銭の提供を申し出たりすると、逆に相手の態度を硬化させ、問題を長引かせることにつながりかねないのです。「対応しにくい」というのは、このことでしょう。

モンスタークレーマーの標的は企業だけではありません。被害はいまや自治体や国の機関、学校、病院、さらには芸能人や政治家といった個人にまで広がっています。

また、クレーム慣れしているはずの企業でも、消費者相談室などの専門部署ではなく現場の個人が標的になることがあります。誰もがクレーマー被害に遭う危険があるのです。

電話やネットを通じた「情報による攻撃」は、暴力をともなう物理的な攻撃よりも効果的に人を打ちのめすものです。たとえ専門的な訓練を受けたクレーム担当者であっても、モンスタークレーマーからの執拗な攻撃を受ければ「心が壊れてしまう」といわれています。通常業務を抱えた一般社員ならなおさらでしょう。 常軌を逸したクレーム電話が続いたり、ネット上の誹謗中傷がやまなかったりしたときは、偽計業務妨害罪(刑法233条)にあたるケースもあるので刑事告訴といった対応も可能です。


2013年11月1日金曜日

産業医面談

産業医とは

産業医とは、事業者との契約に基づき、企業内等で労働者の健康管理を行う医師のこと。労働安全衛生法は、常時50人以上の労働者を使用する事業場には産業医を置くことを義務づけています。

事業者は、労働契約上、業務による過度の疲労や心理的負荷によって労働者の心身の健康を損なわないよう注意する健康配慮義務を負っています。産業医の役割は、事業者がこの義務を果たすことができるよう事業者を補助することにあります。そのため、産業医は治療等の医療行為は基本的に行わず、労働者の健康診断や面接、職場巡視を実施して労働者の健康状態を把握し、事業者に意見を述べることを主な職務としています。

 したがって、産業医が労働者から職場でのパワハラやセクハラ、過重労働による心身の不調について相談を受けた場合には、これらの健康管理情報は配属先の上司などへの報告の対象となり得ます。事業者は、医師の意見を参考にしながら、労働者との面接指導を実施し、必要に応じて、労働者の就業場所や作業内容の変更、労働時間の短縮、休業命令、復職命令等の措置を決定します。


 同意なしに報告される

それでは、産業医に相談した内容はすべて報告されてしまうのでしょうか。

産業医も、一般の医師と同様に守秘義務を負います。秘密漏示罪を定める刑法134条は、医師が正当な理由なく業務上知りえた他人の秘密を漏らした場合には6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処すとしており、これは産業医にも適用されます。

また労働安全衛生法も、産業医が健康診断等の実施によって知りえた労働者の秘密を漏らすことを禁じています。

したがって、産業医であっても、労働者の同意がない限り、労働者の健康管理情報を上司に伝えてはならないのが原則です。

他方で産業医は、労働者に健康上の問題があることを知ったときには、事業者にこれを指摘・報告する義務も負っています。また状況によっては事業者に積極的な情報提示を行って、自覚を促すべき場合もあります。

この点について厚生労働省は、可能な限り本人の同意を得ることを基本としながらも、(1)同意を得ることが困難であり、開示することが労働者に明らかに有益である場合、(2)開示しないと公共の利益を著しく損なうことが明らかな場合等には、労働者の同意がなくてもその健康管理情報を上司その他の関係者に報告することができるとの意見をまとめています。

たとえば、(1)労働者が自傷行為に及ぶ可能性が高い場合や、(2)健康診断の結果、伝染病が発覚し、直ちに対応しなければ他の労働者に健康被害が生じる危険がある場合などです。

また労働者の同意の有無にかかわらず、報告が許される情報の内容やその報告先は、事業者が健康配慮措置を講じるために必要となる最小限の範囲にとどまります。たとえば、労働者の血液検査結果の詳細な数値や疾病の具体的診断名、セクハラ、パワハラの具体的な当事者名等の情報は必ずしも健康配慮措置のために必要ではありません。

産業医は労働者に対して守秘義務を負う以上、上司らに報告する必要性があると判断したとしても、まずは労働者にその旨を説明し、同意を得るべきです。それができない事情があったとしても、可能な限り相談者が特定されることのないようにする等の配慮が必要です。

労働者としては、産業医の役割と立場を理解し、産業医の診察、面接を受けた際には、上司らに報告される内容について事前に産業医に確認し、報告してほしくない相手と内容についてはその旨を明確に伝えておくことが大切になります。